第九話『ワタガ神、降臨にゃん!』のその④
第九話『ワタガ神、降臨にゃん!』のその④
ともあれ状況は極めて厳しい、といっていいと思うのにゃ。巡り合った喜びにいつまでも浸っているわけにもいかず、ウチらふたりは再び前足でサクサクし始めたのにゃ。とはいえ、ひとりぽっちの時に較べれば、気分は穏やかそのもの。そりゃそうにゃ。横を見れば、振り返ってくれる、『どうしたの?』って声をかけてくれる、親しい仲間が居るのにゃもん。
ウチは足をとめることにゃく話を始めたのにゃ。
「ミクリにゃんは出口が判るのにゃん?」
「ううん。がむしゃらに進んでいけば、なんとなると思って」
「にゃら、ウチとおんにゃじにゃ」
「ふぅぅん。やっぱり、ボクたちって相性がいいんだねぇ」
本来にゃらば、不安が募っていくはず、の、こんにゃ会話も今は楽しくてたまらにゃい。にゃんにゃんと現実感が薄れゆく中、あのイヤにゃ笑い声がどこからともにゃく聞こえてきたのにゃん。
『ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっ!』
驚いたことに、白の世界が一瞬で黒の世界へと変貌したのにゃん。
ぎろり。
目の前には、忘れようとしても想い出せない、じゃにゃかった、忘れようとしても忘れられにゃい、『横長の楕円形で、黄色地に赤の真ん丸』という、見知った一つ目が現われたのにゃん。
「どうあがこうが、お前たちはもう自力では出られない。あきらめて…………なんだ、貴様たちか」
声色もにゃ。
「レイアにゃん!」
「レイア、お前かぁ!」
一度でも遭ったことがあるのにゃら、誰でも気がつく。ところがにゃ。
「知らぬ。なにを隠そう、我はワタガ神だからな」
目ん玉があさってのほうを向いている。理由は、さっぱりのぱり、にゃのにゃけれども、どうやら、素知らにゅフリを決め込むみたいにゃ。
「たった今、『なんだ、貴様たちか』といったじゃないか」
「はて? 忘れた」
ミクリにゃんのツッコミが、『忘れた』で、いとも簡単に退けられたのにゃん。
「我はワタガ神。それ以上でもそれ以下でもない」
「にゃら、あんたがこのゲームのボスキャラにゃの?」
「うっ…………まぁそういうことだ」
にゃんとにゃく不満そう。にゃらば、と勢い込むウチ。
「にゃあ、本当はレイアにゃんにゃろう?」
「だから、知らぬといっているであろうが。
妖魔館を乗っ取るつもりが、逆にとっ捕まって、操り人形にされてしまうようなアホなどでは断じてない」
思わにゅ告白に唖然とするウチ。
(まさか、こんにゃにアホにゃったとは……。
自分でバラしてどうするのにゃん)
ウチは大広間でヤカンにゃんの喋ったことを想い出したのにゃ。あれはたとえでもにゃんでもにゃかったのにゃん。
「妖魔館を手に入れようとしたのは、あんたにゃったの?」
「やれやれ。アホだねぇ」
ぶふふっ。ははは、と笑うウチら。『ちょっと、やりすぎたかもにゃあ』と気づいた時には既に遅し。聞こえてきたのは激怒の声にゃん。
「うるさい! やかましいっ!
