第七話『ネコーターで走るのにゃん!』のその⑤
第七話『ネコーターで走るのにゃん!』のその⑤
毛玉の数が増え続けているもんで、避けるのも刻一刻と難しくにゃっていく。よろめきそうににゃりにゃがらも、ウチはにゃんとかミクリにゃんの隣に。
「どうしたらいいのにゃん?」
「このままじゃ、こっちがやられちゃうのも時間の問題だね。
しょうがない。こうなったら、一か八かの手でも使ってみようかなぁ」
「にゃにかいい考えでもあるのにゃん?」
「海に落ちる前、ミロネ君が交信で教えてくれた。
上手くいくかどうかは判らないけど、やってみる価値はあると思うんだ。
ミアン君のほうはどぉ? なにかいい考えはない?」
「いんにゃ。というか、あったら聴かにゃい」
「ふふっ。そうだね。
だったら、このまま避けられるだけ避けてくれないかなぁ。
出来るだけ、早く終わらせるつもりだからさ」
「うんにゃ」
ウチが頷くと、ミクリにゃんも頷いて、
「じゃあ、行ってくるから」
この言葉を残して前に進み出たのにゃ。転がってくる幾つもの巨大毛玉へ、物怖じすることにゃく単身向かっていくその雄々しき姿。ウチは目を見張らずにはいられにゃい。
《あら、意外に格好いいじゃない。ミクリちゃんって》
《まにゃまにゃ。これからにゃよ、格好いいのは》
ごろごろごろっ! ごろごろごろっ!
「よぉし、やるかぁ。それぇっ!」
ねこおぉぉん!
「にゃんと!」
ミクリにゃんはジャンプの力を利用して、『2』番のネコーターを巨大毛玉の一つに乗っけたのにゃん。
「まだまだぁっ!」
ぴょんぴょんぴょん。ぴょんぴょんぴょん。
「んにゃアホにゃあ!」
毛玉の間を拭うようにウチは走っているもんで、ちらっちらっ、としか目にすることが出来にゃいのにゃけれども、にゃんと、ミクリにゃんは毛玉から毛玉へと飛び移って、ウチとほぼ並んにゃ格好で進んでいるのにゃ。ミクリにゃんがすっごいのか、ネコーターがすっごいのか、議論の余地はあるのにゃけれども、とにもかくにも、たいしたもんにゃ。
《ミアンちゃんが、すっごいのよ。もう一心不乱に、とにかく食べるわ食べるわ》
《にゃんの話をしているのにゃん?》
……にゃどと感心していたらにゃ。
「ふにゃ?」
妙にゃ事態が発生。ぱらぱらっ、と道路に落ちてきた毛玉のどれもが、ミクリにゃんが乗っている毛玉めがけてぶつかってきたのにゃ。
ぼん! ぼん! ぼん! ぼん! ぼん! ぼん!
毛玉から毛玉へと渡っても、それは変わらじ。巨大毛玉は真ん中へ、ミクリにゃんへと集まっていく。標的とされているのは誰が見ても明らかにゃ。おかげで、といっていいと思うのにゃけれども、ウチのほうは道路の左端っこを駆けてさえいれば、巨大毛玉の脅威にさらされずに済むようににゃった。いくばっかの余裕が出来たもんで、自然とウチの視線はミクリにゃんのほうへ。
「狙われているんじゃにゃいの。危にゃいにゃよぉ」
直接に、では声が届きにくくにゃったもんで、『霊覚交信』へと変えたのにゃん。
「みたいだね。じゃあ、そろそろ始めようかなぁ」
「始めるってにゃにをにゃ?」
「ふふっ。見ていれば判るって」
ミクリにゃんはこちらに向けていた顔を前方へと戻したのにゃ。一つ、二つ、と毛玉を渡るにつれて、跳ねる高さが大っきくにゃっていくのがこちらからも見てとれるのにゃ。
(今までとは違う、ということはにゃ。にゃんかやるつもりにゃのにゃん)
果たして予感は的中したのにゃ。
終わってみれば、『良くもまぁ、あんにゃ上手くやれたもんにゃ』にゃあんて感心するくらいの、……いんにゃ。それでは表現が生温いにゃ。にゃらばっ……、
目の当たりにしたとは今もって信じられにゃいくらいの、奇抜にゃ作戦が展開されたのにゃん。
