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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第四章 戦乙女は楽に勝利したい
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第154話 半グレの白薔薇 後編

 エリザベスは、チート7に緊急メッセージをメンバーに送る。


白薔薇:ごめんなさい、皆さん。急に呼び出したのは、漆黒の件です。


スカーレット:おはよう白薔薇、動画見たわよ。あのイキリ陰キャ、めっちゃボコボコにされててざまあ。


翡翠☆:こんにちは、あ、そっちは朝なんだっけ?

見た見たあの動画。あの魔王さん素敵ね、ヤクザって単語言ってたけど、日本(リーベン)と関係ある魔王なのかな? 魔王軍も黒社会的な組織なのかな? すごいの、人体の構造とか知り尽くしてて、わざと死なないように痛めつけて。内臓を破壊すると真っ黒い血が流れるのかーって勉強になった。あとね、あとね、言ってる意味、言語が違くてわかんなかったけど、刃物使うのとっても上手いの、感心する。


「うわぁ、やっぱりこの子、猟奇趣味でぶっ飛んでるわ。私あれ見て残酷すぎて戻しちゃったし。あのリンチ北の収容所より酷いもの」


スカーレット:確かにヤクザって言ってた。ヤクザって前の世界で聞いた事あるけど、日本のマフィアだっけ? 陰キャな漆黒の炎のチート技がまるで歯が立たなかった感じ。


黄金堕天使:イキリが瞬殺されてて草なんだ。そうそう、白薔薇。あの例の王子の一人、ヴィトーだっけ? 思い出したけどロマーノで見たぜ? 情報提供だ、金くれメンス


白薔薇:本当ですか?


黄金堕天使:ああ、マジだぜ。一昨日だったかな? 男同士でウキウキに街歩いてて草生えた。そういえば蒼魔いないけどあいつ呼ばなくていいわけ?


 エリザベスは、現在の戦況について考える。


 ロマーノ連合王国は、ヴィクトリー王国と協力関係にあるシュビーツの傭兵団が、武装蜂起し、占領状態。


 その状況を利用し、連合王国東南部のヒスパニアにヴィクトリー軍が駐留し、モンスター軍団を引き連れ、首都ロマーノを目指して進軍中。


 しかし、ロマーノにヴィトーことジローがいるとするならば、戦況を変えるためになんらかの陰謀を企てていると、エリザベスは理解した。


白薔薇:情報ありがとうございます。黄金堕天使。画像か何かあれば掲示できますか?


黄金堕天使:ん? ああ、ええの獲ったわ。ホレ


 画像には、ジローの姿と、勇者ロバートの姿が写っている。


「誰だろう、この男。知らない男だ」


 エリザベスの水晶玉の画像を見て、ロキはニヤリと笑う。


「ああ、地球出身の勇者だよそいつも。なかなかの腕前だね、僕の首を切り落とすくらいの実力はある」


「ぶっーーーーー」


 エリザベスは、すすっていた紅茶を勢いよく吹き出す。


「ちょ!? この世界、何人の勇者がいるんですか!?」


「あら? 彼もいい男じゃない? あたしが昔作った地中海のミケーネ人っぽいわね。髪の毛は黒いけど。エリーちゃん、あたしの推しの子の一人、イワネツって子も勇者よ。確か彼はスラブ人? だったかしら?」


「スラブ人? 東欧の?」


「うん、よくわかんないけどそこら辺出身で、魔帝バサラの力を持ってる。前世は……盗賊だっけか」


 エリザベスは、世界を救う存在である勇者が複数投入されている事態に絶句する。


「なんかね、クロヌスさあ、異界認定されたってさこの世界。異界認定って確か創造神もどうにもならないって匙投げられた状況だっけ?」


「あらあら、まあまあ。派遣される勇者はその世界に一人って原理原則なんだけど、法改正されたのかしらーん。勇者が3人もいるって異常事態だけど、異界認定だからしょうがないかな」


