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399 二色合一

「光の神勇者コーリーン=カレン!」


 まずは私、善なる光の女神インフレーション様の一部を分け与えられた私は、自身が光り輝く旭日のごとき神勇者となる。


「火の神勇者カタク=ミラク見参!!」


 ミラクちゃんは火の神ノヴァ様の力を得て、肉体から炎を発し、みずから熱く燃え盛る。

 さらに……。


「水の神勇者レ=シルティス! ライブスタートよ!!」


 水の神コアセルベート様から力を受けたシルティスちゃんは、それこそ全身が青龍のごとく透き通っていて、静かだけとも神秘的。沈黙の重みがあった。


「不肖ゴンベエ=ササエ! 地の神勇者として斬り刻みますだす!!」


 私たちの中でもっとも驚くべき変化を見せるのがササエちゃん。

 可愛い少女だった体が、神勇者となることで艶熟し、生唾飲み込むような大人の美女となる。

 肉弾特化の地属性としてもっとも動ける年代に強制成長させたということだけど、ただ成長しただけであそこまで巨乳になるものなの!?

 そして……。


「風の神勇者トルドレイド=ヒュエ。舞い忍びて狙い撃つ……!!」


 ヒュエちゃんも神勇者となった。

 様子は静寂。しかし常に彼女の髪をなびかせる風は、彼女の中から出ている。

 凪いではいるけれど、必要となれば今すぐにでも吹き荒れる、暴風を孕んだ積乱雲。

 それが風の神勇者となったヒュエちゃんの印象だった。


「やったね! ヒュエちゃんも神勇者になれた!」

「かたじけない。これも皆様と……、兄上のお陰でござる」


 ?

 ともかく、ここに五人の神勇者が終結した。

 決戦の準備はまさに整った。


「……フン、存在自体が無駄な連中は、することも無駄でしかないですね」


 対するアテスは、なおも侮蔑の感情しか表に出さない。


「四元素ごとき下級神や、私の片割れの力を借りようと、完全存在となったルシファーに勝つ可能性など毛ほどもないのです。その程度も理解できないのだから人間は罪深い……」


 しかし言葉とは裏腹に、彼女の手足たるルシファーは十二枚の翼を余震のように揺らす。


「だがいいでしょう。私の計画は既に成りました。愛する方はこの手の中にあり、あとはこの世界を消滅させるのみ。数百年を懸けた大望がようやく成就したのです。お祝いとして自分にご褒美を上げてもよい」

「…………」

「世界を終焉させる前に、この世界の希望たるアナタ方をブチ殺せば、人間どもの絶望はより深いものとなるでしょう。そうして人間どもに、必要以上の絶望を与えてから消し去る」


 それこそが……。


「私の最高の快楽。まさしく自分へのご褒美ですね」

「この変態女が」


 ミラクちゃんが唾棄しながら進み出る。


「人の苦しみ悲しみを見て愉悦を感じるなど性格が捻じ曲がっている証拠だ。そういうバカは一度ぶん殴って、自分自身の体に痛みを教えてやるに限る」

「そうね、自分が痛みを感じたことがないから、他人の痛みに同情できないのよ」

「おバカさんを教育してやるのも勇者の務めだす!!」

「我ら五人で心行くまでボコボコにしてやろうぞ」


 皆の士気も格段に上がっている。

 そして火蓋は切って落とされた。


「『プレデアス・バースト』!!」


 真っ先に仕掛けたのはミラクちゃんだった。

 火の神気攻撃『フレイム・バースト』の神勇者強化版『プレデアス・バースト』。

 それこそ街一つ丸ごと包み込みそうなほどの大火が、半蛇巨人に襲い掛かる。

 しかし……。


「愚か愚か」


『プレデアス・バースト』の大炎は瞬時にして消し去られてしまった。

 ルシファーが放った巨大水流の前に。


「アナタたちはもう忘れたのですか? 今のルシファーが全属性を備えた完全体であることを」


 巨大水流を放った、ルシファーの背中を飾る六対の翼のうちの一対。

 透明皮膜の水の翼。


「地水火風光闇。今やすべてがルシファーの武器なのです。アナタたちが無駄な攻撃を繰り返したところで、その弱点属性で相殺すればそれで済む。今のようにね」


 火には水。水には地。地には風。風には火。

 四属性にはそれぞれ得意とする相性と苦手とする相性が存在する。

 その関係性を巧みに突かれて魔王さんたちも敗北した。


「光属性を操るカレンさんだけは弱点がありませんが……。ま、力押しするだけで充分に勝てる相手です。だからアナタたちのしていることは終始無駄だと言っているのに。本当に人間とは愚か……」

