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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第二章 魔女は楽になりたい
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第59話 魔女エリザベスは楽になりたい 前編

 夕刻過ぎ、ヴィクトリー城で軍議中のエリザベスに衝撃が走った。


「我がノルド帝国は、今回の戦争中止を表明し、兵を引く」


 皇帝ヨハンから一方的に告げられた、戦争中止の申し出に、軍議に参加した諸侯は混乱をきたす。


「なぜ!? ノルド帝国の後ろ盾がないと、我々は……」

「フランソワに送った我が兵や騎士達はどうする!?」

「いや、我が国最強の黒騎士隊とエドワード公ならば」

「無理だ、ノルド帝国の協力がないと、上陸隊は大陸で孤立するぞ」

「左様、フランソワはナーロッパ随一の軍事大国」

「海軍卿として進言しますが、我らの艦隊とてフランソワから集中攻撃されれば、莫大な損失が……」


――何か、何が帝国で起きた!? 戦争中止の理由は? エドワードの報告によると、ノルド帝国は広大な3領域を有している北方一の超大国。そして亜人と呼ばれるエルフやドワーフ、そして帝国の戦闘奴隷の強さは、フランソワのカリーを侵攻した際、フランソワの重装騎兵や竜騎兵を遥かに超える、強大な魔力と戦闘力を誇っていたと、報告されてるのに……。


 軍議が紛糾する中、エリザベスは操った、ニブルヘルのモンスターを使い、フランソワ侵攻軍、最前線の状況を探る。


 一見雑魚に見えるが、強力な呪文を放つ巨大な目玉のモンスター、ダークアイの目を借りてエリザベスは周囲を見渡す。


――まるで転生する前にやってたVRみたい。市内には広場があった筈。いた、エルフとドワーフの戦士達。ノルド帝国の者、それも指揮官クラスが。


 エリザベスは、ダークアイを透明化させて、音声を拾う事にした。


「本国の帰還命令!?」

「確かか!? いまさらどうやって帰れと」

「我々は薄汚いヒト共に勝っていた筈だ!」

「納得が行くか! 勝ち戦を放棄して帰れじゃと!」


――やはり突然の戦争中止に、ノルドの将官達も混乱している。ノルド帝国は確か、皇帝の権限が強い専制君主国家。皇帝が戦争終結を判断した事に間違いないが……しかしなぜ。


 すると、自分が操っていたダークアイが、強力な力で拘束されて、人気のない波止場まで何者かに、無理矢理場所を移された。

 

「やっほうー、エリザベスちゃん! ダメだよ、僕に黙って巨人軍のモンスター、勝手に使っちゃあ。まあいいか、ノルド帝国だっけ? 負けたよ。アースラや君の妹の一派に」


 ダークアイがロキの姿を写すと、エリザベスは心臓の鼓動が早くなり、ノルド帝国の敗北の報に、エリザベスは絶句して顔面蒼白になった。


「そんな馬鹿な!? 北方のノルドは、伝説によると強大な力を持ち、英雄ジークがかろうじて皇帝を倒すも、その傷が元でロマーノ帝国との決戦で死んだとされる、この世界最強の亜人種国家なのに!」


「僕も実はノルドって所にいる、フレイって馬鹿の命を狙ってたけど、獲物取られちゃった。いやー、びっくりしたよ。アースラのやつ、昔よりも格段に強くなってる。でね、君やばいよ?」


「やばいって何がですか?」


 通信先でエリザベスが、自分好みの顔で狼狽してるだろうなあと、ロキは思い邪悪な笑みを浮かべる。


「僕の企みで、アースラの背後にいる冥界は、今頃大混乱の筈で、ある程度の足止めには成功した。そしてアースラとその一派の主力は、今夜0時にはこの世界から撤収しなきゃならず、オーディンって馬鹿の子飼いに、この世界引き継がなきゃなんないの。言ってる事わかる?」


 まるでわけがわからない。


 自分が召喚してから、この終える者と自称する、邪な神の考える事など、まるで理解できないとエリザベスは思う。


「まあ、わかんなくてもいいや。オーディンって馬鹿の話を君にもしよう。やつの目的は、この世界で戦乱を起こして、大勢の人間死なすじゃない? それで、君たち人間の魂のエネルギーと信仰や祈りのエネルギーを、自分達の糧にする気なんだ。ヤバイでしょ?」


――やばいなんてものじゃない……なんだそれは? この世界の人間を戦争で多数殺害し、魂を糧にするなんて。オーディンって……転生前学生だった時、ゲームでしか名前知らないし、わけがわからない!