 エリザベスは二柱の神に振り返り、自分が生まれ変わった世界が、創造神にも見捨てられた世界と聞いて混乱状態になる。


「えっと……意味わからないんですけど、異界認定って……」


「うん、あたしも一例しか知らないわ。魔界って世界なんだけどね」


 この世界が魔界と同格と聞いたエリザベスは、飲んでいた紅茶をショックで吐きそうになるが、ロキはその様子を見てニタニタ笑う。


「うん、けど、その魔界も無くなっちゃたらしいよ。概念ごと消されたって、人間になったアースラによって」


 魔界が勇者によって消された。


 耳を疑うような話に、エリザベスは考えが追いつかずに、一瞬放心状態になったが体がガクガクと恐怖で震え出す。


「ちょ!? そ、そんな話聞いてない。それほどの力を持つんで、ですか? あの勇者になったアースラって」


「そうだね、アースラは僕やクロヌス、それにセトも標的にしてるってさ。僕ら神々に逆らった反逆神だから」


「あらあら、けどあたしなら勝てると思う。神時代のアースラちゃんならね」


「どうだろうねえ、本気の僕でも勝てるだろうけど……奴は人間としての限界というか概念すら超越した逸脱者だよ? もっとも僕が味方をしたイワネツってやつも逸脱者だけどね」


 意味不明な単語の羅列に、エリザベスはついていけなくなって、目の前の水晶玉チャットに目を移す。


黄金堕天使:おい情報提供したろ? 金だよ金、あくしろよ


白薔薇:わかりました けど黄金堕天使は今どこに?


黄金堕天使:ロマーノ王国内のミラーノってとこだよ。スカーラ広場な。アホの兵隊共にペテンかけて小遣い稼ぎしてるとこ


「こいつ、詐欺とか通貨偽造とか結構罪が重い犯罪、平気でやってるわよね。通貨偽造はナーロッパでは一律で死刑なのに」


「へーやるじゃん。通貨って硬貨とかなんでしょ? じゃあ偽造されまくりでしょ? 型さえわかれば、技術を持った魔導師なら余裕で偽造できるし」


「あ、ええ。特に基軸通貨のリーラなんてぶっちゃけ誰が作ってるのかわかんない、金属質量をおもいっきりケチってる悪貨ですし、偽造は容易いですね。だからヴィクトリーのペンスが、価値を持つんですけど」


白薔薇:ならばお金は何がいいですか? 金、銀、白金? それともヴィクトリーペンス? フランソワのフランソー? それともリーラがお望みですか?


黄金堕天使:金の現物でおなしゃす。ちょっと趣味でアクセサリー作ってるからさ、原料あれば魔力で混ぜ物して銭儲けできるし。


スカーレット:へー、あんたアクセサリーなんか作ってんだ。意外ねー、あたしにもなんか作ってよ。


黄金堕天使:なら金寄越せよ、白薔薇みたいによ


「ふーん、こいつ物作り得意なんだ。グッド、なかなか面白いじゃん。じゃあ、僕がこいつに現物支給してきてやろうかな」


「あ、はい。謝礼金は通信で生じた黄金で」


 ずっしりと重い、金塊が入った皮袋を持ったロキが、魔法で少年に化けてミラーノのスカーラ広場まで転移の魔法でテレポートする。


 広場を散策すると、水晶玉をジッと見つめる露天売りの少年を見つけた。


「あいつかな? ねえ君さ、黄金堕天使?」


「!? な、なんだよお前? どうして……」


「ほら、君の望むものだ受け取りなよ」


 軽々と金塊が入った皮袋をロキが片手で放り投げると、受け止めた少年は重さで受け取った体ごと潰れそうになり、悶絶する。


 その重さ、20キロ。


 日本円にして約1億円相当であった。


「うーん、もうちょっと筋トレとかしたら? クソ雑魚すぎんだけど」


 転移の魔法で少年に化けたロキがヴィクトリー城に帰還する。


「渡してきたよ、エリザベスちゃん」


白薔薇:謝礼金です。受け取って貰えましたか。


黄金堕天使:おいふざけんな。こんな量、そこらへんにいる乞食とか、悪党たちに見つかったらぶっ殺されちまうっての。だが礼は言っておくよ。今、空飛んでトンズラなう


スカーレット:いいなー、あたしもお金欲しいな


翡翠☆:私は今、お金儲けの手段がやってきたからいいかな。私、海沿いの静かな村でスローライフしてたんだけど、昨夜軍隊がいっぱい来たの。それで私の能力見たハーンって王様から、宮廷侍医にって認めてもらえた。今は、戦争の怪我人とか去勢された男の人とか沢山治療してる。まあ治療込みで人体実験もしてるけど。


