第31話 リオネルの攻撃
「リオネル……様っ……。」
リオと遊牝もうとしていた現場をリオネル様に見られてしまった私は今の今まで私には婚約者がいたという事実を忘れていたことに気が付く。
どうして忘れていたのだろう。
ありえない最低な自分が恥ずかしくなって私はリオネル様から視線を外す。
そんな私の頭をリオが軽く叩く。
「大丈夫、あの人が怒ってるのはあんたじゃなくて俺だから。ねぇ、そうでしょ?先輩。」
悪びれずいつも通りの口調でリオネル様に話しかけるリオ。
そんなリオへ言葉を返すリオネル様の口調もいつも通り怒気をはらんでいるものだった。
「もちろんだ、フェミリオル。私は彼女の心の深いところにお前の存在があることを知っていて正式に婚約を頼んだ。彼女の心がお前によって揺れ動かされることは想像していたからな。だから私は彼女に対しては怒りの感情を抱いていない。……今までの彼女への扱いを考えれば抱く資格もないからな。」
申し訳ない。
そんな感情は私が持つべきものなのになぜかリオネル様は申し訳なさそうに話す。
悪いのは私だ。
責められて仕方ないのにどうしてそんなことを言うのだろうか。
いっそ、攻めてほしい。
そう願うのも勝手だとわかっているけれど願わずにはいられないほど胸の中が罪悪感で溢れてくる。
「ねぇ、その言い分だと俺がそんなに怒りを向けられてるのも理解できないんだけど。フィーの心が俺に揺れ動かされることを想像してて、それを怒らないっていうなら俺に対して怒りを持つ資格もないと思うんだけど?」
全く罪悪感がないどころか、むしろ挑発的に話し始めるリオ。
その次の瞬間だった。
リオに向かいすごい勢いでリオネル様の魔法により作られた氷のつぶてがリオに襲い掛かった。
けれどリオはその氷のつぶてを涼しい顔をして防ぐ。
まるで、今の状況を楽しんでいるように。
「フェミリオル、私はお前に対し怒りを向ける資格は十分にあると考えている。なぜならお前も私と同様、いや、心だけの話ならばおそらく私以上に彼女を傷つけ、苦しめたのだからな!」
リオネル様の口調は一層きつくなる。
そしてリオネル様は魔法で大量の氷のつぶてを作り出し、それをリオめがけて打ち付け始めた。
そんなリオネル様の攻撃に対しリオは笑みを崩さず難なく防御する。
(ど、どうしよう……学園での魔法の私闘は禁止なのにっ……。)
森の中ということで幸いまだ誰にもこの状況はばれていないと思う。
だけどヒートアップしていけばいつか取り返しがつかないことになる。
リオネル様はいずれ王位を継ぐ方。
禁を犯す真似をさせられるはずがない。
「リ、リオネル様!お願いです!どうか、どうか魔法を使うのをおやめください!ここは学園の敷地内!いずれ王位につかれる方が禁を破るなどあってはいけません!」
普段あまり大声で叫ばないせいでそこまで大きな声がでない。
私の声はリオの魔法で作り出された防御壁に当たるリオネル様の氷のつぶてが砕ける音にかき消される。
しかもその音はどんどん大きくなるばかり。
はやく、早く止めなければ。
取り返しがつかないことになる!!
「や、やめて―――――――――!!」
どうすれば辞めてくれるのかわからなくて、私のせいで取り返しがつかないことになるのが怖くて、涙ぐみながら私はただただ全力で叫んだ。
その瞬間だった。
私の身体が強い光を放った。
それはとても短い時間だったけれど突然の光に驚いたのかリオネル様の魔法での攻撃は止まったのだった。
「……ディオス。」
リオネル様はとても驚いたような表情で小さく何か言葉をこぼす。
その言葉は全く持って聞き取れないけれど、おそらくそれは私が強い光を放ったことに対する驚きの言葉だと思う。
「……リオ、ごめんなさい。リオネル様と二人で話をさせて。」
現状、リオネル様と二人きりで話すのはとても怖い。
でも私は仮にリオネル様に手をあげられても今は仕方がない状況だ。
どんな罰も甘んじてうけ、しっかり話さなければ。
そう思う私の思いを組んでくれてかリオは私の頭をなで、「わかった」と言い残すと一瞬で私の隣から姿を消した。
二人きりになったことを確認した私はリオネル様に歩み寄った。
そして、リオネル様の目を見つめるのだった。




