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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第一章 覚醒してゆく才能
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005 告白

 屋敷に戻り部屋に灯を灯す。

 既にメイドらは別館に移り就寝中のようだ。

 俺はミリアと共に各自の部屋へと向かう。


「ああ、そうだミリア。これを渡すのを忘れていた」


「うん? え……お兄ちゃんこれって……」


 懐から取り出した紅い色の宝石。

 ブッカに命令し加工させた『ヴァイオレッドウェンディ』。

 俺はそれをミリアの小さな手のひらに乗せる。


「プレゼントだ。ブッカに頼んで加工してもらったんだ」


 嘘は言っていない。

 ただし『魔法ディザ・ベル』の力で強制的に加工させたのだが。


「綺麗……。でもいいの? 私なんかが貰っちゃっても……。これ、凄く高かったんでしょう?」


 申しわけなさそうにそう答えるミリア。

 俺が金をあまり持っていないことくらいミリアも知っているのだろう。

 とりあえず俺は出世払いということでブッカに頼んだのだと説明した。


「ありがとう……! 凄く、凄く嬉しいよお兄ちゃん!」


 満面の笑みになったミリアはそのまま俺の胸に飛び込んでくる。

 俺は少し心がチクリとした。

 これから、俺はミリアを――。


「……なあ、ミリア。少しだけ俺の部屋に寄っていかないか?」


 声の震えを抑えて抱きつくミリアにそっと囁く。

 別にここで『魔法ディザ・ベル』の力を使い、強制的に命令することも出来る。

 しかし、俺はあえて魔法は使わなかった。

 何故かは分からないが、彼女ならば、と心のどこかで願っていたのかも知れない。


「うん。いいよ。今夜はお父さんもお母さんも帰って来ないし、私もまだ眠くないし」


 快く返事をしたミリアは嬉しそうだった。

 俺は彼女を優しく離し、自室へと招き入れる。


 部屋の中は綺麗に片付けられていた。

 掃除にうるさい伯爵夫人はメイドらに俺の部屋を徹底的に掃除させる。

 プライバシーの欠片も無い生活。

 それも今日でおしまいだ。

 俺はベッドに腰を掛ける。

 同じようにミリアも少し離れた場所に腰を掛けた。


「何する? お兄ちゃん。トランプでもする? それともお話をする?」


 血の繋がっていない義兄の部屋で、何の警戒もせずにくつろぐミリア。

 彼女の『本心』を知りたい。

 俺は生唾を飲み込み、彼女の額に向け人差し指を伸ばす。


「うん?」


 キョトンとしたまま俺の人差し指をまじまじと眺めるミリア。

 どうして警戒しない?

 何故、いつもそんなに無防備なのだ?


 一瞬躊躇したが、ここまできてしまったのだ。

 もしもミリアが心の中で俺を嘲笑っていたとしたら、その時は――。


 俺は彼女の額に人差し指を当て、命令する。


「――ミリア。お前の本心が、知りたい――」


 一瞬身体をビクッと揺らしたミリア。

 俺の人差し指から氷の結晶が内部に侵入していく。

 ブッカのときとは違い、綺麗なミリアの血管壁。

 障害物に当たることなく彼女の脳内へと俺の『魔法ディザ・ベル』は到達する。


「さあ、答えろミリア。お前は俺のことをどう思っている?」


「わ、わたし、は――」


 焦点の定まらない目で虚ろな表情のまま彼女は答える。

 俺は彼女の言葉に耳を傾ける。


「わたしは――ずっと、お兄ちゃんのことが……好きでした」


「!」


 俺は一瞬、彼女の言葉が理解出来なかった。

 俺のことが……好きだった?

 ならば、彼女は――。


「お兄ちゃんが私の家族になるずっと前から……。だから、私は嬉しかったの。本当はいけないことなんだけど、お兄ちゃんの両親が亡くなって、一緒に暮らせるようになったから……」


 一瞬だけミリアの表情が歪んだ気がした。

 彼女の感情が氷の結晶を介して俺に伝わってくる。

 アースガルド家の崩壊を悔やむ気持ちと、俺がテレミウス家の一員になることの喜び。

 その2つの感情が鬩ぎ合い、彼女の心を蝕んでいる。


「ミリア……」


 俺はそのまま彼女を抱き締める。

 しかし彼女の告白はまだ続いている。


「今でも、私はお兄ちゃんのことが大好きなの。好きで好きでどうしようもなくて、でもそれを伝えるわけにはいかなくて……。だって、私達は兄弟だから。お父さんもお母さんも絶対に許してくれない。だから私は一生、誰にもこのことを言わないって決めたの。お兄ちゃんにも言わないって、決めたの。だから――」


「もういい、ミリア。もう、いいよ」


 俺は『魔法ディザ・ベル』を解除する。

 すると彼女は気を失ってしまった。

 やはり命令は魔法の副作用を生じてしまうのか。

 俺は気を失っているミリアをもう一度強く抱き締める。


 ――彼女は、俺の味方だった。

 ずっとずっと、俺のことを考えていてくれた。

 心が歪んでいた俺はそれに気付かなかっただけなのだ。

 この力が無ければ、俺はずっとミリアの気持ちを知ることもなく。

 そして、ミリアも俺に告白することもなかった――。


「う……ん……。おにい、ちゃん……」


 ミリアが俺の名を呼ぶ。

 きっと夢でも見ているのだろう。

 俺はもう一度、今度は更に力を弱めて『魔法ディザ・ベル』を発動する。

 ミリアに負担を掛けないように。

 彼女にとって、一番見たい夢を見させるために――。


「あ……」


 次第に表情が和らいでいくミリア。

 明日、目覚めたら彼女は何も覚えていないだろう。

 俺は神に感謝をする。


 この『神の力』は俺の夢を叶えてくれる――。

 俺は最愛の義妹を、本当の意味で手に入れることが出来たのだ。

 

 彼女を抱え、自室から出る。

 そしてすぐ隣の部屋の扉を開け、ベッドに横たわらせた。

 スースーと静かな寝息を立てるミリア。

 俺は彼女の頬に軽くキスをする。


「お休み、ミリア。良い夢を――」


 

 俺はそのまま自室へと戻っていった。



















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