「『プレデアス・バースト』!!」


 それでもミラクちゃんは、果敢に神の大火を噴き上げる。

 しかしそれよりも早くルシファーは水の盾を張って大火を堰き止める。


「何度愚かと言っても足りませんね……。人間は何故学ばない、同じ間違いを繰り返す?」

「おおおおおおおおおおおおおおおッッ!?」

「そして何故、こんな愚かな生き物をあの方は愛し続けるのです? それこそ人間どものもっとも大きな罪。やはりアナタたちにはハッキリとした断罪が必要です」


 水の盾でミラクちゃんの炎を止めたまま、アテスの瞳が怪しく光る。


「世界もろとも一挙に消し去るのではつまらない。あの方から愛された罪を、その前にしっかり償いなさい」


 バチリッ!!


 水の盾を何者かが貫いた。


「えッ!?」


 驚きの声を上げたのはアテスだった。

 みずからの勝ちをまったく疑わない状況から、一転。


「ぎゃああああああああああああッッ!?」


 水の盾を貫いた何者かが、ルシファーもろともアテスの全身を感電させる。


「うぎゃああああッ!? 何? 何よ!? 一体何が水の盾を突破して……!?」


 ルシファーの張った水の盾は、今も傷一つなく敵味方を遮っている。


「相性から見て火の勇者の仕業じゃない。では他のヤツ? 相性的に水に強い地の勇者が何かしたの? でも今ビリリと来たのは……!?」

「そう、『雷』の力だ」

「!?」


 水の盾越しに、私たちは告げる。


「『光』の力と『火』力……」

「二つ合わさり新生せよ!!」

「「神勇者版『火光神雷』!!」」


 放たれる雷撃が、水の盾を貫通してルシファーを襲う。

 神勇者化して遥かにパワーが上がった雷撃は、あの巨大モンスターにも充分通じる。


「ぎゃあああああああッ!? 雷撃!? 雷撃ですって!? そんな属性あるわけが……!?」

「複合属性です」


 私たち勇者が、これまでの戦いで何度も使ってきた切り札。

 二人の勇者が協力して生み出す、属性と属性の融合変化。

 この力は過去、何度も私たちを助けてくれた。


「私の光属性と、ミラクちゃんの火属性を合わせて生まれる属性は『雷』」

「電撃は水を伝導し、お前の張った水の壁も容易く貫通する。複合されることで属性の相性が完全に塗り替えられるのも複合属性の強みだ」


 負ったダメージでルシファーの神気が乱れ、水の盾も保持できずに流れ落ちる。

 そこからあの人たちの前に現れた。手を繋ぐ私とミラクちゃんの二人。


「久々の複合属性だったが、当たり前のように息ピッタリだな!」

「そりゃそうだよ! 私とミラクちゃんなんだから!」


 思えば初めて複合属性を行ったのもこの二人の組み合わせだった。

 魔王さんたちとの戦いは単独で戦うことが多かったからしばらく出番がなかったけれど。

 多くの困難を乗り越えて鍛えられた絆。神勇者として段違いのパワーアップを果たした以上。複合属性も遥かに威力を増している。


「おのれ……! 生意気な人間どもぉぉーーーーッ!?」


 うわ、アテス怒った。

 でもいいの? 怒って視野を狭めたら。


「敵はカレンッちたちとミラクッちだけじゃないのよ!」


 さらに別の方角から、手を合わせた二人がいる。


「『水』の力と『風』の力!」

「二つ合わさり新生するのは……、『氷』!」


 シルティスちゃんとヒュエちゃんの複合属性攻撃……!


「「『ブリザード』!!」」

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