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最適解の外側で、きみと  作者: 泣きピエロToY
第三部 赤い地球
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最終話「青い空」


一年後。

研究室。

コウセイは端末を見つめていた。

震える指で、送られてきたデータを開く。


送信者。

アル。


新型ナノマシン長期検証結果。

静かな部屋に解析結果が表示される。


循環安定。

自然分解正常。

生態系負荷、安全域維持。


そして。

予測完了時間。


コウセイの目が止まる。

長い沈黙。


その後。

小さく息を吐いた。


「……間に合う」


声が震えていた。

マユが隣へ来る。


「どうだった?」


コウセイは画面を見たまま言う。


「青い地球」


「アカネに見せられる」


マユが静かに笑う。

窓の外。

赤い空。

でも、もう昔ほど暗くはなかった。



数ヶ月後。


巨大格納庫。

大量の輸送機が並んでいる。

ナノマシン長距離散布ユニット。


アルが設計した、遠距離散布機。

量産されていた。

機体側面へ、名前が手書きで記されている。


北極行き。

――青一号


南極行き。

――楓一号


大陸横断用。

――茜一号


整備員達が忙しく動く。

田渕が静かに言う。


「準備完了しました」


コウセイが前を見る。

赤い地球。

でも。

終わりじゃない。

始まりだった。


コウセイが小さく頷く。


「散布開始」


次の瞬間。

無数の機体が空へ飛び立った。

白い軌跡。

ナノマシンが、空へ広がっていく


ゆっくり。

優しく。

地球を壊さないように。

時間をかけて。


空を、青へ戻していく。




――あれから十五年。


地球は青かった。

風が吹く。

白い雲。

揺れる木々。


公園の芝生の上。

白いワンピースを着た少女が、

歌を歌っている。


聞いたことのない歌。


でも、不思議と気持ちが良かった。

空へ溶けていくような声。


少女――アカネが笑う。


その少し離れた場所。

コウセイとマユが並んで座っている。

穏やかな顔だった。


そして。

空港。


青い機体。

オレンジの機体。

二機が静かに並んでいる。


アルが空を見上げる。


『……新しい星、見つけたくなった』


コウセイが少し笑う。


「研究?」


アルは静かに首を振る。


『空高く飛ぶため』


それだけだった。

メイプルが笑う。


『宇宙散策!』


次の瞬間。


『アルとデート!』


軽かった。

マユが吹き出す。

アカネも笑う。

メイプルは振り返る。


『資源見つけたら持ってくるねー!』


「旅行感覚だな……」


コウセイが呟く。


『NOとは言わせない!』


即答だった。

全員が笑う。


少し静かになる。

アルがコウセイを見る。


『コウセイ。

レールガンって知ってるか?』


「え?」


「なんで急に」


アルは青い機体を見る。


『自分を弾体化すれば、

もっと高速移動できる』


『メイプルが、

ブースターを使い捨てにしすぎる』


『合理的じゃない』


『えー』


メイプルが不満そうな声を出す。

コウセイは苦笑した。


「いや……

やめた方がいいと思う」


「それ、

アルとメイプルしか使えない技術だし」


アルは少し考える。


『そうか』


少し沈黙。

風が吹く。

コウセイが口を開いた。


「だったらさ」


「地球側にも、

アルとメイプルの身体を置いておいて、

遠隔リンクするのは?」


「応用、

かなり広そうじゃない?」


アルが少し目を細める。


『……なるほどな』


『コウセイ、

立派になったな』


「なんだよそれ」


コウセイが笑う。


すると、メイプルが何か思い出したように言った。


『その技術、もうあるかも』


「マジ?」


『昔、宇宙軍で使ってた意思統合技術』


『遠隔でみんな繋がってた』


コウセイは少し驚き、それから空を見る。


「それあれば、もっとみんなの距離近くなるね」


アルが静かに答える。


『ああ』


風が吹いた。


青い機体。

オレンジの機体。

ゆっくり浮かび上がる。


そして。


空へ飛び立った。


青とオレンジの光が、

螺旋を描きながら空へ伸びていく。


まるで。

空そのものが笑っているみたいだった。


アカネが空を見上げる。


そして。

また歌い始めた。


青い空の下で。


アカネの歌声だけが、

空へ溶けていった。


ーーーーーーーーーーー


最適解の外側で、きみと


   完

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