 エリザベスは、背中から冷や汗を流して、ロキの話に耳を傾ける。


 どうしてそんな恐ろしい神に、自分達が住まうこの世界が目をつけられたのか、まるで意味がわからなかった。


「そんな、なぜそんな恐ろしい神に私たちの世界が……」


「知らないよ。ま、多分この世界が出来上がった時から、そうなるように、仕向けられてたんじゃない?」


「そんな……」


 自分達人間や世界に、人ごとのような態度をとるロキに、エリザベスは絶望する。


「でね、君がやばいってのは戦乱の中心が、ヴィクトリーだっけ? この国を中心に行われてる。つまり、この国は君が元首のようだけど、その実……オーディンの手中にされてるってわけ。アホのフレイアも、多分担がれてるね。でさ、僕そのオーディンと敵対してたのね、あの馬鹿は魚で言うとオヒョウなの、わかる?」


――オヒョウ? 何それ? 名前だけは聞いたことあるけど、わけがわからないこの神。


 エリザベスが思考を巡らせてると、ロキがため息を吐いた。


「察しが悪いなあ。じゃあカレイだっけ? こう言えばわかりやすかな? 小さいやつだと、なんだっけ?」


「ヒラメ……ですか?」


「そう、それね。焼いても揚げても煮ても美味しいよね。ぶっちゃけ新鮮なやつを、生で薄切りにして食べるのが、一番美味しいけど。でさ、あいつは自分の目を捧げる事で、力と知識を得てきた。この目が肝心なんだ」


――目? それが何? いや、この神の言うことを引き出さないと、私はこいつからの興味を失い、情報が得られず窮地に立たされる。


 エリザベスは、ロキの思ってること、言いたいことを引き出すため、彼の話を促そうと思った。


「目……目は普通はものを見るものですが、それを利用するのが、オーディンという神なのですか?」


「うん、そう。奴は戦で貯めたエネルギーの源である、自身の左目を定期的に抜くことで、力を増す儀式を定期的にやってる。やつの叔父の古の神ミミングが与えた、やつの能力の一つだ。もっとも、ミミングは、フレイとフレイア兄妹の神としての父親、ニョルズが殺したが」


「?」


「君には関係がない話だったね。話を戻すと、それはやつの本質の話じゃない。オーディンの本質は、君が言ったヒラメなのさ。あの魚、両目は常に上の方を向いているでしょ? つまり自分の出世や体面だけを気にして、表面上は常に創造神への、機嫌をうかがい媚びへつらっている感じさ。まあ小物だよね」


――たしかに。私の転生前の上司が、そんなやつだったわ。もう名前すら思い出せないけど。


 エリザベスは、オーディンという神について、ロキからもう少し情報を引き出そうと考える。


「でも、ヒラメやカレイとオヒョウは違いますよね? オヒョウってどんな魚なんですか?」


「ヒラメやカレイと同種だけどでかいねー。人間より遥かに大きくて、長寿でなんでも食べて、知恵がまわって凶暴だ。漁に出た人間が、時に大怪我したり最悪死んだりする。それでいてオーディンはプライド高いからねえ……。まさしくオヒョウさ」


 なんとなくであったが、オーディンの神としての人となりを頭の中で想像したエリザベスは、さらに思考を巡らせ、今後想定される事態を、ロキに聞いてみる事にした。


「これから起こる事は、そのオーディンが戦乱を起こし、そのせいで大勢の人が死ぬ……と?」


「うん、そう。ていうか、ぶっちゃけもう、結構な数のフランソワの人間共だっけ? ノルドってのに虐殺されたけどさ」


「そ……そんな。私が起こした戦争で……虐殺が……」


 ロキは、モンスターダークアイの大目玉を抱えると、波止場に掲げられるように、串刺しにされた惨殺死体や、生首にされたカリー市民やフランソワ騎士団の映像を流す。


 エリザベスはたまらず、議場から飛び出して、城内に設置されたゴミ箱に、胃の中のものをぶちまけた。


 自身が自国防衛のため、仕方なく望んだ戦争とはいえ、同じ人間達が惨たらしく殺された光景を見たエリザベスは、自問自答した。


――私は、こんな事の為に転生したんじゃない! 私は、弱き人びとを助けるため、世界の、人間の非道を許せないから、次の人生では人々のために自分を役に立てるために転生したのに……。