「ハーンって、あのチーノ大皇国を乗っ取ったって言う、モンゴルのような皇帝!? 翡翠と繋がったんだ。ちょうどいいわ、天が来たら対ジッポンの交渉ができる」


 エリザベスは笑みを浮かべながら、祝いのメッセージを送る。


白薔薇:おめでとう翡翠☆


黄金堕天使:お? 就職乙ンゴwww


スカーレット:あ、翡翠☆ドクターになったんだー、すごいじゃない


 チャット内が、翡翠への祝福に包まれるなか、天がチャットにログインする。


天:朕に何か用立てか? 愚民共


白薔薇:あ、ちょうどいいところに来てくれました。天、あなたを見込んで後で個別にお話が


天:うむ許す。後で朕に要件を述べるが良い。話だけならば聞いてやろう


白薔薇:それと漆黒はあんな状況になり、蒼魔は私達に害をなす敵とわかったので一時的に排除しました。私から彼らに代わる、チートな二人をメンバーに加えます


 チャットに、ロキとクロヌスがログインする。


ロキ:やあ、みんな。そういうわけでよろしく


クロヌス:あらーん、チャットってこんな感じかしら? みんなよろしくねーん。


スカーレット:あ、新しい男の子と女の子かしら? よろしくねクロヌスと、ロキ


黄金堕天使:なんか増えたンゴwwww


翡翠☆:新しい人よろしく


天:うむ下郎共よ、くるしゅうない


ロキ:え? なに君? 口の利き方に気をつけないと殺すよ?


クロヌス:ロキちゃんだめよーん殺人は。非生産的よーん。天くんもそういう言葉使いだめよーんダメダメ。オネエさん怒っちゃうぞ♡ プンスカ


 これまた随分と個性的なメンバーが揃ったと、エリザベスは思いながら、話を進める。


白薔薇:他にも二名加入予定です。蒼魔と漆黒の件は残念でしたが新しいメンバーが増えて何よりです。けどぶっちゃけ私、漆黒の事は嫌いだったし


スカーレット:XD


翡翠☆:9494


黄金堕天使:lol


ロキ:ウケる。そいつ嫌われすぎでしょ


クロヌス:そんな酷い子だったの?


天:朕をカス呼ばわりしたからな


クロヌス:うわぁ……それダメねーん


スカーレット:イキリ陰キャだし女の敵だし


翡翠☆:うるさいし馬鹿そうだし


黄金堕天使:嫌われすぎて草


白薔薇:じゃあ新しいメンバーも続々と加入するんで、引き続き例の人物達やオーディンと呼ばれる悪神達の情報をお願いします


「まあ、ぶっちゃけあいつ外そうと思ってたけど、魔王もとい勇者の力を見る事ができたし、スパイも排除できたし」


「なるほどー、君も陰謀のかけ方がわかってきたじゃない。エリザベスちゃん」


「こんな状況だし、私もあなた達と生き残りを考えなきゃいけないし、勇者の敵になっちゃったし……あ、ダイレクトメッセージだ」


黄金堕天使:その事だけどさ、ぶっちゃけ聞くけれどあの黒髪のそいつ魔王じゃないでしょ?


「え、なにコイツ。気づいたのかしら」


「やるじゃん黄金君」


白薔薇:何故ですか?


黄金堕天使:だってこいつに俺助けられたし


白薔薇:そうなんですか? 


黄金堕天使:そうだよ


白薔薇:どんな状況?


黄金堕天使:いきなり全裸で現れて、俺の故郷の最低領主と手下共を皆殺しにした。それでそいつらその場に埋めたんだよ


「っぶーーーーーーー」


 エリザベスは、すすっていた紅茶をまた吹き出す。


「うわ汚! 君の中で紅茶吹くの流行ってんの? マイブームってやつなの? 汚いからやめた方がいいよ」


「だ、だって殺して埋めるとかなんて凶悪な」


「え? 僕も昔オーズってやつにそれやったよ」


「え?」


黄金堕天使:そんで目撃者だった俺、殺されるって思って逃げようとしたら、そいつ人差し指で優しそうな目でシーってやって、内緒なってしたの。何言ってるか言語よくわかんねえけど、俺には優しくしてくれた


 エリザベスは、マリーが師事した魔王アースラの転生体のヤクザについて考える。


 勇者と言うには、凶悪を通り越して極悪人のように見えたが、状況によっては、自分たちへ味方につけた方がいいのではないかと。


黄金堕天使:俺、前の世界でゴミ山のようなスラム生まれでさ。なんとなくわかんだよ、人の性質ってのが


 エリザベスが思案を巡らせてると、ロキがニヤつきながら黄金堕天使にダイレクトメッセージを送った。


ロキ:君、物作り得意なんだっけ? 僕も得意なんだ。仲良くなった礼にこれやろうか?


