第七話『ネコーターで走るのにゃん!』のその④
第七話『ネコーターで走るのにゃん!』のその④
ミリアにゃんの落下をきっかけに、みんにゃがこぞって路上に細心の注意を払い出したようにゃ。それが証拠に誰もが今まで以上にくっきりとした姿。光沢がやたらと眩しいのにゃん。霊力を集中させているからに他にゃらにゃいのにゃけれども、それって裏を返せば、霊力をやたらと消費している、館に吸い取られている、ってことでもあるのにゃん。
(こうやって霊波を放てば放つほど、敵の思う壺にゃのにゃろうにゃあ)
にゃんとも歯がゆい思い。でもにゃ。どうしようもにゃいのにゃん。
「ねぇ、みんなぁ」
声を上げたのはミクリにゃんにゃ。
「こんな風にゆっくりと歩いてちゃ、ゴールなんてとても覚束ないと思うんだ。
どうだい? この際、レースみたいな感じに勢い良く駆けてみたら?
どんなワナが起きたって、速く走れば、あるいは、ジャンプをすれば、逃れられるかもしれないよ」
「確かに警戒ばかりしていては前に進めない……か。
よぉし。オレもやるとするか」
「そう。ミロネがやるというなら、わたしも」
「ミムカも、でありまぁす!
もう、ぐずぐず、やっているのに、あきあき、しましたですよぉ」
ミクリにゃんの言葉につられたかの如く、ミロネにゃん、ミストにゃん、それにミムカにゃんまでが賛成、とにゃればにゃ。
「ウチもやるのにゃん」
全員参加のレースとにゃった。
《ねぇねぇ、ミアンちゃん。見て見てぇっ。レースといえばレースクイーン》
《ぶふっ! あのにゃあ。やる気を殺いでどうするのにゃん?》
にゃあおぉぉん!
「にゃ、にゃんと!」
番狂わせというか、にゃんというか、自称『森の妖精』ミムカにゃんが、まさかのダントツトップ。独走態勢にゃん。猛追の姿勢を覗かせてはいるものの、ミクリにゃんとミロネにゃんは今一つ。だいぶ遅れての横並びの状態は変わりそうににゃい。
(まぁウチがエラそうにゃことをいえる立場ではにゃいのにゃけれども)
ふたりより少し遅れてミストにゃんが。それより更に遅れてウチが……にゃあんて、早い話がビリっかすにゃん。
「へへん! こういうメカもんの扱いはミムカの得意とするところでありまぁす。
もっともっと引き離してあげますですよぉ!」
いかにも余裕しゃくしゃく、といった感じで後ろを振り返りにゃがら駆け抜ける友にゃち。その手元辺りをミクリにゃんとミロネにゃんが、まぁにゃんというか、じっと見つめている、といったそんにゃ感じにゃのにゃん。
「あれっ? なんかボタンを連打しているみたいだよ」
「恐らく、『駆ける』だろうが、こちらはダメだ。
何度も押しているのに全然速くならない」
「じゃあ、なんでミムカ君は?」
「改造をした。そう考えるのが自然だな」
「森の精霊シャナ様から譲り受けた力だね。だったら、ボクたちには」
「どうしようもない。彼女に勝つ術はなにもない。
さすがだな。自称ではあっても、『森の妖精』。面目躍如といったところか」
《さぁてと。それじゃあ、ワタシもお色直しを》
《も、って……。ミムカにゃんのは改造にゃ》
《で? 披露宴はどこ?》
《にゃあんかマジっぽいのにゃあ。
ところで、と。結婚式は? いつ誰とやったのにゃん?》
《はっ! そういえば、まだ告られてもいないじゃない!》
《にゃから誰に、にゃん?》
《こうしちゃいられないわっ! ミアンちゃん、急がなくっちゃ》
《にゃから誰に、っていうか、どこに行くつもりにゃん?》
しかしにゃがら……、この優位、長くは続かにゃかったのにゃん。『後ろを振り返りにゃがら』という油断が命取りに。悲劇を誘ってしまったのにゃん。
「うわっ! またにゃん!」
道路が黄色く点滅にゃ。でもって間髪容れずに、
ざっぶうぅぅん!
