第24話 冒険者ゾラ
昔な。ある国に、農士ってのがあったんだよ。
兵士身分だが、実際は農奴だ。
その国では領民を開拓に強制従事させることは原則的に禁止されてた。
開拓しようとする場所は魔物が多くて危険だったりするからな。
だが、あるクソ領主が思いついたんだ。
農家の三男や四男どもを徴兵して兵士にしたらいいじゃないか、そしてどこかで訓練をさせる。
そこがたまたま開拓地だったら?
何も問題は無い。平時には開墾させ農作業をさせたらいいと。
領主には兵士の徴用権があったんだ。
そして徴用されたやつらは強制的に開拓村に送られた。開墾して税収が上がるまでそこから出ることは許されない。逃げれば軍隊逃亡とみなされる。
農士の誕生だ。
法の裏をかいた手だ。
やがて徴用権を持っている大領主達はこの方法を真似しはじめた。
そうやってできた開拓村に俺とグリアスとジェイがいた。
あちこちから集められたんだ。
15の時だったかな。
俺達が集められた時は既に開拓が始まって数年たってた。
開拓村って名前はついてるが、めちゃくちゃなもんだった。
魔物はばんばんおそってくる。収穫しても税として搾り取られる。
領主が派遣してくる村長や兵士に逆らったり逃げる奴が出ると、そいつの出身村や親族が罰せられるんだ。
村の皆はどこから徴用されたかは口にしなかった。
出身地や親族については領主が記録簿を持ってるんだけどな。
前に、逃亡した農士が友人の家族に助けを求めたことがあってな。捕まってその家族も友人も罰せられたんだ。逃亡者を助けたって罪でな。
だから皆、信用している者同士でも自分の出身地や親族のことは言わないし聞かなかった。
開拓農士のやつなら誰もが思ってた。領主が記録簿ごとドラゴンに焼き殺されちまえばいいのにって。
俺たちは何年も働いた。
村を出られる日までがんばろうって。
いつか自由にどこへでもいける自分達を夢見てた。
俺達は生き延びた。
森で採取をしたり魔物を倒して内緒で商人へ売って金に換えることでだ。
その金で物資を買ったりして暮してたんだ。
だが俺達の村が順調に開拓を進めたおかげで、クソ領主に目を付けられちまった。さらなる開拓命令と税がかかったんだ。
領主達が税収をあげようと開拓村を作っては徴用した者達を送り込んで酷使している。
やっと王宮も動いたらしいが遅すぎた。俺達には関係が無かった。限界だった。
魔物が人の集落を襲うことがある。
開拓するような場所は特に魔物が多い。
俺達は早めに討伐していたし、魔物の襲撃があっても撃退してきた。
だがその時はあえて魔物を狩らずにいた。
増えた魔物が村を襲撃してきた時、俺達は撃退せずに村に引き込んだんだ。
領主から派遣されて、俺達から搾り取った税収で自堕落な暮らしをしていた村長や兵隊は、あっという間に魔物にやられちまった。
魔物の襲撃を利用するのは俺達にとっても危険な賭けだった。
村がめちゃくちゃになる。
死ぬやつも出るだろう。
10年かけたものが無になる。
それでも農士として死ぬよりマシだ。
魔物の暴走によって俺達は全員そこで死んだことになってる。
そうやってやっと村を出られたんだ。
村の皆はあちこちに散っていった。
俺達三人は25才になっていて、冒険者になるためにこのアンファングに来たんだ。
遅くからなった冒険者だからな。必死だった。
俺達はブラウオリゾンっていう名のパーティを組んだ。
知ってるか?
大陸をずっとずっと歩いて行くと青い地平線があるんだと。
いったいどういうことなのかわからねえが。
いつかそれを見てみたいって思ってな。
2年後には俺はBランクになってた。
ジェイのヤツもBランクのレンジャーだ。
だがグリアスはどうしてもCランクに上がれなかった。
あいつは獣人の癖に優しすぎるんだ。
剣を振るにはどっかで割り切らなきゃいけねえ。それができなかったんだ。
Cランク昇格試験を10回受けて駄目だった。これはもう諦めるかどうするかって時だった。15年ほど前か。俺達は三人で受ける最後の依頼のつもりで護衛依頼を受けた。
商人の護衛だ。
物資と買取り用資金を馬車に積んで俺達は出発した。
そして話したとおりだ。
密輸商人だったが証拠が無い。
ジェイは消えた。
俺とグリは預けてた保証金を失った。
冒険者ギルドの掟を破ったジェイは賞金首だ。
パーティ「ブラウオリゾン」は解散。
グリアスは冒険者をやめた。
俺達が出てきた国はなくなっちまった。
隣国に攻められてあっという間にな。
虐げられ濃奴とされている民を救うっていう大義名分を掲げて、王の一族を責め滅ぼした。
農士制度は悪法として廃止され、逃亡した者も大手を振って故郷に帰れるようになった。
でも帰らなかった。
俺は冒険者を続けた。
「そして俺達は再会したってわけだ」