 ロキは禍々しい魔力を放つ、2本の指のようなアイテムの画像をアップロードする。


 さっきの黄金堕天使と名乗る少年の、左手の指二本が欠損していたのを見ていた。


黄金堕天使:何それ? きしょっ


ロキ:これさ、装備するとすごいよ。僕が昔作ったオーズの指ってアイテムで、これがあると魔力を対象物に込めやすくなるし、魔力によって自在に姿形を変えられる。どう?


黄金堕天使:なんか変色してキモくね?


ロキ:え、いらないの? 器用さとかめっちゃ上がるけど


黄金堕天使:じゃそれくれ


ロキ:今どこ?


黄金堕天使:ミラーノから北行った、山岳地帯のベルモってとこ。そこを拠点にして、俺の工房作ろうかなって。ベッキモ広場にいる


ロキ:わかった


 ロキは転移の魔法で移動して、エリザベスから姿を消す。 


 すると今度は、スカーレットからエリザベス宛にダイレクトメッセージが送信された。


スカーレット:ねえ白薔薇って女の子?


白薔薇:ご想像にお任せします


スカーレット:なんていうかそんな感じしたの。あのチャット変なのばっかり集まってるけど、あなたなら色々話せるかなって


「いや、あんたも十分変だし殺人鬼だし」


 エリザベスは独言ちながら、個別にメッセージのやり取りをする。


スカーレット:あとね、この動画見て。マジ神じゃんって子が動画配信してるの。めっちゃゴスロリ似合ってて、あたし的に神って感じ


「?」


 前世のTikTokのような映像が、エリザベスの水晶玉に配信される。


「下郎共よ、控えるのだわさ。女神ヘル参上かしら? ドチビの閻魔王ヤミーが配信してるようだけど、わらわも負けてられないのだわ。ところでわらわは、今ジッポンの団子屋にいるんだけど、あんこのお団子美味しいのだわ。あーん。んー、とびきりのスイーツかしら?」


 エリザベスは首を傾げ、まるで女子がスイーツの食べ歩きを動画配信する感じだなと思いながら、動画を見つめるとハッとした顔になる。


「コイツ……本物の神だ。だって私が死んだ時、あの世の裁判で私を裁いたのが……」


 エリザベスは、北朝鮮の政治犯収容施設、通称この世の地獄と言われる、“管理所“で餓死した後の事を思い出す。


「冥王ヘルが判決を下すのだわ。被告人、竹田絵里こと李絵里だったかしら? 人間界から執行された過重刑及び、人生の境遇、少年法も考慮して、判決だわ。火と硫黄の地、炎熱地獄(ゲヘンナ)に矯正99年から200年。己の罪と魂に向き合い、さっさと次に転生するのだわさ。最後に何か言いたい事はあるかしら?」


 自信を担当した冥王ヘルの、美しいプラチナブロンドの髪の毛をした神に惹かれた李絵里は、涙を流しながら呟いた。


「願わくば次の来世で、あなたのような美しい髪と、雪のような白い美肌が欲しいです……」


 一瞬キョトンとしたヘルは、口に手を当てて目の前の絵里を見て笑い出す。


「おほほほほ、褒めて遣わすのだわ被告人。お前が転生したら、そんな感じで生まれるように、何不自由ない暮らしが出来る来世に飛ばしてやるのだわ。矯正教育で模範的な事をすれば、刑は軽減されるかもなのだわさ。被告人には模範囚を期待する。以上、閉廷」


 成人の行く懲役という名の拷問的な地獄ではなく、魂の矯正的な炎熱地獄にエリザベスは、画面に映る神によって飛ばされた。


スカーレット:やっぱゴスロリだと黒がいいのかな? あたし自作したの赤だったけど。マジこの子クールに映えてて、めっちゃ神なの


「あ、うん、そう。多分、神だと思う」


白薔薇:確かに神っぽい感じですね。


スカーレット:あとね、ここで出てくる双子のメイドもめっちゃ可愛いの。馬とか言葉喋ってサウスパークみたい。あたしの前世だとゴスロリとかアニメとかハマってると、学校で陰キャ扱いになって、親にも黙って隠れ見てたっけ


白薔薇:そうなんですか?


