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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第二章 魔女は楽になりたい
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第70話 破壊神の召喚魔法

「本来世界の破壊するには、スジ道を通さねえとダメなお方がいるのよ。あの世で魂のケジメを取る神が俺の親分、閻魔大王と、俺の神ヤミーなら……この世の、世界の最終的なケジメを、神も含めて取るお方がいらっしゃる。言ってる意味わかるよな?」


 するとフレイアが恐怖に怯えているのか、涙目になってガタガタ震え出した。


 やばい、この女の怯え方は尋常じゃない。

 いったい何を、先生は呼び出す気なの?


「ま、まさかあんた! ちょ、やめてよ、あのお方だけはやめて! 魂ごと破壊されちゃう!」


「知らねえよコノヤロー。もともと人間だったくせに人の心も、優しさも無くした外道。てめえはよお、今この場で俺達に誠意を示して、己の行いを悔やめばよかった。それが人としての道理だろ? だがてめえは結局、人の道よりも神としての面子を選んだ、そうだろうが!」


 フレイアは唇を噛み締めて、悔しそうに先生を睨む。


 だが、暗黒のようになった先生の瞳を見て、視線を再び下に逸らした。


「そんでてめえが、あくまでも神として、俺達人間やこの世界にケジメ取るって言い張るなら、しょうがねえ。じゃあ、こっちはてめえよりも上役呼ぶぜって流れになるよな? 神時代のてめえよりも、オーディンよりも上役の神様呼んできて、おめえを見てどういう判断くだすか試してみようじゃねえか? まあ、多分おめえ十中八九死ぬけどな」


「やめて! アタシが悪かったわ! この通り頭を下げるし、何でもするから、なんならあたしの体を好きにしてもいいって! ねえ、お願い……アタシを助けて……」


 頭だけ出したフレイアがうつむいて何度も地面に頭をこすりつけた。

 けど、もうこの流れ的には……。


「うるせえよバカヤロー! もう後悔しても遅えズべ公! いでよ破壊神! お力をお貸しくだせえ!」


 先生が膨大な魔力を指輪に込めると、先生を中心に周囲が光り輝く。


「あ、まずいわ……俺の力でも召喚する魔力足りねえ。やべええええええ俺の生命力も吸われ始めてきた! ヘタ打ったかこれええええええええええ!」


「ちょ!?」


 私達は思わず、ずっこけそうになった。


 でも、せっかく先生がカッコつけてるから、力を貸してあげなきゃ。


「先生、私も力を貸します。だって私、世界を救う召喚術師になるって決めましたから。私、勇者である先生の弟子ですし」


「へっ、言うようになったじゃねえか。おかげで俺も不細工なザマにならねえですんだぜ……ありがとうな、俺の可愛い弟子」


 私は、はにかんだ笑みを浮かべる先生の右手を両手で握り、魔力を込めると、それでも魔力が足りない。


 やばい、これやばい。

 めっちゃくちゃに生命力と魔力量が吸われる。


 すると、ジローがにこりと笑って私達の手を握る。


「なんくるないさー兄貴ぃ、マリーちゃん。好きな(いなぐ)とぅ兄貴が困ってぃたらよー、手を貸すのが弟分(うっとぅ)であり、(いきが)やん」


 そして豪快に笑ったデリンジャーが、力強く私達の手を握った。


「シミーズ、お前には色々助けてくれた礼がある。だが貸しがこれで二つだぜ? あとで酒でも奢れよ? マリー姫、いやマリーもだぜ? ボトル二本分美味い酒を貰ってやる」


 そして最後に龍が、私達の手を包み込んだ。


「君のことは色々聞いたよ、やはり君は英雄だ。それにマリー姫、いやマリー君と呼ばせてもらおうか。少しだけ私にいい格好を付けさせてくれないかな? ここには私が目指す、正しい義と人間らしい情がある!」


 みんなが、私と先生の前に集まって両手を置いて魔力を指輪に込めた。


「今こそ世界を歪め、弄んだ非道の責任を、この女神に!」


「や、やめろ……アタシが悪かったって言ってるでしょ! もう、二度とこんな事しないからっ!」


 馬鹿女が何か言ってるが、みんなの人間としての光が輝くと、魂に怖気が走るような禍々しいドス黒いオーラの奔流が、蛇がとぐろを巻くように場に現れてそれは召喚された。


 身長3メートル以上、青い肌をして腕が4つあって目が3つある、黄金のマジックアイテムや、極太な蛇のネックレスとか身に着けてる、無茶苦茶怖そうな神様が呼び出される。


……なぜかほうき持っててハートのエプロン姿で。


「うわー、でーじ怖いのきたさー……」

「お、おいシミーズ? 俺達は何を呼び出したんだ」

「あれは天竺に言い伝えられる、破壊の神……我很害怕(おっかねえ)


……本当に破壊神来ちゃった。


 ていうか、どっかで見た漫画みたいに世界全体が震えてゴゴゴゴゴって音してるし、空間とかなんか歪んでるし、やっぱりやばい、とんでもない神様呼び出しちゃった。


 しかもエプロンに刺繍されたハートマーク雑ぅ!

