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秒速100m  作者: 楼榮 槐
1巻
10/23

異力(イリョク)×ヤツアタリ



桐生キリュウいる?」近くにいた陸上部員に、柘榴ザクロの居場所を聞く。1年生らしい。一生懸命ボール拾いをしていた。

「我心さん!!」柘榴を抜かしたという有名人の姿を、驚き混じりで見て、柘榴を指差した。

「・・・でも今、柘榴先輩には近づかないほうがいいですよ。さっきから何を話しても、黙れの一点張りなんで。機嫌が悪いみたいなんです。いつもはこんなんじゃないのに」

「忠告どーも」そう言いながら柘榴に近づく。その緊張感の中を、

「我心さん!!今度サイン下さいっ」張り詰めた空気がゆるゆるになるような声で言う1年。当の本人は目を爛々(らんらん)と輝かせている。

 俺のサイン?もらってどうすんの。そんな想いをしながら横目で見やり後ろに向かって、ひらりと手をふる。それを見ると、芸能人を見た時のファンように、きゃーなんて喜んぶものだから、余計に気が抜けた。

「桐生、来いよ」柘榴は、振り向く。我心を見るなりにらみつける。

「お前に話はない」

「こっちはあるんだよね」にーっと笑ったすえ、柘榴のTシャツを容赦ようしゃなくつかみ、そのまま引きって行った。周りの部員たちは、その力に目を見開く。さっきのボール拾いをしてた少年もだ。そしてその勇士に期待する。

「部活中だ」

「見れば分かるよ?あんたがふざけたことやってるって聞いたから来てみたけど」

「…」

「何やってんの?」いつもの笑顔ではなく、睨むような目。この前より本気で怒ってるのが分かる。

「…関係ない」我心は、確信した。ついに柘榴も自分と同じような心になってしまったことを。

「…そもそも」柘榴が口を開く。

「俺を変えたのはお前だろ?」我心の鼓動が高鳴った。

「この孤独感、我心だけは知ってたんだ。本当にこれ以上苦しむ人を見たくなかったのなら、もっと必死に止めることもできたはずだ」

「…」返事に詰まる。

「お前だけは…知ってたんだ」追い詰めるように繰り返す。

「…」

「何とか言えよ」

「…止めたよ。俺は」

「止める止めないの話じゃない。実行するかしないかの話だ。止めさせようとしたって、この異力の短所を言ったって、実際に移したのは…お前だ、我心」

「本人の意思を主張したまでだけど」

「だったらお前は、酒を飲みたいっていう子供に、飲ましてあげるのか」

「…」

「変わりないだろ?本人が欲して、それを実行したことには」我心の顔が強張った。柘榴の迫力によってではない。目の前にいる人物が柘榴とは思えなかった。柘榴のことなんて、これっぽっちも知らない。それでも、こんな暗くて重い雰囲気は柘榴じゃないと断言できる。

 確実に柘榴は追い詰められている。そして俺も…。

「…1つだけ。方法がないわけでもない…」

「本当か!?それを早く言えよ。俺、何でもする」柘榴は、我心が言い終わるより先に飛び上がった。喜びが、顔にあふれている。

「お前が他人に言った、黙れとか、俺より遅い奴に興味はないとかは機嫌が悪かったから口走ったことにしとけばいい。だから普通に元の生活に戻れることも間違いない。方法は簡単…でも7日後かな」

「今やらないのか?」

「それなりの準備があるし。そうしないと、あんた潰れるよ?」

「分かったって。俺は何もしなくていいのか?」焦らすような、嬉しいような曖昧あいまいな表情を浮かべる。

「必要ない」そう言うと我心は、来た道を戻っていこうとした。

「我心!!」柘榴が叫ぶ。その声に合わせて我心も振り返った。

「ありがとな」ニッと笑って、柘榴が手をふる。

 これが普通の友達との会話だったら…やめやめ。こんなの俺らしくもない。

「じゃあな」そういう我心の顔は、かげっていた。しかし、柘榴は我心も笑っているだろうと、勝手に思い込んでいたため、そのことにさえ、気づかなかった。




最近学校が忙しくて、なかなか更新できません;;

とりあえず、空いた時間を使って書いていこうと思いますので、暖かい眼で見てあげてください(笑)

ここまでの御愛読感謝しております!!


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