第113話 ルミニス激怒
『ぬぎゃぁぁぁぁ! やっと消えたー! クソぉ! 何でエルフがマリを助けに来るのよ! 忌々しい耳長めぇ!』
ルミニスは帝城の壁に身体を擦り続け、ようやく纏わりつく青い炎を消した。
『許さない許さない許さない! もう計画なんてどうでもいい! マリは必ず殺す! 殺す殺す殺すぅぅぅぅ!』
身体からどす黒い靄を放ちながらルミニスは広場へと向かう。
哀れな帝国民達がパニック状態で逃げ惑う姿に苛つき、殺してしまいたくなったがルミニスはグッと我慢し飛んだ。
『どいつもこいつも! 本当に役立たずばかり! 嫌になる嫌になる嫌になるぅぅぅぅ!』
頬を掻きむしり、可愛らしい妖精の顔に傷が出来るがルミニスは全く気にしない。 その傷からは血ではなくどす黒い靄が漏れ始める。
『居たぁぁぁ! まさか、魔族のクソ魔法で逃げるつもり?! ダメだよぉぉぉマリは此処で殺すんだからぁぁぁ!』
ルミニスは更に速度を上げ、気付かない様にマリを殺すべく接近する。
しかし、ルミニスの射程に入るギリギリでマリ達は姿を消し、残されたのは額に血管を浮かせまくったルミニスと使えない部下だけだ。
『ぬぁぁぁぁ! 逃げられたぁぁぁ! ちょっとブラック! 何気絶してるのよ! マリ達に逃げられてるじゃない!』
「……はっ! も、申し訳ございません!!」
意識を取り戻したブラックの目の前には、怒り狂う主の姿があった。 ブラックは即座に平伏し、謝罪を口にする。
『謝罪は要らない! 結果を出しなさい!! クロモトぉぉぉ、お前は何で死んでるのよぉー!』
ルミニスが既に事切れたクロモトの頬を見えない手でぶん殴る。
「ル、ルミニス様! クロモトは件のメイドに毒を盛られ暗殺されたのです!」
『はぁぁぁ?! このクソ爺、そう簡単に死ねると思うなよぉ~? まだ、まだまだまだまだお前には働いてもらうんだからぁぁぁぁ』
ルミニスの黒い靄が死んだクロモトの口に入り、直後に身体が飛び跳ね始めた。
「ルミニス様……一体何を」
『あっはははは! お前達は幸運よぉ~? なんたって私が居るんだからぁ~首が身体から離れたりしない限り私が生き返らせてあげるからぁ~』
身体が飛び跳ねなくなった直後、死んでいたクロモトが咳き込み意識を取り戻した。
「げほぉっ! がはっ!」
「クロモトっ! ルミニス様、感謝致します! それと、この使えない皇帝はいかがしますか?」
ブラックは隣で無造作に捨てられたアバン皇帝の死体を指差す。
『あぁ~……その馬鹿なガキは後でクロモトに精霊人形にさせなさい。 生かしてると馬鹿な事しかしないんだからぁ。 それと、直ぐにマリを追いなさい! あの魔族が使う移動魔法は其処まで距離は飛べないのぉ。 いぃ? 必ず見つけて今度こそ殺しなさぁい!』
「か、必ずやマリの首をお持ちします! おいクロモト! さっさと精霊人形達に命令しろ! お前じゃないと細かい命令が出来ないのだ!!」
「はっ?! ほっ!? 何が起きてるのじゃブラック。 ぬぁっ?! 儂の可愛い人形ちゃん達が燃えておるぅー?!」
ブラックに無理矢理起こされたクロモトは青い炎で包まれた精霊人形達を見て叫ぶ。
『あの青い炎は私達にしか効かないからさっさと消して追わせなさぁい! ほらほら急げ急げ急げ急げぇぇぇ! 私も探すからぁ、見つけたら直ぐ殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
怒りが収まらないルミニスは身体から漏れるどす黒い靄を更に広げながら空へと消えた。
クロモトは服を脱ぎ、必死に精霊人形達の青い炎を消して回る。 人間を改造するという残酷極まりない行いをしていながら、精霊人形が大切なのは本心からなのだろう。
「クロモト、頼むから急いでくれ! 次は我々が其処のアバンのように捨てられるかもしれんのだぞ!」
「ひゃひゃひゃ、儂の人形ちゃん達なら直ぐに追い付けるじゃろ。 心配するなブラックよ!」
死体だらけの広場をゆっくりと立ち上がった精霊人形達が走る。 騒動で存在に気付いていなかった兵士達や逃げ遅れた帝国民達から異形の人形に対して悲鳴が上がるが、今はそれ所ではない。
ルミニスの矛先が何時自分に向くかブラックは不安で仕方ないのだから。




