第27話 世界救済の方法
執務から戻ったヴィトーは、マリー達との夕食に加わる。
この日の夕食は、ヴィナーレ宮殿名物にして、ヴィトーの大好物。
豚の丸焼きを、皮つきのまま削ぎ切りにして、魚醤とハチミツと白ワインで煮込み、ハーブをまぶした逸品がメインディッシュ。
卵の黄身と豚肉を麺に絡め、コショウたっぷりのカルボナーラのようなパスタ料理。
野菜とオリーブと魚介のマリネサラダ。
野菜と豆とベーコンを刻んでピューレにしたスープ。
コカトリスの肉と山菜、魚介類を米と一緒に炊いた、炊き込みご飯のようなもの。
美食の国、フランソワ出身のアンリが思わず唸るほどの、ロマーノ連合王国の料理の数々で、マリーはあまりの美味さに思わず声を上げ、勇者は美味いが、サラダに醤油が欲しいと呟く。
「やーっと、執務と明日の根回し終わったさー。兄貴やマリーちゃんはこの後、賭場開かないの?」
「ああ? そんなもんはおめえの許可取れれば、この国でいつでもどこでも開ける。ちょっとよ、うめえ夕飯でも食いながら、昔話しようと思ってな」
一通り料理を皆が食べ終えた後、勇者はワイングラス片手に、豊潤なワインの香りを嗅ぎながら、マリーらに世界救済の話を始めた。
「マリーには少し話したが、俺は地獄の刑期と引き換えに、ある神と最悪の世界を救う旅に出た。と言っても、その神の馬鹿、なかなかその世界に来やがらねえから、往生したがな」
「なんだぁ、兄貴は地獄の懲役行ってないの?」
ヴィトーがワイングラスを傾けると、美しい女中がヴィトーにワインを注ぐ。
一方、勇者のワインや食事のマナーは完璧で、自分と同じアウトロー出身なのに、礼儀や教育をきちんと受けているとアンリは感服する。
「行ったよ、修行でな。思い出したくもねえや」
マリーは、この勇者が一瞬青い顔をして、本気で嫌そうな顔をしたのを見て、地獄ってやはりきつい所なんだろうなと思った。
「そんで、その神が来るまで、ひたすら勉強と鍛錬よ。もうね、その世界闇に閉ざされてて、作物なんか幻覚作用あるキノコと、クソムカつくマンドラゴラしか取れなかったし、食卓にたまに上がる肉はモンスターの肉よ。水もたまに血のように染まって飲めたもんじゃなくなるし、ムカつくだろ?」
マンドラゴラ、引き抜くと叫び声を上げるという伝説の植物で、おまけに闇に閉ざされてる世界など、マリー達には想像つかなかった。
「そんで後でわかったが、世界を闇に閉ざして、クソムカつく世界にしてた原因は、空に不気味に輝く青い月だったわけさ。そんでもって、その青い月は魔界の前線基地だった」
「なるほど。それであんたは、どうしたんだ?」
アンリはワインを優雅に飲みながら、話に夢中になり、マリーは夕食の途中にも関わらず、神とペンを女中に用意させてメモを取る。
「吹っ飛ばしてやったぜ! 神の野郎来やがったから、持ってた道具で木っ端微塵にしたよ。それが、俺と魔界との抗争始まりだったな。あとで聞いたが、跡形も無く消しちまったから、もう向こうさんテンパっちまってたようだぜ? ハッハッハ」
勇者は左手の掌に、右の拳をバシッとぶつけ、笑いながら語る。
――吹っ飛ばしたって……。
マリーは思わず絶句する。
いくら魔界の悪魔相手といえ、宣戦布告にしても、凶悪すぎると思った。
「で、そんな世界なもんだから、人なんてまともに育つわけねえだろ? 俺は世界に影響力持つ、地球で言うとカトリック教会の神父の息子だったから、教会組織利用して情報収集した。ハッキリ言って俺が育った王国や、隣国の共和国も、周辺の亜人国家群もクソだったね」
