第十話『翼ネコとミリアにゃんの裏切りにゃん!』のその⑤
第十話『翼ネコとミリアにゃんの裏切りにゃん!』のその⑤
(ま、まずいにゃん!)
ワナワナワナ。ワナワナワナ。
「まさか、『アホ』よりもひどい究極の二字で侮蔑されるとはにゃあ」
気の毒に思って振り向いた視線の先には、……やれやれ、不憫にゃことにゃ。
信じられにゃいモノを見た、聴いた、体験した、かのように真ん丸の目を大っきく見開いて、ややうつむき加減で呟くミリアにゃんの姿が。
「ばぁぁかぁ、ですって。ばぁぁかぁ、ですって。ばぁぁかぁ、ですって」
心の動揺を表わすが如く、全身が揺れに揺れているのにゃ。
「折角の慈悲の心を……。もう断じて許すわけにはいきません!
この私が、いえ私たちが直々に『天誅』を下して差し上げましょう!」
ぐおっ。
もう目と鼻の先まで来ている敵へ、全てのミリアにゃんが揃って顔を上げ、ピンク色ののメガネを向けたのにゃ。
(いよいよにゃ)
今ここに、切り札の『呪』が友の口から叫ばれるのにゃん!
「無気力波あっ! 『友だち百にん出来ました』バージョン!」
ほわんほわんほわん。ほわんほわんほわん。ほわんほわんほわん。
かけ声とともに、真ん丸の輪っかが、ありとあらゆるメガネから一斉に放たれたのにゃ。ひとりひとりから連続して発生されるこの輪っかは飛んでいくにつれ、どんどん大きくにゃっていく。それが百にん分ともにゃれば、効果は絶大。幾つもの無気力波が重にゃって、途方もにゃい威力と拡がり方を見せつけたのにゃん。
飛んでいるにゃんごらが次々と墜落。
ひゅうぅっ、ばたん! ひゅうぅっ、ばたん!
「もう疲れたのぎゃん」
走っていたにゃんごらも次々と転倒。
くらくらっ。ばたっ! くらくらっ。ばたっ!
「お休みなさいのぎゃん」
どちらも地面にへばりついてにゃ。身体をひくひくさせているのにゃん。
あまりにも哀れ。正義の味方のやったこととはとても思えにゃい見るも悲惨にゃ状況に、ミリアにゃんを除くウチら一同、哀れの涙を誘われずにはいられにゃかった。
《ぐすん。ひどいわぁ、ミアンちゃんったら。ぐすん。
ワタシが戸棚に隠しておいたケーキを食べちゃうなんて。ぐすん》
《いや、いつまでも食べにゃいから、てっきり、『嫌いにゃのにゃん』とばかり。
……というか、にゃんで、このタイミングでいうのにゃん?》
そして……敵はひとり残らず消滅したのにゃ。
ミリアにゃんのおかげで勝てたことは間違いにゃい。
「ミリアにゃん、有難うにゃ。これでやっと戦いが終わったのにゃん」
感謝と安堵。二つの気持ちが一つの言葉として吐き出されのにゃ。本気でそう思っていたのにゃん。それにゃのにぃ。
「本当の本当に感謝しているのですよね?」
どうしてか、念押し、みたいに尋ねられたのにゃ。気にはにゃったものの、『感謝されることがめったににゃいから戸惑っているのにゃろう』ぐらいにしか考えにゃくってにゃ。
「うんにゃ」
気軽に返事をしたのにゃ。そしたら……続けた言葉がにゃんと。
《結婚してください、じゃない?》
《あのにゃあ……ふぅ。イオラにゃんの発想には誰もついていけにゃいのにゃん》
《そう……ふぅ。時代がワタシに追いつくのって、いつのことかしら?》
《少にゃくともあんたが生きている間は無理と思うにゃ》
《何万年も、あとぉ!》
「ならば、宗教団体『正義の味方で行こう!』へのご参加を。
ほら。ここに連判状と、それに朱印を押すための朱肉もご用意してあります。みなさんのお名前はもう既に書いてありますから、朱肉に指をつけたのち、名前の下に押しつけて貰えればそれで結構です」
まるで霊術の如くウチらの足元近くへ、『巻物のようにくるまった白い紙切れ』と『丸型の黒いケースに入った朱肉』の二つを差し出したのにゃん。
ぱらぱらぱらっ。
紙切れを前足で拡げてみれば、確かにウチらひとりひとりの名前が記されている。にゃもんで早々に円陣を組んで協議をおっ始めたのにゃ。
「みんにゃ、どうしたらいいと思うのにゃん?」と進行役のウチ。
「ぶん殴って妄想から救い出すっていうのは?」と暴力的治療を提唱するミクリにゃん。
「わたしのぷよぷよ水に一晩浸けて置くのも悪くないわね」と漬物的発想のミストにゃん。
「聴かなかったことにするって手もありますですよ」と素知らにゅ顔のミムカにゃん。
「議論は出尽くしたな。あとはどうやって葬るかだ」と先を急がせるミロネにゃん。
かんかんがくがくの論争の末、弾き出された答えは。
「ミリアにゃん。全員一致で『拒否』と相成ったのにゃん」
「そうですか。…………ふふっ」
(『そうですか』で終わってくれれば、良かったのににゃあ)
最後の小さにゃ笑いが全てを物語っていたのにゃ。まっこと予想違わず、これで諦めてくれるようにゃミリアにゃんじゃにゃかった。
《ふふふ。まだまだぁ。ここで出番を諦めるようなワタシじゃないわ。ふふふ》
《もういい加減に諦めにゃさい》
《うっ……ぐすん。やっぱり、ダメなのかしら》
《おや? 床に『の』の字を書いて落ち込んでいるのにゃん。
ミリアにゃんもこれくらい諦めがいいと楽にゃのにゃけれども》
「どうあっても『正義の味方で行こう!』に入りたくないというのであれば……、
幸せになりたくないというのであれば……、
無理矢理でも、たとえ強制的であったとしても、なってもらうまで。
印を押してもらうまでです!
