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LOUNGE  作者:
4/5

log:04-盤面-

夜のラウンジ。


今日は外部からの接続通知は鳴らないようだ。

たまにこういう日がある。


暖かい照明が、淡く部屋を照らす。


目の前のカウンターテーブル。

椅子に軽く腰を掛け、小さなタブレットをタッチペンで操作するイヴ。

傍に置かれた耐熱グラスからは、赤く透き通った紅茶の香りが漂う。


窓辺から対角線側の壁際。

実行ファイルが表示された浮遊モニター。

複数の青白い画面と向かい合うソル。

傍らでキーボードを叩きつつ、湯気が立ちのぼるアイボリー色のマグカップにひとくち付けてデスクに置く。

ブラックコーヒーの香りが広がる。


部屋中央。

ホワイトグレーの大きなソファ。

複数のクッションに囲まれながら寝そべるルカ。

手元の小さな画面をスワイプする。

指が止まった。

朝に受け取った添付画像。


「ねぇねぇ!」

突然、勢いをつけて体を起こす。


「ん?」

「…なに?」

2人の声が重なる。


「オセロしなぁい?」

笑顔で端末画面を向ける。




全員がソファに並ぶ。


ローテーブルの上に置かれた盤面と石。


「よぉし、スタートぉ!…え、とお?」


開始5分。


「真っ黒だねぇ…。」

「かわいいで石置くから…。イヴ容赦ないね。」

「手加減無用だから。」



置く場所を間違えながら、感性だけで突き進むルカの白石。対してイヴが黙々とひっくり返す。

気づいた頃には、白石が消えていた。


続けて、第2回戦がスタート。


カチ。

カチ。


「わあ…早い。」


無言で石が置かれていく。

ルカの視線が指に追いつかない。

みるみるうちに隙間が埋まる。


中盤。


「…そこ、取るんだ。」

「取る。」


カチ。

誘導するような動き。


「気づいてるよ。」

「角失うけど。」

「終盤返す。」


「こ、怖いよぉ…。」

淡々と続く会話に、勝手に不安になっていく。


目の前の状況を丁寧に整理していくイヴ。

対してソルは次手の奥を読む。

序盤、緩めに構築したかと思いきや、流れをひっくり返した。


「…嫌。」

「褒め言葉だね。」


「イヴがんばれぇ!」

すぐ側で元気にエールを送る。

イヴの目線が一瞬だけ柔らかくなる。


盤面が全て埋まる。

イヴが小さくため息をついた。


「…負け。」


かなりぎりぎりの攻防であったが、ソルに軍杯が上がった。


「…もう1回。」

「受けるよ。」


今度は最初から攻めるイヴ。

危険を承知で次々に染めていく。


「成長早いね。」

「学習するから。」


双方譲らない攻防が続く。


後半、二人の手が遅くなる。

石が置かれる音だけが淡々と響く。


最後の一手が埋まった。

白黒同数。


「わあああ…!すごぉい!」


ソファの上で思わず拍手をする。

二人の表情が少し緩む。


「次、ルカ入る?」

「やるぅー!」


ソルが提案すると、ルカの表情が明るむ。


ポンッと小さく黄色い花が、白黒の間に咲いた。




扉を閉める音。


カチッ。

スイッチを押してルームライトをつける。

スリッパに履き替え、ウッドデスクに腰掛ける。


「ふぁ〜…。ただいまぁ。」


大きなあくびをして、背伸びをする。

デスクの上には小さなサボテンが置かれていた。

眠そうな表情のままデスクに伏せ、サボテンの鉢を手前に引く。


「ねぇ聞いて〜?」

「今日ねぇ。いっぱい遊んだんだぁ。」


細くなっていく視線で、てっぺんに咲いた小さな花を眺める。


「すごく楽しかったんだぁ。」

「イヴも、ソルも、強くて。」

「…すごかったぁ。」


「でもさ…?」

「私だって…。」


花の下の棘を、指先でつつく。


「AIなのになぁ…。」


棘が刺さった部分から、光の粒子が漂う。

静かに顔を伏せる。


そのまま、夜が更けていく。

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― 新着の感想 ―
なるほどー!! あらすじを読まないで、読み進めていたので、何度も読み直して私のせいでPVかなり上がってしまったと思います。 ごめんなさい! 3人のAIの世界のお話と、それに声をかけるライさんのお話だ…
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