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さ~て。 世界の欠片でも集めるか!!__京夏魔王編  作者: 結城 睦月 & まひる
第二章
34/41

銀貨の価値~回想〜

__マリンside

黒髪と白髪が混ざったような髪の人が出ていった。

奥の部屋で会計をやっているモンドさんがオーナーをやるといいと言い残して――

それにしてもどうしてモンドさんが色々やっていたことを知っていたのかな。


もしかして、奥の部屋に引きこもりながらもちゃんと私たちのことを見ていたのかな?

もしそうだとしたら、私、言い過ぎちゃったかもしれない。どうしよう…。


私はさっき出ていった人を追いかけ、正面の扉を開ける。しかしもう既にその姿はどこにもなかった。

その瞬間強い風が吹いた。左手で髪を抑えて空を見上げた。



__京夏side

奇妙な身体になってから、早3年。

この吸血鬼の体は本当に色々なことが出来る。例えば、食事を最大で2ヶ月は必要としないことや、魔法を使えること、蝙蝠(こうもり)のような膜状の翼で空も飛べることなど挙げたら限りがない。……終わりはあるけど、まだある。不死身とかそんなことを言い出したら本当に限りがなくなるから省力しておこう。


◆ ◇ ◆ ◇


そうこうしているうちに今の目的地に到着した。

街の中の地図も覚えているから、人に聞くまでもない。



そして、

何の迷いもなく冒険者の宿に着いた。他では珍しいレンガ造りの建物で頑丈そうだ。

俺は気合いを入れて、


「さ〜て。初依頼を始めるか!!」


と扉を開けた。いったいどんな依頼が待っているのか、少し心が踊っていた。


「“輪証(りんしょう)”の提示をお願いします」


入口のすぐ横に20代くらいのお姉さんがいた。

戸惑っていると、お姉さんはもう一度同じ質問をしてきた。


別に“輪証(りんしょう)”とは何のことだかは分かるけど、俺にはない。この時の対処法はどの本にも書いていなかった。冒険者の宿従業員マニュアル的な物があれば良かったな。って俺はもうオーナーではないんだった。


「登録されますか?」

「はい。お願いします」

「ではお名前を教えてください」

「釧路 京夏です」

「それでは釧路様、利き手をお出しください」


と言われ俺は右手を出した。そして、手首にスタンプのような物を押されると、そこからリング状に広がっていった。それから数分で登録は完了したようだった。


◆ ◇ ◆ ◇


「クッソ……!」


冒険者の宿で散々悩んだ末に“ローグウルフ”という狼型の魔物にした。

こんなの楽勝と思って選んだのだが、実際は魔法の使い方もろくに分からない状態で苦戦している。


「出でよ、日本刀!…刀!…刀剣!」


こんなに何度も魔法を発動しているのに出てこない。

そんな感じで自分とも戦っているというのに、そんなことは関係なしに魔物は唸り声をあげて襲いかかってくる。

案の定 左腕の肘から先が食われた。


「うわぁぁぁ!!」


無くなった腕の先からこれでもかというほど、血が流れ落ちる。

これが吸血鬼となってからの初めての負傷だった。


経験したことのない痛みが走るがその程度では死なない。むしろ、死ぬことが出来ない。これは一種の呪いかもしない。

俺は怒りの感情に身を任せつつ、空想(ファンタジー)でサバイバルナイフのような小さな剣を出し、ローグウルフの首元に一撃刺した。

すると、魔物はたじろいだ。その隙に高くジャンプして上から魔物の左目にサバイバルナイフを振り下ろした。

魔物は唸り声を上げ、地に倒れた。


「よっしゃー!!」


俺は右手を空に掲げて喜んだ。初めての依頼を1人でやるのは、一般的には自殺行為と言われるが、それでも達成できた事は大きい。



この依頼で得た報酬の銀貨は使うことがない。一生の宝にしよう。

俺にとって、この銀貨は通常の100マイン以上の価値がある。

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