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第六話『パンドラの箱をめざすのにゃん!』のその①

 第六話『パンドラの箱をめざすのにゃん!』のその①


「先ずは二階に上がらねばにゃ」

 ということで……、

 館の入り口から見て左側のほうの階段をのぼることに。選んだ理由は特ににゃい。強いていうにゃら、たにゃの気まぐれ。それ以外の何物でもにゃい。

 目にも豪華にゃ赤絨毯が敷いてある曲がり階段を、とととっ、と駆け上がったのにゃ。

 右側の手すりは曲がりにゃがら二階の手すりへと繋がるものの、左側の手すりは二階に上がったところまで。館の横壁にくっつかんばかりの立ち位置でおしまいにゃん。そんにゃこんにゃで階段は上に行くにつれ、幅が広くにゃっていく。二階まではあっという間にゃ。ここからは白いぴっかぴっかの通路へと繋がっていてにゃ。見れば、二手に分かれて伸びているのにゃん。

 館の奥へと真っ直ぐ進むほうの両側には白壁が。左側の壁に一つ、ぽつん、と取りつけられた窓が、裏側が外壁にゃのを物語っているのにゃ。こちらには特ににゃにもにゃさそうにゃので、自然と足はもう一方へ。手すりに沿うように右へと歩を進めたのにゃん。

「まぁこんにゃ感じにゃろうにゃあ」

 一階で眺めたように、右側には白い手すりの柵が、左側にはドアが一つくっついている白壁が、ともに、ずずずいっ、と続いているのにゃん。通路の向こうは反対側の階段へと通じているもんで、そのまま進めば、一階へと下りられるのにゃ。にゃもんで、『にゃらば帰るのにゃん』と二、三歩足を動かしたものの、待てしばし。『用があるから上がったのにゃ』と思い直してにゃ。ドアの前で立ちどまることにしたのにゃん。


《すごいじゃない。『階段ぐるぐる地獄巡り』のワナにみんなが引っかからなかったのは、ミアンちゃんが機転を利かせたおかげなのね》

《ついうっかり、をしにゃかったにゃけにゃん》


「ここにゃん」

 目の前にあるはドア一つ。ヤカンにゃんの話が正しいとすればにゃ。ここを開いて部屋に入れば、どこかの空間に吹っ飛ばされるのにゃん。思わず、尻ごみをしたくにゃるようにゃ運命が待ち構えているのにゃけれども、ミーにゃんを救うにはこれしかにゃいのにゃ。

「諸君!」

 ミクリにゃんったら、いつににゃく厳かにゃ声を出しているのにゃ。にゃもんで、『これはにゃにか重大にゃお話かも』と思い、謹聴することにしたのにゃん。

 にゃのに……。

「じゃんけんをしよう!」

 がっくり。

 予想にゃにしにゃかった提案。にゃもんで思わず膝から力が抜け、四肢を拡げて、べたぁっ、と、うつ伏せ。『こんにゃことで砕けてたまるかにゃ』と、ぐいっ、と顔を持ち上げて見回してみれば、他のみんにゃも大差にゃいお姿にゃ。『ミクリにゃんにも困ったもんにゃ』と頭を抱えるところにゃのにゃけれども、それ以上の不満を今、ウチは味わっていることに気がついたのにゃん。

(お腹の毛肌に伝わるこの感触。どうにも好きににゃれにゃいのにゃあ)

 ケチって造った結果、かどうかは定かでにゃいのにゃけれども、残念にゃがら階段の赤絨毯って、ここまでは延びていにゃいのにゃん。にゃもんで、通路がムキ出しの状態。光沢の映える白さに加えて、つるつるっ、で、しかも硬いとあっては、ネコが転がるのにも寝そべるのにも倒れるのにも不適当。どうにもくつろぎにくい床にゃのにゃん。

 と、ここで頭に浮かぶは『遊び場』の草むら。

(恋しいにゃあ。早くこの邪魔っけにゃもんを『遊び場』からどけにゃいと)

『ミーにゃんを助けるのにゃ』に続いて、成さねばにゃらにゅ新たにゃ使命が加わったと、肝に銘じたウチにゃのにゃん。


《ミアンちゃん、じゃんけんをしない?》

《にゃんで?》

《ワタシが勝ったら、ミアンちゃんにはワタシの出番を確保する使命も追加されるの。

 どう? いい考えでしょ?》

《にゃあるほど。で、もしイオラにゃんが負けたら、永久不登板とにゃるのにゃ。

 よぉし。にゃら、いくにゃよぉ!

