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【閑話】暗躍者たちの会合

 

 物事には大抵、反対の性質というものが存在する。


 その一例としては、魔法の属性が挙げられるだろうか。


 魔法の基本属性は火水風土の四属性あるが、各属性には対立する属性がある。水は火に強く、火は風に強い。風は土に強く、土は水に強い。


 こういった相反する2つの性質というものは多くの事柄において存在している。


 さて、結局何が言いたいのかと言えば、そういった相反する性質というのは街の中にもある、ということだ。


 輝かしく賑やかな表の街。


 荒んだ空気漂う閑散とした裏の街。


 その2つの街はコインの表と裏のように、表裏一体でありつつも決して交わることはない。だが、ひとつ言えるのは表の街を維持するためには裏町が必要だということだ。


 人とは欲が深い生き物である。誰しも多かれ少なかれ欲を持っている。そして、深すぎる欲はやがて人を犯罪へと走らせる。裏町はそうした犯罪者や犯罪予備軍にいる者たちをまとめ、最低限の秩序を保つという機能を果たしている。


 裏町には表と同じく統治者がいる。表の街の統治者が領主や国王だとするならば、裏の街の統治者はマフィアのボスや闇ギルドの長であろうか。裏町で生きていくためには、そうした統治者の庇護下に入る必要がある。そして、庇護下に入ることが結果的に裏町に秩序を作り、犯罪を抑制することに繋がっている。


 もし、強引に綺麗なものだけーー表町だけを残そうものなら、その国の行く先は破滅だろろう。おそらく、ジェノサイド吹き荒れる世紀末世界が街に蔓延することになることであろう。


 視点はそんな裏町のとある場所にある。


 ここは【ガーランド帝国】の帝都【ヴァース】の裏町。今代皇帝の急進的な改革によって以前よりも経済は活性化し、国は発展したが、裏町は以前よりも拡大していた。その理由は他国との協調を推進する現皇帝にとって、大規模な軍隊は不必要だったために多くの末端兵士を解雇したからだ。


 元々、軍備を拡大しまくっていた前皇帝が誰にでも軍への門戸を開いていたので、軍には素行の悪い者が多かった。現皇帝は軍の健全化を図る上でそういった者を解雇した。その結果、職を失った兵隊崩れが裏町へと流れ、裏町が拡大してしまったのだ。


 そういった事情があり、現在の裏町は、以前にも増して貧困にあえぐ者が多く住まう危険地帯となってしまっている。


 しかし裏を返せば、表の住人が決して訪れることがない安全な場所だとも言える。それは無論、犯罪者や良からぬことを画策する者たちにとっては、という意味であるが……。


 そして現在、そんな裏町のとある建物の前には、この場におよそ相応しくない豪華な衣服を身に纏った人物がいた。その者は躊躇いなく両開きの扉を開くと、建物内へと入っていった。


 その建物は外観こそ裏町でよく見る寂れたボロい建物であるが、室内はその限りではなく、貴族の館と言われても違和感がないほど豪華な造りであった。


 その人物は廊下を進んでいくと、やがて一室の前で立ち止まり、ノックすることなく中へと入った。その一室は会議室のような体裁であった。部屋の中心部には円卓が置かれ、それを囲むようにして10脚の椅子が置かれている。椅子には一脚を除き、全てに人が座っていた。


「全員揃っているようだな」


「ちょっと遅いんじゃないですかい?旦那」


 全身に黒装束を纏った男がニヤニヤとした表情を浮かべならが言った。


「ふんっ。貴様はいつも来るのが遅いだろう。たまたま、早く来たからといって調子に乗るでないわ」


「ガハハ。違いない」


「では、会議を始める」


 入ってきた人物はそう声をかけると、上座へと座った。


「ジェイル、進捗状況はどうだ?」


「はい。滞りなく。8割方終了しています。建国祭までには間に合うでしょう」


 メガネをかけた研究者風の男ーージェイルが答えた。


「ふむ。では計画の始動は半年後の建国祭当日とする。これより計画の確認を行う。計画の始動はーー」


それから、計画に関しての確認及び、細部詰めが行われた。


 会合の参加者誰もが自分たちの計画成功を信じて疑わず、自信満々な様子だ。そして会合は夜更けまで続いた。


「ーーということだ。では、皆の者。計画開始は半年後だ。それまでに各自準備をしておいてくれ。さて、今日は我らの計画の成功を祈り、ささやかながら晩餐を用意した。食事を食べ、英気を養おうではないか」


 彼が合図をすると、扉の外から人数分の食事を乗せたカートを押す使用人が現れた。その使用人は1人1人の前で立ち止まり、盆に乗せたままの料理を会合の出席者の前に置いていく。


 そして、各々はその食事を取り始めた。


 半刻が経つ頃には全員が食事を食べ終わり、軽く挨拶を済ませて次々に出て行った。使用人は机に置かれた盆をカートに戻していく。


「あら?豆が残されているわね。次からは豆は出さないようにいたしましょうか」


 使用人が最後に片付けた盆。その盆に載っていたスープが入っていた器には茹でた隠元豆が残されていた。


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