マヌエラのその後
タイトル通りの番外編です。ざまぁ展開はほとんどないので、その点ご了承ください。
夜会での事件についてマヌエラは情状酌量の余地があることと、学院の教師や教授たちからの嘆願もあって四年次への進級が認められた。
成績が優秀であることに加え、マヌエラが女子学生から孤立していたのに対策が講じられなかったためである。
後日、マヌエラへの苛めについても改めて調査が行われることになった。
貴族議員にも名を連ねる学院長の後押しもあった。当然ながら公にはされていないが、入学前の寄付金が多額になるほど、入学試験の得点が加算されるようになっている。
学院全体の学力を担保するための大切な成績優秀者の一人でありながら、男爵位の家とはいえ一応の貴族のマヌエラを逃すのが惜しかったのだ。
成績順とされているクラス分けも、高額寄付の成績優秀者、高額寄付だが成績がそこまで優秀でない者、寄付が少ないが成績優秀者と学費免除の平民とで自然とクラスが分かれる。
三つ目のグループが学力がもっとも高い。もちろん高額寄付できるほどの家の人間も良い家庭教師が付けられる分は有利だ。なのでそれなりに成績を修められるものもいた。
学生寮も寄付金と成績によって部屋が分かれるが、マヌエラのように寄付金が少額なのに手狭とはいえ一人部屋になれるのは稀なのである。
一応の学院からの処分としてマヌエラは少し広めの二人部屋となった。学費免除の特待生で平民だと聞いた。
「私みたいなのと同室にさせてごめんなさい。迷惑をかけるかもしれないのに……」
「ああ、別にいいの。今までより広い部屋に移れたし。うち寄付金納めるどころか学費免除だからね!」
広い方の部屋に二人用とはいっても、それは比較的手狭なものだったらしい。新しい部屋はこれまでよりもさらに広いということだった。
寄付金がかなり高額だが成績があまり良くない学生に与えられる部屋だと聞いて、マヌエラは部屋の種類がそんなに細かく分かれていることすら知らなかったことに気づいた。
「マヌエラさんは将来伯爵夫人になること確定でしょ?」
現在、一番上の兄が継いだばかりのレーヴェン男爵は近く伯爵に陞爵予定だ。そしてマヌエラの卒業を待ってヘルムートと結婚し、ヘルムートがレーヴェン伯爵を継ぐ。
マヌエラにとって、大好きな兄が二年と待たずに当主を引退させられることが一番堪えた。
「それに私、穀物栽培の研究をしているの」
マヌエラの論文も読んでくれたらしい。編入試験のときの論文は薬草の栽培がテーマだった。植物の栽培という点で興味を持ってくれたという。穀物栽培といえばマヌエラも論文を読ませてもらったことがある。
「あの、私……学院に来るまで両親とお兄ちゃんたち四人と、あと家庭教師くらいしか話したことなくて」
「もしかして、それで女子たちと話さなかったの!? ただの人見知りじゃん!」
笑われたマヌエラが恥ずかしくて顔を押さえていると「じゃあ、私がマヌエラさんの最初のお友達というわけね」と手を差し出された。
おずおずと手を重ねれば、ぎゅっと握られて「はい、握手」と言われる。
「よろしくね!」
「う、うん! こちらこそ、よろしくおねがいします」
初めての友だちに泣きそうになりながら、マヌエラは何度も頷いたのだった。