《作戦ねぇ。こんなのはどうかしら? 黒ネコに抱きついて、『愛してます』なんて》
《却下にゃん。というか、話の流れを良ぉく考えてから喋ってにゃ》
にゃにが起きたかといえば……まっ、ゆっくりと回想してみるのにゃ。
何度目かの渡りでジャンプしたミクリにゃんは、ネコーターを踏み台にして自分自身がジャンプ。はるか上空の黒ネコよりも高く飛び上がったところで、全身を青い毛並みに変えたのにゃ。
(技の戦士にゃ)
でもってドロウ(=霊力描線)を使った一筆書きを始めたのにゃ。以前、ウチの前で描いてくれたお魚にゃんは、いわれにゃければ判らにゃいほどの代物にゃったのに対し、今回はにゃかにゃかにゃ出来栄え。描かれたのは丸く握られたネコのでっかい拳にゃん。
「ふふっ。出来た出来た。お次は仕上げ、と」
ミクリにゃんの全身が赤い毛並みに。
(力の戦士にゃ)
「黒ネコ君! これでも食らえぇっ!」
後ろに、ぐい、と引いた右手の拳を、自分よりも下方に位置する黒ネコめがけて突き出したのにゃ。途端に、拳と黒ネコの間、斜め直線上に浮かんでいたドロウの拳がまるで命を吹き込まれかのようにゃ様相を。紅蓮の炎を身に纏い、そして殴らんとばかりに黒ネコへとまっしぐらにゃん。もちろん、相手も黙ってはいにゃい。顔を上げて次々と巨大毛玉を、飛んでくる拳めがけて吐いたのにゃ。
しかしにゃがら、所詮、毛玉は毛玉にゃん。炎の敵ではにゃい。次から次へと、ぶつかった瞬間、燃え上がって散り散りにゃもん。……そしてついに。
ぼがあぁん!
これがトドメとばかり、黒ネコの顔面に痛烈にゃるパンチをお見舞いしたのにゃん。衝突の勢いも然ることにゃがら、火力も相当にゃものにゃったのに違いにゃい。それが証拠に黒ネコはみるみる間に炎上。黒を紅く染めての火だるまにゃん。
『にゃにゃああぁぁん!』
炎の拳が、『自分の役割は終えた』とでもいうかのように幻とにゃって消えていくそばでにゃ。断末魔の叫びとしか思えにゃい鳴き声を大空に響かせにゃがら、黒ネコにゃったものの塊は落下。でもって、
ぐしゃああぁぁん!
路上に転がる『身から落とせば我が子同然』の巨大毛玉をも道連れに大破したのにゃ。
「ミクリにゃん、やったにゃあ!」
ウチの心が歓喜に踊ったのはいうまでもにゃい。
……でもにゃ。それも束の間にゃん。
ミクリにゃんが下り立った周囲に散乱する真っ白にゃ灰。炎に燃え尽くされた巨大毛玉の名残りが、諸行無常のわびしさを無言で物語っていたのにゃん。
《形あるものはいつか壊れる……あらっ。じゃあ、ワタシはどうなるの?
形すらないのよ。壊れようがないじゃない。
……ということは、たとえ天空の村が滅びたとしても、ワタシは宇宙のどこかで生き続けることになるのかしら。
うぉっ。恐るべき真実を知ってしまったわ。どうしたらいいのかしら?
ねぇ、ミアンちゃん。どうしたらいいと思う?》
《にゃにひとりでパニクっているのにゃん?》
いつの間にか『とまる』を押していたウチ。取り留めのにゃい思いに耽っていたウチへ、ミクリにゃんが、『終わったよ』と声をかけてきたのにゃ。
「どうだい? ボクの複合技は?」
鼻高々と、いかにも自慢げにゃ。しかしにゃがら、ウチの目からしても、今回はそれに見合うにゃけのことをしたのにゃ。とにゃれば。
「たいしたもんにゃ。ミクリにゃん、お疲れ様」
心を込めて労いの言葉をかけたのにゃ。
《今更こんなことをいうのもどうかと思うのだけれど》
《にゃんにゃの?》
《高く飛び上がってから路上へ下りるまでって、ほんのわずかな間よね?
なのに、本当にこれだけのことがやれたの? 信じていいの?
守護神たるワタシ、『イオラ』の名にかけて誓えるの?
……なぁんて野暮はいわないから安心して。ミアンちゃん》
《いっているじゃにゃいの》




