第71話 世界救済の陰謀 前編
「マリー、どうやらおめえさんが知ってる女みてえだな?」
先生は腕を組みながら、この場に集まった戦乙女とブリュンヒルデこと、サキエルをじっと見据えながら私に訳を聞いてきた。
「はい、彼女が私をこの世界にスキルを与えて転生させた天界の天使サキエル……ですけど、なぜかオーディンの戦乙女、ブリュンヒルデって名乗ってて、わけがわからない」
すると、戦乙女たちが先生を指さしてキャーキャー言い始める。
「すごーいですぅ! 例の噂の勇者ですぅ」
「うん、初めて見た。結構いい男じゃん」
「あ、サイン貰ってくるであります」
「ずるいわよ、レギンレイヴ!」
「レギン……お姉様の許可とってから……」
なにこれ?
まるで、アイドルとか有名人見た女子高生の集まりっぽいノリっていうか……。
先生、本当に勇者としてかなり有名人なんだ。
「へっ、まあ俺様クラスの勇者なら当然だろ? あの女共、口説いたら服とか脱いでくれそうだよな」
いや、それはどうだろう……。
根本的に女性への接し方とか、考え方とか、この人やっぱり何かおかしい気がする。
するとサキエルことブリュンヒルデが、こちらに歩いてきて、私と先生に向き合った。
「あのー、そこのあなた? なんで私の事をサキエルという名で呼んだのか、理由を簡潔に述べてください。それと冥界の勇者よ……我々に状況説明を」
……っこいつ!
自分が転生させた人間を忘れ去ってる。
あんたのせいで、転生後の人生16年過ぎた辺りで、超ハードモードなんですけど。
国家間や神の陰謀に巻き込まれたり、何度も死にそうになって最悪なんですけど!
「私の名前は高山真里です。あなたがこの世界に転生させた」
「え? えーと……どちら様でしたっけ?」
「だぁかぁら、以前日本で女子高生してて、天界の得々ポイント制度を還元して、王女とかに転生させて欲しいって言った」
サキエルは、小首を傾げて一応は思い出す努力をしているようだ。
「ほら、歴代勇者の話とか、召喚魔法について教えてくれたでしょ? ステータス画面開いたら、なんか知らなけど、あなた召喚不可って表示されたけど」
「あー、なんとなくですが、覚えているような、覚えてないような。確かに私は天界の智天使相当の身分で、上級天使資格習得のために実習していますが」
覚えてるのか、覚えてないのかどっちなのよ!
ていうか、天使って資格習得でなれるんだ。
教師とか看護師みたいな国家資格的なものなのかな?
すると、先生が私の前に立つ。
「なるほど、そちらさんがマリーを転生させた天使で、戦乙女の代表ってやつですかい? アタシの名前は勇者マサヨシって言いますわ。立ち話もなんですから、ちょっと色々お話しましょうか」
「!? ゆ、勇者マサヨシ……天界や神界所属の勇者達を差し置いて、活動から短期間に関わらず多大な実績を上げている、最強勇者候補。魔界の概念すら消滅させたほどの、圧倒的な暴力と魔力と組織力を持つ暴力団の残虐勇者。上級天使研修時代に、私は彼の記録を全てとってた。お、お父様からこんなやばい化物が、この世界に来てるなんて聞いてない……」
あ、サキエルの顔面が真っ青になってる。
そういえば、うろ覚えだけど確か彼女から先生の情報聞いてて、現役で最強の勇者ってどんな人ですかって聞いたら、情報にモザイクかかってた、極秘ファイル的なものを見せられたんだっけ?