 私や家庭科の授業の男子ですら、もっとマシな刺繍縫えるって。


 もしかしてアレ……自分で縫ったのかな?


「ちょ、何やこれ!? 誰や!? ワイを人間界に呼び出したんは! はよ家の掃除と洗濯終わらせんと、カミさんに……カーリーにしばかれるやろが! シヴァだけに」


 いや、なんなのって……こっちのセリフなんですけど。


 ていうかなんでこの神様エプロン姿?


 ああ、ほうき持ってるから家の前とか掃除してたのね……どんな家か知らなけど。


 そして先生と用心棒さんはその場で正座し始めたから、私とジローや龍もそれに倣って正座し、この場にいる全員も恐ろしい神のオーラに当てられて跪く。


「すんません、シヴァ様。お呼びだてしたのは、このフレイアってズベ公の件です。このズべ、破壊神様の領分をシカトして、勝手に世界の破壊とかしやがろうとしましたぜ?」


 すると、破壊神シヴァは地面に埋まって顔出したフレイアをじっと見据える。


 怖い……これ絶対怒ってるって、めっちゃ怖い顔付きになってフレイア睨みつけてるし。


「ほんまなん、それ?」


 フレイアは涙目になって、首を激しく横に振り出した。


「お前、確か神界を破門にされたフレイアやんけ。なんや知らんけど邪神化してるようやな? ワイの第三の目で、お前の言ってる事、嘘か本当かどうか簡単にわかるんやで? ほんまの事言ってみ? 怒らへんから、な?」


 にっこり破壊神が微笑むけど、絶対嘘だこれ。


 先生怒らなから、正直に言いなさい的なやつだ。


「だって、この世界を作ったのアタシなのに、みんなアタシ嫌ったから、懲らしめてやろうと思って」


「なんやコラ? そないなくだらん事でワイや他の神々や創造神はんにスジ通さんで? 神でものうなったくせして、勝手な真似しくさったんか? なめとんのかボケェ!!」


 ああ、やっぱりそうなる流れだ。


 なんていうか、せっかくこの馬鹿女が正直に受け答えしたのに、すごい大人の理不尽さを感じる。


 すると先生がにやりと悪い顔になった。


「シヴァ様ーなんかこいつ、この期に及んでシヴァ様を誘惑して、助かろうと考えてやがりますぜ?」


「ち、違う! アタシは!?」


 うわぁ、この女もこの女で往生際が悪すぎる。


 するとシヴァ神の青い顔が紫色になって、長くて真っ黒い髪の毛が逆立つ。


「ほーん、ワイが独神やったら抱いてやってもええで。せやけどな、ワイカミさんおるし、ゼウス君とかと違うて倫理観的に考えても下の神々や人間共に示しつかんし……浮気とかバレたらワイがカーリーからしばかれ……。ハッ!? まさかワイの事、嵌めよう思っとんのかこのガキ!」