マリーが以前聞いたことがある、悪徳貴族の王国と、魔王軍の話。
「そのクソな王国で、俺のヤクザとしての経験が活きたってわけさ。まず、村々の信頼を得るために、魔王軍の下っ端や、モンスターとか狩まくるの。そうすっと信頼度が上がって、村人も悪徳貴族とかの情報教えてくれる。そんでそのお貴族様をぶっ飛ばし回って、俺の傘下にしたわけよ」
「なるほど、国がやらない事を、民衆のためにやって、信頼を得て来たという事か」
「さすが兄貴さー」
マリーは一言も発さず、勇者の話を克明に一言一句記録した。
自分がこの世界を救う、ヒントになる事が散りばめられていると思ったからだ。
「そんでよ、どんな最悪な世界にも、大抵治安機構がある。言うなれば、俺達が転生前、散々厄介になったサツ連中とかな。おめえらの所にも、サツ連中みたいな組織あるだろう?」
いやいや、自分は転生前に警察のご厄介になった事ないからと、マリーは思ったが、何も言わないでおいた。
「なるほど。フランソワにも、兵卒や市民を取締る王国憲兵騎士団と、領主私兵の騎士団があるな。貴族達の悪事をもみ消すしか出来ないような、クズ共だ。俺が王子だった時、何度か手入れをした」
「うちも、地元の顔役達、領主に治安担当させてるさー。手足になるのは、ネアポリだとカモーリスター、シシリーはマフィーオ、ロマーノ一帯だとドランゲータといった具合で、後々奴らを護民官制度作って取り立ててやるつもりさー」
「ヴィクトリーは、市民全員を警察に仕立て上げ、何か犯罪が起きたら、市民全員で対応してます。ただし貴族の犯罪は、貴族院らの官僚が担当するので……領主の犯罪は……」
勇者は、各国の治安機関の状況を聞き、自身が行った異世界救済の話をした。
「だからよ、俺が最初にやったのはサツ連中の掌握よ。俺が最初に行った世界には、教会組織に異端審問官と聖騎士そして枢機卿がいたから、こいつらを全部俺が掌握し、俺好みに改革してやったわけ」
「どうやって!?」
アンリの問いに、勇者はニヤリと悪い顔になる。
「ああ、奴らの目の前で悪魔野郎を退治してやったのを見せつけた。そんで、こいつらの元締めの枢機卿の娘が、聖騎士しててな。その聖騎士、俺好みのマブい女だったんで、命を救ってやった後、俺の女にしてやった。おかげで教会内で俺は大出世よ」
マリーは絶句し、ヴィトーとアンリは大爆笑した。
「アッハッハ、さすが兄貴さー。府中でピィした女の数と内容、俺ぁと競い合ったもんなぁー」
「ハハ、俺も転生前に、女おまわり口説いて、パトカー盗んで脱獄した事あったが、やるなー」
「だろ? そんでその世界で、使えそうな奴らを舎弟や子分にしてやった。商人組織もマフィア連中も掌握して、地下銀行とか作ってやったぜ」
やはり、悪漢。
地球なら犯罪になるピカレスクな事を、異世界で繰り広げて来たんだ……この勇者はと、マリーはノートに記録を取りながら思った。
「厄介だったのが、王国の王女が魔王軍大幹部で、絵図描いて俺の身柄さらう計画立てたり、特殊部隊とか送ってきて全力で殺しに来たり、俺の神に嫉妬したアホ神が、別の勇者送ってきて、そいつ闇落ちしたり、色々あったわ。まあ、魔王軍の総司令官が激マブ女でよ、王国の王女もまとめて俺の女にして、魔王軍を支配してやったわ。ハッハッハー」
ワインでほろ酔いになった、ヴィトーとアンリが手を叩いて大爆笑する。
マリーは吹き出し、ちょ……魔王軍を支配とか、勇者なのか魔王なのかわかんない事してるこの人と、心の中で呟く。
「そんでよ、舎弟と子分共をその世界の権力者に仕立て上げ、俺は魔界に乗り込んで、ワル共片っ端からぶっ潰し回って、めでたく世界救済ってわけ。参考になったか?」
