第九話 冒険者ギルド「エリネルト仮出張所」
「やはりあの森を抜ける時には昆虫系魔物に要注意か。どこかに巣があるなら退治した方がいいな。裏の山脈にはロック系の魔物が多いらしいが、まずは周辺と森の魔物を討伐する依頼を多くって、こらっヤーブレット! まだ買ったばっかりなんだぞ、テーブルを汚すんじゃない!」
キノさんは冒険中に気がついたことを聞き取りながら、騒いでいる戦士に言う。
「なんだよぅ。あとでちゃんと相棒がクリーンしとくからよう。なあ」
「馬鹿ねえ。こぼすくらいなら、ちゃんと飲みなさいってことよ。もったいないでしょ」
「おお、そうかっ、かんぽあーい!」
他のテーブルもこんな感じでがやがやと騒がしい。
俺は真新しいファイアレッドウッドの一枚板で出来たカウンターで立ち呑み中だが、椅子やテーブルが足りないので床に座り込んでいるメンバーも居る。
定期便試験運用の護衛依頼を果たした俺達は、冒険者ギルドのエリネルト仮出張所にて乾杯中だった。キノさんが達成祝いにエールを振る舞ってくれたんだ。
もちろんこれくらいじゃ足りないので、この後は村の飲み屋になだれ込む予定だ。そうすることで村にもお金が落ちる。そうするとまた村が発展するというわけなのだ。
「まったく。冒険者と来たら」
そう言いながらもキノさんは怒っていない。冒険者が元気がいいのは充分しっているだからだ。
「ははっ。騒がしいけど、やっぱり冒険者ギルドは冒険者が居てこそですね」
そう言って笑ったのはコルポさん。
キノさんの後輩で元冒険者のギルド職員だ。ジュラーハからの転勤でエリネルト村出張所の所長になる。
キノさんはアンファングからこの村の開設指導に来ている。言うならば開設スタッフというところか。さすがキノさん有能だぜ。
「ところで、あの御仁はいったいなぜ?」
入口の外にたたずんでいるのは青年騎士ジョシュアである。
幸い森の魔物の餌食にもならず、むしろ役になってくれて、先ほど無事に依頼達成の金をギルドにもたらしてくれたわけだ。
「レイナに付きまとっているんです」
嘘ではない。端的に述べすぎたかもしれないが。
レイナは女性冒険者と別のテーブルで話している。
「えっ。なんだいそれは」
驚いているコルポ所長。
ここで、にゃっと言ってくれないギルド員なんて……いや、そういう問題じゃないや。
俺は簡単に話した。
「手紙の配達人ですが、受け取り拒否をされたのに、しつこく付きまとっているんです」
嘘ではない。客観的事実を端的に述べただけだ。
「えっ?」
キノさんはますますわけがわからないという顔をしているが、残念これ以上の説明はできないのです。
「キノさん。コルポさん。すいません、また後でっ」
何故なら。
「ではみなさん、移動しますよー。コルポ所長、キノさんごちそうさまでした」
ロデックさんの声にごちそうさまをバラバラに唱和しつつ、俺達はぞろぞろと村の酒場へ移動したのだった。




