神座闘争 9
四号の動きを止めたバリアを展開していたのは、ナナシであった。四号はさらに足に力を入れ、そのまま無理やり押し通そうとしたが、バリアが破壊されることは無かった。
「ほう、俺の動きを止めるほどのバリア……ただ魔力で造り上げただけじゃねェなァ。一体どんな防御魔法なんだァ?」
「アカシックレコードから読み取った神級魔法の一つ、〈ヘイルヘムの盾〉よ」
「……聞いたこともねェ。神級魔法は知っていうし、全ての魔法は生まれた時に頭の中に叩きこまれている。だが、そんな魔法、俺は知らねェ」
「知らないでしょうね。神級魔法と言っても、失われた神話から私が勝手に解釈して造り上げた魔法に過ぎないから」
そう言いながら、バリアをナナシのいる内側から破壊し、その衝撃で外側にいた四号が態勢を崩しながら、二メートルほど吹っ飛ばされる。
「神級魔法〈閃光のブリューナク〉!」
そう唱えると、たちまちナナシの前に大きな魔法陣が出現し、そこからすさまじい勢いで光の槍が四号に向かって発射される。
「ちぃッ!うざってェな!!」
すぐさま態勢を整え、背中から蝙蝠のような、皮と骨で構成された巨大な翼を形成し、その攻撃を弾いて見せる。しかし、その後、光は方向転換し、再び四号に襲い掛かる。
(自動追尾付きかよ!)
すると、今度が右腕でその光の槍を受け止める。
「神級魔法を受け止めきれるはずがないわ!大人しく喰らうのよ!」
ナナシがそう叫ぶが、少し様子がおかしい。シュルシュルと光の槍がどんどん小さくなっていく。
「俺はジョウキリによって生み出された最強の生命体……攻撃系の魔法を受け止めて、もう一度魔力に分解させて、俺の力にすることなど、造作もない。そのうえ、その神級魔法は知っているからなァある程度分解は可能なんだよォ」
そして、最終的に手のひらに収まるほどの光へと成り、それを握りつぶす。
「さすが、ね。やっぱり、あなたを魔法で倒すには、アカシックレコードから消失神話を読み取って、神級魔法として再現するしかないみたいね」
(コイツは何を言っているんだァ……?)
いや、単語の意味は知っている。
アカシックレコード。
それは世界のあらゆる情報が集まる場所。人間でいう所の脳みそ。世界が誕生し、終わりまでのあらゆる情報が存在する場所。
実在するかはどうかはともかく、そのアカシックレコードという存在は知っていた。だが、そこから消失神話を読み取って魔法を再現する……?
(消失神話……そういえば、歴史学者の中で、神話が無さすぎるというものがあったな。妖国、栄華、覇国エルドラにシン…これらには建国するに至る物語が神話として語り継がれている。しかし、それ以前の神話が全く存在しねェ。知識を持つ種族は結束力を持つために、同じ宗教を信じる傾向があるっていうのに、建国神話しかこの世界には無い……)
何者かに神話が消されている、という都市伝説じみた一説があるのを思い出す。
(何者、か。神でもいるっていうのか?ちッ、考えても仕方ない。とりあえず……)
「テメェをぶっ殺してやるよォ!」
〈閃光のブリューナク〉から吸収した魔力を体に纏わせ、四号を一気にナナシとの距離を詰める。




