第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその⑥
第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその⑥
上空から、にゃにやら会話が。見れば、肩をそびやかしたミーにゃんの姿にゃ。
「えっへん!」
「うわっ。くっついちゃっているのが、またしゃしゃり出てきたわん。
で? 一体なにをそんなに威張っているのわん?」
「すっごいのは当ったり前わん。
だってミムカんは、アタシが終生のライバルと認めた女の子だもん」
「ふぅぅん。なら、そういうことで。お休みなさいわぁん」
「ちょ、ちょっと待って。アタシはもっと話したいことが……」
すぅっ。すぅっ。
(またひとりでふたりげんかをやっているのにゃん)
《けんかするほど、仲がいいっていうけれど……。
ワタシ、ミアンちゃんとけんかしたことがないわ。これっていけないのかしら。
ワタシとミアンちゃんはいけない関係……ぶふっ》
《あんた、ひまにゃの?》
ミムカにゃんも、めでたく勝利。ウチらの毛繕いも一応、終わりにゃ。
でもって気がつけば、グリグリは全滅。にゃもんで一同ばんにゃあい! ……にゃらどんにゃに良かったにゃろう。でもにゃあ。現実にはまにゃグリグリが、くねくね、しているのにゃん。はあぁ。にゃかにゃか自分の思い通りに、都合通りに、ことは運ばにゃいのにゃん。
《にゃにもウチらにかぎったことじゃにゃい。
生きている以上、現実の壁にぶち当たるのは、誰しも多かれ少にゃかれあるもんにゃ》
《そうかしら?》
《あんたは別かもしれにゃいのにゃあ》
「いざ、勝負!」
実はにゃ。ミムカにゃんの闘いを目にする前から、『にゃんか禍々しい霊波を感じるのにゃあ』と思ってはいたのにゃん。それが漂ってくる方角と声のする方向が一致したもんで目を向けてみたらにゃ。今度の戦士はミストにゃん。翅人型にゃのに砂地に足を下ろしているのにゃ。『にゃあんかいつもとイメージが違うにゃあ』と思って良く良く見れば、普段は紫色の霊服と翅が、ともに黒く染め上げられていてにゃ。おまけに黒い霊波まで放っている、といった始末にゃん。
「ふふっ。わたしは不吉の使者。もうあなたは逃れられない」
もちろん、ウチらに喋っているのではにゃく、グリグリににゃ。言葉の意味が判るのかどうかは別としてにゃ。相手は固まった姿で不吉の使者を見つめているにゃけ。
今や、お決まり文句とにゃってしまった言葉を口にしてみたのにゃ。
「にゃあ、ミストにゃん。そのセリフに、にゃんか意味でもあるのにゃん?」
「ないわよ。……あったら怖いじゃない」
即座に返事にゃ。『いつも通りにゃ』と納得にゃん。
「にゃら、その格好は?」
「雰囲気を盛り上げたくて。口先だけの女の子じゃないって、アピールしたかったの」
「あんたもいろいろと大変にゃあ」
「判る?
実をいうと、この格好をするだけで霊力がどんどん減っていくの。
もう闘う前から、ギブ(アップ)寸前、って感じかしら。ふぅ」
「あのにゃあ」
「それでも健気に振舞ういじらしさ。
……ということで、もういいから邪魔をしないで」
いうに及ばずにゃ。これほど自分に酔いしれている相手に、かける言葉にゃんてにゃい。
ミストにゃんは自分の前で両手を重ねた。もちっと詳しくいうにゃら、左手の拳の上に右手の拳を乗せたのにゃ。拳に穴を造っていることから、『棒みたいにゃもんでも差し込むのかにゃあ』と予想を立てたのにゃけれども、これが大ハズレ。逆に飛び出してきたのにゃん。
《あたったわぁ!》
《おめでとうにゃん。でもにゃにが?》
《なぁんか、さっきからここら辺がしくしくして……》
《食べ物にゃん!》
びしゅううぅぅっ!
(ふにゃ?)
握り拳の穴から出てきたのはぷよぷよ水。剣のように真っ直ぐに延びた、までは良かったのにゃけれども、とまったあとがいけにゃい。ぷよんぷよん、と震えるさまが、にゃんともプリティでユーモラス。『不吉の使者はどこに行ったのにゃん?』とお腹を抱えて笑えるぐらいにゃ。
……と思っていたらにゃ。
「氷化!」
にゃんと! 『ぷよんぷよん剣』が一瞬で、『氷の剣』とにゃってしまったのにゃ。
「覚悟しなさい!」
たったったったったっ!