スカーレット:そうなのよ。アタシが通ってた学校って田舎臭くて、スクールカーストとかヤバくて、運動部入ってないと陰キャ扱いだったし


「学校か、懐かしいなあ。あの時コロナとか流行る前は、真里ちゃんと駅前で待ち合わせしてて……真里ちゃん……」


白薔薇:私が学生だった時は、別にそんな事なかったっけ、進学校だったし。校風でクリスチャン的な催しあって、スポーツやってる子もいたけど、勉強忙しくて


スカーレット:クリスチャン系? ああ神学校みたいなのね。確かに宗教行事うざいよねー。ミサとかに参加させられたり。あたし田舎臭くて大っ嫌いだったわ、学校とか。一応真面目ぶって通ってたし、チアリーダーやってたけど


白薔薇:そうなんだ。すごいね、チアリーダーとか。野球とかスポーツ行事とかに応援行くんでしょ?


スカーレット:そうなのよ、練習とかめっちゃキツいし、生傷耐えないしマジ最悪。その合間に勉強でしょ? 夜にヘトヘトで家帰ってシャワー浴びてって感じ。それからネットでこっそりアニメとか、ゴスロリファッションの日本のサイト見たりとか、前の人生そんな感じだった。


「ん? 彼女は日本のサイト見てたって。前世は日本人じゃないのかしら?」


白薔薇:そうなんですか。都会は都会で、面倒くさい感じ。道路とか排ガス臭いし、電車とかめっちゃ混むし。流行とかコロコロ変わるから、話を合わせるのにトレンド追うの面倒いし。おまけにコロナなんか流行って、感染症とか拡まりやすいし


スカーレット:コロナってなんなのか知らないけど、それはそれで面倒くさそう。あとさ、こっちで生まれ変わった時、またクソ田舎だったのね。その地域の村々で、16歳になった女の子集めて、その中でミス村娘的なの選ぶの


白薔薇:はい


スカーレット:それでその年に選ばれた村娘が、領主のお貴族様に処女捧げろって野蛮な風習とかあってさ。領主のロッソスクードだっけ? ぶっ殺したわよ。クソジジイなんかにあたしの体とか触れさせるわけないでしょって


「うわ、酷い! この世界って王族はどこか律してるとこあるけど、地方領主とか上級国民的な感じで小悪党ばっかなのよね。貴族制度も、いずれうちの国から無くした方がいいかも」


白薔薇:それは酷いです。ロレーヌ皇国、地方領主的な貴族やりたい放題すぎ。


スカーレット:そしたらあたしが生まれた帝国から指名手配されて両親も殺されちゃった。生まれ変わった両親は、普通の農民で優しかった。だからこの国の貴族共に復讐しまわってるの。


「復讐か……。私も、勝手に真里ちゃんが父上の仇って思いこんで、前世みたいにまた悪いやつに騙されて、利用されて。彼女、スカーレットにはそんな事しても虚しいだけって話そうかしら」


白薔薇:そうなんですか


スカーレット:前の両親なんか冷血動物みたいでさ。うちの家、地元じゃ入植時代からの名家で、あたしも親の道具にされて政治活動の手伝いとかしてたから


白薔薇:政治活動とか面倒っぽいですね


スカーレット:そうなのよ。もう名前忘れちゃったけど、たとえば人口30万にも満たない田舎丸出しの街に行ったりするのよ、親戚と一緒にね。予備選挙とか党員集会なんかで、作り笑い演じて手を振ってさ。アホくさ


「予備選挙? 党員集会? あんまり日本で聞いた事ないけど、外国っぽいな。アメリカ? あ、またダイレクトメッセージ。天からか」


 エリザベスは、女子同士のおしゃべりする少女の顔から、冷徹な女王の顔に戻る。


天:白薔薇とやら、朕に要件とは?


白薔薇:その前に私の身分を述べましょう。私はそちらから見て西の果てにある、ヴィクトリー王国の君主にして女王、エリザベス・ロンディウム・ジーク・ローズ・ヴィクトリーと申します。そちらは、おそらくジッポン国天帝醍醐様に間違いありませんか?


天:西の果ての国では女が君主となるか? やはり白薔薇は朕が睨んだ通り高貴な身分だったか。如何にも朕は、ジッポンの正統なる天帝、醍醐である


 やはりなと、エリザベスは天ことジッポン南朝の醍醐帝に、臨時の首脳会談を申し込む。


白薔薇:お互いの身分がはっきりすれば、あとは政治的なお話をしようと思いますが如何に?


天:うむ述べるがよい


白薔薇:チーノ大皇国が政変で転覆し、ハーンという部族が支配する地になったのはご存知ですよね?


