再開と約束
__シルフィーside
京夏は街の外に出て行った。そう私は考えて彼を探して走り続けた。もしかしたら追いつけないかもしれない。けど、何も行動しないで後で後悔するのは情けないよね。
―酷い。本当に酷い吸血鬼ね。…絶対見つけたら文句の一つでも言ってやるんだから!
シデアの街のすぐ外は、暗い森が広がっている。その森を歩くこと25分、漸く1人の人影が見えた。
もしかしたら、京夏かもしれない。その可能性を信じて近づいてみる――
__京夏side
何も言わず、シルフィーを置いて来たことを後悔するわけではないけど、一言伝えるべきだったか。
もし、俺が今いるのはシデアの街の直ぐ近くにある森だが、ここまで追いついてきたとしたら、その時は『なんで私を置いていったの?』って感じで殴られそうになっても、何も返す言葉がない。素直に殴られよう。それだけの覚悟はある。1発じゃ気が済まないなら、ボコボコしてくれても構わない。何なら殺してくれもいい。…俺は死なないけど。
すると、後ろから俺を呼ぶ声がした。聞き覚えがある声。
その声の主はシルフィーだった。もう追いついてきたのか。だからと言ってこれから、一緒には連れていけない。魔王になるためにこれからどんな危険なことが起こるか分からないからだ。
その声はだんだん近づいてきた。そして、
「京…夏」
もういい。俺は殴られる覚悟で振り向くと、シルフィーは大粒の涙を流していた。
まさか泣かれるとは予想していなかった。
「泣くなよ」
「なんで、何処かへ行こうとするの?」
「俺がこれからやろうとしていることを分かってるのか?魔王になろうとしているんだ。悪いけど、シルフィーを危険に巻き込む事は出来ない」
なんと伝えればいいか分からない。でも、言いたいことは言った。
「私だって、その夢手伝うから!…私、本当は分かってるの。もう親はいないんだって。たぶんあの科学者に研究されてると思うの。ママが言ってた。人間は恐ろしく野蛮な生き物だって。もう私が頼れる人は京夏、貴方だけなの。だからお願い――」
そんな切ないお願いをされても断る奴がいるというなら、そいつこそ人じゃない。俺は元人間としてとかは関係なく、一緒にこれからも行くことに決めた。シルフィーにその覚悟があるというのなら、止める理由がない。
ただ、シルフィーが魔法が使えない以上、悪魔らとの戦闘は避けるべきか。
「シルフィーの気持ちはよく分かった。これからどんなことがあるか分かんないぞ?」
「もちろん!…っていうことは、いいの?」
俺は静かに頷いた。その反応を待っていたかのようにシルフィーは飛び跳ねて喜ぶ。
俺はその理由が分からない。どうしてここまで喜ぶのか。
「約束だよ?」
「あぁ」
小指どうし合わせて、指切りをした。破ったら針千本飲ます。これはどんな拷問だよと、その夜は火を囲んで二人で笑った。
1人で旅をするよりか、2人で旅をした方が楽しいなと、改めて実感する。




