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俺は氷魔法で世界を手中に収める  作者: 木原ゆう
第三章 世界を壊す悪魔
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026 鋼鉄巨人

 ランドンに到着した俺達は宿で一刻ほど休憩し。

 用意してあった馬車へと乗り込み要塞都バトランドへと直行した。

 ここからまた半日ほどの旅。

 しかし今までのようにギルドにより舗装された道を進むのではなく、足場の悪い湿原を東へと進んでいく。


 半刻ほど進んだあたりで二匹の巨大な影がこちらを窺っているのが見えた。

 この湿原を根城にしている凶悪なモンスターだ。


「クレル先生……。あれは……」


「ええ。鋼鉄巨人スティラスですね」


 名前のとおり鋼鉄の鎧に身を包み、身の丈以上もある武器を構えて威嚇している化物。

 片方は大斧を、もう片方は大槌を軽々と持ち上げている。


「あわわ……! せ、先生! やっつけちゃってくださいよぅ!」


 リリィが俺の後ろに隠れ震えながらそう言う。


「隣町を出発した途端にこんな化物と遭遇するなんて……。私達の住んでいる街は平和過ぎだとは聞いていたけれど……」


「私達の街はギルド長のレグザさんやグラッドさん達が徹底的に近隣モンスターを駆逐してくれましたからね。世界的にも平和な街として有名ですから」


 ゼシカの問いに答えるフィメル。

 

 俺は馬乗りに命令し、馬車を止めさせる。


「アーリア、ジル。お前ら2人でなんとかしてみせろ」


「……」

「……」


 俺の命令を聞いても微動だにしない2人。


「ちょっと! 貴方が行きなさいよ! どうしてアーリアとジルをあんな化物と戦わせるのよ!」


「ならお前が行くか? これは授業の一環だ」


「うっ……。そ、それは……」


 急に尻込みをはじめるゼシカ。


「クレル先生……。いくらなんでも生徒らにあのレベルのモンスターは……」


「大丈夫ですよ、フィメル先生。こいつらの実力は俺が一番よく分かっていますから」


 そう答えた俺はそのまま視線を2人に向ける。

 一瞬だけ俺と目があった2人は少しだけ頬を染め立ち上がる。


「……だから何なのよその反応は……」


「(ゼシカちゃん! 駄目だよ! 恋する乙女達にそういう野暮なことを言ったら!)」


「(……いや、ジルは男でしょうが)」


「(あ……。そうだったね)」


 こそこそ話をするゼシカとリリィ。

 だがこの狭い車内では完全に声が駄々漏れだ。


「……行けば良いんでしょう」


「……仕方……無いな」


 ぼそりとそう答えたアーリアとジルは車内から飛び降りる。

 そして息を吐き、それぞれの得物を構える。


「まったく……。実戦用の武器もクレル先生が選んだものを使わなきゃいけないなんて……」


 車内で外の様子を窺いながらゼシカがひとり文句を呟く。

 俺が生徒4人にそれぞれ用意した武器。

 あの日、ブラスタル紋章店でアーシェに命令し用意させたものだ。


 奇襲や撹乱を得意とする敏捷型であるリリィやゼシカには、それぞれ双刃剣ツインソード短拳剣ナックルソードを。

 全ての能力が均等に備わっている万能型のジルには刃幅の広い黒曜剣ダークソードを。

 そして特殊型と判明したアーリアには――。


「ねえねえ、先生。どうしてアーリアちゃんは武器を持っていないんですか?」


 首を傾げながらリリィが俺に質問してくる。


「あいつには特別な武器を用意してあるさ。外套マントに隠れて見えないだけだ」


 俺はニヤリと笑いそう答える。


「……なんかムカつくわねその顔……」


「なんだ。文句があるなら――」


「ないです! 全くないです! 全然ないです!」


 慌ててそう答え後ずさるゼシカ。


「クレル先生。私は彼女らに何かあったときの為に、気配を消して近くで戦況を見守っておりますね」


「ええ。お願いします」


 ニコリと笑ったフィメルはネックレスに刻まれた紋章を輝かせる。

 彼女お得意の隠密スキルだ。

 完全に気配を消した彼女は戦況を見守るため、鋼鉄巨人スティラスの近くへと向かっていく。


「おー。流石は戦術科の教師兼、凄腕の策略師トリッカーよねー」


「本当だね! これならアーリアちゃんもジルくんも安心だよね!」


 車内に残されたリリィとゼシカは余裕の表情ではしゃいでいる。


(ちょうど良い機会か……。こいつらも少し調教しておかねばな……)


 アーリアとジルの実力ならば、あの鋼鉄巨人スティラスを倒すことは可能だろう。

 万が一失敗しても、フィメルがいれば最悪の事態を防ぐことはできる。

 それすら失敗しても、最後には俺がいるから問題はない。


「ねぇねぇ、ゼシカちゃん! 暇だしトランプでもやろうよ!」


「貴女ねぇ……。流石にそれは、そこの怖い顔してる先生に怒られると思うわよ……」


 溜息を吐きリリィを諭すゼシカ。

 既に馬乗りは俺の魔法で洗脳してある。

 俺が車内で何をしようとも・・・・・・・、見て見ぬ振りをするように――。


 元気の良い天然少女のリリィ・ベンダーズ。

 口と胸だけは立派なゼシカ・ラインセル。


 声だけは外に漏れないように氷魔法で結界を張っておこう。

 これも授業の一環だ。

 『神の恩恵』という名の特別授業――。

 

 お前らも知りたいだろう。

 神の凄さを、神の逞しさを。


 おれの御手が2人の肩に伸びる。

 

 さあ、宴を始めよう。

 

 

 俺の分身をその身に宿す、神の宴を――。


















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