天:左様、宣諭ジッポン使と、無礼にも天を仰ぎ見る朕に対し、上から諭すなど申し出たから、幕府に命じて処す予定である


「うわ、元寇になっちゃうってそれは。一応相手は外交使節なのに、処刑とか野蛮すぎる」


 エリザベスは、日本の戦国時代のような血の気の多いジッポン人に、ナーロッパの価値観とはまるで違うと感じながら、ある陰謀を吹き込もうとしていた。


白薔薇:ならばいっその事ハーンに軍を送ってもらい、北の天帝勢力とハーンを潰し合わせて、弱体化させればよろしいのでは? そちらには優秀な将軍、クスノキなる者がいると聞き及んでますし、作戦立案をするのは容易かと。


天:北の逆賊光如と、忌々しい賢如を滅するための策であるか。ならば我が忠臣、征夷大将軍楠木正成にその策、授けてやろう。先の先帝の無念と南北戦争を、朕が終結してくれん。


ーーよし、乗ってくれた。


 エリザベスは両手で小さくガッツポーズしながら、今度は翡翠にダイレクトメッセージする。


白薔薇:そういえば翡翠☆。あなたはそっちの王様とコネクション出来たとか


翡翠☆:うん、それが何か?


白薔薇:その王様とビジネス的な話がしたいから、あなたの方で私がビジネス的な話をしたいって伝えてくれますか?


翡翠☆:いいけど王様気難しいからどうやって言えばいい?


白薔薇:そうですね「マリーとアレクセイの件でお話しが」と伝えてくれれば


翡翠☆:合言葉的なものなのかな? 私には意味わからないけど、夕方に診察兼ねた謁見予定あるから聞いてみる


「これで、真里ちゃんを救う手筈が整った。あとはロキにお願いして、これを交渉材料にして真里ちゃんを取り戻せば」


 独言ちるエリザベスを見たクロヌスは、感心しながら彼女を見つめる。


「んーエリーちゃん器用ねー。同時に何人ともやり取りできるなんて、なかなか出来る事じゃないわよーん」


「得意なんです、こういうネット上の文字のみのやり取り。文字を見て指示出したり、ビジネスとかも相手によって切り替えられやすいんです。電話とかで話したり、人と応対するのあんまり得意じゃないですけど」


 彼女の前世で培ったスキルめいた能力である。


 元々明瞭な頭脳を持つ彼女は、文面から相手の気持ちや、その人物の背景を探り、最適解を出す事を得意としていた。


 対面の場合、社会的な経験不足から、相手側の言葉の真意や嘘を見抜けず、やや事実と願望を混同してしまう場合もあるが、文面のみのやり取りの場合、彼女の本来の優秀さを発揮する。


 転移の魔法でロキが戻り、彼の水晶玉画面には黄金堕天使と名乗る少年から、熱狂的にロキへ師事するメッセージが送信されていた。


「ただいまー、あいつにアイテム渡して、物作りのコツとか教えてきた。人間にしては、なかなか筋がいいから、マジックアイテムとか作れるかもね、彼」


「あ、そうですか」


黄金堕天使:マジ神っすよ師匠。またおなしゃす


ロキ:何言ってんの? 僕は神だけど?


黄金堕天使:うせやろ?


ロキ:いやマジだよ。今度自分のブランド立ち上げたら? 僕への報酬は、月一で全売り上げの1割でいいや。


黄金堕天使:かしこまり、ありがとナス!


 ニタニタ笑い、ロキは黄金堕天使と水晶玉でやり取りする。


「あ、お疲れ様ですロキさん。実はジッポンの……」


 エリザベスが、マリーの件の話を切り出そうとした時だった。


 空が振動し始め、遠雷のような音が外から響き渡り、東の果てから凄まじい魔力の波動をエリザベスが感じ取る。


「ふふふ、やっときたか? 遅かったね、根暗のクソ野郎のオーディン。今度こそ僕を殺す気か? ふふ、そう簡単に僕に来られても面白くない、ねえエリザベスちゃん?」


 振り返るロキに、エリザベスは水晶玉を操作しながら、メンバーにメッセージを送る。


「あいつへの対策として、こっちの守りをさらに固める必要がある。原初の巨人にしてあの子を、ティアマト呼んじゃおうか?」


「よくわかりませんが、あなたの敵が現れたならば、私は対策を取らねばなりませんね」


 時刻はナーロッパ時間で朝の9時50分。


 ジョン・デリンジャー・デイ作戦が始まろうとしていた。

一方、次回は滅亡したバブイール王国へ

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