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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第三章 英雄達は楽ができない
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第78話 織部のうつけもの 後編

憲長(ノリナガ)よ、何用じゃ?」


 織部憲秀は、織部の寅とも言われる齢45歳の戦国大名で、元は織部家の分家だったが、若い頃に隣国今田家との領土争いで武功を立てて、織部家を手中に収めた戦国の雄である。


 顔は眉が濃くて凄みのある厳めしさと、髪の生え際と眉間に深いしわが刻まれ、顔には刀傷があった。


「親父殿、今田がうちの国の商売を邪魔してる。族滅させる許可をいただきてえのだが?」


「うつけものが、ならぬと言っておろうが。そもそも一昨年に起きた合戦でも、お主は目立たずに、ワシの後ろ姿を見てるだけでおればよかったのじゃ。お主は戦国の世で目立ちすぎる。出る杭は打たれるのがこの国の歴史ぞ」


「出過ぎた杭を打とうとする野郎を、打たれる前に打っちまうのも手です」


 憲秀は、息子の答えに特大のため息を吐く。


 一方、イワネツは転生後の自分の父に、絶大な信頼と尊敬の念を抱いていた。


 俺の前世の親父なんか、年中酔っ払ったアル中で、誰にでも酒の勢いで怒鳴り散らして喧嘩しまわって、事あるごとにおふくろや俺をぶっ叩くろくでなしだったが、この人は血の繋がらない俺に、情をかけて育ててくれた、素晴らしい親父であると。


 一方で父である憲秀は、イワネツの凶暴性と極悪な行為を伴う奇行、人間離れした圧倒的な武力に、内心恐怖して不安を覚えている。


 イワネツは齢7歳を超えると、積極的に武芸や馬術、そして魔法術や勉学に励むようになり、奇行や言動に目を瞑れば、神童であると言えた。


 しかし現代文明から転生したイワネツの、言う事なす事が、この世界のジッポン人から見ると奇怪な悪鬼の子であるとされ、ついたあだ名が織部の大うつけ者である。


 イワネツは齢13を超えたあたりで、身分分け隔てなく、領地の若者や武家の若者と徒党を組み、逆らう若者はリンチを加えて強引に徒党に加える、傍若無人な振る舞いを働いた。


 また敵対関係にある隣国へ勝手に越境しては、乱暴狼藉や恐喝行為と略奪行為を働き、略奪した村々で婦女子をさらい、奴隷としてチーノ大皇国に売り払う。


 この頃からイワネツは、この世界で密貿易に励みだした。


 そして元服しても、長髪を雑に後ろに束ねてろくに髷も結わず、派手な衣に身を包み、軒先の柿やビワ、イチジクの実を勝手にもいで、食べ歩きながら手下と城下町を練り歩く姿に、隣国はおろか自国領の織部の民も恐怖心を抱くようになる。


 まさしく転生前に史上最悪と呼ばれたロシアンマフィアの頭領、イワネツそのものの行い。


 これに父である憲秀は胃を患うようになる。


 極め付けが一昨年勃発した、秋津洲と八州で起きた南北朝の武家同士の大戦で、織部家は北朝側として参戦。


 この戦でイワネツは、徒党を組んでいた自分の手下達を率いて赤母衣衆として参戦すると、南朝八州を恐怖のどん底に突き落とす。


「燃やせ! 犯せ! 殺せ! 奪い取れ! 織部と親父殿に逆らうクソ野郎らは皆殺しだ! ほんっとに野蛮極まる世界だぜ、俺が生まれかわった世界はよお! 首切りとかハラキリとかわけわかんねえ野蛮さだ! 死ねやゴミクズ共があああああ!」


「ヒャッハーさすが若様だぜ!」


「ジッポンの伝統なんてクソくらえだ!」


「オラオライワネツ軍団のお通りだ! 頭を下げろお! 頭垂れねえ奴らは首置いてけや!」


 八州最大の貿易港の博田(ハカダ)の街や、古代から幾度も戦場になった多々羅浜で、敵対する八州の武士団をイワネツは単騎で挑み、次々と敵対武士を己の五体を使って殴り殺す。