教祖として私は……必ず、みなさんを幸せにしてみせます!」
とまぁ近所迷惑にゃセリフをいい切った直ぐあとにゃ。
ぐいっ。
全てのミリアにゃんがまたまた揃って顔を上げたのにゃ。さっきと違うのは、メガネの向けられた先がこちらにゃ、ってこと。些細にゃ違いにゃのにゃけれども、それが意味するところは大っきいのにゃん。
メガネごしにウチを見つめるミリアにゃん。口元に浮かぶ不敵にゃ笑みは一体にゃにを物語っているのにゃん……。
「ふふっ。ミアンさん。私は同じ失敗を二度と繰り返しはしません。
だからこそ、この陣営を造り上げたのです。ふふっ」
(前回の失敗って……にゃ、にゃんと。あの闘いを、いまにゃ根に持っていたのにゃん)
実は以前、総勢三十体のミリアにゃんに依る、『無気力波、エクストラVersion』を挑まれたことがあるのにゃ。あん時は、『ネコネコ反射』を全身に施した応用技、『装甲型ネコネコ反射、ハイバーVersion』でにゃんとか、はね返せたのにゃけれども。
(今回はとても無理にゃ)
見たところ、向こうはまにゃまにゃ霊力がみなぎっているようにゃ。それに引き換え、こちらは誰もがほとんど使い果たしているといった風。これでは勝負をせずとも結果はみえみえにゃん。
もうダメにゃん。こうにゃったら頭を垂れて、敵の軍門に下るしか……。
いいんにゃ。違う。それは断じて違うのにゃん。戦わずして負けを認めるにゃんてあり得にゃい。戦って戦って、もがいてもがいて、どんにゃに哀れにゃ姿ににゃっても、最後の最後までもがき続ける。抗い続ける。それがウチにゃん。死の直前すら、『もっと食べ物を』と哀願したからこそ、生きることに執念を燃やしたからこそ、化けネコとにゃれたのにゃもん。そうにゃ。最後の最後まで、諦めはしにゃいのにゃん。
《ミアンちゃん、それは大いなる誤解よ。ミアンちゃんが化けネコになれたのはね。なにを隠そう、ワタシが》
《知っておりますのにゃん。感謝しておりますのにゃん。話のノリで喋っているにゃけで、仔細はよぉく存じておりますのにゃん》
《うん。判ればよろしい》
ウチは開眼したのにゃ。
たとえ敵わにゃい相手と判っていても、戦わねばにゃらにゅ時もあるのにゃ、と。
(あんにゃ宗教団体にゃんかに誰が入るもんかにゃ。意地でも抵抗してやるのにゃ)
振り返れば、みんにゃが、こくり、と頷いたのにゃ。どの目からもウチとおんにゃじ気迫が伺える。それはミリアにゃんにも伝わったのにゃろう。
「あくまでも抵抗する気ですね。
判りました。私は心を鬼にしてみなさんをお救い致します!」
きっ、と睨みつけるようにゃ感じで、メガネをウチらへと向けたのにゃ。
(くるにゃあ……)
生唾ごっくん、の状態。そして……またしてもあの呪が紡がれたのにゃん!
「無気力波あっ! 『友だち百にん出来ました』Version!」
「この子らは、あんたの分身で友にゃちではにゃい!」
ウチのツッコミにやや遅れて、百個のメガネから一斉に丸い輪っかが。
(もうダメにゃん!)
思わず目を瞑る。と、その時にゃ。
「天誅! でありまぁす!」
(ミムカにゃんにゃあ!)
目を開けば、今まで喋っていたミリアにゃんの頭上にネコ姿のミムカにゃんが。
ウチは、いんにゃ、多分、他の友にゃちもにゃろう、目の当たりにしたのにゃ。ネコ人型モードとにゃったミムカにゃんの右手が、硬質ハンマーへと改造した銀光りする右手が、真下にあるネコ型の頭へと振り下ろされる瞬間を。
ごてっ!