「いや、そんな事微塵も考えてませんって! あいつが、アースラが勝手に!」


 この破壊神様、外だとすっごい怖い人なんだろうけど、家だと奥さんに頭が上がらないんだろうなあ。


 エプロン姿なのも、奥さんが怖いから家事とか全般やってるんだきっと。


 するとシヴァ神は私の方を向き、私は思わず背筋のあたりというか、魂が凍りついたような感覚になり、思わずビクッとなった。


「君のその鎧……そういうことか。よっしゃ、ほならパパパっと終わらせんとな! ほんでワイ、最近クリケットの他にゴルフにもハマっとんねん」


 そう言う事ってどう言う事なんだろう。

 ヘイムダルって神様に関係してるのかな。


「そうですか、お手前を拝見してえです」


 あ、先生めっちゃ悪い顔でにやにやしてる。


「ええで、ワイのいてまえショット、見せたろうやないけ」


 シヴァ神は持ってたほうきの柄を4本の手で握って、まるでプロゴルファーのように、綺麗なフォームでフレイアへ向けてほうきを振りかぶる。


「それでフレイア……ワレ、ボールな?」


 うげっ、この神様フレイアの頭でゴルフとかする気だわ……怖すぎる。


「あー、俺も昔やった事あるわー」

「え!?」


 こんな酷い事やった事あるのか先生も。


「もっとも、俺の場合相手にわからすためだし、そういう場合道具使うとこう……当てる箇所と加減が難しいのよね。当たり所と加減間違うとおっ死ぬから」


「先生も怖っ!」


 やはり勇者だけどヤクザ。

 怖すぎるこの人も。


「ちょ、待って! やめてください破壊神様! アタシにはアタシの深い理由が……」


「うっさいわボケェ! ええ加減にせえよゴラァ! オドレの所業も全部ワイにお見通しやドアホゥ!」


 怒鳴り声だけで、世界がビリビリ振動する。

 この神様、やっぱりやばいなんてもんじゃない。


「ま、ええわ。言い訳なら、冥界の法廷でヤマ君が聞くさかい。で、刑が確定するまでの間な、お前は無間地獄の拘置所で罪人の未決勾留っちゅうやつや……観念せい!」


「い、嫌……地獄行きなんてそんなの嫌! しかもヤマの担当する地獄とか、他の冥界神の地獄よりもヤバい場所……まだ魔界に堕ちた方がマシよおおおおおおおおお」」


「今更ガタガタ抜かすなガキコラァ! 魂ごと破壊せん事を、ワイに感謝せいこのアホンダラァ!!」


 シヴァ神が思いっきりほうきをスイングすると、フレイアの首が空高くすっ飛んで行き、あまりの威力なのか、フレイアの埋まった体が地面ごと衝撃で抉られた瞬間、天まで届く竜巻が発生して木っ端微塵になる。


 もう強いとか弱いとか、そんな話の次元じゃないくらいの力だ。


「ふいーアホを冥界の地獄へかっ飛ばしたわ。なんや? せっかくワイが、いてまえショット決めたのに、ギャラリーから拍手ないやんけ」


 あ、シヴァ神がほうき持って小首を傾げながら私達の方向いた。


「ナイスショーッ! お、おい、おめえら拍手しろ、拍手ぅ!」


 私達が呆気にとられる中、先生が焦りながらシヴァ神を褒め称えると、全員で怯えながら盛大に拍手し、シヴァ神は左手を高々と上げて、人差し指とか立てて拍手に応えた後、先生の方を向く。


「ほんで、マサヨシ君な? 例の件についてはヤマ君とヤミーちゃんからも話あったんやが、保留中や。今冥界がわやになっとっての、天界も状況証拠や精霊界の証言だけやと、大天使連中も動けん言うてたで? 冥界にアホ兄妹の身柄だけおっても、不正の全容はわからんし、証拠化するにも時間かかる。ほんでロキのアホは、討伐対象に依然変わりあれへん」


「へい。という事は、例の件はオーディンの悪さの明確な証拠を抑えねえとダメってやつですか?」


「せや、言うたらそれだけ最上級神は神界法と権力で守られてるっちゅうやつで、アレも名だたる神。きちんとした大義名分がないと、天界も動けんっちゅうこっちゃ。でな、現地時間がもうすぐ日付変わって0時や。オーディンの戦乙女(ワルキューレ)らと引き継ぎ終わったら、君は冥界に帰らなあかん。ワイがヤマ君の間に入って決めた件や……わかるやろ?」


「へい、わかっております」


 するとシヴァ神の第三の目が見開き、先生を見据えると、ニヤリと笑う。


「ほんま、君もゴンタくれなやっちゃなあー。まあええか、ワイとヤマ君の顔が潰れんように、そこんところあんじょう頼むで」


「へい、お任せくだせえ」


「それと面白半分に、君のなんちゃらってシステムに登録させてもろうたけどな、今度ワイ呼び出す時は事前に連絡よこさんと、オドレいわすぞ? ワイとまたクリケットしたくなければ、そこんとこも頼むわ。ほな」


 先生は立ち上がって腰を直角にして頭を下げて、シヴァ神の姿が消えるのを見送り、用が済んだ指輪を私に投げ渡した。


「すっごい怖かった……あれが破壊神ですか?」


「ああ、創造神さんの側近兼秘書してる大天使長さんと並んで、事実上の神界ナンバー2。創造神さんに代わって、世界の破壊とか神のワルさとか粛清しに行く最強にして最恐のお方よ。普段はしょうもない冗談ばっか言って、カミさんに頭上がらねえけどよ。あとは海にいるロキの巨人軍だが……あーあ、勝負になってねえや」