でも、私にあれ見せたくらいだから極秘の意味ないと思うけど。
それにこの人、先生の事を人間社会の暗黒街が生み出した闇そのものって、無茶苦茶言ってた気がするし……あ、先生が、にやにや悪い笑みを浮かべ始めてる。
あーあれはきっと何か企んでる、何か悪いことを。
まさか、例の絵図とやらを本気でやる気じゃ……。
「まあ、当然だろ? 俺を実績的にも力的にもしのぐ、勇者や救世主の先輩らなんてそういねえしな。俺の事を知ってるんなら話は早いわ。おう、二代目! テーブルと椅子こっちに運んでこい。客人対応を除いて、組の主力やサタナキアの連中は、一旦元の世界に帰らせとけ」
「わかった親父。おいおめえら、相談役兼総裁がこの場を仕切るからよ、ガイとブロンドにスルドはノルドへ一旦引いてくれ。他の奴らは船が修理出来次第帰っていい、ご苦労だったな」
そんなわけで、私達は廃墟になったカリー市に建てられたテントの中で、すごい豪勢な長机を挟んで、戦女神たちと話し合いすることとなった。
ここまでは先生の計画通りだけど……。
「それじゃあこの会合、極悪組二代目ニコ・マサト・ササキが司会進行を仕切らせていただきやす。皆さま、ようござんすか?」
用心棒さんが司会進行役を務めるようだ。
すると、戦乙女たちがこちらを見てなんかぼそぼそ言ってる。
えーっと、バレないように感覚強化でちょっと聞いてみようっと。
「ここにいるの現地人にしてはイケてません?」
「ああ、エイラ。あたしは色黒のパーマの奴が好みかな?」
「スルーズ姉様、真面目にしないと怒られますぅ」
「愚妹達、少しは緊張感と言うものを」
「ゲイラ姉様はヒゲのマッチョ好き……」
「お、おいゴンドゥル! お前っ」
「私は青髪の男も悪くないですわ」
あー、何だろうこのガールズトークっぽい感じ。
誰が好きとか好みだとか、緊張感のかけらも無い事言ってるし。
あ、今サキエルが特大のため息ついた。
「この子達、何しに来たと思ってるんだろう? 戦乙女の中でも戦闘力はトップクラスなのに……。我々は父たるオーディンより命じられて、あの伝説の極悪神ロキが復活した世界に来てるのに、緊張感がまるでない」
なんか、サキエル苦労してそう。
今のところロキの言う通り、イカレてる感じもなく戦闘狂とかって感じもしないし、武器とか鎧装備してる以外は、普通の女の子達っぽい。
「彼ら魅力的な肉体してるな」
「ああ、ヤリてえなー、体が疼いちまったぜ」
「ええ、相性って大事ですからね」
「あたしはあの勇者とヤリたいぞ!」
「ヤルからには気持ちよくないと」
「……うん、面白くないと」
「なんか金持ってそうだし飽きなさそう」
「道具とか使ってもいいかしらね」
うあっ、顔を赤らめてこっちの男共とか見てるし、先生達含めてドヤ顔し始めてる。
ていうか、相性って何? 気持ちよい事って何なの? 道具って何!?