 じゃんけん》

《ま、待って。やめておくわ。そんな危険な賭けをやるだけの度胸なんてないもの》


 まっ、使命云々はともかくにゃ。

「ミクリにゃん! 今あんたはこの状況を、しっかと呑み込めているのにゃん?

 冗談をこいている場合じゃにゃいのにゃよぉっ!」

 ウチが叱りつけると、ミクリにゃんは慌てた風に右の前足を振ったのにゃ。

「違うよ。冗談なんかじゃない。

 まぁ早い話が、入る順番を決めよう、っていっているのさ」

「あっ、それならでありますねぇ」

 友にゃちのひとりは手を上げるや否や、ミロネにゃんに飛びついたのにゃん。

「ミムカはミロネとペアを組みますですよ。

 いいでありますかぁ? ミロネ」

「えっ。……ああ、別に構わないが」

 相手の首に両腕を回して哀願するようにゃまなざしを送っているミムカにゃん。顔が近いせいか、腰が引いた様子のミロネにゃん。そのふたりを、むっ、とした表情で眺めるミストにゃん。あたかも三角関係を思わせる構図にゃ。


《ミアンちゃんの尻尾をつかんで、引きずられていく感触を楽しんでいるワタシ。

 ミアンちゃんの背中で転げ落ちそうになりながらも、ごろごろしまくるミーナちゃん。

 でもっていつもの如く、『あんたらにゃあ。にゃんでウチがお散歩に行こうとするたんびにいっつもいっつも』とぼやいてばかりのミアンちゃん。

 これも三角関係かしら?》

《あのにゃあ。三にんにゃらにゃんでも三角関係と思ったら、大間違いにゃん》


(はて?)

 これほどまでに積極的にゃポーズを見せつけられたのにゃ。『ミムカにゃんもミロネにゃんのことが好きにゃのでは?』と誰しもが勘ぐって不思議じゃにゃい。現にウチも最初は素直にそう思ったのにゃん。でもにゃ。心のどこかで、にゃにかが違う、と訴えている。にゃにか心に引っかかるものを感じるのにゃ。これは一体……。

 考えあぐねるウチの耳に、ミムカにゃんの声が届いたのにゃ。

「やっほぉ! 了解が得られましたですよぉ。たった今、ふたりのペアが『決定』と相成ったのでぇす。めでたし、めでたし、でありまぁす」

 ……はっ!

「にゃ、にゃんと!」

 ががあぁん!

 ミムカにゃんが口にした『決定』の一言。続いてウチらを、ざぁっ、と見渡してから、顔に表われた、ほっ、とした表情。これら二つが、『にゃにか心に引っかかるもの』の正体をウチに悟らせてくれたのにゃん。

 そう。単に『好きにゃから』とかいう恋っぽい理由じゃにゃい。この場に応じた賢明にゃる選択をしたにすぎにゃいのにゃ。

 そう思い当たったウチが心に受けた衝撃はいくばかりか。

(……にゃけれども、今とにゃっては、もうあとの祭りにゃん)

 でもにゃ。まにゃ諦めるには早かったのにゃん。

「しまったぁ! こともあろうに一番の安全パイを」とミクリにゃんが叫べば、

「しかも一番と二番(の安全パイ)のふたりが一緒に。

 選択女王の名を馳せた私としたことが……、してやられましたねぇ」とミリアにゃんも後悔の念を吐露。

「ダメ。絶対に。やり直しを要求するわ」とミストにゃんまでが阻止遂行へ懸命の形相。

(しめた。これにゃら)