――全然参考にならない……まるでこの人の存在そのものが、漫画やアニメのキャラみたいなんですけど。
マリーが思う中、ヴィトーはニヤリと笑う。
「それで兄貴はさー、ちょっさ儲けたんぬ?」
「おう、それなー。もうね、金銀財宝の山よ山。プール山盛り分以上ね。たまんねぇわ、勇者稼業はよ。ムカつくワルぶった斬って、人様から感謝され、好きな女を口説き放題……最高だろ?」
「いいなー我も、勇者やりてえなー」
「感服した! あんた、やはり英雄だ! よし、俺の今後の方針を決めたぞ! 俺はこの世界でもデリンジャーと名乗る事にする」
アンリはワインに酔いながら、自分が考えた計画を語る。
「まずロマーノ連合王国の北部、アルペス山脈を海沿いに超えて、フランソワ南のマルセールへ向かう。北のパリスまで王立銀行で強盗しながら、デリンジャーの名を広め、民衆に金をばら撒き、フランソワの公爵や大公連中を俺の軍門に降らせる。そして王立憲兵騎士団を秘密裏に掌握し、堂々と凱旋しながら、真の民衆の王は誰なのかを、父上殿や貴族共に思い知らせてやろう」
勇者はアンリの計画にニヤニヤ笑い、マリーは小首を傾げる。
「えーと、それって結構時間かかるような気がするんですけどー、どれくらいのスパンでやるのですか?」
「概ね4ヶ月と言いたい所だが、もはや魔女と化したエリザベスに、国土を荒らされる可能性がある。亜人国家も、俺の不在で攻勢を強め、南進する可能性があるな。出来るだけ早いスパンで、実行に移したい」
すると、勇者がパンと手を打つ。
「よおし、じゃあこうすりゃあいい。マリーは水戸黄門って知ってっか? 時代劇だけど」
マリーは、横に首を振った。
時代劇専門チャンネルや、テレビでたまに再放送してる事と、水戸光圀が現れたら、家来が“この印籠が目に入らぬか”という決まり文句しか知らない。
「まあいいや。デリンジャーは、王家の証みてえなの持ってんの?」
「捨てようと思ったが、国を強奪する上で、正当性を主張出来るものがねえと、その、アレだったし持ってる」
アンリは、胸のペンダントに百合の花と剣が描かれた、王家の紋章を勇者に見せる。
「俺の国でやってた時代劇、まあアメリカだと西部劇みてえなもんさ。徳川光圀って言う、副将軍隠居した爺さんが、お供連れてお忍びの旅で日本中回って、悪代官とかワル共しばき回る話があってよ」
「ほう? 南北戦争で活躍した将軍が、軍を辞めた後、部下達と州政府の悪人や、アウトローをやっつけに行くような話か?」
「まあそんなもんだ。そんでよ、副将軍の証である葵の御紋を、ぶっ飛ばしたワル共に見せるわけよ。あとはもう、どうなるかわかるだろ?」
勇者の言ってる意味がわかったのか、アンリもニヤリと悪い顔になった。
「なるほど。つまり俺は、悪徳貴族の財産や、高利貸しするような、悪徳商人の銀行を強奪しに行き、頃合いを見計らって、俺の王家の紋章を……」
「へへ、そういう事よ、平伏すってわけさ。ついでに野郎らの弱みも握れる。あとはそいつら、やっちまう大義名分作らねえとな。そいつをやっちまっても、いいような大儀よ」
――ギャングとヤクザが悪い話してる……。
マリーは思いながら、ノートに今のやりとりを記載した。
「兄貴ぃ、今からチュラカーギー女こっちに連れてくるさー。まだ我のラフテー残ってるさ。兄貴口開けて、あーんしろさー」
いつの間にか、全裸になったヴィトーが、豚肉料理をフォークにさして勇者の口元に運んでくる。
――ちょ、なんでこの人脱いでるの!?