違うといっておろうが。我を笑うなど、もはや勘弁ならぬ。ここからもう二度と出られないようにしてやる!」
「んにゃこといったってにゃあ」
「さっきヤカン君から聴いたんだけどさぁ ゲームのルールでは、にっちもさっちもいかなくなったら、大声で『助けてぇ』って叫べば、ここから出られるみたいだよ」
「誰がなにをいおうが関係ない。ここを支配しているのは我なのだから。我の許諾なくしては出られない。嘘だと思うなら……やってみるがいい。
ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっ!」
声が終わると同時に、黒い世界は元の白い世界へと戻ったのにゃん。
「ミクリにゃん。ウチらって本当に出られにゃいのにゃん?」
「さぁね。レイア君が今いったように、やってみれば判るんだろうけどさぁ」
「助かったとしても、ゲームオーバーとにゃってしまうもんにゃあ」
とどのつまりが、がむしゃらに進んでいくしかにゃいウチらにゃん。もちろん、正しい方向に向かっているとはかぎらにゃい。でもにゃ。身体を動かさにゃくては、ここから脱け出せる可能性は皆無といっていいのにゃん。
《まるで宝くじみたいね、ミアンちゃん》
《にゃにそれ?》
《当るとはかぎらない。でもね。買わなきゃ、絶対に当たらないの》
《にゃから、にゃんにゃの? それって》
《ふふっ。ご想像に任せるわ》
「にゃあ、ミクリにゃん。他のみんにゃはどうしているのにゃろう?」
「きっと、ボクたちと同じだよ。食べながらのほうが進みやすい、ってことぐらいは気がついていると思うからね」
「でもにゃあ。ミロネにゃんとミストにゃんは翅人型にゃろう?
ちぃとばかし無理じゃにゃいの」
「そういえば、今日のミムカ君も翅人型だったっけ。
……ということは、この三にんは動かずに留まっている可能性があるね」
「もうひとり。ミリアにゃんもにゃ。ネコ型とはいっても、『食べにゃがら前進』ってキャラじゃにゃいようにゃ気がするのにゃん」
「ミリア君に関してはなんともいえないなぁ。ほら、彼女ってさ。『目的の為なら手段を選ばず』みたいなとこがあるじゃないか。だからさぁ、いざとなれば」
「にゃるほどにゃ。すると、問題は……」
「一番の問題はミロネ君だね。今頃、ワタアメに巻きつかれて難渋しているんじゃないかなぁ。ミスト君やミムカ君と違って、特にこれといった霊技は使えないし」
「それはどうにゃろう」
「どうにゃろう、って……。
ええと、だったら、おさらいしてみようか。確か彼に出来ることっていったら、マザーミロネ様とのリンクを除けば、せいぜい飛ぶことぐらい」
「いんにゃ。あるじゃにゃいの。とっておきの奴が」
「とっておき?」
『その通りだ』
不意に一つの言葉が心に、ではにゃく、耳に届いたのにゃ。聞き慣れている、落ち着いた口調と低音の響きが強い声色。ありえにゃいと思いにゃがらも、声のするほうへと目をこらしてみたらにゃ。
「にゃ、にゃんと!」
「うっそぉ!」
目の前に立ちはにゃかるワタアメの白い壁。それをスクリーンとして、ミロネにゃんの姿が幻のように浮かび上がったのにゃ。
《訂正。イオラにゃんの姿が幻のように浮かび上がったのにゃ》
《イオラにゃん。ウチににゃりすますのはやめてにゃ》
「ミロネにゃん。あんた、しょちゅう、『神隠し』を使っているのにゃけれども、力切れしにゃいの?」
「えっ。……ああ。マザーの影ってこともあるのだろう。同じ妖体とはいってもオレは君たちと違って特殊な構造をしている。飛ぶのと同じぐらいの霊力しか消耗しない」
前に聴いたことがあるのにゃ。にゃんでも今のマザーミロネにゃんは、保存されていた数値データを元にして再生された霊体とかいう話にゃ。にゃもんで、その影霊であるミロネにゃんもレミロにゃんもおんにゃじらしい。
「へぇ。エコでいいねぇ」
「エコかどうかはともかく、おかげで奴の内部にも入り込めたし、色々なことが判った」
「というと、どんにゃ?」
「興味あるね。聴かせて」
「その前にだ。他のみんなとも合流したい。ミスト殿が『ぷよぷよ水』を使って脱出通路を造ってくれたから、君たちもそこへ直行してくれ」
「でもさ、ミロネ君。至るところ真っ白なこんな場所からどうやって?
