第61話 絵図を描く者達
ごきげんよう、マリー・ロンディウム・ジーク・ローズ・ヴィクトリーです。
長いよね、私もたまに舌を噛むし、マリーって呼んでほしい、転生前も真里って名前だったし。
先生が操縦する、旧魔王軍の小型爆撃機でフランソワの北東部、ホランドとも国境を接する軍港のカリー市に向かっている。
私が先生と呼んでるのは、転生前は人斬りマサとも呼ばれた極悪非道なヤクザの大親分してて、転生後は数多の世界を救い続ける、冥界所属の最強勇者マサヨシ。
冥界の上級神ヤミーと、冥界の最上級神、閻魔大王ヤマに仕える神の戦士……ヤクザだけど。
「嫌な予感がするぜ、マリー気合入れておけ。魔力と体力の回復は済んだな?」
「はい、私も何か胸騒ぎがします」
そう、なんとも言えないこの胸の騒めき。
先生とこの世界で戦い続けて、第六感と言うか、勘が尋常もないくらい研ぎ澄まされていた。
「しかし、この髪の毛鬱陶しいなあ……。切りてえ、また伸びてきたし。ちくしょう、転生前みてえに、アイパーやパンチは無理でも、角刈りとかにしてえ。極道の基本は短髪黒髪なのに、どうしてこの髪型で世界救っちまったかなあ」
先生は肩まで伸びた女子のような美しい黒髪を、舌打ちしながら右手で払う。
「すっきり切ればいいじゃないですか、私も手伝って……」
「そういうわけにもいかねえんだよ、イメージってのがあってだな。俺が救った世界、もうこの髪型で銅像とか作ってやがるし、髪型変えたらその……困るだろ? 救った奴らも一瞬誰だコイツってなるし、イメージを保つのも大変なのさ。ぶっちゃけ、以前短く頭を刈ったら、孫から知らない人扱いされて、泣かれたからね」
そうか、自分のイメージを保つのって大変なんだ。
そこまで勇者って人に気を遣うのか。
この人から学ぶ点は沢山ある、気軽に学べない悪いこともその……沢山あるけれど。
「さあて見えてきた、フランソワとヴィクトリー国境のカリー市だ……なんじゃあこりゃあ!?」
「えぇ……」
先生とコックピットで見た映像は、もう人が生存してないほど荒れてて、ボロボロにされた街並み。
ヴィクトリー軍もノルド軍も亜人も、モンスターも、等しく死を迎え、あたりは静寂に包まれていた。
「着陸するぞ、喧嘩の用意しておけ。やべえ予感がビンビンしてきやがる」
私達はなんともいえぬ死の匂い、死臭が立ち込めたカリー市から少し離れた場所に着陸し、吐き気を堪えながら感覚ブーストの魔法を使うと、話し声が聞こえてくる。
私と先生は市街地を抜けて、話し声がうっすら聞こえてきた波止場に向かった。
そこには、ヴィクトリーの軍艦が炎上してて、嘘……。
その場にいたのは、まるで魔女のような格好をしたエリザベスと、ロレーヌの皇太子フレドリッヒが宙に浮かんで戦場を見下ろしており、エリザベスを庇うように、槍を手にした黒騎士エドワードことアレクセイと、エドワード黒騎士団が集まっており、私達は気配を消して、港の倉庫の陰に身をひそめた。
「お前達は残存兵力を連れ、まだ無事な軍艦に乗ってエリザベス陛下をお連れし、本国に帰還せよ! このロレーヌの皇太子は私が対処する。陛下、ここは危険です、我が騎士団と撤退を!」
「心配無用です、エドワード。私は用があってここに来ました。あなた方こそ、先にヴィクトリー王国に帰還を命じます。ノルド帝国が戦争を中止し、我が軍にこれほどの損害が出た以上致し方ありません」
「は! それではこのエドワード、陛下の騎士として護衛いたします! 司令官として命ずる、一旦引くのだ騎士団及び海兵達よ!」
ヴィクトリー王国軍は、負傷者を連れて敗走していく。
そうか、上空のフレドリッヒがヴィクトリーとノルドの連合軍と、モンスター集団を蹴散らしたんだ。
豆腐メンタルだけど、さすが一国の軍事力に匹敵するとまで、言われているだけはあるが……。
騎士や海兵達が、廃墟と化したカリーから負傷者を連れて撤退して行き、この場にエリザベスとエドワードだけが残り、フレドリッヒが地面に降り立つ。
「我が子孫よ、俺の言う通り兵を引いてくれて助かった。今の俺はロレーヌと言う国の所属で、お前達は自分達をヴィクトリーと言ってるようだが、元は俺のジークフリードの兵卒や騎士共ゆえ。この依り代のように、いかに戦場と言えど、我が子孫たちを殺してまわるのは気分の良いものではない」
「兵は引かせました。約束通り、女神フレイアを呼んでいただきますでしょうか? フレドリッヒ・ジーク・フォン・ロレーヌ……いえ、英雄ジーク・フリード様」
え!? 今なんて!?
