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第109話 処刑執行

 あっという間に昼となり、広場は千人近い兵士達と数千の帝国民で溢れていた。


 「絶景だねー……」


 マリはギロチンの枷に嵌められ、後は大きな刃が落ちるだけで首と身体はさよならの状態だ。


 「君は……豪胆なのか阿呆なのかどっちなんだい?」


 処刑台の上に立つブラックに問われ、マリは笑う。


 「あはは、心配はしてないよ? だって、メリーさん達が助けてくれるから」


 魔族とバレたメリー達に対し、全く疑っていないマリを見てブラックは押し黙る。


 「ひゃひゃひゃ、この兵士達の中には儂が徹夜で造った精霊人形達を紛れ込ませておる。 もし、化け物達が本当に来ても無駄じゃよ」


 クロモトが目を虚ろにし足をガクガク震わせながらマリを嘲笑うのを、ブラックとマリは微妙な顔で見つめる。


 「なんだろう、私が言うのも変だけど。 とりあえず寝たら?」


 「うむ……私もそう思うぞクロモトよ」


 「嫌じゃぁ! 只でさえ、触るのも嫌な男を人形にしたんじゃ! 成果を見るまで儂は寝んぞぉぉぉ!」


 駄々をこね始めたクロモトにうんざりしていると、態々設置した見物台に女貴族達やアバン皇帝が到着した。


 マリは顔を動かせる範囲で確認するが、ルミニスの姿は無い。


 確実にマリを殺す為に、救出に来たメリー達を足止めするつもりなのだろう。


 それから更に待っていると、座って談笑していたアバン皇帝や女貴族達が席を立ち上がり何やら準備し始めた。 


 「はぁ~……」


 「ふっ……怖くなったのか?」


 深く溜息を吐いたマリに、ブラックが嫌味を言う。


 「え? 違うよ? あの見物台に並ぶお酒飲みたいなぁ~って思ってさぁ」


 「……君、昨日の夜めちゃくちゃ飲んで無かったかな? 確か、50本位は準備した筈なのだが」


 マリが強がりでは無く本心から飲酒したいと発言している事に気付いたブラックは化け物を見るような目でマリを見る。


 「因みに……処刑前に最後のお願いとかって聞いてもらえないの?」


 「拒否する。 だが、一応聞こうか」


 「勿論、鬼殺しが飲み「ダメだ」


 「……ちぇっ」


 即座に却下された事にマリは大変遺憾だが、何も出来ずに身体をよじる。


 「もうすぐ始まる。 大人しく待っていたまえ」


 そんな2人のやり取りを何故かクロモトは一言も発せずに立っていた。 不思議に思ったブラックがクロモトに話し掛けようとしたタイミングで、アバン皇帝が声を張り上げる。


 「皆の者よくぞ集まってくれた! これより、我等がキャベル女皇帝陛下を暗殺した極悪非道な極刑人エントン フォル マリの処刑を執行する! まずは、罪状を読み上げる。 ブラック宰相、頼む」


 無駄に豪華な服を着たアバン皇帝が見物台から演説し、遂にマリの処刑が開始した。


 「はっ! これよりこの極悪非道な極刑人の罪状を読み上げる。 この者は」


 長々とブラックがマリの罪状を読み上げた。


 正直な所、誰が信じるねんとマリは思っていたが周囲の兵士達や帝国民達があっさりと信じて怒り狂う姿を啞然とする。


 「え~……嘘でしょ? 流石に馬鹿過ぎじゃない?」


 「……これが現実だ。 キャベル女皇帝陛下は名君だったが、その代わりに下が怯え育たなかった。 その結果が馬鹿な皇子に、自分の事しか考えない女貴族達、自分で考えずに聞かされた事だけを信じる無能な民達の帝国が築き上げられたのだ」


 マリの呟きに、ブラックが小声で答えた。


 「だから……裏切ったの?」


 「ふんっ……これから死ぬ君に教えるつもりは無い」


 冷たい猛禽類の様な目がマリを睨む。


 「よし! 刑を執行せよ! エントン フォル マリの首を落とせ!!」


 アバン皇帝の号令で、ギロチンのロープを処刑人が切ろうと動いた。


 「ぎゃーーー?! メリーさぁぁぁん!? タイミング絶対に今だよ! 今しか無いよ?! 助けてぇぇぇぇ!」

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