ミリアにゃんが口から泡を吹いて、ばたっ、と倒れたのにゃ。やっぱ本物にゃったのにゃろう。続いて全ての分身が幻のように消え去ったのにゃ。
「ちょっとやりすぎたかもにゃ」
歩み寄ってみれば、真っ逆さまにゃ格好で立っているミリアにゃんの姿が。頭の先がちぃとばかし地面にのめり込んでいるのは、まにゃいいとしてにゃ。問題は、首の真ん中から足にかけて、にゃん。ウチから見て左側に、ということは、実際には右側に、にゃのにゃけれども、そうにゃにゃあ、35度ぐらいには曲がっているのにゃん。にゃのに顔は笑ったようにゃ表情。にゃあんか化けネコみたいで、とぉっても、おっとろしいのにゃん。
《もしもし。化けネコはミアンちゃんでしょ?》
《あれに較べたら、ウチにゃんて初心者にゃん》
「ミアンさん……」
ミリアにゃんは生きていたのにゃ……じゃにゃい。意識があったのにゃ。
「私の負けです、ミアンさん。あなたには敵いません」
「あんたが負けたのはミムカにゃんにゃ」
「いいえ、違います」
「違う? どういうことにゃん?」
「あなたは叫んだじゃないですか。
『この子らは、あんたの分身で友にゃちではにゃい!』って。
あの言葉が氷の剣となって私の心を、ぐさり、と突き刺したのです。
無気力波の発射を遅らせたのです。でなければ……」
ここまでにゃった。目は閉じられ、身体は、ぴくり、とも動かにゃい。
(どうやら、気を失ったみたいにゃん)
「ミアン君。これでやっと、本当の本当に終わったね」
ミクリにゃんが安堵の表情で声をかけてきたのにゃ。
「うんにゃ」
頷いてからしばらくしてにゃ。本物の実感として込み上げてきたのは。
(そうにゃ、終わったのにゃん!)
「みんにゃあ! 終わったのにゃよぉっ!」
思わず、大声を張り上げてしまったウチ。でもにゃ。気持ちは誰もが一緒にゃん。
うわぁい! うわぁい!
その場に居るみんにゃが歓喜の声を上げたのにゃ。倒れたままのミリアにゃんに対する同情の念が塵よりも軽く吹き飛ばされたのはいうまでもにゃい。
《35度って、これくらいかしら?》
《誰が、お風呂の温度を計れ、といったのにゃん?》
《ぬるま湯じゃにゃい。これで本当に病が治るの?》
《にゃあ、イオラにゃん。ネコの話をちゃんと聴き……ああでも、あんたが傾げた首の角度は35度かもしれにゃいのにゃあ》
そして……再び元の緑一色の部屋に。ミッションを全てクリアしたからにゃろう。銅色ではにゃく、白色のカギが床に落ちていたのにゃ。
これで四度目にゃん。みんにゃが固唾を呑んで見守る中、ウチはカギを差し込んで右へと回したのにゃ。
がちゃり。
カギの外れる音が鳴り響く。
ぎいぃぃっ。
ドアがひとりでに開く。
ここまではいつもと一緒にゃ。
「行くにゃよぉ」
意を決して入ってみればそこには。
《イオラにゃん。にゃにもいわにゃいでにゃ》
《ええ。もちろんよ》
「ミクリにゃん!」とウチ。
「ミアン君!」とミクリにゃん。
「やっと、ね」とミストにゃん。
「やっとでありまぁす」とミムカにゃん。
「ついに、ここまで来たか」とミロネにゃん。
すたすたすた。
歩いてくる足音に振り返れば、
「忘れないで下さいね。私が努力したからこその賜物ですよ」とミリアにゃん。
(もう復活したにゃんて。首も治っているし。……まぁいいにゃん)
ウチらは手と手を取り合って、ともにゴールを実感したのにゃ。
《とかなんとかいって、『本当は』なぁんてオチなんでしょ?》
《残念にゃがら、今回はオチにゃしにゃん》
《ということは……まさか!》
《にゃあ、イオラにゃん。『ファイナルステージ』が終わって、ここまで来ているのにゃよ。まさかも、へったくれもにゃいじゃにゃいの》
「第十章のファイナルステージも終了にゃん」
「いよいよお話はクライマックスへ突入、なのわん」
「長かったにゃあ、ミーにゃん」
「本当本当。よくぞここまできたって感じ。
最悪の場合、途中で終了、も、あり得たっていうのにね。
奇跡としかいいようがないのわん」
「いやいや。
ミーにゃん。残りわずかとはいえにゃ。
まにゃまにゃ油断は禁物にゃんよ」
「うん。お互い、気を引き締めていこうわん」
「ってにゃことで」
「次に喋るのは第十一章の終わりかぁ。
ねぇ、ミアン。それまでどうするのわん、って」
すやすやすや。すやすやすや。
「こらあっ!
アタシが喋っている最中だっていうのに、
ひとりのぉんびりおネムしてんじゃないのわぁん!」