私、そんなこと知らな……。
「ああ、戦ったら面白そうなのばかりだぜ」
「お手合わせ願いたいな、特にあの勇者と」
「あの殿方達を見るに、資金力潤沢と言う事は戦力もそこそこありそうですわね」
「強い奴と戦いに来たのに、戦争の大半が終わったと聞いてガッカリだぞ!」
……あー、前言撤回。
なんかやっぱ変だこいつら。
先生含めた男達もなんかドン引きしてるし。
普通の女子っぽいって思ったけど、全然普通じゃなさそう。
すると眼鏡かけてて、栗色の髪の毛をおさげにしてる知的な感じの戦乙女の一人が手を挙げる。
「サングリーズと申しますが、ご質問を。あなたはどのような権限で、最上級神オーディンの親衛隊たる我らと勇者の間に入っているのですか? それに勇者と我らの引き継ぎに、現地人がいる意味がわかりません」
「すみません、オイラの説明不足でしたね。こう見えて一応、天界の救世主の肩書を持ってまして。あくまでもこちらは天界側の第三者として、円滑な引き継ぎとやらを手伝わさせていただきます」
「そう言う事ですわ。それで、今この場にいるのはこの世界の国家代表者。そちらさんに、きちんとした申し送りをするために、あたくしが同席させやした。何か問題でも?」
先生もよく言う。
あの女達に、まともな引き継ぎとかする気が最初からないのに。
「なるほど、かしこまりました。それならばそれで結構です。ではこの世界の現状の説明を……」
「現状説明の前に、そちらさんのきちんとした目的ってのを、表明するのがスジじゃねえですか? 何をもって世界救済にするか、そちらさんの明確な目的ってのを知りてえですねえ」
とまあ、先生はこう言ってるけど、こっちはオーディンの目的を知っている。
オーディンの目的は、この世界で戦乱を巻き起こして、人間の信仰エネルギーや魂を糧にして、自分達の神の一派の力を増すため。
そう、先生はウンディーネを仲間にする前に言ってた。
「秘策その3だがまずな、ハッキリ言って俺は戦乙女とかいう馬鹿アマに、まともな引き継ぎなんか最初からする気ねえ。むしろ落ち度とか突きまくって、こっちの有利な条件を呑ませてやるわ」
「有利な条件……ですか?」
「ああ、俺の目的は人間なめくさったワルをぶっ潰す事よ。ついでに、救済後はこの世界で俺が自由に商売とか打てればいいかなって腹づもりさ」
そう、先生は当初フレイアの陰謀で私が召喚したようなものだけど、女神ヤミーから正式に活動要請が出てる。
本来ならば先生やもう一人の勇者、ロバートさんが共同で事にあたる筈だったのに、女神ヤミーの上司でもある、兄神の閻魔大王とオーディンの話し合いで戦乙女達の派遣が決まり、先生達は引く予定になったけども、戦乙女達の落ち度が仮にあった場合はどうなるか?
彼女達は、自分達の上司のオーディンに泥を塗る事になり、これを利用して私達の有利な条件を提示できるという筋書きに持っていくのが、今回の話し合いの趣旨となる。
「それについては、このブリュンヒルデからお話しさせていただきます。我々の目的は復活した破滅神ロキの討伐及び、邪神に認定されたフレイと元女神フレイアの身柄を抑える事、そして世界の救済です」
「おお、そうですかい。けど、それについてはですねえ、こちらはこの世界のここにいる面子で、すでにフレイ及びフレイアの討伐と、身柄の確保は終わってんですわ。あと人間の戦争についても終結させやした」
「え?」
「なんだ、スレイプニルから聞いてませんでしたか? うちらはもう、ロキの討伐以外は、目的の大半を達成してるんですよ」
戦乙女達は、動揺してるようで互いに顔を見合わせてる。
「話と違くね? アタシこの世界でロキ以外にも、人間達や精霊人の大戦が起きるから介入しろって聞いたぜ?」
「邪神認定されたフレイ神と、戦乙女隊の元隊長フレイアを討伐して、我々で身柄を抑えろと言う命令だったのに」
「……合流する筈だった神馬スレイプニルが来てない……」