 私は海の方へ目を向ける。


「この悪魔、やばいでありんす! 今のわっちの装備じゃ勝てんせんでありんすううううううう」


「あははははは、鬼ごっこなのだ! タッチされた方が鬼なのだ!」


 海上ではベリアルという女の子が笑いながら、クジラやウミヘビのような巨大な海獣モンスターが死屍累々となってる中、屍の上で、ミドガルズオムと名乗ったロキの娘を追いかけ回してる。


 先生の言う通り勝負になってない。


 あ、グーパンチされたロキの娘が吹っ飛ばされた。


 すると空間にノイズが入ったと思ったら、ロキがミドガルズオムをお姫様抱っこするように受け止める。


「ほんと、お前は手間がかかってしょうがない娘だなあ。あー、そこの堕天使っぽい君? 君は見たことあるな。確か……そうだ、ルシファーの側近の一人だったよね? なんか体が縮んでるようだけど、人の娘をいじめるのやめてくれる?」


 ロキが右手を払うような動作をすると、ベリアルって子が、こちら側の港に吹っ飛ばされて仰向けに倒れ込んだ。


「なんの魔法かわからないけど目が回るのだー、景色がグルグルなのだー」


 一瞬で戦闘不能にされてしまった。

 やはり、あのロキは敵の中でも別格に強い。


 エリザベスのやつ、フレイアの馬鹿女に唆されたとはいえ、とんでもない化物をこの世界に呼び出したものだ。


「えっと、ミドガルズオム? お前、先に帰ってて。僕やる事あるから」


「何ででありんすか、お父様。わっちはまだ負けてんせん! それにお父様の大事な巨人軍のモンスターに多数の被害が出てしまっていんす」


 いや、どう見ても負けてた。

 追いかけ回されて、半べそかいてたあの子。


「うーん、僕にそう言う事言うといいの? この買い物袋に入ってる、フランソワって所のレストランでテイクアウトした、カエルカツレツあげないよ? あとウフマヨとか言うゆで卵みたいな料理も」


「そ、それは困るでありんす。お父様、意地悪しないでくんなまし。わっちは先に帰るでありんす」


「はい、じゃあこれ渡すから先に食べてて。フェンリルはもうご飯食べてるからさ。あー、それとモンスターは気にしなくていいよ? もう交配実験とか成功してて数も増えてるから」


 げっ、困るんですけど。


 勝手に私の国でモンスター増やされるとか、本当に勘弁なんですけど!


 こいつらを仮に倒しても、後始末とか本当に困るんでやめて欲しい。


 すると、ロキが私達の方に瞬間移動してやってきた。


「いやあ、君らなかなかやるじゃない? お陰で、僕の巨人軍に少なからずの被害とか出ちゃったよ。ていうか、さっきシヴァのおっさんがいた気がするけど? おっかないなあ」


「またお越しいただいてもいいんだぜ? クズ野郎」


「え? 勘弁してよ。この世界ごと破壊されちゃうじゃないか、前のユグドラシルみたいに。まあ、この世界が滅んでもいいなら呼べば?」


 にらみを利かす先生と、ヘラヘラ笑うロキが、今にも戦いそうな不穏な空気が流れる。


 けど、またあの神様を勝手に呼び出したら、多分先生が殺されそう。


 呼び出す時は事前に連絡しろって微妙に怒ってたし。


「チッ、まあいいや。で、てめえこの世界で何を企んでやがる? 多分オーディンをぶっ潰すことが目的だろうがよう」


「ピンポーン、当たりー。そういうわけでどうだろう? 敵の敵は味方って奴で僕と組んでオーディンを一緒に殺さない? 君らの目的もオーディンじゃない? そのほうが君達にとっても楽でしょ?」


 ロキと私達が手を組む?