マリーは困惑して、顔を赤らめる。
ヴィトーの黒い肌の肉体は、鍛え上げられ、無駄な脂肪が一切ない、アスリートのような体型をしていた。
「何だこの野郎? 可愛い舎弟だぜ、落とすんじゃねえぞおめえよお。ほれ、あーん」
イケメン同士が酔っぱらって、恋人ごっこをするのを見て、マリーは顔面真っ赤になりながら、両手で目を塞ぐ。
勇者は、豚料理を満足げに食べると、指をパチンと鳴らす。
「やい金城、おめえ裸踊りしろ! 俺も男だからよお、脱ぐぜこの野郎! 早くマブい女共連れて来いや!」
「我は、これから三線ひくっちゅう。兄貴が踊ってくれさ」
ヴィトーことアシバーのジローは、転生後も酒乱でテーゲー。
おまけに、普通の沖縄県民よりも短気な、タンチャーとも呼ばれた過去がある。
こいつ、酒が回ると目が据わって乱れるタイプだなと、勇者は思い着物の帯に手をかけた。
「なんだおめー! ったく、しょうがねえなあ、俺も男だ踊ってやらあ! みてろこの野郎!」
全裸のヴィトーが陽気な音色を奏で、勇者が着物を脱いで、全裸でタコ踊りを始める。
そしてワインのボトルを女中から貰い、一気飲みを始めた。
「ちょ何これ、きゃー! 何これ!?」
マリーが思わず目のやり場に困って、顔を手で覆う。
「なんでこいつら服とか脱いでんだ? 意味がわからん、日本人はこんなのばかりか?」
アンリが両手でお手上げポーズをした。
「いやいやいや、見た事ないですってこんな酔っ払い。なんなのこれ!?」
マリーとアンリが困惑する中、黒髪でウェーブがかかった、際どい格好した浅黒い肌の、美しい女性達が入ってきた。
「オラァ! てめー何で脱がねえんだよデリンジャー! 空気読め馬鹿野郎! ホレ、罰としてこのボトル一気飲みしろや!」
勇者が、ワインボトルを突き出すように、アンリに向ける。
「おい! 悪酔いするのもいい加減に……」
「何だこの野郎? おかまかおめー?」
「金玉落とっちゃんだろ?」
勇者とヴィトーの挑発に、アンリは着ていたシャツとズボンを脱ぎ捨て、筋骨隆々の裸体を晒す。
「なんだお前ら! なめんじゃねえぞ! そのボトル持って来い!」
アンリは、顔を真っ赤にしながら、ワインボトルを掴み、一気飲みする。
「いい飲みっぷりじゃねえか、もう一本行っとけこの野郎!」
「アンリ君の、ちょっといいとこ見てみたい! それ、ちゃー飲みぃ、ちゃー飲みぃー、ちゃあ飲み、ちゃあ飲みぃ! えいさあああああああ!」
男達が狂乱の宴を繰り広げ、マリーが酔っ払い達にドン引きする中、悩める女が、玉座で思案を巡らせる。
「ガルーダが倒されたか。マリーめ、強くなってる。そしてあの男、伝説の英雄ですって!? あれはきっと、そんな生易しいものじゃない……が、フランソワ王子のアンリを殺せたのが収穫だった。これでフランソワは、司令塔を失った筈」
ヴィクトリー王国のエリザベスが、召喚獣ガルーダを通じて見た、アンリが電撃を受ける映像で、フランソワ王子の死を確信する。
しかしエリザベスが女王に即位して以降、ヴィクトリーを取り巻く状況は一向に好転せず、各国の経済封鎖で、食糧難に見舞われていた。
「国内の羊毛用の羊も、乳牛も潰して……備蓄用の麦の総量は……ダメだ。国民から餓死者が出る……。もう、背に腹変えられない。王立海軍を、海賊船に偽装して奪わなきゃ」
その時、自室をノックする音が響く。
「女王陛下、エドワードで御座います。朗報です、フランソワと敵対する、亜人国家ホランドが共闘を申し入れました。そしてホランドと友好を結ぶ、亜人の超大国ノルド帝国と、かつて存在した超大国ロマーノに奴隷身分にされ、遺恨を抱くルーシーランドの諸侯も、我が国の支援にと声を上げてます」
