第十話『翼ネコとミリアにゃんの裏切りにゃん!』のその④
第十話『翼ネコとミリアにゃんの裏切りにゃん!』のその④
でもって、ドン尻に控えしは……いわずとしれたミロネにゃん。
たにゃこちらに関しては。
ぎゅうぅぅん!
ウチの頭上で、敵の体当りをかわしたのにゃ。
「大丈夫にゃん?」
「心配するな。ご覧の通り、命からがら逃げ回っている。……おおっ、と。また来たか。しかも、こんなにたくさん。どうやら、お喋りしている余裕はなさそうだ。
……ってことで、それじゃあ、あとで」
(丸腰にゃものにゃあ)
そんにゃこんにゃで戦力外にゃん。
《どうして敵も、命からがら追っ駆けないのかしら?》
《さぁにゃ》
ウチはふと気がついたのにゃ。
「にゃあ、ミクリにゃん。ちと尋ねたき儀があるのにゃけれども」
ざくりっ!
「なに? 今忙しいんだけど」
がぶっ!
「こっちもにゃよ。一つにゃけにゃからいいにゃろう?」
がぶっ!
「じゃあ、手短かにね」
ざくりっ!
「もちろんにゃよ」
ざくりっ!
「ほら。見ての通り、ウチって幼気にゃ女の子にゃん」
がぶがぶっ!
「ということはにゃ。本来であれば、ここは」
ざくざくざくりっ!
「お姫様のウチが『きゃあぁっ!』とワナワナ。そこへ王子様のミクリにゃんが颯爽と助けに現われる」
がぶがぶっ!
「とまぁそういったシーンが描かれて然るべき、と思うのにゃけれども」
がぶがぶっ! ざくざくざくりっ!
会話の合間でもウチは咬みつき(=がぶっ!)と鉤爪(=ざくりっ!)、双方の攻撃に余念がにゃい。
(我にゃがら器用にゃもんにゃ)
自分で自分をつくづく感心。……とはいえ、おんにゃじことをしているのに、敵を滅ぼす速さと数は、ミクリにゃんのそれに遠く及ばにゃいのにゃん。やっぱウチは可憐にゃ乙女(とにゃる定め)の幼児。生まれにゃがらのおしとやかさは隠せにゃい。にゃもんで、『にゃらばここはいっそのこと、お姫様で通してみたら?』と閃いての発言にゃ。
《可憐な乙女の幼児?
ミアンちゃんたらぁ。誰も反論しないと思って、いいたい放題なんだから》
《可憐にゃ乙女のイオラにゃんと暮らしているネコの幼児、の略にゃとしたら?》
《あら、ごめんなさい。いいのよ、ミアンちゃん。真実なら幾らいっても》
「あのねぇ、君ぃ」
闘いの手、いや、前足を休めることにゃく、『呆れた』といわんばかりの口調と顔をこちらへと向けるミクリにゃん。
「今喋った、『ほら。見ての通り』から『思うのにゃけれども』までの言葉の間だけでも、十二にんもの敵を仕留めた化けネコがなにをいっているのかなぁ」
「にゃら、やっぱり」
「うん。ダメだよ。貴重な戦力だもの」
「そうか。お姫様にはにゃれにゃいのにゃん……ううっ」
心の嘆きが瞳を濡らす。これぞ乙女の真骨頂にゃん。
(にゃんとも切にゃいこの胸のうち。一体どう晴らせばいいのにゃろう……うん?)
悩む間もにゃく、次々と襲いかかる敵、敵、敵の大群にゃ。
(そうにゃ。これにゃん!)
「ぜぇんぶ、あんたらが悪いのにゃん!」
がぶがぶっ! ざくざくざくりっ!
ざっくりざくざく! がぶがぶがぶりっ!
手当たり次第にやっつけていたら、いつしか気分は、すうぅっ、と爽快。
「ぶふふっ。怒りをぶつける相手が居て良かったにゃあ」
ウチのそばにも、くすっ、と笑い声が。にゃもんで振り向いてみたらにゃ。
「今泣いたネコがもう笑っているね」
遠慮の欠片もにゃいミクリにゃんの言葉に、ウチは澄ましてこういい返したのにゃ。
「ネコは変わり身が早いのにゃん」
《ミアンちゃんが、でしょ?》
《ううん。ほら、『ネコの目のように変わる』とかいうじゃにゃいの。それとおんにゃじ。心もまた変わるのにゃん》
ヒイキ目で見にゃくともウチらは善戦したと思う。思うのにゃけれども……、倒しても尚、またどこからか現われ、一向に数の減る兆しの見えにゃい相手ではいかんともし難い。ウチにゃって精一杯、野生ネコに成り切って応戦し続けてはみたもののにゃ。所詮は多勢に無勢。徐々に追い詰められ、青息吐息の状態に。他の友にゃちは、と見回しても、みんにゃがみんにゃ、大差にゃいお姿にゃ。一方、敵は、といえばにゃ。自分らが有利とみたのにゃろう。『この際、一気に片をつけたろにゃん』とばかり、最初の頃のようにシュークリーム弾をやたらと連発する輩が次第に増えてきたのにゃ。
「もはや勝ち負けじゃにゃい。いつまで持つかにゃ」
とにもかくにも相手が多すぎて味方の姿がどこにも見えにゃい。さっきまで近くに居たミクリにゃんでさえもが、今やごった返した敵の中で目にすることが出来にゃいありさま。
(ここまでかもにゃ)
悲壮感漂うウチの心に、霊覚交信を介して一つのメッセージが。
《ワタシはイオラ。天空の村のイオラ。イオラの森のイオラ。
でもって、イオラの木のイオラ。それから、ええと、ええとぉ……》
《やかましいのにゃん》
『準備が整いました。いつでも作戦を実行出来ます』
「やったにゃん!」
小躍りしたのはいうまでもにゃい。ただちにウチも交信を送ったのにゃ。
「みんにゃも聴いたにゃろう? 急いでここから立ち去るのにゃあ!」
おぉぅっ!
