第13話 ところでなんで俺よりも
「リョータさん。そのすまないが、これを」
レイナはアンファングに帰ってきても逡巡している。
「だーめ。今日はレイナが提出すること。それも授業です」
「しかし……」
「大丈夫だよ。素材の扱いのように、丁寧にすればいいだけだよ」
「……わかった」
レイナは頷くと強い決意を瞳に宿しカウンターに進む。
そう、ここは夕方のギルド。
俺達は森である薬草を見つけた。
そしてギルドに戻った。
彼女が向かった先にいる人物は。
「マール老。過日は大変失礼な態度をとった。私の理解と尊敬の念が不足していたと深く反省している。すまなかった。どうか許していただきたい」
こないだとはうって変わって頭を下げて丁寧に謝罪するレイナに、マールさんもびっくりしている。
「お、あ、いや、その、いいってことよ。もう気にせんでいいから……」
「許してくれるのだろうか。ありがとう」
深々と頭を下げる。
「う、お。ほんとにもう顔を上げてくれ……そ、素材の持ち込みだな。見せておくれ」
「ありがとう。感謝する。リョータ先生に素材採取を教えて頂き、学びなおしてきた。これを観て貰えないだろうか」
レイナが木箱を差し出す。
「わかった。拝見しよう……」
木箱の中の包みを開けると、レイナが前回持ち込んで揉めた薬草が入っている。
「こいつは……」
「いかがだろうか」
レイナはじっとマールの言葉を待っている。俺も緊張していた。
「うん、これはいい仕事だ。切口も綺麗で鮮度もいい。これなら銀貨3枚でどうじゃろう」
ファッ!
俺の時より高いのはなぜっ?!
「よかった。もちろんそれで買取をお願いする。マール老。私の採ったこの薬草は、いいポーションになるだろうか」
「ああ、もちろんじゃ。ポーションのこと考えているなんて、おまえさんは偉いのう。いい冒険者になれるぞ」
あの、それ、俺が言ったんですけどねっ。
「ありがとう!」
レイナはものすごく嬉しそうだ。
まあいいか。
あんなに喜んでるもんな。
「やった。買取してもらえた!」
えーー
戻ってきたレイナが俺に抱きついてきた。
「お、おう、良かったな~」
なんとか抱きとめる。
「ありがとう。あなたのおかげだ」
ちょっと泣いてる?!
涙が滲んだ紫色の瞳に、俺は思わず心を奪われてしまう。
「あ、すまぬ。はしたないまねを」
レイナが離れてしまう。
ああっ、もっと抱きついてくれていてよかったのに。
後で鎧脱いでからもう一度して欲しい。
「はは、いいさ。買取が上手くいって俺も嬉しいよ」
とにかく役に立ててよかった。
「リョータさん……ありがとう」
「よかったですね」
「ルナちゃん」
いつの間にかルナちゃんが近くに来てにこにこしていた。
レイナは一瞬顔をこわばらせたが、ルナちゃんに向き直って頭を下げた。
「ルナ殿。過日は誠にご迷惑をかけた。すまなかった。深く反省している。自分が愚かだった。どうか許していただきたい」
「そ、そんにゃっ。いいですよ、頭を上げてくださいにっ」
「いや、私は間違っていたのだ。よくわかった。これからはしっかりと冒険者として頑張るつもりだ。よろしくお願いする」
「はいっ! 私こそよろしくですにゃっ」
美人騎士とネコミミ少女、なんていい光景なんだ。
ところでなんで俺よりも高価買取なの……




