置いてきぼりのエルフ
◆ ◇ ◆ ◇
__翌朝
シルフィーよりも早く目が覚めた。まだ一つ目の太陽が顔を出し始めたくらいだから速のは早すぎる。
俺らはカレー代は払っていたことが分かったし、シルフィーは結構強い武器も手に入ったことだし、もうこの街にいる必要が無いな。
魔王を目指すという目標があるのにも関わず、だいぶ長居しすぎた気がする。
それにこれ以上シルフィーに危険な思いをさせるのはどうかと思う。そもそも種族が違うんだ。生きている世界が違う。
シルフィーが起きてしまう前に宿を後にしよう。
お金だけは払わないと、そこは男として情けない、と思ったがこのままシルフィーが泊まり続けるかもしれないから、部屋の机の上に置いておこう。今日までの宿泊代を。それ以降は自分で頑張ってくれ。
と思いながら、俺は部屋の扉を開けて出ていった。
宿を出ようとすると従業員と擦れ違った。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「お客様、随分と朝が早いのですね」
「俺は去るからな」
「そうですか。気を付けて行ってください」
「――あ、一ついいか?」
「はい?」
「俺と一緒に泊まっている金髪の少女がもし今夜帰って来なかったら、部屋の机の上に宿泊代を置いてあるからそれを受け取ってくれ」
「はあ…、分かりました」
__シルフィーside
「んん……。おはよ〜、京夏」
私はまだ眠たそうに眼を擦る。声は出したものの、目は閉じたままでまた眠ってしまいそう。誰か〜起こして〜。でも寝たいから起こさないで〜。
そうじゃなくて、京夏から返事が返ってこない。いつもなら私と同じくらいに起きているのに、今日は疲れてるのかな?
「ねぇ、京夏〜?……」
私はゆっくりと上体を起こして京夏の寝ている方を見る。
すると、そこには白髪吸血鬼の姿はなかった。寝返りをうって下に落ちたのかと思ってベッドの下を見てもいない。トイレでもない。
「……嘘」
私は急いで着替え装備を整える。その時に机の上に置いてあった茶色い袋が気になったが、今はそれどころぞゃない。
部屋を飛び出し宿の玄関口にいた人に声を掛けた。
「私と、私と一緒に泊まっていた白髪の男の人は?」
「その人なら早朝に出て行かれましたよ」
「どのくらい前に?」
「だいたい20分くらい前かそこらですね」
「ありがとっ!」
「お客様、そんなに急いでは危ないですよ!……ってもう遅いですね」
一体どこへ行ったの?京夏。私を置いて行く場所。1人で依頼を受けに行ったのかも。
私は全力で冒険者の宿に向かった。
お願い!そうであってください。
冒険者の宿に着くと、走ってきた勢いで扉を開けた。みんなびっくりして一斉に私の方を見てきた。けど、見てきた人の中に京夏はいなかった。奥のカウンターの方に目を向けると、白髪の男の人が座っていた。
もしかして……。
そんな希望を胸にそっと近づき声を掛けた。
「何処に行ってた――」
「ん?何だよ、嬢ちゃん。俺と酒に付き合ってくれるのか?」
「ごめんなさい!人違いでしたっ!」
見間違えちゃった…。私、急に京夏がいなくなったことへの動揺が隠しきれないよ。
……泣きたいよ。今にも泣き崩れそう。だけど、今泣いている暇なんてない。
待って。私を一人にしないで――
そんな気持ちが心の中で暴走する。
「京夏……。いったい何処にいるの?」
街を走り回っても何処にもいない。
まさか、街の外に出て行ったの?絶対見つけるから。
私は見えない姿を必死に追いかけた。