ウチを含め、みんにゃがみんにゃ、大急ぎで戦線を離脱。後方へと退避したのにゃ。
《ワタシはイオラ。どこをどう間違っても、『何万何千光年も先にある自分の星に行け』なんてムチャなメッセージは決して送らない、とぉっても、やさしい精霊……んぐっ》
《もうメッセージごっこは、やめにゃさい》
待ちに待った作戦の開始。知らせを告げた友にゃちの元へと引き返したウチらの目に映ったものは。
《間違っても、イオラにゃんじゃにゃい》
《うっ。なんてうかつなのかしら。ワタシとあろう者が、先を越されるなんて》
「これは……すっごいやぁ」
ミクリにゃんがため息を洩らすのも無理はにゃい。にゃんせ、総勢百にんのミリアにゃんがスタンバってたのにゃもん。
「時間稼ぎをして頂いて有難うございます。ここからは」
途切れた言葉。そして、ウチらひとりひとりの顔を見回したあと、『ふふっ』と小さく笑った声。誰もが戦慄を覚え、かつ、『また妄想をたくましくしたにゃあ』と予感したのに違いにゃい。
不幸は当たるもの。予感は即、冷酷無慈悲にゃ『事実』と相成ったのにゃん。
「宗教団体『正義の味方で行こう!』の教祖たる私にお任せ下さい!」
高らかに宣言するミリアにゃん。
(やれやれ。どうしようもにゃいのにゃあ)
いつもの『同好会』が格上げして『宗教団体』。頭の病気が進行した証拠にゃ。
(ここはひとりの友にゃちとして、戒めるのが筋というものにゃろうにゃあ)
「あの……ぶぐっ」
突如、後ろのほうから、なんにんもの手やら前足やらが延びてきてにゃ。ウチの可愛いお口を塞いでしまったのにゃん。
「ミアン君。今はやめたほうがいいよ。
味方ならいいけど、もし敵に回ったら」とミクリにゃん。
「あれは危険でありまぁすっ」とミムカにゃん。
「さわらぬ神に祟りなし。ここは『いわざる』に徹したほうがいい」とミロネにゃん。
振り向けば、どの顔も真剣そのもの。にゃもんでウチも今回ばかりは、こくこく、と頷かざるを得にゃい。
《可愛いお口? どれどれぇ》
《んもう、イオラにゃんったらぁ。そんにゃ風に、じろじろ、と見られたら、恥ずかしくにゃってしまうのにゃん》
《ネコ口のことかしら……。だったら、否定は出来ないわねぇ》
暗黙の了解、と受け取ったのにゃろう。ミリアにゃんはますます自信満々にゃご様子とにゃって、声高々に張り上げたのにゃん。
「友だち百にん出来ました。
正義は必ず勝ちます! いえ、必ず勝つから正義なのです!」
(にゃにをいいたいのにゃん?)
理屈もにゃにもさっぱりにゃん。『興奮気味にゃせいもあるのにゃろう』と察して大目にみようとしたのにゃけれども、一呼吸置いて続けた言葉がこれまたいけにゃい。『ノリに乗って』みたいにゃ感じの居丈高にゃセリフとにゃってしまったのにゃん。
「正義は我にあり。これから行なうは正義であり、なんびと足りとも、とがめ立ての言葉を口にすることが許されない行為なのです。
とはいえ、私にも慈悲の心はあります。頭をたれて全てを謝罪し、かつ悔いあらためるというのであれば、特別の温情をもって助けてやらないこともありません。
さぁみなさん。謝罪する気持ちがあるというのなら、直ちに進撃を中止。その場にひざまずきなさい」
どどどどおぉっ!
ばさっ! ばさっ! ばさっ!
演説に心打たれ、思わずしゃがみ込む。……にゃんて殊勝にゃ翼ネコは誰ひとり見当たらにゃい。むしろ、勢いづかせてしまった嫌いさえあるのにゃ。
(火に油を注いにゃ格好にゃん)
ぎゅうぅぅん!
思いがけにゃいことが起こったのにゃ。敵の中で戦列を離脱。こちらへと向かってくる空のにゃんごがひとり。
「おおぅっ。判って下さいましたか」
両手を絡ませて感激のミリアにゃん。良く良く見れば、目までうるうるにゃ。
「さぁこちらへ」
まるで聖母かにゃにかのように、両手を広げ、優しい微笑で迎え入れようとしている。
と、その時にゃ。
ウチは聴いたのにゃん。ううん、ウチにゃけじゃにゃい。間違いにゃく、みんにゃも。
『ばぁぁかぁっ!』
ミリアにゃんに面と向かって叫ぶ、にゃんごの罵声を。
ウチらが日常使っている『アホ』をはるかに超えた蔑みの言葉を。
でもって見たのにゃん。
べちっ。
『とんでも教祖』のお顔にシュークリーム弾がぶつけられるさまを。
「ばぁぁかぁっ!」
もう一度、おんにゃじ言葉を繰り返すとにゃ。あとは振り向くことにゃく、さっさと自分らの戦列へと引き返していったのにゃん。
《まあぁ! なぁんか今の今になって、やぁっと手に汗握る瞬間が訪れたようなぁ》
《面目にゃい。こんにゃお話で》