どっちの方角に向かって進めばいいんだい?」
「面倒かもしれないが、君たちは今まで通り、食べながら進んでくれ。方角の指示はオレが出す。青い光が射し込むほうへと向かってくれればいい」
「ミロネにゃん。ウチらはそれでいいとして、ミリアにゃんとミムカにゃんは?」
「心配無用だ。どういうわけかは知らないが、ふたりとも一緒に居る。あちらにはもう伝えてあるから、多分、君たちよりも先に着けると思う」
「えっ、ボクたちよりも」
まさかの情報。ウチとミクリにゃんがどちらからともにゃく顔を見合わせたのはいうまでもにゃい。
「そんにゃに食べるのが速いのにゃん?」
「いや。君たちみたいに『手掘りしながら、かじってはなめて』を繰り返しているわけじゃない」
「というと、どんにゃやり方で穴を掘っているのにゃん?」
「ドリルだ。ミムカ殿が両手を、先のとがった、らせん状の硬質金属に変えて穴を掘っている。かなりの高速移動だから、ワタアメの再生を気にせずに余裕で進んでいける」
「にゃ、にゃんと!」
「しかもだ。ご苦労様なことに翅人型のまま……とはいっても、翅は仕舞い込んでいるが……、身体を大きくして、ミリア殿を背中におぶった状態での走行、とくる」
「なんだってぇ!」
「そんにゃあ!」
(あのミリアにゃんが、こともあろうに『小泣きじじい』にゃらにゅ『小泣きばばあ』とにゃっているにゃんて……)
しばし唖然としたのにゃけれども、
「でもにゃ。良ぉく考えたら、割と似合っているのかも」
「なんのかんのといいながら仲良しだしね。おまけにミムカ君ときたら、
『押しが強い相手に弱い』
『最初はどんなに突っぱねても、とどのつまりが、相手に同情して受け入れちゃう』
なぁんて性格だからなぁ。それも『アリ』かもね」
とまぁ思い直してミクリにゃんと頷き合ったのにゃん。
《ミアンちゃん。ワタシ、疲れたわ。そろそろここら辺りで》
《にゃら、さよにゃらぁ》
《誤解しないでちょうだい。誰も出ていくなんていっていないわよ。
ワタシも小泣きばばあとなってミアンちゃんの背中でおネムしようかしら、っていおうと思っただけ…………はっ!
なに『小泣きばばあ』って。ワタシ、なにをいっているのかしら。
ミ、ミアンちゃん。なんでもないわ。本当になんでもないから。気にしないで》
《イオラにゃんて、ひとりでうろたえるのが好きにゃの?》
光に導かれるがまま進んにゃ結果……、時間はかかったものの、ミストにゃんが造ったとかいう通路へ無事に到着にゃ。無色透明にゃ『ぷよぷよ水』で固められているから、もう、『食いにゃがら』は、やらにゃくてもいい。でもって都合のいいことはまにゃ他にも。下りにゃのと、ちぃとばかし『ぬるぬる』にゃもんで、滑って移動とらっくらくにゃ。おかげであっという間にワタアメを脱出、無事にザラメ砂漠へと降り立ったのにゃん。
「よっ。来たな」
真っ先に声をかけてくれたのがミロネにゃん。普段ぶっきらぼうにみえるにゃけに、ふとみせてくれる、こういうやさしい気遣いが、とぉっても嬉しくたまらにゃいのにゃん。
《な、な、なぁるほどねぇ。普段冷たい顔をしていたほうが、ほんのちょっと優しい言葉をかけただけでも、相手を、じぃぃん、とさせちゃうのだわぁ。目からウロコがはがれ落ちたとはまさにこのこと。なら、ワタシも早速。……ごっほん。
こらこら、ミアンちゃん。だらあっ、としているヒマがあったら、大掃除でもしなさい。
いいこと。ごみの一欠片だって見逃しちゃダメよ。判ったわね。
……どうしたの? 黙りこんで。さぁ。判ったなら、さっさと返事を。
……どうしたの? 急に行儀よく四つ足揃えてしゃがんで、……頭まで下げて》
《イオラにゃん。これでおいとましますのにゃん。長い間、ありがとうございましたのにゃん》
《ええっ! そんなぁ! 待ってよぉ! お願い。行かないでぇ!