 彼女は戦争で行われた虐殺に涙を流した。


「うう……こんな。こんな事……」


「言ったじゃないか、亜人って君達が言ってる存在、相当君達を恨んでるって。まあ君は魔女になるって決めた以上、しょうがないんじゃない? で、話の続きだけどオーディンは間違いなく僕と、僕を呼び出した君、殺す気だろうね。君がやばいってのはそういう事」


 もはや胃の中身も残ってなかったが、膝をついたエリザベスは、何度もえずき、涙目になる。


「そんな! ただでさえ、私やヴィクトリーは、世界の大国や君主達に目をつけられてるのに。あの凶悪な魔王にも」


「ハッハッハ、それくらいでびびっちゃダメだよ、魔女っ子エリザベスちゃん。そのための、僕の巨人軍なんだし。そして娘達が、アホのフレイアに掛け合って、僕をあの世界からこの世界に呼び出したんだ。まあ、なんとかなるって」


 ヘラヘラ笑うロキに、エリザベスは絶望の表情を浮かべながら、その場で何度もえずく。


「ところでさ、これから面白いショーをしようと思ってね。名探偵ロキ君が、君のために、ここに来てるアホのフレイアへ、おもしろ推理ショーしようかなって。君の魔力装備は、僕の魔力で神語がわかるようになってる」


 ロキはニヤつきながら、透明化魔法で姿を消し、自分の子供のような人間達が、フレイの眷属の精霊種達に虐殺された状況を、呆然と見つめるフレイアの後ろに立った。


「この世界の元担当のフレイアちゃん、なんか気分悪そうだけど大丈夫? そうそう、言ってなかったけど、フレイは殺されたよ? アースラに」


「な!? 何ですって! どうして、あなたは止めなかったのよロキ! お兄様を、ちょっと困らせて考えを改めさせて、私に跪かせて謝らせた後、こっちの味方にしようって筈じゃなかったの!?」


 透明化魔法が解除され、映像に写っていたのは、メイド服を黒のローブに身を包み、女中としてヴィクトリー城に潜り込んだ、ルイーダと呼ばれる女。


 フレイアは自分の能力で、地味で目立たない若い人間の女に変装して、召喚魔法を使える転生者、高山真里ことマリーを利用するため側女を演じていたのだ。


「そうだっけ? 忘れてたよ、ごめんごめん。そう言えば君さ、うまくヴィクトリーに入り込んで色々陰謀企てたっけ? 王を暗殺した黒幕、君だもんね」


「だから何だって言うのよ。ていうか、アタシは殺そうとは思ってなかったし。ちょっとした手違いで、毒の分量間違えて、うっかり死んじゃっただけで。まあ、色々と人間にしては察しがいい奴だったから、死んだ方が良かったんじゃない?」


 ロキは大爆笑しながらフレイアを見やり、ダークアイの映像を見聞きしたエリザベスは絶句する。


「あー、そうなんだ。ま、君は昔から考えなしのアホでヤ●マンだし、しょうがないね。それで、マリーってエリザベスちゃんの妹を、犯人に仕立て上げたのも君だっけ?」


「誰がヤリ●ンよ! 性悪が服きて歩いてるような、あんたに言われたくないわよ! そう、あの子ってば女神の私を差し置いて、男にチヤホヤされててムカついてたの。あの召喚魔法使ってくれるよう、処刑場の召喚であんたがいたニブルヘルに、召喚のゲートを繋いでやったのね」