 ま、まあ確かにそれもありっちゃありかもしれない。


 最上級神オーディンと私達は、多分敵対することになるだろうと思うし。


「あ? 野郎はしかるべき裁きって奴で大義名分作ってからケジメ取るから。で、てめーは神界の討伐対象だからよ、テメーの首を俺の親分である、閻魔大王様に差し出さなきゃダメなんだわ。ていうか俺がテメーと組んだのバレたら、俺が親分たちからケジメ取られんだろうがボケ」


「相変わらず頭が固いなあ君は。いいじゃん? バレなきゃ」


「いや、絶対に嫌だね。おめえそれで仮に俺と組んでオーディン潰した後は、嬉々として他の神連中に、あることない事密告(チンコロ)しまくって俺をハメる気がするしよ」


「あ、バレた? さすがアースラ、僕の事をよくわかってる」


……やっぱりこいつ、性格最悪すぎる。

 

 滅茶苦茶強いうえに性格最悪で頭いいとか、タチが悪すぎるし。


 するとロキが笑いながら空を指さすと、上空の星空がひび割れたようになり、雷鳴と共に何かが廃墟となったカリー市の瓦礫の山に振ってきた。


「と言っても、そろそろ君ともお別れの時間だね。奴らが来たよ、オーディン直轄にして戦闘の申し子、戦争狂のイカレた戦乙女達が」


 ちょ、戦乙女をイカレ呼ばわりした。


 あのロキがここまで言うなんて、どんな化物が来るんだ?


「数は1、2、3、5……9人か。魔力反応見ると全員が歴戦の手練れ。オーディンの馬鹿、完全に僕のこと世界ごと消しに来てるね。必死すぎでしょ、ウケるんだけど。けど数と戦力さえわかれば対策は取れる……じゃあね、アースラ」


「てめえ、待てコラ!」


 ロキはヘラヘラ笑いながら、瞬間移動の魔法を使って姿を消した。


 そうか、きっとロキは相手の戦力を見極めに来たんだ。


「ああ、今マリーが思った通りだ。そんで俺の引き継ぎ相手がおいでなすったようだな。どれ、どんな女共が来てるんだろうなあ?」


 先生がいやらしい顔で見つめる先に9つの人影が見えた。


「槍のゲイラ推参!」

「槌のぉ! スルーズだぁ!」

「剣のオルトリンデ、こ、ここにですぅ」

「音のフレックだぞ! やっほー!」

「鈍器のゴンドール……」

「火器のレギンレイヴであります!」

「魔法のエイラ参上しました」

「智のサングリーズでございます」


 ……えっと、なんだこいつら……。


 全員美人だしかわいいけど、私がヘイムダルの力でつけてるような鎧よりもなんか露出度が高いのをまとってるのもいるし、特撮ヒーローっぽい感じと言うか、美少女戦士みたいなポージングしてるというか、記念撮影でふざけた格好をするような女子の集まりっぽい感じがして、なんかその……ダサい。


「……隊長ブリュンヒルデ見参! 我らオーディン親衛隊、戦乙女隊(ワルキューレ)参上」


 中央の鉄仮面つけた女がポーズを取ったら、後ろの瓦礫の山がなんか爆発した。


「あ……うん、えーと」


 思わず私は言葉に詰まり、みんなも口をポカーンと開けている。


 鉄仮面みたいなので顔を覆って、白い羽が背中に生えてる全身鎧女が中心に位置し、右手の人差し指で天を指さしてポーズしてるけど、これカッコいいと思ってるのかしら?


 それに、この声うっすらと覚えがあるような。


「……顔は俺好みの激マブ揃いみたいだけどよ、なんだありゃあ? 仮面ラ●ダーとかゴレ●ジャーのパクリかコラ?」


 先生が思わず呆れ顔で呟くと、中央にいたブリュンヒルデって名乗った女が、左手で仮面を抑えながらこちらに近寄ってくる。


 コホーコホーとなんかSF映画の悪役みたいな、独特な息遣いでなんかちょっと不気味だしキモイ。


「女神ヤミーの勇者とその一団よ、ニュートピア救済の引継ぎに参りまし……あ」


「あ……」


 ブリュンヒルデと名乗った女は、瓦礫につまずいてこけた。


 なんていうかその、ドジっ子すぎる。


 すると手で覆ってた仮面が取れて、顔を見上げるが……え!?


「あー姉上の仮面が」

「姉貴さー、何やってんだよ?」

「え、えーとお姉さま、とれてますぅ」

「いや、これも我らが姉様の智謀かも」


 確かに仮面が割れて取れたけど、このブリュンヒルデと名乗った戦乙女……。


 なんで彼女がここに……だって彼女は。


「あなたは……天界の天使サキエル? 何であなたが、ここに」


「え゛? あなたはなぜその名を」


 そう、彼女は私をこの世界に送った張本人。

 智天使サキエルその人だった。

次回、第二章ラストエピソードです。

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