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第17話 J

なんだ?

森の中で何かが起こっているんだ。


彼は村への二度目の偵察を終えて森へ戻るところだった。

魔呪禍病が発生したことは町へ届け出ていて、解呪禍薬が届くかもしれないというのが一度目の偵察でわかっている。

村人は半数の人が罹っていた。

二度目の潜入はどんな治療をしているのか詳しく調べるためだ。

村人達は水分を多く取って安静にしているのがいいことをちゃんと知っていた。それから罹ったやつを隔離している。

これなら大丈夫だ。


傭兵どもで残ってるのは病気から自力で回復しつつあるやつか死にかけの病人だけ。残念ながらなかなかくたばらない一人はレルドだ。

罹患しなかった奴らは既に逃げている。

傭兵は金と自分の命が大事だ。見切りをつけてさっさと逃げて行った。

仲間を殺して金を奪い去らなかっただけでもマシか。

残ったのは病人ばかり。

俺は残った。

レルドのヤツは俺が逃げ出すんじゃないかって疑ってるのが顔にでていたが、ヤツが死ぬのかどうかは見ておきたいから残っているだけだ。

そして俺は偵察から戻った。

だが、やつらが居るはずの場所にいない。


「まさかあいつら――」

村へは一本道だ。

解呪禍薬が届けられるならそこを通るだろう。

待ち伏せして薬を奪うことができるかもしれない。

そう考えたのだろう。

この国を抜けるまで強盗や略奪は一切無しというのが取り決めだ。

だが、俺が村へ行っている間に行動したらしい。


「くそったれ!」

彼は走り出した。

レルドは魔呪禍病で正常な思考を失っているのか。

死の恐怖でなりふり構わなくなったのか。

ヤツはクソ野郎だがしぶとい。

罠を張って救援に来た者達を襲うくらいは考えるだろう。

彼は自分の甘さを呪った。


病気になった傭兵どもを村へ連れて行けば済む話なのだ。

村人の半数は罹っていなかった。

その人たちが病人の世話をしている。

罹らない人はまったく平気なのだから。

よそ者の病人が増えるのは嫌がるだろうが、金さえ払えば村人だって見捨てるマネはすまい。その交渉を俺がしようとレルドに話すつもりだった。

だがもう遅いかもしれない。

彼はとにかく森の中を走った。


三騎の走竜がいて三人の冒険者らしき男達がいた。

レルド達に襲われている。

彼は自分の目が信じられなかった。

「ゾラ……グリアス……」

ゾラとグリアスがいた。

15年たってもすぐにわかった。

三人で作った冒険者パーティ「ブラウオリゾン」の仲間。

かつて友だった二人。


「おい、どういうことだ! 略奪は無しだろうが。やめろ」

彼は弓を放っているヤツに問いただした。

「あ、あいつらの薬を奪うんだ。俺達のことを誰にも知られないために殺すんだ」

そいつは再び弓を放とうとしている。

「契約違反だ。やめろ」

ゾラが狙われている。

「うるせえ。やつらの薬がいるんだっ。だ、黙ってろ」

病人とはいえ、契約を破ったんだ。

「契約違反だ」

彼は剣を抜くとそいつを斬った。

矢はまったく別の方向に飛んでいった。

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