第15話 ランクアップはしたけれど
「よくやってくれたリョータ。これでレイナもいい冒険者になって行くだろう」
俺はギルドで支部長と話していた。
約束の依頼が終わった。
今日も一日レイナと森を歩いた。
レイナは俺が見落とした薬草を見事に発見すると素早く丁寧に採取して、大事に保存袋に入れた。
弟子が師を越える感動のシーンだ。
もうほんとに教えることはありません、むしろ俺に教えてくださいと言いたかったが、ぐっと堪えたよ。
「やっぱりすごいですよレイナは。素材採集も俺より上手いし、強いし」
「そうか。レイナは冒険者にはなったものの、どうも騎士としての気位が抜けなくてな。いろいろ問題を起してたんだが、他の冒険者達ともギルド職員との関係も良好になった。感謝するぞ」
「どういたしまして。ではお願いします」
俺はギルドタグを手にすると冒険者証を浮かび上がらせた。
名前:リョータ
種族:人族
所属:アンファング冒険者ギルド
冒険者ランク:F
依頼:指名依頼
レイナに薬草採取の指導 2週間
依頼者 ギルド支部長グリンド
「よくやってくれた。依頼完了だ」
支部長が依頼内容が書かれた部分に手をあててそう言うと。依頼完了の文字が記載される。
俺はこうして依頼を果たして支部長室を出た。
「依頼完了です。ルナちゃん。よろしくね」
俺はカウンターのルナちゃんにギルド証を渡す。
「はい、お疲れ様です。すぐ更新しますね」
レイナはルナちゃんともマールさんとも仲直り、俺も大銀貨3枚と1レベル上がった。
「フッ。いい仕事したぜ……」
俺がちょっとかっこつけているとルナちゃんに呼ばれた。
報酬の30万エルドはとりあえずは口座に入れておいて貰うけど、これだけあったら豪遊出来ちゃうな。
あ、そろそろ防具や武器を買い換えたほうがいいかな。
上機嫌な俺にルナちゃんが告げた。
「リョータさんって謙虚なんですね。規定依頼数に達しているからEランクに上げてからなら、支部長依頼完了でDランクになっていたのに。でもリョータさんのそういう真面目なところ、わたしステキだと思いますにゃ」
ふぇっ!
なんですとっ?!
「あ、ああ。ほら、俺ってそういうのズルできないっていうかぁ」
できるほどの頭が無かったともいえるけどぉ。
「はい。さすがリョータさんですにー。お互い新人同士頑張って行こうって約束しましたもんね!」
ああ~そんなキラキラした目で言わないで~
まさかすっかり忘れてましたとは言えなかった。
「お、おう! これからもお互い頑張ろうね!」
やっちまった。そうだよな。規定数をクリアしてたんだ。
ギルドからの帰り道の俺は嬉しいような悲しいような微妙な足取りだった。