「お、鬼じゃあああ!」

「悪魔じゃああああ!」

「人間じゃ……ぶべらッ!」

「相手にとって不足なうぎゃっ!」


 イワネツ本来の膂力に加えて魔法も組み合わさった力は、人知を超越して矢の攻撃も一切受け付けず、ドワーフの血を引く強力な武士団たちが斬りかかっても、手傷一つ負わず、人間が宙を舞い、臓物が飛び散る凄惨な戦いとなったという。


 イワネツが戦った戦場は、死人浜、贓物原、首追坂と地名が残るに至る。


 イワネツ単騎が屠ったその数3千人、敵将の首印10。

 軍龍ドラゴン討伐10、騎獣鵺討伐20。

 

 イワネツの一方的な暴力と虐殺に恐怖した南朝と八州の武士団は、北朝有利の条件で和睦する。


 これ以上、イワネツに自分達の国を荒らされたくなかった為であった。


 当時、博田の街で貿易業を営んでいたヒンダス人は、イワネツ個人の武力が並外れており、自分達が商いのため接触すると、ナーロッパで作られたカラクリ時計の意味を瞬時に理解したり、世界地図を見せてもジッポンの位置と、世界各国がどのような国をすぐに理解したイワネツに対し、ヒンダス人はジッポンの地に英雄が現れたと、ヒンダス王バナージー・ラーオ・バッラールーシュに書簡を送っている。


 さらにイワネツは現代地球世界の知識を活かして、八州から拉致した金属職人たちに、火薬を使った銃器を大量に製造させ、ヒンダスやチーノ帝国に売り払い、織部の金の保有量を倍以上に増やした。


 織部軍に至っては、現代兵科である歩兵戦術を充実させ、銃器や大砲を多数そろえ、軽い金属で馬車を覆い、大砲を運用する装甲戦車兵や、元は魔界のモンスターだった鵺を多数所有し、騎兵運用も成功させ、これらの武士団を魔法の水晶玉で伝達する通信連絡網までも構築した。


 また、ジッポンに生息する竜などの魔物を、ケシの実で作った麻薬で手なずけて、空から魔法と火薬で爆撃を行う航空兵科も作り上げる。


 そして、兵士の数が想定より少ないと思ったイワネツは、金で諸侯や浪人たちの買収を始め、恩賞目当てに続々とジッポン中から猛者たちが集まりようになり、織部の国は急速に軍事大国となっていく。


 また領民たちにとって不治の病だった、結核やペストのような細菌やウイルス性の病気すらも、現代の知識があり、前世に経験したソ連の強制収容所の劣悪な環境で、あらゆる病を見て看破していたイワネツは、疫学や薬学、そして衛生状況の改善を徹底させ、ついには病院という概念も作り上げたのだ。


 乳児や妊婦の死亡率を減らした事で、織部国の人口は増加傾向にあり、当初大うつけと噂したイワネツを、領民たちは尊敬しはじめ、初代天帝の生まれ変わり、神の子イワネツであると称されるようになる。


 これを目の当たりにしたヒンダスやジューの商人たちは、織部の国で起きている事を記録して本国に書簡を送る。


 100年以上内戦中のジッポンに突如現れた若き英雄、織部憲長は、武家の頭領たる将軍になるであろう兆候を示していると。


 しかしこれに危機感を覚えたのが織部の近隣諸国だった。


 領民が織部に越境して住民になるものが後を絶たず、米の生産量が減り始め、家臣団も寝返ろうかという不穏な空気が流れ始め、ジッポンの諸侯たちはイワネツを暗殺しようと躍起になる。


 これまでにイワネツ暗殺が企てられたこと、33回にも及ぶ。


「のう、憲長よ。お主は長きにわたり戦乱を繰り返すジッポンに舞い降りた、神の子と領民共も噂しておる。だからこそワシは心配に思うのじゃ。お主の普段の立ち振る舞いはどうあれ、戦乱の世を終わらすかもしれぬ希望なのじゃ。であるから、古のジッポンの法や習わしをもう少し省みて、律するべきである。近隣諸国や将軍家も、お主を野蛮で残虐な悪魔の子であると噂しておる」


