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武具屋《ヨルブ商具》の前を囲む、目をギラつかせた村人たち。
ライクは入り口の枠にへばりつきながら、背中に収めた鎧を隠そうにも隠せず、汗をぬぐう。
「だから……喋ったっていうか、その、声みたいなものが聞こえて……でも自分にもよくわかってないんです……」
「わかってないって、それ一番怖いやつじゃろうが!」
「呪具か?村に持ち込んだなら規律違反だぞ!」
「祖父の代から保管されてたものです、記録には……ただ、声が……」
ライクが苦し紛れに言う横で、誰かがぽつっと言った。
「今日って巡察の日じゃなかったか? こんな騒ぎ見られたら……」
沈黙が一拍。そして一斉にざわめきが跳ねた。
「マズいぞ、それはマズい!」「今のうちにどうにかしないと……!
そんな中、ずかずかと人垣を割って入ってきたのが村長だった。
「よし、面倒は未然に潰す。そいつはとりあえず封印する」
「へ? いや、あの、待って──」
「異常があった武具は管理下。未調査なら当然だ」
ライクが手を挙げて言いかけるも、それより早く村長が指差す。
「もちろんお前も一緒にな」
「は!? なんで俺まで!?」
「監視役に決まってるだろう。他に誰がいる?」
「いやいや! そいつ、喋るんですけど!? 俺に何かしてきたらどうす──」
「村長命令だ。異議はあとで聞く」
そう言って村長は人を呼び、ライクと鎧をまとめて旧会合所まで運ばせた。
村はずれ。崩れた石壁。誰も立ち入らない湿った空気。
ライクは鎧を担ぎながらぼやいた。
「なんで俺が……しかもなんでこいつと一緒に……」
鎧は何も言わない。ただ重い。
「なあ、なんとか言えよ……黙ってると怖いからさ……」
しかし鎧は完全無反応。仕方なく毛布を敷いて、自分は反対側の壁に座った。
「絶対寝ないぞ、俺……監視って言ったし……寝ないぞ……」
鎧は、やっぱり黙ったままだった。