エドワードは亜人とのハーフの為、極秘裏に亜人国家群を説得、支援を取り付ける事に成功していた。
「わかりました。ありがとう、エドワード。これで我がヴィクトリーは、フランソワとその関係国との戦争で勝てます」
エリザベスは、愛するエドワードにより、ヴィクトリー王国が救われたと思ったが、これこそニュートピアと呼ばれた世界が、神々も巻き込む大戦争になる事を、まだこの世界の誰もが知る由もなかった。
そしてフランソワ王国では、懐刀として辣腕振りを発揮していた、第一王子アンリがいなくなり、国王ジャン二世は頭を抱える。
「クソ! 我が王子の中で跡取りにと考えていたアンリが死に、第二王子のルイも幼く、王女のエマは、政治なんかからきしダメだ。このままでは、フランソワは大公達に簒奪され……」
「ご心配には及びませんジャン陛下。僕が、彼と話をつけましたから」
自室にノックもせず、宰相リシュー公爵と共に、ロレーヌ皇国の皇太子、フレドリッヒが部屋のドアを開けて現れた。
「な!? ロレーヌの皇太子よ! 王の部屋にノックもせずに来るとは無礼……」
フレドリッヒに詰め寄るジャン2世が、文句を言い終わる前に、赤髪の皇太子は王の胸をレイピアで一突きして絶命させた。
「このフランソワは、同盟国である僕と、母上の皇国が舵取りをします。ごゆるりとおやすみ下さい陛下」
フレドリッヒは、レイピアを鞘に戻して、ジャン王の亡骸に、丁寧かつ最敬礼のお辞儀をする。
「いやあ、さすがは英雄ジークの再来、フレドリッヒ・ジーク・フォン・ロレーヌ殿下。見事な剣技、このリシュー感服し……」
フレドリッヒは、無言で鞘からレイピアを居合い抜きのように抜刀し、リシュー宰相の首を一突きする。
「ヒュー、あれ……なんでぇぇ……」
リシュー大臣は、フレドリッヒの突きを受けて首から大出血しながら崩れ落ち、絶命した。
「クズめ。主君を裏切る、売国奴。僕がお前のような奴を、生かしておくわけないだろう」
フレドリッヒは、教皇である母マリアに水晶玉で連絡を取る。
「母上、アンリなき今、このフランソワは我らが皇国のものになりました。主要の騎士団と、官僚達の派遣をお願いします」
「うむ、さすがじゃ我が子よ。アンリ王子なき今、我らロレーヌがフランソワ王国を手にする事は容易い。あとはヴィクトリーを、我らが手にし、エリザベスを……」
「いえ、あんな魔女など必要ありません。マリー姫が生きていました。おそらく、明日の世界会議で、自分の生存報告と、ヴィクトリーの正統な後継者を宣言するかと」
すると、通信先で教皇マリアが笑い出す。
多少アクシデントがあったが、これで西方と呼ばれるナーロッパを、祖である英雄ジークの大帝国、ジークフリード帝国を築き上げれる筋書き通りになったと。
「ほほう、あの姫生きておったか。して息災じゃったか?」
「はい、今は南方のロマーノに亡命しています。彼女は……人間的に強くなってます。おそらく、あのアンリを打ち倒したのは、彼女です」
「なんと!? そこまで成長しておったか!? 素晴らしい、我が義理の娘に相応し……」
「しかし、母上……英雄と名乗る男が現れました。僕を差し置いて生意気だと思い、剣を交えましたが……かなりの手練れです。そしてマリー姫は、あの男から良くない影響を受けてます」
フレドリッヒの報告に、教皇マリアは巨大な扇子を仰ぎ、陰謀を巡らせる。
我が子フレドリッヒこそ、英雄ジークの生まれ変わりに相応しいと思いながら、自称英雄の黒髪の勇者の暗殺を計画した。
酔っ払いが騒いでる中、どんどん世界情勢が悪化していきます。
次号は世界会議の前哨です