 親に必要とされ、社会から賞賛されるのも、イワネツは前の世界では経験したことがなかった。

 

 そして前の世界で悪辣なブラトノイ、史上最悪の犯罪者と呼ばれた自分が、周りから残忍だの野蛮だの言われようが、全く気にも留めない。


 自分が知る自分のやり方で織部の国を豊かにし、自分が尊敬する親、憲秀に報いるためである。


「親父殿、悪口は襟首にぶら下がらない。俺はどこぞの馬鹿が口から何を垂れようが、痛くも痒くもない。他人の悪口なんてどうせ無能が発する言葉だけよ」


「憲長よ……この国をかつてないほど大国にした手腕は、ワシも認めるところであるが……もう少しこう、手心と言うものをだな」


 イワネツのこの世界の父、織部憲秀は南朝との大戦で武功を挙げ、北朝の都の中京に天帝に謁見した際、このイワネツの言動を思い出し、我が子へ不安を覚えた事を思い出す。


 憲秀とイワネツは、天帝より感謝の意と恩賞を得た後、御所を離れる際、このようなやり取りをした。


「親父殿、今の天帝(ツァーリ)は力がねえガキだ。しかも将軍とか副将軍とか言われてる諸侯の野郎ら、カスのくせしてこの俺を睨みつけやがって、糞生意気なゴミ屑が。戦争で手柄たてたのは、親父殿と俺だろうっての。あと、そこら辺にいる女官共も、お高く留まりやがって気にくわねえ。犯した後、売女にしてチーノに売りつけてやろうか?」


「うつけもの! 天帝様や将軍家はジッポンの権威なのじゃ! 不埒な言動は控えよ馬鹿息子が!」


 憲秀は胃の痛みと共に、イワネツを中京で叱りつけたことを思い出す。


 そして、こんなやり取りを今のイワネツとそっくりな手下とした、雪深いどこかの地の魂の記憶も、ふいに脳裏にフラッシュバックした。


「なあ、親方(パカーン)。あのクレムリンにいる、くそったれの雌犬(スーカー)ら、みんなぶち殺してやって、文字通り赤の広場に変えてやりてえですよね」


馬鹿かお前(ブリャーチ)! 共産党の野郎らは活かさず殺さず、俺達がカスリ取るためだけに存在してんだ! 全部ぶっ殺しちまってどうすんだよ! お前はスターリンみてえなキ●ガイか!」


「はいはい、わかってますって。んだよ、あの軍服着たズべ。化粧気もねえ男だか女だかわかんねえズべ公が。犯した後、中東に売っ払っちまうぞ。いや、北朝鮮の方が金払いいいな」


「おめえなあ……軍に手を出すなってんだよ。また刑務所(むしょ)ぶち込まれるだろ。ったくどうしょうもねえブラトノイだぜお前と言うやつは」


 この手下の言うことやることも全て過激だが、どこか滑稽で面白くもあり、一番信頼していた自慢の子分の記憶。


 自分は老いてきて白昼夢を見るように耄碌したのか?


 いや、きっと気のせいだと思い、憲秀は顔の古傷をポリポリと掻く。


「まあ、親父殿の意向を俺は守ることとしよう。ただし親父殿、これだけは言っておきてえ。自分の巣穴では鼠も獅子気取りと言う言葉がある。この国の権威とか言うカス共は、力量がない上辺だけのケチな小物ばかりだ。だからそういう野郎らが国を支配すると、下の者に威張り散らし、社会は腐敗して人間が人間で生きられなくなっちまうのさ、ソ連時代のようによ」


 時折、イワネツが言うソ連やロシアという言葉にも憲秀は理解できなかった。


 だが魂の奥底に残る、ある場面を憲秀は思い出す。


 そこは犯罪者の集まる薄暗い牢獄。


「この国のクサレ共産主義者は、奇麗ごとばっか言って上辺だけのケチな小物ばかりだ。俺が戦後の闇市で、恵まれねえ市民の為、配給なんぞよりも上等なブツを格安で流してやってるのに……民警(スーカー)のクズ共が、社会主義経済転覆罪なんかで刑務所(ムショ)にぶち込みやがって! 俺の行いこそ社会主義だろうにカス共め! まさしく、自分の巣穴ではネズミもライオン気取りのカスばかりだこのソ連は!」