 エリザベスは、再びえずくと、過呼吸状態になってゼエゼエと肩で息をする。


 この世界の父親、自分がこの世で最も敬愛して、尊敬していた、ジョージ3世を殺したのが、マリーであると思い込んでいたからである。


「そうなんだー。あとは、適当に死なないよう、神界魔法の加護をかけて、流刑させた先で、アースラの奴を召喚するよう仕向けたんだっけ? 領主を魂召喚(セイズ)で操ってさ」


「そうよ! ヤマとあのヤミー! そしてクソッタレのイカれアースラ! 元は外様のくせに、創造神様へ告げ口して、このアタシをにんげんなんかにしたのよ! ユグドラシルの連中も、誰もアタシを助けてくれなかったし。だから復讐しようと思ったの!」


「助けるわけないじゃんオーディンが、アホだなあ君も。むしろ君を利用して、この世界で自分達の力を蓄えるため、陰謀企ててるよ。あいつはそういう奴だ」


 ロキは笑いながら、透明化したダークアイにウインクして、エリザベスに黙っているよう目配せした。


「それで、君はエリザベスちゃんに、色々吹き込んで、娘のフェンリルとミドガルズオムを魂召喚で、あらかじめ呼び出して受肉させてから、僕を召喚するように仕向けたのかー。君さ、オーディンのやつにまんまと騙されてないかなー? あいつ僕とその家族も、まとめて殺したがってたし」


「知らないわよそんな事。そうね、この国の権力者の一部は、アタシの本来の美貌と魔法で、アタシのいう事しか聞けないようにしてる。あのエリザベスってアホの子、まるで自分が王のつもりだろうけど、実質の支配者はアタシよ」


 フレイアは、エリザベスの事を小馬鹿にし始めて、嘲笑う。


「ほんと、アホの子よねー。マリーって子が人を、ましてや自分の親なんか殺せる訳ないのに。アタシの策略にまんまとハマって。だいたい、あの子の召喚魔術を強化したの、私なのにね。超ウケるんですけどー、あはは」


 エリザベスは、再びえずきながら、フレイアに憎しみを募らせる。


 こいつを、フレイアを絶対に殺してやると。


「余裕こいてるみたいだけど、君さーヤバいよ? アースラのやつ、君にブチ切れてるよ? いくら戦女神だった君でも、あいつに勝てないでしょ? 僕も直であいつの本気見たけど、昔以上に容赦がなくてヤバイから。あとマリーって子も人間にしてはそこそこ強くなってるし」


「それは……うん、大丈夫でしょ? あんたとあんたの子供と、あの伝説の巨人スルトもいるし……ね? 守ってくれるでしょ? でしょ?」


 フレイアの懇願に、今度はロキがとびきりの邪悪な笑顔で、彼女を嘲笑った。


「え? いつ僕が君を守るって言ったの? アホだなあ、ねえエリザベスちゃん?」


 ギョッとした顔でフレイアは、わざとらしくとぼけたロキが声をかけた方向を見ると、そこには透明化を解いたダークアイが目玉をギョロリとさせて、フレイアを見つめる。


「殺してやる……私の家族を陥れて、私とこの国を弄んで……絶対に殺してやる、お前を」


 フレイアは、今の会話をエリザベスに聞かれていた事に今更気がつき、表情が凍りつきまるで能面のような顔になった。


「ああそうそう、言い忘れたけど、君の魂召喚(セイズ)と魅了の魔力で操ってた、この国の主要連中の魔法効果あるじゃん? 僕の支配の邪魔になると思って解いたから。で、僕が丹精込めて作ったエリザベスちゃんの装備と、今の魔力なら……君、死ぬかもね」


 邪悪な笑みを浮かべるロキに、フレイアは絶望の表情を浮かべて、膝から崩れ落ちた。


「クックック、ウフフ、ハーハッハッハ! いい、その表情実にいい! 本当にいい顔してるね君は! 最高にそそってセクシーな顔だ! 忘れたのかな? 僕がそういう事を楽しむ神だってさ、アーッハッハッハ」

 