剣を右横構えに携えて駆けるミストにゃん。自分のほうへと突っ込んできたグリグリを相手に、『先っぽすれすれでジャンプ』という見事にゃかわし方を披露。飛翔の力も加わって、敵の頭上を余裕で超える高さへ。
(にゃあんか先が読めてきたのにゃあ)
ネコにゃって未来を予測することが出来るかもしれにゃい。でもにゃ。知ることは出来にゃいのにゃ。予測はあくまでも予測。真実とにゃるかどうかは、実際、その時がきてみにゃいと判らにゃいのにゃん。
とまぁこれぐらいの分別は持ち合わせているつもり。でもにゃ。今回のように予想が的中したりすると……、『ネコにゃって少しぐらいにゃら未来が覗けるのじゃにゃい?』にゃどといった、おかしにゃ自信が芽生えてくる。自分の中に秘められた途方もにゃい力が覚醒した、みたいにゃ気にもにゃってくる。でもにゃ。長くは続かにゃい。世の中、上手ぁくしたもんでにゃ。今日はいい気分でも、明日は現実という壁に打ちのめされる。我に返るのにゃ。『自分は、たにゃのネコにすぎにゃいのにゃ』とにゃ。
《あら。自分を見くびってはいけないわ。仮にもワタシの命の欠片を与えているのよ。
奇跡めいたことの一つや二つぐらい》
《にゃんと! にゃら、えびふらいをこの場に出すっていうのも当然》
《ごめんなさいね、ミアンちゃん。世の中には無理なこともあるのよ》
《お喋りの途中で打ちのめされてしまったのにゃん》
一方のグリグリは、といえばにゃ。目の前の相手に逃げられたもんで、にゃあんにも出来ずに砂の大地へ、ずぼっ、と突っ込んで……と思いきや、敵もさるもの引っかくものにゃん。地面ぎりぎりの際どいところで、ひらりっ、と身を翻してにゃ。さもあとを追い駆けんばかりに勢い良く昇っていったのにゃ。
ところが……、この『勢い良く』が命取りとにゃってしまった。グリグリの頭が向かう先には、既に降下へと転じていたミストにゃんと、ミストにゃんが今まさに両手で振り下ろそうとしている氷の刃が待ち受けていたのにゃん。
「一刀両断!」
ずぶずぶずぶずぶずぶっ!
あえにゃくグリグリは真っ二つに。裂かれた先から、ぼろぼろ、と砂は砕け、ついには。
どっしゃああぁぁん!
砂地へめでたくお仲間入り、じゃにゃい。帰還したのにゃん。
右手のみで(刃先を下にした)剣を握り締めたミストにゃん。憂いを含んにゃ瞳を、きらり、と光らせてにゃ。
「わたしはミスト。弧高な氷の美少女剣士」
誰にいうともにゃしに、ぽつり、と呟いたのにゃん。
《孤高って、さみしさに打ち勝てる者でなければなれないわ。
ワタシが小さい頃、大精霊たちを片っ端からふっ飛ばしたのだって、今思えば、さみしさを紛らわす一つの手段としていたのかもしれないわね》
《にゃあ、イオラにゃん。今のあんたの発言を聴いて、大精霊にゃんらがこぞって抗議に来ているのにゃけれども》
最初は、『これも格好いいにゃあ』と思ったのにゃよ。でもにゃ。最後のセリフに不満が爆発にゃあ。
「ウチにゃって美少女ネコにゃん!
にゃあっ! ミクリにゃん、ミムカにゃん」
ただちに賛同の言葉が、と思いきや、いつまで経っても声がしにゃい。
(ふにゃ?)
どうしてかと視線を向ければ、ふたりとも揃って、きょとん、の顔。
(いきにゃりの大声で聴きとりにくかったのにゃろうか?)
『にゃら、もう一度にゃ』と力んではみたもののにゃ。にゃあんか顔が火照ってきてしまったのにゃ。にゃんとにゃあく決まりが悪くにゃったもんで、ぷい、とそっぽを向いて、ごまかしたのにゃん。
《ウチのシャイにゃ性格は治りそうもにゃいのにゃあ》
《シャイなのに、自分のことを美少女なんていうのかしら?
『にゃあっ!』なぁんて、半ば強制的な形で誰かに頷いてもらおうとするのかしら?》
《シャイにゃからこそ、変に力んで喋ってしまうのにゃよ。
イオラにゃんにゃって、ちゃあんと決めに決めた姿にゃら、絶世の美女じゃにゃい。
にゃら、この微妙にゃ乙女心も判るはずにゃん》
《あら。………………判るわぁ、ミアンちゃん。とおぉっても》
《態度が、ころっ、と変わったのにゃん》




