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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第三章 世界を壊す悪魔
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032 諜報部長ギザベラ

 

 要塞都市バトランド、ギルド本部。

 

 世界中に無数に存在するギルドを束ねる総本山。

 名目上は国に属さず、中立的な立場で人々の生活を守り、時にまつりごとにも口を出す組織。


 ギルド本部には3つの部門があり、それらを束ねるギルド本部長が存在する。

 諜報部、戦略部、民事部。

 レグザは元々ギルド本部で戦略部に所属していたエースのひとりだった。


「うわぁ……。めちゃくちゃ広いですねぇ……!」


 ギルド本部の大扉を開けた瞬間、リリィが感嘆の溜息を吐く。

 天井は人の高さの10倍はあるだろうか。

 開けた中央のスペースにはギルド職員や街の住人、はたまた商人などでごった返している。


 正面に見える受付が民事部。

 左奥に見えるのが諜報部。

 そして右奥に見えるのが――。


「とりあえず戦略部の受付で話を通してから、二階にあるギルド本部室に向かうのでしたよね」


 横に立つフィメルが俺に話を振ってくる。


「ええ。他の部は今のところ俺達には関係の無い部ですからね。戦略部にだけ話を通しておけば大丈夫でしょう」


 笑顔でそう答えた俺は皆を連れ、右奥に見える戦略部受付へと歩を進める。


「うちの街にあるギルドとは全然イメージが違ったわ……。ホントびっくりね……」


 呆れた表情でそう応えるゼシカ。

 確かにレグザが管理しているギルドとは似ても似つかない場所だ。


「まあ、ここはギルド本部だからね。世界中のギルドを束ねる場所だし、これぐらいの規模でないと運営していくのも難しいのかもしれないね」


 人ごみの中を掻き分けるように進みながらそう答えるジル。


「なんだか人酔いしそうだわ……」


 気分が悪くなったのだろうか。

 アーリアがジルの服の袖を掴みながら、何とか後ろを付いてきている。


「皆さん、くれぐれも逸れないように注意し――きゃっ!」


 誰かの足でも踏んだのだろうか。

 人ごみの中に崩れるように転ぶフィメル。

 それを見て溜息を吐く生徒達。



 ようやく戦略部の受付まで到着した俺達は、さっそくレグザから手渡された紹介状を提示する。

 受付嬢は右手に刻まれた紋章に光を灯し、紹介状に刻まれた紋章に手を翳す。

 恐らくこの紹介状が本物なのかを調べる『技』なのだろう。


「お待たせ致しました。クレル・アースガルド様と、御付の方々ですね。この面会許可証をお持ちになって、二階にあるギルド本部室へとお向かい下さい」


 受付嬢よりそれぞれ手渡された許可証。

 それを右腕の袖に貼ると、吸い込まれるようにロゴが服に刻まれてしまった。


「うわ、ダッサこれ……」


「そんな事ないよぅ! 格好良いじゃん! これすごいー!」


 きゃっきゃと騒ぐリリィに呆れ顔のゼシカ。


「わ、私……緊張してきました……! これからギルド本部長さんにお会いするとか考えると……!」


 俺の右手をそっと握るフィメル。

 確かにその手からは緊張が伝わってくる。


「大丈夫ですよ、フィメル先生。話は俺が進めますから。先生は俺の後ろで生徒らが騒がないように――」


「あ、こらリリィ! どうして僕の許可証を背中に貼るんだ!」


「えー? だってこっちのほうが格好良いじゃん!」


「じゃあ、アーリアはここに貼れば……」


「ちょっとゼシカ! そんな所に貼らないでよ! 馬鹿じゃないの!?」


「……はぁ」


 俺は頭を抱え大きく溜息を吐く。


「は、ははは……。この子達を大人しくさせるのは骨が折れますね……」


 苦笑いのフィメルは、それでも俺の手を強く握る。

 俺はそれに応えるように彼女の手を握り返す。

 それに気付いたフィメルは少しだけ頬を赤く染めた。

 生徒らには見えないように手を繋ぐ。

 そんな些細な行為に幸福を感じているのだろう。


「行きましょう、フィメル先生。こいつらの面倒は見ていられません」


「は、はい……。そう……ですね」


 騒いでいる生徒四人をその場に残し、二階へ伸びる螺旋階段へと向かう俺とフィメル。

 その姿に気付き、慌てて追いかけてくる生徒達。





 ギルド本部室の前に到着すると紺のコートに身を包んだ男に止められる。


「本部長になにか用件ですか? 非常に忙しい方なので、私が代わりに聞きましょう」


 俺に視線を向けたあと、俺の背後にいるフィメルや生徒らに視線を向けた男。

 そしてニヤリと笑い、もう一度視線を俺へと戻す。


「ここは女子供を連れて遊びにくるような場所では無いですよ」


 嫌味ったらしくそう答えた男は、手を口に当て特徴的な笑い声を漏らした。


「この子らはグランディア訓練校の生徒です。これがギルド長のレグザから渡された紹介状です」


「ほう……? あのレグザから紹介状ということは……」


 受付でも手渡した紹介状を男にも提示する。

 この反応を見るからに、もしかしたらレグザと共にギルド本部で一緒に仕事をした同僚かなにかなのかも知れない。


「申し遅れました。私はギルド本部諜報部長、ギザベラ・ガーランドと申します」


 ニヤリと笑い自己紹介をするギザベラ。


「ガーランド……? まさか、ロザリア先生の身内の方でしょうか?」


 俺の後ろからジルが口を出してくる。


「ええ、そうですよ。ロザリアの兄です。妹がお世話になっているそうで、ジル・シュナイゼル君?」


 唇をぺロリと舐めながらジルに返答するギザベラ。

 確かロザリアとジルは何度か俺の授業を抜け出して密会していたはずだ。

 ということは、その話をロザリアから聞いているということなのだろう。


「うっわ……。あのロザリア先生の兄貴か……。確かに雰囲気が似てるかも……うぇ……」


「(ちょっとゼシカちゃん! もっと小さい声で言わないと聞こえちゃうよ!)」


「聞こえるように言ったのよ。私、あの先生、大っっ嫌いだから」


 ゼシカとリリィのやりとりを聞き、ギザベラがまた口元に手を当て特徴的な笑い声を漏らす。


「それと……そこの赤い髪の子」


「? え? 私?」


 不意にギザベラに指名されて困惑するアーリア。


「君には見覚えがありますね。数年前にどこかでお会いしませんでしたかね」


「……」


 ギザベラの言葉に明らかに動揺するアーリア。

 きっとそれは彼女の『技型』が関係しているのだろう。

 数年前というと、グランディアに入学するよりも前の話だろうか。


「ちょっとおっさん! アーリアが困っているじゃないのよ!」


「こ、こら! ゼシカちゃん! 失礼でしょう……!」


 ギザベラを睨みつけるゼシカ。

 それをなんとか止めようとするフィメル。


「ふふ……。まあ、良いでしょう。この先には本部長がおりますので、静粛にお願いしますよ。先生?」


 俺に視線を戻し、釘を打つギザベラ。

 この嫌みったらしい性格は、確かにロザリアと似ているのかも知れない。


 俺は軽く首を縦に振る。

 その様子に満足したのか、ギザベラは本部室への扉を開く。


 未だに収まりきらないゼシカ。

 それを止めようとするリリィとフィメル。

 意気消沈気味のアーリア。

 無表情のままのジル。


 

 そして俺は、ギルド本部の扉を潜る。


















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