申し訳ないけど、そのスレイプニルはフランソワのパリス郊外に置いてったし、今日の今日で一気に解決した話を、離れている彼がテレパシーとか何かのスキルあっても報告のしようがない。
一方、こちら側は。
「兄貴、いや勇者マサヨシのご尽力により、私どもは大いに助かりましたさー」
「そうだなあ、あんた方に来てもらって悪いんだが、我がフランソワも半世紀以上続いた戦争終結をする事ができたので」
「我がバブイールとしましては、縁も義理もないあなた方に来られても、そちらの救済対象である、この世界の我ら人間側が苦慮する面が多々あるかと」
まあそうなるわよね。
今更、来てもらってもって感じ。
「私の国もロキとその関係者に不法占拠されている現状ですが、勇者マサヨシ様と各国の有力者で、事態が好転しつつあります。それに私と勇者様は師弟関係ですけど、そちら側の事はよく知らなくて別に来てもらっても……」
「んだよ、現地人風情が偉そうに」
あ、でっかいハンマー持ってた、金髪でロングヘヤーの大柄の女の子が悪態ついた。
アホだなあこの子、そう言うこと言うと……。
「おい、ちょっと待てコラ? そこのおめえ、今なんて言った?」
ほら、先生に付け入る隙を与えちゃった。
「あん? 現地人風情が偉そうにすんなって言っただけだよ」
「ちょっと、スルーズ! よしなさいって」
サキエルが嗜めるけど、先生が机をバンと叩く。
「なんだ小娘オラァ!? こいつらはよお、俺の仲間と弟子や舎弟だ。コイツらコケにするって事は、俺の事もなめてやがんだろ? 俺をなめてるって事は、俺の神と親分も下に見てるって事だよな? ええ、おい? なめてんのかゴラァ!!」
「いや、別にあたしはそんなつもりで言ったんじゃ……ていうかさ、あんたの弟子とか舎弟とかあっちにいるの知らないし」
「そう言う口の利き方からなめくさってんだよ! こっちが誠意見せて引き継ぎの場も用意して、気を遣ってやってんのに、おめえらこの俺に因縁付けに来やがったのか!?」
すごい気迫だ。
多分先生は、転生前もこんな感じで一歩も引かない交渉とか、暴力団抗争とかやってきたんだ。
それにこれは、先生の大義名分作り。
相手の落ち度をついて、場の主導権をとり、仮に相手側が開き直って交渉決裂になった場合は、私達はオーディンと対決出来るという大義名分の筋書きに持っていける。
当然先生の親分さんである閻魔大王や、間に入ってくれたという、あのヤバい力を持ってる破壊神シヴァも手を貸してくれるはずだ。
だが向こうにその意思がなく、そうでないならば……。
「そ、それについては我々には、そちらを卑下する気は毛頭ございません。戦乙女代表のブリュンヒルデが代わって頭を下げますんで、どうか」
そう、こうなりたくなければ頭を下げて無礼を詫びるのが、彼女達にとっては最善の手段。
ていうか、先生の活動を見てたサキエルの認識からすると、多分先生は怒らせたらヤバイ人扱いだろう。
「よしわかった。今のは水に流してやるが次はねえぞ?」
詫びてきた相手側の揚げ足を安易に追求すれば、逆にこちら側が落ち度を取られる場合があるとも、経験豊富な先生は言っていた。
そして、こちらが切り崩しに来たのに、しれっと恩を売るかのように落ち度を許してやるって言うのは、こちらが交渉の主導権を握っているということ。
一旦先生のペースになった以上、この流れを崩すのは難しい。
「で、この世界の首脳陣がこう言ってんだ。おめえさん達がまず、こいつらに誠意とか見せねえとダメなんじゃねえか?」
出た、誠意を見せろ。
先生の常套句で、こちら側の要求を一切告げずに、相手にこっちの価値観を飲ませようとする、先生のヤクザ式交渉術。
「恐れいりますが、誠意とはそちらへ、どのようにすればよろしいでしょうか?」
サングリーズと言う戦乙女が逆にこっちに聞いてくるが、普通はこう切り返すしかない。
安易に誠意を見せると回答すると、それこそ先生が用意した要求を全て呑むという名の絵図に、ハマる事になる。