ワタシが悪うございました。大掃除でもなんでもするから。ミアンちゃんの毛繕いのお手伝いだって、やれといえばちゃんとやるから。ワタシたちのそばに居てぇっ!
お願いよぉ! ミアンちゃあん!》
《にゃら》
《ふぅ。なぁんとか思い留まってくれたわ。……ワタシったら完全に墓穴を掘ったわね》
「お疲れ様」
ミストにゃんもねぎらってくれたのにゃん。こちらも普段は、無愛想、というか、表情をあまり表わさにゃいお顔。にゃのに今は、ほんのりと笑みを漂わせているのにゃん。
「やっぱり、みんな、もう集まっていたんだねぇ」
ミクリにゃんのいう通り、ワタアメ雲が拡がる空の下、ミーにゃん同盟が勢揃いにゃ。
(リーダーのミーにゃんが居にゃいのは残念にゃのにゃけれども)
みんにゃがみんにゃ、お互いの顔を見て、ほっ、としているのにゃ。
「いやあ、一時はどうにゃるかと」とウチ。
「本当本当。不安だったよねぇ」とミクリにゃん。
「なんとかなるものよ」とミストにゃん。
「そうでありますよぉ」とミムカにゃん。
問題は次にゃ。
「いざとなれば、手段はいろいろありますから。ねぇ、ミムカさん」とミリアにゃん。
声をかけられた、自称『森の妖精』は、振り返らにゃいばかりか、苦虫をつぶしたようにゃ表情にゃ。
「ねぇ、ミムカさん」
繰り返し声をかけられたもんでにゃ。さすがに無視出来にゃくにゃったと見える。振り返ると、きごちにゃい愛想笑いを浮かべて頷いたのにゃん。
(どうやら、にゃにかあったのは間違いにゃさそうにゃ)
「レイアにゃんのワナから脱出出来たわけにゃ」
「ふふっ。そうだね。今頃、悔しがっているんじゃないかなぁ」
ウチがミクリにゃんと話し合っていたらにゃ。突然、ミクリにゃんが話に割り込んできたのにゃ。
「レイア? ミアン殿、レイアがどうかしたのか?」
(そういやあ、ウチとミクリにゃん以外、知らにゃかったのにゃん)
「実はにゃ」
ことの次第を話したらにゃ。
「奴が関わっていたか。それは面白い」
「面白い? なんでさ?」
「上手くいけば、ミッションをクリアする役に立ってくれるかもしれない」
聞き捨てにゃらにゃい言葉にゃ。
「にゃあ。一体どうするのにゃん?」
「教えて教えて。ボクもすっごく気になる」
勢い込むウチらに、ミロネにゃんは意味ありげにゃ笑みを口元に浮かべて一言。
「取引さ」
「レイアにゃああぁぁん!」
「ボクたちはここだよぉ!」
ミロネにゃんにお願いされた通り、思いっ切り叫んでみたのにゃ。
『ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっ!』
予想違わず。レイアにゃんの不敵にゃ笑い声が頭上の白いワタアメから聞こえてきたのにゃん。
「よく逃げ出せたな。しかし、幸運もそこまでだ。そこもすぐにワタアメで覆い尽くしてやる。ふふふっ」
ワタアメの雲に浮かび上がるは、見慣れた黒いとげとげの翼にゃん。
「そんにゃことをしたら、またゲームに来てもらえにゃくにゃるのにゃよぉ」
「知ったことか。ゲームはゲーム。我は我だ。
我の邪魔が二度と出来ぬよう、今度こそ、息の根をとめてやる」
言葉が終わるや否や、レイアにゃんの一つ目が妖しく光ったのにゃん。
(ここもおしまいかもにゃ)
唯一の逃げ場もにゃくにゃる。『もう万事休すにゃ』と思ったその時にゃ。
「待て」
ウチらの頭上に飛んできたのは、いわずとしれたミロネにゃん。
一つ目と睨み合った感じのまま、しばし無言の時が流れたのにゃ。
「レイア。オレの事を覚えているか?」
先に口を開いたのはウチらの友にゃち。
「忘れるはずがなかろう。いつぞや我の個体を滅ぼした相手を。