「しかし、この俺が復活したというのにこの世界は……まだ醜く争っているのか? 俺が生れた地球世界のように。仕方ない、また俺が英雄になるしかないな。フレイア様、この者らをいかがしましょう?」
その時、黒いフードに黒いローブに身を包んだ人物が現れた。
「控えよエドワードよ! ロキめ、アタシの計画をぶち壊そうとしたけど、そうはいかないわ! 地球世界ではアッティラと呼ばれ、この世界ではジークと呼ばれる、アタシの最愛にして最強の救世主にして英雄よ、このエリザベスと言う女は私に危害を加える気、ロキの手先を退けよ!」
この声はまさか……私の侍女ルイーダ!?
なぜ彼女が?
まさか彼女こそが女神フレイア?
全然状況がわからない。
フレドリッヒが英雄ジークと呼ばれて、なんなんだこの状況。
先生は自身の唇に人差し指を当て、私に沈黙を促す。
「今はまだ様子を確認するぞ。それに、あの黒いの着てるのが元神のフレイア。神界から討伐命令が出てるワルだろう。先に探りいれるのが先決だ」
先生は彼らの話を聞きながら、冥界魔法の深淵で心を読む気だ。
情報不足はこちらの隙になると、彼が口酸っぱく言ってる事。
「なるほどね……そういう事かい。クズ野郎らめ、人間の人生を、魂を弄びやがって」
「何かわかったんですか先生? 彼らの事が?」
先生は頷いて、黒のローブの女をじろりと睨む。
「ああ、この世界の絵図の大半を描いた奴らが、この場に勢ぞろいってやつだ」
やはり彼女が女神フレイア。
この世界の神にして、先生たちによって人間にされて、この世界で暗躍していた存在。
「ようやく現れたか。殺す、フレイアめ……よくも私の家族を、私の国をよくも」
エリザベスはフレイアを睨みつけて、魔力を高めるがなぜエリザベスがフレイアを!?
「えっと……彼女達は手を組んでいた筈じゃなかったの? わけがわからない、どうなってるの、この状況」
「シーッ、黙って見てろ……勘づかれる。理由はわからねえが、仲間割れしてやがんだろ」
エリザベスは宙に浮き、右手と左手に魔力を集中して……。
何だこの魔力!?
まるでこの世界そのものが振動するような……絶大な魔力の波動を、あの女から感じる。
「エドワード、退くのです! 吹き飛べこの性悪ビッチが! 私が新たに得た力、重イオンのプラズマの炎で消えてなくなるがいい! 彩層閃光」
フレイアの周囲に電子の結界が張られた後、炎の光が収縮して結界内部で大爆発を起こす。
が、エリザベスの魔法をかわし、フレイアを庇うように、彼女を腰に抱えたフレドリッヒが、鉄塊のような剣をエリザベスに向ける。
「まったく困った我が子孫だ。なるほど、フレイア様に恨みを抱いていたか? 俺を利用してフレイア様を呼び出すとは。我が女神フレイアの偉大さがわからぬ不心得者には、仕置きが必要だな」
するとフレドリッヒはフレイアを抱えながら、瞬間移動したかのような速さで、片手で持った巨大な剣を、まるでハリセンのようにしてエリザベスの頭を思いっきりひっぱたき、一瞬で昏倒させてしまった。
あれだ、なんらかの手段で強大な力をエリザベスは得たけど、ゲームで言う所の経験値というか戦闘経験が足りなさ過ぎて隙だらけで、いくらステータスをアップさせても本当に強い敵には勝てないってやつだきっと。
「野郎……やべえな。俺が戦った時のガキじゃねえ……別のやべえ野郎だ」
先生はぼそりと呟くが、確かに。
あのどこか純朴で甘さがあったフレドリッヒじゃなく、口調も何か大人びた感じがして、まるで別人のような雰囲気がする。
すると、槍を構えたエドワードがフレドリッヒに対峙した。
「ロレーヌの皇太子よ、そしてフレイア様、一体これは……何が起きたというのですか?」
抱えられていたフレイアが地面に降り立ち、顔を覆ったフードを取ると、まさしく私の侍女だったルイーダだった。
そしてエドワードことアレクセイは、フレイアの正体を最初から知っていた?