横からくるのは、道路のへりにぶつかっては跳ね返る小物の波ばかりにゃ、とたかを括っていたのにゃん。にゃのに、ああそれにゃのに、突如、不自然にゃくらいの大波とにゃって、ミムカにゃんをネコーターごと、さらってしまうにゃんて。
《一寸先は闇にゃん》
《でもミアンちゃん。ひょっとして二寸先は光かも》
《にゃったら一寸先にゃって明るいんじゃにゃいの?》
《あっ!》
ぷちっ。
ウチとおんにゃじに、『とまる』を押したのにゃろう。みんにゃがみんにゃ、それぞれの場にとどまり、でもってウチの元へ、ぞろぞろ、と引き返してきたのにゃん。
「ミロネ君。またひとり脱落だよ」
「出る杭は打たれる、か」
「厄介だなぁ。前と違うワナを仕掛けてくるなんて。
ますますゴールしにくくなっちゃったじゃない」
今度は道路の右側。海面に浮かぶ『5』番のネコーターには、ぐったり、と身体を横たえているミムカにゃんの姿が。にゃんとも哀れにゃ。
……おかげで黄色い点滅が消えた、のにゃけれども。
《ミアンちゃん。『出る杭は引っこ抜く』って、どうかしら?》
《にゃんて乱暴にゃ》
ミリアにゃんに続いてミムカにゃんまでもが。ミーにゃん同盟の仲間をふたり、立て続けに失ったことで、いささか呆然自失気味のウチら。
と、そこへ、向こう側に輝いていた謎の光が近づいてきたのにゃん。
ねこんねこんねこん! ねこんねこんねこん!
「にゃにゃにゃにゃにゃ」
驚きのあまり、まともに声が出にゃい。例の『貧乏ゆすり』ともとれる奇音を響かせにゃがらウチらへと迫りくる浮遊物体は、ネコーターよりもはるかにでっかいサイズの黒ネコにゃん。しかもにゃ。背中には、くるくる、と回る黄色いプロペラ。いかにも、『こうやって、お空を飛んでいるのにゃよぉ』と教えてくれているようにゃお姿にゃん。
でもって……、ここから先は悪夢を見ているようにゃった。
ぐわあぁぁん!
大きな口を開いた、と思ったらにゃ。
ばらばらばらっ! ばらばらばらっ!
巨大にゃまぁるいものが落ちてきたのにゃん。
どしん! どしん! どしん!
でもって、道路に落ちるや否や、
ごろごろごろ! ごろごろごろ!
転がり出したのにゃん!
「にゃんにゃの? あれは」とウチ。
「見たところ、毛玉みたいだが」とミロネにゃん。
「紫と赤の毛を呑み込んだのね。でも良かったわ。無事に吐けて」とミストにゃん。
「あれって放っておくと、つまるからねぇ」とミクリにゃん。
……にゃあんて平和にゃ会話をしているひまにゃど、ウチらにはにゃい。
《ミーにゃんは食べてしまいたくにゃるくらい可愛いのにゃん》
《だからって、本当に、もぐもぐ、するのはやめてね。お願いよ、ミアンちゃん》
《うんにゃ。精一杯の『努力』を惜しまにゃいのにゃん》
のらりくらり、と最初は余裕で毛玉と毛玉の間をすり抜けていけたのにゃけれども、次第に数が大っきくにゃって、じわじわと寄ってきて、……でもってついには。
「し、しまったぁ!」
ぼがっ!
避けきれにゃくにゃって先ずは『3』番のネコーターが巨大毛玉と衝突にゃん。
「ミロネ! あっ、こちらも!」
ぼがっ!
気をとられた隙に、みたいにゃ感じで『6』番のネコーターも。二台揃ってあえにゃく海へ、どっぼぼぉぉん、と放り落とされたのにゃん。
(せめて一緒にゃら、ミストにゃんも満足にゃったろうに)
ミロネにゃんは道路の左側、でもってミストにゃんは右側と泣き別れにゃ。違う海面に自分らのネコーターとともに、ぷかぷか浮かんでいるさまが、これまたにゃんとも哀れを誘う。
(どっちかといえば、ミストにゃんの片思い、っぽい気がするのにゃけれども。
まっ、それはそれとしてにゃ)
……にゃどと、同情している場合じゃにゃい。というのも実はにゃ。ウチはミストにゃんの、ミクリにゃんはミロネにゃんの、直ぐ後ろに引っついていたのにゃん。
盾にしていたふたりが消えたことで、こちらも俄然ピンチにゃ。
《まぁ。ミアンちゃんったら、なかなかの策士じゃない》
《策士はミクリにゃん。にゃって余裕でトップに立つ実力があるのに、二番手に甘んじていたのにゃもん。ウチにゃんてお話にもにゃらにゃい。追いすがるので精一杯にゃん》
《いいじゃない。運も実力のうちよ》