「そうだなあ、おめえら全員俺の女になれ」
「え? ちょ!」
「はあ? んだコラ?」
「へ? えぇ……」
「本気で言ってるの?」
「そのぉ……ごめんなさいですぅ」
「お断りします」
「お友達からよろしくであります!」
「……と言うのは冗談で、最低でも今すぐ巨人軍ってのを壊滅させてロキの首獲ってくるのが、誠意ってもんだろ? 無論、こっちの世界の人間に、犠牲者を出さずにうめー事よお。違うか?」
いや、冗談に聞こえなかった。
だって先生は確か言ってたし。
「秘策その4だけどよ、女が来るなら話が早えわ。口説いて俺の女にしちまっていいなあ」
って言ってたもの。
多分それをしれっとやろうと、真面目な顔して口説いたけど、反応が微妙だったから、それっぽく誤魔化して無理難題を彼女達に強いる方向に切り替えた気がする。
「それは……」
「なんだぁ? 出来ねえのかよ? おめえら何しにこっちに来やがったんだ素人か?」
これにジローも、もっともらしく頷く。
「兄貴の親方が決めた方針に、そちらが割り込んで、無理なスジを強引に通したって聞いてます。あんしぃ、手土産くらい用意するのがスジだばー?」
「まずは我々に、そちらの力を示していただきたい。そうでなければ、そちらを信頼する事は難しいかと思われるが?」
ジローも龍も、うまくこちらに歩調を合わせてくれてる。
そう、私達の力を温存しながら、ロキとオーディン間でお互いを潰し合わせる計画も選択肢に入ってるから、断念するもよし、ロキとつぶし合うもよしと、私達にはどっちに転んでもおいしい。
「なあレディズ、そっちのプランを教えてくれよ。あんたら俺達の世界を救済しに来たんだろ?」
デリンジャーが投げかけると、サキエルはサングリーズって子の方を見たが、彼女も何か考え込んでいる様子だし、方針をどうするか決めかねてるっぽい。
「逆に聞きますが、あなた方はロキの陣営に手をこまねいているのではないかしら? ねえ」
杖を持った、緑髪をツインテールにしたエイラって戦乙女が私達を小馬鹿にするように言ってきた。
「自分達が勝てないから、ロキの対処を我々に任せようとしてるように見えるな」
「ビビってんじゃねえのか? 男のくせによ」
槍のゲイラと名乗った、プラチナブロンドをショートカットにした戦乙女と、さっき悪態ついたスルーズと言うアホの子もこれに続く。
「馬鹿かおめえら、海見ろ海」
戦乙女達とテントを一旦出て、先生は洋上を指し示すと、戦乙女達は、死屍累々の海獣モンスターの死骸を見て絶句する。
「もうちょっとで、ミドガルズオムって敵の幹部の命取れるところだったんだわ。そんでよ、救援しにきたロキの野郎をぶっ潰そうって思ったら、どっかの誰かさんらが来ちまったから逃げられちまった。使えねえよなあ、どっかの誰かさん達はよお」
すると、マスケットライフルのような銃を持った、オレンジ髪の胸の大きい子が、マジックアイテムっぽい眼鏡をかけて周囲を見渡すと、顔面蒼白になる。
「間違いありません、お姉さま達。ここが廃墟になってるのも、モンスター共がやられたのも、凶悪な残存魔力によるものであります! そしてこの魔力……我々は覚えがある筈」
「ええ、レギン。これは初代隊長にして今回討伐対象となったフレイアの残存魔力……そして、うっ! 何だこのどす黒い、名だたる最上級神を越えた魔力の奔流は……ここで一体何が、まさか!?」
先生の方を戦乙女たちが一斉に注目した。
「ああそれね、フレイアをシヴァ神さん立会いの下よ、冥界送りにした。それで、あんた天界にいた時に俺の記録とってたんだっけ? じゃあ、俺がこういうことが出来る男だってわかってんよな?」
「いくら噂の勇者が強くてもそこまで」
「お姉さま、どうなんですか?」
サキエルは、先生の方を見ると先生はとびっきり邪悪な顔でニヤリと笑う。
「か、可能性は高いです。お前達は知らないと思うけど、この勇者の力はそれほどまで強い」