Да(はい)親方(パカーン)、この国はクソです。この先何年かかろうが俺は、このロシアに人間らしさを取り戻してえです」


 憲秀は、頭を振って自分の知らない記憶を払拭し、自室から出るイワネツの後姿を見守る。


「チェッ、親父も頭が固いぜ! まるで俺を盗賊(ヴォール)にしたガリンコーフの親方みてえだ。よく親方からはぶん殴られたぜ。親方……俺がソ連をぶっ壊した時の歓喜の瞬間、見せてやりたかったな」


 イワネツは、城の離れにある自身の屋敷に向かう。


 玄関を開けると、玄関先で浴衣に着替えた女神ヘルが、腕組しながら脚立に乗ってイワネツを見下ろしていた。


「遅かったのだわさチビ人間! わらわをよくもこんな犬小屋みたいなところに押し込んで……」


「うっせえぞメスガキ! お前人の家を犬小屋呼ばわりとか、親からどんな教育受けてきたんだ! あんまりふざけたこと抜かすと、お前の首切り取って口にクソ流してやるぞ!」


 親と言う単語にヘルはビクリとした後、イワネツの視線を逸らす。


「親なんか……知らないのだわ。わらわに親なんかいないのだわ」


 ヘルの回答に、イワネツは舌打ちすると、水晶玉で通信を始める。


「おう、俺だ。すまねえが犬よ、親父から許可は得られなかった。ああ、イマダの野郎を屋敷ごと吹っ飛ばして暗殺する計画は無しだ。……なんだと? イマダの野郎がよくわかんねえ大型船を手に入れて、その船が三川湾に向かっている? 野郎、西方のヨーロッパみてえなどっかの国から、戦艦でも買いやがったか? くそむかつくな、燃やしに行くか」


 イワネツは、ヘルの乗る脚立を蹴飛ばして、床に尻もちをついたヘルの浴衣の襟を二本の指で摘まむと、まるで拾ってきた猫のようにして彼女を持ち上げる。


「おい、メスガキ。お前確か俺をこの世界に送った神だったな? この世界の情勢がよくわからねえから、今日こそ知ってる事をしゃべってもらうぞ?」


「ち、チビ人間め! お前それが神にものを頼む態度かしら? お前をまた冥界の裁判にかけてやっても……」


「ああ゛ぁ?」


 人間とは思えない凶悪な容貌になって、凄みを利かせるイワネツの恐ろしさに、涙目になったヘルは、この世界の現状について語り出した。


 ヘルはイワネツの気迫に圧倒され自身の情報を包み隠さず話すと、イワネツの顔面が真っ青になる。


「おいメスガキ、お前頭おかしいだろ? 三重スパイ(トリプルクロス)とか馬鹿じゃねえのか? KGBのスーカー共でも、そんな事した奴らは大抵ぶっ殺されてる。ていうかふざけんなよ! だいたいその、お前が敵対するハメになった閻魔大王とかヤミーとかいう神の、勇者とやらの名前がやべえよ」


 女神ヘルから、父神ロキと主神オーディン、そして冥界の筆頭神である閻魔大王の三重スパイをやっていた事実と、冥界の勇者の名前を聞いてイワネツは激しく狼狽する。


「最悪の暴力団だったチビ人間のくせに、あのチビ女神が所有してる勇者達の何が怖いのかしら? それに我はこう見えても上手くやってるだわさ」


「だぁかぁら、俺と同じ勇者だっけか? やってるとかいう野郎が、やべえんだって言ってんだメスガキ! ロバート・カルーゾとマサヨシ・シミズだと!? 奴らは俺と同世代で、西側最強最悪と呼ばれたマフィオソの最高権力者と、ヤクーザの大物だぞ!? どんだけやべえか、おめえ知ってんのか! 馬鹿じゃねえかメスガキが!」