貴様はマザーミロネの影だ」
「有り難い。おかげで説明が省けた。
さてと。どうだ、レイア。オレと取引をしないか?」
「バカな! 貴様なんぞに誰が」
「ちょっと待て。確かにオレはミロネ。マザーの影だ。
だが、シリアルナンバーは328。お前の個体を滅ぼした327ではない」
「どういうことか?」
「327は『狭界』という空間にて、とうに滅びを迎えている。
オレはあいつの後釜として新たに造り出された。記憶のほとんどを受け継いではいるが、同一の存在ではない」
「……そうか。奴は滅びたのか」
以前、ウチらは狭界へと引きずり込まれてしまったことがあるのにゃ。狭界の意志『メノオラ』のニャンポにゃんのせいにゃのにゃけれども、そこで327と328が対面。327は328にあとを託して滅びたのにゃん。
(ウチらが最初に声をかけたミロネにゃんは、もうどこにも居にゃいのにゃん)
もちろん、ウチも含めてミーにゃんの同盟のみんにゃが知っている事実にゃ。でもにゃ。こうしてミロネにゃんの口から、『同一の存在ではない』との言葉をあらためて聴かされるとにゃ。にゃんというかそのぉ、さみしく、つらく、切にゃいのにゃん。
ウチの思いをよそに、ミロネにゃんらの会話は続くのにゃ。
「話が逸れたな。もう一度聴こう。レイア、オレと取引をしないか?」
「取引? なんのことだ?」
滅びた、という事実はレイアにゃんにとっても重い意味を投げかけていたのにゃろう。
さっきとは違って、声がずいぶんと穏やかにゃ。
「この周辺だけでいい。オレたちが自由に動けるようにしてもらいたい。早い話が、ワタアメをどかして欲しいんだ」
「なにくだらんたわごとを」
「その代わり、この妖魔館の呪縛から貴殿を解放してやる。
どうだ? 悪い取引ではないと思うが?」
「なんと……うぅぅむ」
レイアが唸り声を上げる。どうやら、脈がありそうにゃ。でもにゃ。にゃかにゃか返事をしてこにゃいのにゃ。
「いわずとも判っている。
貴殿がそのような個体を選ぶとは考えにくい。恐らく、無理矢理閉じ込められたのだ。
出たくても出られないのだ。違うか?」
「……」
「といって自滅も叶わない、だろう?
やれるものなら、とっくにやっていたはずだからな」
「……」
「しかし、オレたちならば、ただちに解き放てる。自由の身にしてやれるぞ」
更に畳みかけてきたミクリにゃんの言葉に、レイアにゃんは、ぽつり、と返事を。
「……本当か?」
「マザーミロネの名に賭けて」
「……判った」
「ならば、これからオレたちがなにをしようと、じっとしているんだ。
いいな」
「なにをしようと? ……そうか。個体を滅ぼす気だな」
「イヤか。ならば、やめても」
「待て。
……いつまでもカゴの鳥はごめんだ。忌々しいが、いう通りにしよう」
「よし、いい子だ」
またしてもレイアにゃんの一つ目に怪しい輝きが。それでも、あとは何事もにゃく、白いワタアメから姿を消していったのにゃん。
レイアにゃんを見つめていたミロネにゃんの視線がウチらに向けられたのにゃ。
「みんな。聴いての通り、取引成立だ。早速これから作戦会議に取りかかろう」
この場に居る友にゃちが一斉に頷いたのはいうまでもにゃい。
「じゃあ、始めるぞ」
主催者が発した言葉に、お喋りは中断。全員の目が声の主へと注がれたのにゃん。
「時間が惜しい。まずはオレが調査した結果を聴いて貰おう」
ミロネにゃんの話を大ざっぱにまとめるとにゃ。にゃんでも、この空間には特殊にゃ気流の動きがあるんにゃとか。ワタガ神にゃんの周りをぐるぐると回りにゃがら、外へ外へと拡がっているそうにゃ。この流れにワタアメの糸が乗っかって、大っきにゃワタアメ雲を形造っているのにゃて。
