表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

司教

リリスと協力関係になってすぐ、司教――グラトリアン・ヨハネスブルク侯爵がヴォルテール公爵家の門を叩いた。


今から会ったら確実に私が偽物であることがバレてしまうだろう。

そこでリリスが待たせておけば良いんですよと言い出し、悪役令嬢の練習をした。


グラトリアン司教がヴォルテール公爵家の門を叩いてから1時間後……。


何分も待たされたことに不快感はあるのか、こいつ良くもやってくれたなという雰囲気を出しているがにこりと笑ってガン無視する。


「お久し振りですねぇ……アイリス様」


そう言って頭を下げたグラトリアン司教はゲームの通り胡散臭そうな顔をしているが思ったより若い。


ゲーム内ではラスボスとして登場していた司教だけど…計画を話す前に魔王に体を乗っ取られて結局なにがしたかったのか曖昧なままで次作が期待される要因にもなったシーンは有名だったんですよ。


なんてことを裏で考えながらリリスが指導してくれたことを思い出す。


まず一つ目


「あら、もう1時間もたってるのに貴方、まだ居たのぉ。貴方、暇なのねぇ」


失礼な事この上ないが開口一番、挨拶もなしに皮肉たっぷりにそう言い放った。


リリス曰く、アイリスは司教のことが死ぬほど嫌いだそうで会うときにはいつも何らかの嫌がらせをしているらしい。


向こうが唖然としているが……きっとアイリスが公爵のようになっていなかったことに驚いているのだろう。


目を見開いているだけにとどめたことを褒めるべきか……。


二つ目


「そこに突っ立って何をしているのかしら?そんなに目を開いてると目が乾燥するわよ?」


馬鹿にしたような笑いと皮肉を絶やさないこと。

後は持っている扇子で笑っている口元が見えるようにすると悪役令嬢っぽくなるらしい。


これが結構難しい…。


馬鹿にしたような笑いをするだけなら簡単なのだが皮肉を言うのにも頭がいる。

しかも扇子を傾けすぎても口元が見えないし……。


うわぁぁ、もう!頭パンクしそう……。アイリスって実は凄かったんだな…、今まで悪口言ってごめんなさい……。


そんな事を思っていると唖然としていた司教がポーカーフェイスを保ちながら門をくぐって入ってくる。


剣聖を操ったという成功例があったためかアイリスを操れるという相当な自信があったらしい。


脅しをしておきたいが向こうは大陸の一大教団だ。


皮肉を言っている時点で綱渡りをしているようなものなのだがグラトリアン司教は感情で動くタイプの人ではさそうだ。


その証拠に怒りの表情を浮かべることなく飄々として私達に付いてきている。


そのまま部屋まで案内してくれたリリスにお礼を伝えるとリリスはお茶を取りに行った。


二人きりになった部屋で気まずい空気が漂うがここでまで来たのだ。


ここで台無しにするわけには行かない。

そう思って覚悟を決めて扇子を取り出す。

リリスに綺麗にしてもらった爪を眺めながら話を切り出した。


「そう言えば、風の噂で聞いたのだけれど…最近、ここガルシア国内で失踪者が多発しているそうね」


チラリとグラトリアン司教を見るが表情の変化はない。


流石。としか言いようがないなぁ……。


「…ここだけの話よ、何でも数ヶ月後には失踪者が帰って来るそうなのよ。でも……まるで魂が入れ替わったかのように別人になっているんですってね」


ここまで言っても表情に変化はない。

ヴォルテール公爵のことを話すべきだろうか。


――本性を出してくるかもしれない。踏み込むべきではないかもしれない。でも……!


少し迷ったがアイリスの為だ。


ギュッと手を握りしめ覚悟を決める。


「お父様……ヴォルテール公爵も貴方が家に来るようになってから様子がおかしいのよねぇ」


あなたの仕業でしょう?と問いかけたところでようやく反応を示してくれた。


「…バレていたんですねぇ。えぇ、そうですよ」


それが何か?という風に問いかけて来るグラトリアン司教は今にも私を殺しに掛かりそうな程の殺気を放っていた。


頬を伝っていく冷や汗を隠すように扇子を口元に持っていく。


やばっ…、今このタイミングで言うべきじゃなかったかも……。


チラリと私たちが入ってきた扉を見るもリリスが帰ってきそうな様子はない。


「……こちらからもお話したいことがあるんですよねぇ」


グラトリアン司教は表情を和らげ、殺気を押さえると突然立ち上がり


「実は最近、ある噂を聞いたんですよ」


意地悪そうに笑うとそう言った。


「何でも、ある貴族が秘密裏に人を使った実験をしているようで夜な夜な人を攫っているようなんですよ」


私がさっき言ったことと同じようなことを言い出した。


「……何が言いたいのかしら?」


声のトーンを落としてグラトリアン司教を睨む。


「まぁまぁ少し落ち着いてください」


その表情はどこかこの状況を楽しんでいるようでもあった。


「それでその貴族とは誰のことだと思いますか?」


「……誰かしら?」


何故か扇子を持っている手が小刻みに震えていた。


「ヴォルテール公爵家。貴方達の事ですよ」


「……何を言っているの?そんな事していないわよ」


この不気味な雰囲気を笑い飛ばそうとわざと明るく振る舞うが、声が震えてしまう。


「えぇ、そうですね。……ですが、これが貴方達がしたことです」


チェックメイトと言わんばかりにグラトリアン司教がニヤリと笑う。


「必ずそうなるんですよ――フェルズ教団がそう言えばね」


そう言ったグラトリアン司教にもう何も言い返すことができなかった。


私たちが相手にしようとしていたのはひとつの家ではなかったのだ。

ゲーム内でも敵として出てきて、世界で広く信仰されている宗教団体――フェルズ教団。


信心深い人が多く、中には各国の大貴族や王族まで居ると噂れているほどだ、勝てる訳がない。


――ごめんね、リリス。私じゃ無理……。


「なぜ操れなかったのかは分かりませんが……まぁ…また術式をかけ直せばいいだけのこと」


床を踏む音が私の目の前で止まった。

ゆっくりと顔を上げると目の前にはグラトリアン司教の手が眼前に迫って来て――。


バチッという電気の音がしてその手が跳ね除けられる。


「アイリス様に何をしているのでしょうか」


いつの間にか私の隣には


「グラトリアン司教」


雷を纏った剣をグラトリアン司教に向けているリリスがいた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