 フレイアは、神時代の遠い記憶を思い出す。


 このロキは自分の楽しみの為ならば他の神を陥れ、物笑いの種にする、最低にして最悪の巨人族の元王子だった事を思い出し、後悔の念に駆られ始めた。


「殺してやる、お前を! この世界のどこにいても、探し出して……絶対殺す!」


 エリザベスはフレイアへの復讐を誓い、あっちのエリザベスも、きっといい表情なんだろうなあと、邪な神のロキは思い手を叩いて笑い転げる。


 フレイアはその場で全裸になり、地味なルイーダの顔ではなく、男なら誰もが振り向く美貌と、腰まで伸びる美しい金髪に、双子の兄フレイ同様、七色に輝く瞳を持つ女神の姿になり、ロキの前に立つ。


「ねえ、ロキ? なんでもするから助けて。神時代に、あんただってアタシを、抱いてくれたことがあったじゃないのよ! 昔のように私を愛してよ! 助けてよ!」


 ロキはフレイアが泣き叫び、自分が心底楽しめるような命乞いをして軍門に下るか、もしくはもともと人間だった強みを生かして自分の興味を引くような、何か面白い提案をすれば、可愛気があって面白い奴だと話を聞いてやっても良かった。


 しかしこの期に及んで自分の女を武器に、したたかに自分を誘惑して取り入って、利用してやろうという思い上がりが鼻につき、ロキは顔をしかめる。


 ロキは自分を含めた男を、自分が股を開けば、何でも言う通りになると下に思っている、女神時代から全然成長しない姿を見て、急速にフレイアの興味を失い、もはやどうでもよくなった。


 むしろ、フレイアの更に苦しむ姿を見てあざ笑ってやろうという邪な考えが、ロキの頭に巡る。


「え? 嫌だよお前みたいなヤ●マンなんか。僕の今のお気に入りの女は、エリザベスちゃんなんだ。それに人間そのものを僕は好きになってる。どこか美しくも醜くて、不完全だけど神以上に表情豊かな、あんな面白い玩具はないからさ。あ、でも君も元々人間なんだっけ? よかったじゃない、また人間に戻れてさ」


「なんですって! アタシは人間なんか嫌なの! みみっちくて力の弱い人間の女なんて私は……」


「そうそう、今だから話すけどさあ、あのラグナロクの前に、君の行方不明になった旦那のオーズね。君がしてきた数々の浮気、チクったの僕だから。殺してやるって僕に向かってきたけど、返り討ちにして殺して埋めてやった」


 フレイアは、行方不明になっていた最愛の夫が殺されていたという事実に思わず絶句してしまい、ロキは嘲笑いながら話を続ける。


「お前みたいな元人間の不細工に本気で惚れた、哀れな奴だったね。何なら殺した記念に取っておいたオーズの目玉を指輪にしたアイテムいる? 旦那の形見を渡してやる僕って優しいでしょ?」


 ロキは笑いながら、フレイアの女としてのプライドをへし折り、最愛の伴侶を殺したのが自分だと告白すると、フレイアは声を上げて泣き出し始めた。


「でさ、もうお前は用済みだから……さっさと消えろよ、殺すよ?」


 ひとしきり、フレイアのプライドと心ををズタボロにした後、無慈悲にフレイアに殺すとロキが告げると、泣きながらフレイアはその場を去っていった。


「あー面白かった。どうエリザベスちゃん? 君の父親殺しの真相わかったかな? 名探偵ロキ君大活躍ってわけさ。じゃあそっち帰るから、ゲロまずだけど癖になりそうな君の国のワインと、美味しい羊肉か牛肉のロースト用意しておいてよ、骨付きの奴ね。余った骨は、かわいい娘のフェンリルにプレゼントするから。じゃ!」


 ロキとの通信が切れた後、エリザベスは、この世界の妹のマリーを思い出す。


 父の仇だと思って処刑しそこない、流刑の最中に酒に毒を入れ、それでも生きていた彼女を、近衛騎士団を使って殺させようとした事を思い出す。


 数々の陰謀を用いて憎み殺そうとした、たった一人の肉親になったマリーを想い、エリザベスは静かに涙を流した。


「どうしよう……私はあの子に……取り返しのつかないことをしてしまって……私は……何をしてきたの? なぜ私は……うあああああああああああああああああああああああ」


 エリザベスはこの世界の妹、マリーの笑顔を思い浮かべて号泣した。

後編に続きます。

この話が終了後、第二章のラスボス戦です

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