「そこで一つ提案があるんだが」
ワタアメ造りの一役を担っている気流に対してにゃ。ミムカにゃんが得意とする『流与』の力を施してみたらどうにゃん? との策を持ちかけてきたのにゃ。外へ外へと拡がる流れを逆転させてにゃ。内へ内へと収束させるのが狙いらしい。どうしてそれがワタガ神にゃんをぶっつぶすのに繋がるのかは不明にゃのにゃけれども、『まぁミロネにゃんに任せておけば大丈夫にゃろう』との、にゃあんにも考えにゃい、他ネコ任せにゃ判断から、
「いいんじゃにゃいの」とウチは気軽に答えたのにゃん。
「でもさ」
ここでミクリにゃんが質問にゃ。
「それがばれて、ワタガ神がワタアメを出すのをとめちゃったら?」
「ワタガ神はレイアだ。とめはしない」
「レイア君がその気でも、カイラ、だっけ? ゲームの主催者が、『それじゃあ、ダメだ』とばかり強制的にとめる、なぁんてこともあり得るんじゃない?」
「出来ない。というのはワタアメ自体がもろいからだ。ワタガ神がワタアメを吐き続けているのは、単に、防壁を厚くしたいからとか、拡げたいからとか、だけの理由ではない。既に流したワタアメをリフレッシュしたいからでもある。増やすのとリフレッシュとを同時に行なっているのだ。切れたのが再生するのも、造り上げた雲を、ずぅっ、と維持出来るのも、全てはそれのおかげだ。だから、吐くのをやめたとしたら……、
たちまちワタアメの防壁は弱体化して消失。自分は丸裸となる。そうなれば」
「霊力が半減しているウチらでも、問題にゃく倒せる、ってわけにゃん」
もうこのミッションで三つ目。ミッションをクリアするたんびに霊力を回復してもらえる約束にゃのにゃけれども、それは始める前の九割にゃ。減り続けていることに変わりはにゃい。しかもにゃ。今回のミッションではワタアメの中でうろうろしすぎた。ひょっとすると、半減ぐらいじゃ済まにゃくにゃっているのかもしれにゃい。
まっ、それはともかくにゃ。
「ミロネ……。あなた良くそこまで調べたわねぇ」
ミストにゃんが目を丸くして、感心したように喋っている。いや、ミロネにゃんにゃけじゃにゃい。ミロネにゃんを見つめる誰もが、おんにゃじようにゃ顔つきにゃ。
(ここで照れ笑いの表情でも浮かべてくれたら、面白いのににゃあ。
ふぅ。ミロネにゃんたら、まるで無表情…………じゃにゃい)
目つきがにゃんとにゃく意地悪そう。でもって口元も、微かに、にゃのにゃけれども、笑みのようにゃものが浮かんでいるのにゃ。
この顔がどんにゃ意味を持つのか、を教えるかの如く、ミロネにゃんは言葉を続けたのにゃ。
「気流の向きを逆転することで、ワタアメはワタガ神自体に巻きつくようになる。結果、穴の全てが塞がるんだ。ワタアメを放っている穴だけじゃない。冷たい外気を取り込む穴も、内部の熱を吐きだす穴もさ。だから、もし仮に、そのままワタガ神がワタアメを放ち続けようとしたら、一体どうなると思う? タダでさえ今にも燃え上がりそうな熱を発している身体だ。あちらこちらに異常を起こし、ついには。
どうだ? この続きを自分たちの目で見てみたいとは思わないか?」
聴くまでもにゃい。他にこれといった妙案があるわけでもにゃし、ってことで、みんにゃ、こくり、と頷くとにゃ。
「ぶふふふふ」「ふふふふふ」「くすくすくす」「ほっほっほっ」「ひっひっひっ」
いつの間にか黒色の『ほっかむり』をしていたウチらの間で、意地悪めいた笑いが湧き起こっていたのにゃん。
《ねぇ、ミアンちゃん。気のせいかしら。なぁんとなぁく『悪だくみを話し合う悪党連中』っていうイメージなのだけれど》
《うんにゃ。イオラにゃん、否定はしにゃい》