「いやあ、女の子に言われると照れちまうなあ? けどそれとこれとは話が別よ。俺がロキやり損ねた原因作った間抜け共は、どう落とし前つけてくれるのかな?」
先生は嘘は言ってない。
私達がフレイアを倒したのも事実。
ミドガルズオムってロキの娘を追い詰めたのも事実で、さっきまでロキと対峙してた事も事実だし。
「回答ない? あっそう。で、俺さ……ある命令を受けてんのよ親分に。なあ? サキエルことブリュンヒルデさんよお。他ならぬおめえさんの事で」
「何でしょうか勇者よ」
「おめえさんとフレイアが、関係あるんじゃねえかって嫌疑が、うちの親分からかけられてんのよね? 天界から捜索願い出されてて、事情聴取したら天界に引き渡せって言われてんだ」
……あっ、そういえばそうだった。
閻魔大王、彼女のこと疑ってたっけ。
するとサキエルは、めっちゃ冷や汗を額に掻き始める。
「なあなあ、姉貴? その……天界に届出とかちゃんと出したのかよ?」
「姉上、確か天界で上級天使の実習中だったはず。その……父上より招集命令が下された時、天界に話を通したと思ってたんですが?」
「フレックも能天使音楽隊の実習だったけど、ちゃんと許可とったぞ!」
他の戦乙女達が、サキエルに焦って事情を聞くと、青い顔してサキエルは戦乙女達に振り返った。
「お父様より、戦乙女隊の緊急招集が下されたんで、手続き後回しで急いで来ちゃったから……その……許可申請とか大天使長様に報告するの忘れてた」
「はああああああ! 姉上! それは!?」
「何やってんだよ姉貴、それやばいって!」
「お父様に怒られるですぅ……」
えーと、なんとなく私達の預かり知らぬ事で、彼女達がヤバイ事態になってるのはわかった。
けど、そんなにヤバイ事なんだろうか?
「まあそうだよな。極道でも親分や組から、緊急の招集命令とか待機命令降ったら、まずそれに最優先で応じるのがスジよ。けどこれが、他所の組織で仮に客人身分だったり修行中の身だった場合、元の親分から命令受けても、当然そこの修行してる組織や旅先の組織に報告いるよなあ? 組織間ですり合わせってのがいるからさ。それでヘタ打てば、最悪両方からケジメ案件よ」
「えーと、確かに。そうだと思います」
「ったく、報告連絡相談は極道だろうがカタギだろうが、社会人として当たり前の事だろっての。まあいいや、戦乙女ちゃん達さあ、おめえさん達だけどいいか?」
先生が戦乙女全員を睨みつける。
「なんか態度悪いし、世の中なめてるし、こんな事でヘタ打つようじゃ、とても世界救済とか出来るように思えねえんだけど? もうね、あとは俺がこの世界救済するから、帰れバカヤロー」
「それは……」
すると、サキエルの回答を遮り龍が手を上げる。
「なるほど、あなた方の事情は理解できた。ここは一つ、そちらの体制が整うまで、あなた方の活動は延期されてはどうだろうかな?」
「やっさ、それがいいと思うよー」
「だな、中途半端な状況でシミーズと交代されても困る」
要は遠回しに帰れって言ってるようなもの。
「あー、ブリュンヒルデさんだっけ? それ、やっぱりまずいって。オイラがお連れするんで、天界まで行きましょうや」
「ちょ! ちょっと待ってください、お父様に連絡をとるんで!」
すると馬の蹄の音がこちらに迫ってきた。
アレは……。
「ヒヒーン……心臓バクバク言ってる……。足が痛い、もう限界……ただの馬なのに無理したから死ぬって……」
「スレイプニル!」
うそ、走ってきたんだここまで。
パリスからかなり距離あるのに、全速力で。
あ、先生が思いっきり舌打ちした。
それに口に咥えてるのは水晶玉。
「控えるのだ戦乙女たちよ! ゼエゼエ……オーディン様より通信である!」
次回で第二章終了しようと思ったのですが、次章に続くエピローグの第三者視点を入れます。
よって次回とその次で第二章終了とさせていただきます(ペコリ)