「みんにゃのいう通りにゃ。そんにゃ不意打ちみたいにゃアンフェアにゃやり方は許されにゃいのにゃよぉ!」

 とまぁそんにゃこんにゃで、ウチを含めた残り四にんの必死の抵抗が功を奏し、とどのつまりが順番を廃して、『みんにゃ仲良く一緒に』で落ち着いたのにゃ。

「あっ、いうのを忘れていたが」

 にゃんとも申しわけにゃさそうにゃ顔のミロネにゃん。

「恐らくこの館のせいとは思うが……、

 入った時点からマザーとのリンクが途絶えているんだ。

 というわけで、みんな。くれぐれもここに居る間はオレを頼りとしないように」

『ええっ!』

 ウチも含め、聴いていた全員が一斉に悲鳴にも似た短い叫びを。

 まっ、無理もにゃいのにゃ。

(保守空間マザーミロネにゃんのバックあってこそのミロネにゃんにゃ。にゃのに繋がっていにゃいとにゃれば、本当に本当の、たにゃのアホかも……)

 みんにゃがみんにゃ、ウチとおんにゃじ思いらしい。ほっ、とした様子のミムカにゃん……いかにも『ペアじゃなくて良かったでありまぁす』と思っている風にゃ……を除いては、誰もが、がっかりとした様子とウチの目には映るのにゃ。

(にゃあんか悲壮感が漂っているのにゃあ。にゃんとかしにゃければぁ)

「まぁいいじゃにゃいの。どうせウチらはミーにゃん同盟。類は友を呼ぶ間柄にゃ。誰も彼もが五十歩百歩の似たり寄ったりにゃもん。仲良し子好しでいこうにゃん」

 心に響くものがあったみたいにゃ。目の前の誰もが以心伝心をしたかの如くに、こくり、とお隣同士で頷き合ったあとは、揃ってこちらへと顔を向け、

「そうだね」「それもそうね」「そうでありまぁす」「そうですね」「そうだな」

 と、それぞれが賛同の意を口にしたのにゃ。

(いいにゃあ。気心が知れた者らの集まりって)

 心の底からそう思ったウチにゃん。


《ミアンちゃんが待たしても!

 絶望の淵からみんなを奮い立たせるなんて、まさに神の仕業としか思えないわ》

《にゃあ、イオラにゃん。一度、ネイルにゃんに頭を診てもらったらどうにゃん?》

《ということは、おでことおでこでくっつんこ、なんてシーンも当然あるってことよね?

 どうしましょうかしら、ワタシ。

 あっ、そうそう。それからあとのことだって、ちゃあんと考えておかないとね。

 さすがはミアンちゃん。ナイスな提言をしてくれたわ。ありがとう》

《ご主人様思いのウチとしたことが……、大しくじりをやらかしてしまったのにゃん》


「直ぐに入ってもいいのにゃん?」

「さぁ?」

「いや、ミクリにゃんに聴いているわけでは……ふにゃ?」

 きょろきょろ。

 ウチらの頭上で翅を動かすことにゃく、ふわふわ浮いていたご仁が居にゃい。

「ミクリにゃん。ミーにゃん、じゃにゃかった、ヤカンにゃんを知らにゃい?

 どっこにも姿が見えにゃいのにゃけれども」

「おトイレにでも行ったんじゃない?」

「妖精にゃのに?」

「君だって行くだろう?」

「あのにゃあ。ウチが行くのは生前がナマネコにゃったからにゃよ。

 昔の習慣を引きずっているのにゃ」

「そういやあ、そうだっけ。

 ……にしてもさ。ふふっ。そのナマネコっていい方、面白いねぇ。ボクもこれからはそういおうかなぁ」

 変にゃところでウケを買ってしまう。ウケ狙いで喋ったわけじゃにゃいことがにゃんとも無念にゃ。


《ナマネコとくれば、お次はヤキネコかしら?

 青のりをぱらぱらと散らして》

《にゃあんか、やたらと焼きそばが食いたくにゃってきたのにゃあ》


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