「私のエドワードよ、英雄が復活したのです。私の自慢の英雄ジークの魂が、この世に蘇ったのですよ」
「その髪の色と瞳、そして耳は……確かハイエルフの末裔、スレイブの民か。なるほど、我が神フレイアに忠誠を誓っているのならば、その槍を収めるがよい」
すると、携帯のバイブレーションのような音がその場で響く。
あれは魔法の水晶玉の着信。
「失礼します、フレイア様。私の手の者からの着信ですが、通話に応じても?」
「ええどうぞ、エドワード」
「ふ、俺がこの世界でフレイア様と開発した魔法の水晶玉は未来でも使われているわけか。アレは便利なものだ」
エドワードは水晶玉で通話し始めた。
なんてしゃべってんだろう?
全然意味が解らない。
この世界一般の言葉じゃなく、何語?
「失礼しました、フレイア様。英雄たるジーク帝が蘇った事理解はしましたが、私とエリザベス陛下はどうすればよろしいのですか?」
エドワードに問いを投げかけられたフレイアは、フレドリッヒ……。
いや、英雄ジークの記憶と魂を取り戻した彼を見やった。
「うむ、このエリザベスと言う娘は、我が子孫が作った国ロレーヌに連れ帰り、フレイア様の偉大さを教えねばなるまい。それまでの間、ヴィクトリーはどうしたものか……」
「かしこまりました、それではこのエドワードめがヴィクトリーを、エリザベス陛下のお留守の間、代わり取り仕切りましょう。今連絡が入ったのですが、王国の宰相と外相が急逝してしまい、大混乱に陥ってるとの事。ジーク様は存じ上げないでしょうが、私の配下の者達はすでにヴィクトリーを掌握しつつありますゆえ、我らが手で偉大なジークフリード帝国を……」
先生はため息を吐いて、私を見る。
「カス共が。いいかい、俺の傍を離れるな」
私は頷き、先生と共に奴らの前に姿を現した。
そして先生は、憤怒の表情でエドワードとフレイアを睨みつける。
「お前は? 黒髪の……それに……」
「マ、マリー姫殿下!?」
「あ、あ、あ、アースラ!?」
先生はすうっと息を吸い、私は両耳を人差し指で塞ぐ。
「てめぇらぁ! 揃いも揃ってワル共が悪だくみしやがって! てめえらが考えてる絵図なんか、全部この俺様にはお見通しなんだよ、クソボケ共が!」
「フレイア様、こやつ確か俺の名前を騙っていた偽物、黒髪の男かと」
英雄ジークはツヴァイヘンダーを先生に向けるが、先生は目でジロリと威圧した。
「うるせえぞカス! なるほど、そこの性悪女が、あのガキの魂を上書きしちまったってやつか? なあ、クサレヤリ●ン女のフレイアよお?」
「誰がヤリ●ンよ! 元大魔王のイカレアースラ。そうよ、彼こそがジーク。この世界に伝わる伝説の英雄。ジークよ、気をつけるのです。奴の正体は闘神にして大魔王だったアースラ、我が兄フレイを殺した仇」
「だったら何だよ? てめえがマリーを嵌めて、ヴィクトリーの王を暗殺した張本人だろ? そこのエドワード……いやアレクセイと組んでな。なあ、オーディンを信仰する、キエーフの王子アレクセイちゃんよお」
ギョッとした顔でフレイアは、アレクセイを見ると、アレクセイは顔色ひとつ変えていないように見えたが、一瞬目が泳いだ。
……なるほど、彼がオーディンの手の者だとはフレイアも気が付いてなかったんだわ。
「なあカス共? 手順はこうよ、毒を用意したのはアレクセイ。そしてフレイア、てめえが毒入りのワインをマリーに手渡して、ジョージを殺した。そうだな?」
……こいつら許せない。
こいつらのせいで父が死に、私の人生が狂わされたんだ!
