表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
維新の剣  作者: 才谷草太
もう一つの維新、始まる
110/140

修羅、再臨

 近藤が新政府軍へと投降した後、土方は斎藤に新撰組を一任し会津へと向かわせる。一方、土方は江戸に潜伏し、大鳥圭介率いる伝習隊と合流していた。


 しかしこの日、江戸城内では大事件が起こっていた。


 勝海舟と西郷隆盛が密談し、江戸城を明け渡す事を決めていた。【江戸城無血開城】だ。

 この両名は坂本龍馬と共に、戦無く回天を成し遂げるという思いを貫いたのだ。新撰組ら旧幕府軍が向かう将来とは交らない宿命。


 土方・大鳥は伝習隊を率い、斎藤率いる新撰組への合流を目指すしか手立ては無くなった。



 進路は北へ。


 土方らは宇都宮に座する新政府軍を総攻撃する為、一大勢力を築き上げたのだ。

 そしてその前軍司令官が土方歳三だった。伝習隊を含め総員1千名を超え、新撰組は元より桑名藩士、回天隊を含む精鋭。彼らを従え、土方は古河に進軍して行った。


 慶応四年 四月十六日…。既に西洋の軍式を取り入れた旧幕府軍。彼等はそこに陣取り、目前に迫る新政府軍との戦闘準備を行っていた。直に開戦となる。自軍の士気は最高潮に達していた時、大気を引き裂く轟音が響き、土煙が上がる。


 「土方隊長! 奴らの砲撃です! 大筒が撃ち込まれております!」

 動揺する隊士が土方に伝令を行うが、全く動揺した素振りを見せずに、空に向かいライフルを一発放つ。

 「今こそ、武士としての戦を見せろ! 魂は各々の腹に括り、見事戦って見せろ!」

 そう叫び、自ら先陣を切って走り出す。

 指揮官の士気に呼応し、千人の侍たちはライフルを持ち、各々の持ち場へと向かい、歩兵は太刀を引き抜き歓声と共に敵陣に向かい走り出す。



 戦いは、これより本格化する。更に、鬼神と化した指揮官・土方に感染した隊士はそれぞれが鬼神の如く戦場を駆け巡り、後方の大筒・中盤の狙撃手・前線の剣撃隊が連携し、新政府軍を圧倒する。




 叫び・歓喜・怒号が入り混じる戦場に、土方は違和感を感じていた。

 戦いの中で砲撃とはまた違う、大気を震わす音がその身体を包み込む。その違和感の元は、今斬り捨てた敵の背後の林の中だった。


 「岡田…、何故ここに…? 岡田ぁ!」

 西洋式軍隊の様相をした土方は、以蔵を林に見付けた。

 「お主、どちらの側だ! 岡田!」


 血煙りが上がり、敵味方入り乱れる戦場に現れたのは、紛れも無く岡田以蔵だった。

 状況が理解できない以蔵は、辺りを見回しながらも土方の方へと脚を向ける。しかし、この場は戦場。完全に和装で腰に二本差している以蔵は、新政府にとっては倒すべき旧幕府の遺産としてしか映らない。


 銃剣で突きに来る敵。以蔵は条件反射の様に太刀を居抜き、銃身ごと腕を斬り落とす。それだけで両軍には十分だった。敵・味方と瞬時に判断し、新政府軍は以蔵に向かって来る。


 「こっちだ、岡田!」

 以蔵の腕を掴み、後方へと連れ去る土方。そんな以蔵を見た最前線の剣撃隊は口々に叫び出す。



 修羅・岡田以蔵が味方に着いた、と。


 土方率いる前軍の士気は、最前線から見る間に後方部隊へと伝染して行き、その狂気にも似た希望と共に、新政府軍には恐怖が浸透して行った。



 土方軍はこの勢いのまま新政府軍を圧倒。退ける事に成功する。





 刻の旅人が、再び土方の前に現れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