 ヘルはイワネツの声量があまりに大きく、そして今までの不遜な態度が一変して、動揺するのを始めて目の当たりにする。


「ロバートカルーゾは、血の繋がった家族だろうが(バラ)しちまう、情け容赦ねえ冷血な殺し屋野郎だ。シミズなんて、今までどれだけ刀で斬り殺してきたかもわかんねえ、銭ゲバで頭の中が欲まみれの凶暴な極悪人だぞ!?」


「そんなのお前も変わんない……」


 言い終わる前に、ヘルはイワネツから頭を叩かれた。


「そもそも勇者ってのはなんなんだよ! クズの見本市か? それで? そいつらと今は敵対してるだと? 馬鹿じゃねえのかお前! 俺が奴らから暗殺されんだろうが!」


「仕方なかったのだわさ! あの父親面する最低男に信用されるためだわさ! うまくいけばオーディンが創造神様に取り入って、わらわを上級神に推薦するって……」


「アホかお前は! お前みてえなアホが絵図描いてうまくいった試しはねえ! 帝政ロシアでインチキ魔術師やったアホみてえに、ぶっ殺されるのがオチだアホが! ちくしょう、どうすんだよこの始末よお……。世界救済とか意味わかんねえよ」


 本来は楽観的で、どんな相手でも絶対に退かず、媚ず、犯罪を省みた事など一切ないイワネツが、頭を抱えてどう立ち回るかを考える。


 するとヘルはニヤリと笑った。


「だいじょうぶだわさ。もしもの為にオーディンが用意していた策がお前の存在なのだし、心配ないだわさ」


「本当だろうな? 俺が知るロバートと言う男に、諦めとかいう概念なんかねえぞ? シミズの野郎なんて、てめえの仕事邪魔されたってぶち切れてる筈だ。知ってるか? 日本のヤクザって、ヘマすると小指とか千切って、相手に詫びるくれえ根性あるんだぞ? そのオーディンとかいう神もあてになんねえな……お、そうだ!」


 今度はイワネツがヘルを見て、ニヤリと笑う。


「な、なんだわさ」


「お前、神やめろ。それでこの世界で目立たず、身分隠せ。そうだな、おまえ俺の生き別れの妹とか適当に名乗れ」


 イワネツの思いつきに、一瞬ヘルはキョトンとなった後、顔を真っ赤にして激昂した。


「はああああああああ? 何で!? わらわはこの世界救済に向かった神だわさ! お前みたいなクズ人間の妹とか嫌なのだわさ!!」


「うっせえメスガキ! お前が神だとか喧伝し回ったら、俺の命が幾つあっても足りねえ! さっきお前が言ったように、この世界のヨーロッパみてえな西側には、シミズの子分や兄弟分みてえな王族連中がいやがるらしいじゃねえか。だからお前は目立たず、身柄かわせって言ってんだ馬鹿野郎(ブリャーチ)!」


 イワネツがヘルに怒鳴り散らしていた時、玄関外で物音がしたので、イワネツが扉を開けると、見窄らしい格好をした、動物に例えると猿のような赤ら顔をした、身長160センチにも満たない小男が、揉み手をしながらイワネツの前に姿を見せる。


「チッ、んだよまたお前か。俺はお前なんか雇わねえって言ってんだろ! 帰れこの野郎! 殺すぞ?」


「そこを何とかお願いしやす! ノリナガ様! パシリだろうが何だろうが、あたしを使ってやってくだせえ! 絶対あなた様のお役に立ちますから!」


 ヘルは咄嗟に、この子男の心の中を冥界魔法で覗き見た。


「こいつ転生者だわさ。しかも転生前の記憶を何かのきっかけで思い出した……元日本人だわ」


「ほう、なんだと? おい猿顔の野郎、名前は?」


 イワネツは興味津々となり、男を見据える。


 男の年齢は、見当もつかなかったが20代? 

 いや目の感じが幼く見えて、もう少し若いかとイワネツは考える。


「へい、あたしの名前は秀吉。転生前も転生後も秀吉です」

続きます

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