私がエドワードと名乗っていたアレクセイを、思いっきり睨みつけると、彼は目を伏せた。
「なあ、クズのアレクセイの小僧よお? てめえ、ヴィクトリーの宮殿をフレイア利用して掌握してて、世界が滅びかねねえ騒乱を起こした後、ヒトも亜人も魂をオーディンに捧げて、その暁にはエリザベスも口説いて、結婚詐欺した後でぶっ殺し、ヴィクトリー王国をいただく算段だったもんな?」
先生は鬼のような形相で、アレクセイの心の内を暴露する。
「貴様に……ヒトに虐げられエルフからも雑種だと迫害されて、耐え忍んできた我が先祖、我が民族の無念などわかるものか」
そうか……そういう事か。
先生も言っていた。
ノルド帝国の奴隷解放した時、差別と従属の関係はそう簡単になくならず、いずれ世界の大きな火種になり、ひどい扱いを受けて奴隷にされた恨みつらみは、簡単には消せないと。
「だからなんだよ、クズ野郎! てめえの先祖がされた迫害や無念は同情してやってもいいが、それで絵図描いて世界を戦乱に巻き込むなんざ、男のする事じゃねえ! 女々しい野郎が!!」
先生の言葉にバッサリ切り捨てられたアレクセイは、恨みがこもった目で先生を睨みつけるが、その倍以上の気迫がこもった目つきで睨まれると、悔しそうに俯いた。
「あと、一番のワルはてめえだ。ジークって言ったっけ? 世界が混乱するようにしむけた元凶が。そして、てめえはどうせまた、そこのアホ女が自分を呼び出すはずだと、そのフレドリッヒって小僧の中でチャンスを待っていた……そうだよな?」
先生は、ジークと化したフレドリッヒを睨みつける。
「何を言いたいのだ? 黒髪の偽物よ」
「偽物はてめえだろカスめ! てめえは大昔、フレイアの力で得た召喚魔法で、魔界のモンスターと魔王を呼び出して、口八丁でロマーノって大国を支配させた。混乱する世界で、自分が人類の救世主だとか言って、世界を支配するためによ。そういうのよ、マッチポンプだって言うんだよカス!」
そんな……英雄ジークの英雄伝は、全てはこのジークの陰謀による作り話!?
「あれは、突如魔界の軍勢が現れたので、お前に討伐命令を下した件だったはず……まさかあんた!?」
「いえ女神フレイア様、俺がそんな事をするような男に見えますか? あなたの僕たる俺が」
先生は心が読める。
おそらく、今の話は全て真実だ。
「最低、英雄なんて嘘っぱちの卑劣漢」
私が呟くと、ジークは私を見つめ、悲しげな表情になる。
「君は、君だけは……そんなふうな目で俺を見ないでくれ。君のためなら、また世界を再び手に入れて見せよう。我が愛しの妃イルディゴ……そしてこの世界でも私を愛してくれた妻、マリアンヌと瓜二つの……」
「私は、あなたなんかの妻じゃない! 気持ち悪いから話しかけないで! あの純粋だったフレドリッヒを返してよ、薄汚い卑劣漢のジーク!」
英雄ジークは、英雄なんかではなく……魔界の悪魔をも利用する、邪悪な存在だった。
こんな人を英雄だって崇めていた、私も私の国も、そしてロレーヌも……馬鹿みたいだ。
「俺は……地球時代の人生では君を愛してやれず……生まれ変わって……君と出会って。そして私は君に相応しい英雄になるために……夢半ばでまた死んで……」
ジークは、私を自分の妻だと思い込んでいるイケメンのようだけど、もうこいつに至っては生理的に無理よ、無理……だってキモすぎるもの。
「うるせえんだよカス! てめえ知ってるぞ? 地球時代は、古代中国を荒らし回った匈奴の一派とも言われるフンの一族にして、古代ローマ帝国を滅ぼした、神の鞭または魔王の二つ名を持つ大王アッティラだろ!」
げっ、古代中国を荒らし回り、古代ローマを滅ぼしたって、そんなやばい人が英雄ジークの正体!?
そうか、だからこっちの世界の、かつての大帝国ロマーノとも因縁があったのか。
「そんでよ、てめえの死因は略奪後に妻の一人にした女と事に入る時、その女がいい女すぎて、鼻血が噴き出す程の高血圧の発作起こして死んだ、クソ情けねえ最期だったもんなあ?」
「貴様……」
うわぁ、すっごい情けない死因なんですけど。
しかも図星だったみたいで、フレドリッヒみたいに、顔が真っ赤になったし。
それダメでしょ、英雄の死因がそんなんじゃ、そりゃあ魂が傷ついて、この世界に転生するわけですよ。
「でよ、転生後おめえが死んだのも、世界の取り分とか縄張りのわけ前で、おめえが呼び出した魔王と揉めて相打ちになった。図星だろ、ええ!? 転生後に勇者目指した俺様と違って、カスみたいな人生だな!」
先生に秘密を暴露されて小馬鹿にされたジークは、もはや言い返す気力もなくなったのか、唇を噛み締めながら項垂れてしまい、先生は全員を睨みつけながら白鞘から刀を抜く。
「そんでよ、フレイア。いや、人間時代は戦乙女フリッグ……小さい時は、フレデリカちゃんだっけ? ユングヴィお兄ちゃんと一緒にかつて人々を救い導いたよお」
「だから……なんだってのよ」
「おめえの兄貴は人間だった時の思いを無くして、思い上がったクズだったぜ。なあ? クサレ性悪女よお。てめえ、あの世界とこの世界の落とし前どうつけんだコラ?」
落とし前。
いかにもヤクザ的な言い回しだけど、要するにこの陰謀だらけになった世界と、先生が最初に転生した世界の責任を取れという事だと思う。
「先生この女に私が、思ってる事を言っていいですか?」
「おう、言っとけ言っとけ」
先生の許可を得たので、私はフレイアと対峙し、その様子をジークとアレクセイはじっと見つめる。
「あなた最低よ。自分勝手に、人の運命や人生を弄んで、傷ついた魂もいいように利用して……あんたなんか神なんて認めない! あなたはこの世界の悲しい人達に責任を取るべきだ!」
「責任って何よ、アンタ達人間が、今までアタシの思い通りになんないから……」
「そうね、あんたなんかの思い通りになんかならない! なってたまるもんか! 世界を無茶苦茶にして、人間になっても、それでも反省しないバカ女!」
フレイアが、凄い目つきで睨みつけるが、私はお腹に力を込めて、思いっきり侮蔑を込めて睨み返す。
「なんでよ……なんでアンタ達は、私の思い通りになってくれないの? 私だって、アンタ達を神として愛してたのに……あの世界のアタシの子供達も……アタシを拒絶して……こんなに愛していたのに……なんで……」
フレイアは、うつむいて涙を流し始めた。
「哀れな女。あなたは確かに、世界と人間を愛してたかもしれない。けどそれは、自分勝手で独善的で、他者を思いやる理解力も人の心も無くして、だから世界がおかしくなったのよ! あなたは……自分がおかしくした世界の、可哀そうな人たちの責任をとるべきだ!」
私がフレイアに告げると、波の音以外周囲は静寂に包まれる。
私と先生に論破された黒幕たちは、私達に敵意が籠った眼差しを向け、ジークは大剣を、アレクセイは槍を、そしてフレイアは、ルイーダの顔ではなくて絶世の美女の顔になり、丸太のようなハンマーを具現化して私達に向けて構えた。
「揃いも揃って、てめえらどうしょうもねえ、カスでボンクラばっかりだぜ。もうね、てめえらカス共の言い分聞いてやるのも面倒くせえ。時間ねえからよお、全員裁いてやるぜ。この勇者マサヨシ様がなあ!! ケジメ祭りだクソボケ共!!」
先生は着物がはだけて、阿修羅の入れ墨が具現化した、6本腕で褐色肌の、かつて魔界最凶最悪と言われた魔王の姿になる。
「私も戦います! 私は、この世界は、こんな奴らに絶対負けない!!」
私は胸のペンダントに触れると、私の体に光の粒子が纏わり付き、一瞬下着姿になると、私の胸に光輝く黄金の胸当て、肩甲、手甲、腰当、膝当、足甲が次々と装着されていく。
光り輝くカチューシャが装着されると、耳を覆い、アゴまで伸びて急所をガードするヘッドギアになり、首に細身の金のチェーンが巻かれ、胸にピンクゴールドを細工し、中心にルビーが入った薔薇の形のペンダントトップが具現化し、黄金の鎧に真っ赤な炎が宿り、サラマンダーの魔力がエンチャントされた。
「いくぜてめえら! ぶっ潰してやるぜ!!」
「あんた達なんかには絶対に負けない!!」
次回、第二章ラストバトルです




