第124話 痺れた!
「「「――⁉」」」
そのバリエンスと対峙していたオレたちの目の前で突如奴の姿がノイズに呑まれた。
オレたち三人による攻撃の影響ではない。
明らかにガラスの都市を傷つけられた事と連動したノイズだ。
つまり。
「そうか!」
「わっかりやすいなオイ!」
「成程」
オレたちはほぼ同時に一つの答えに辿りついた。
こいつの本体は!
「この都市じゃねえか!」
なれば攻撃対象は当然変わってくる。人型ではなくガラスの都市にだ。
しかし。
なにやら圧倒的な戦意が辺りを満たした。
なんだ⁉
戦意がやってきた方向に目を向けてみると、ウェディンと燦覇の相手取る『AIbis』の姿が変わっていた。より先鋭に、より戦闘に適した形に。
頭には苗色の角。
獲物である刀には金属よりも鋭い苗色の光刃。
まさに全身刃。戦意はあいつからだ。全身を苗色に輝かせる『AIbis』からだ。
あれは――
「『暴刃!』」
刀刃第五階層・暴刃。
刀刃における最終刀法、自らの意志と刀の意志の同一化。
使用した瞬間に刀刃の信念“斬って護る”は“斬って殺す”に切り替わる。
士気と戦闘力は格段に上がるが代わりに理性を失い怪物となってしまう刀法だ。
鬼神化とも呼ばれる刀法で、暴走状態である。
「ウェディン――燦覇」
「涙覇! 向こうが気になるなら行って良い!
むしろ行け!」
キュアのゲキが飛ぶ。
邪魔だとは言われなかったが、あちらを気にしながら戦えば足を引っ張ってしまう可能性は高い。
……しかし。
「いや、こっちにいるよ」
あの二人ならきっと大丈夫だ。
信頼しよう。
オレはオレの戦いをしよう。
「……分かった。気配くらい探ってて良いぜ。
それくらいの余裕あたしが作ってやるよ」
「ああ」
言葉には甘えとこう。
オレは前を向き、一方でウェディンたち三人の戦闘も気配で探り続ける事にする。
「ちょっと威嚇してみましょうか」
気配で、と言ったがウェディンの声が微かに届く。
そして轟音も。
『AIbis』がウェディンの発した殺気に釣られてビルを跳躍した音だ。
「重い!」
跳躍とほぼ同時に振られた刃をウェディンは剣で受け止める。が、勢いに負けてそのままずり下がり、燦覇の大鎌が『AIbis』の刃を持つ右腕を斬りつけた。
即座に背後へと跳ぶ『AIbis』、大鎌は僅かに右腕の肘を掠ったが、機能の邪魔にはなりそうになかった。
二人はすぐに『AIbis』を追う。が、マント状の刃に接敵を拒まれてしまう。
『AIbis』が先ほど殺気に反応したからだろう、ウェディンは常に殺気を放って自分を餌にしている。そしてその隙を燦覇が襲う。
燦覇の大鎌がマントを斬った。が斬られてもマントは新たな刃を形成して燦覇を押し返し、ならばと燦覇はマントを掴んで『AIbis』を強引に引っ張り胴体を大鎌で狙う。大鎌は胴を斬りつけた。けれどもダメージがない。ついさっき肘を斬りつけられたから士気を高めこれでもって防いだのだ。
「痺れた!」
燦覇の腕が。
そんな燦覇にマントが伸びて体を拘束、体当たりをかます『AIbis』。
「っつ!」
全身刃状態の体当たりだ。なんとかパペットの持つ防御力でやり過ごす燦覇だったがまだ拘束はされたままだ。
体当たりが防がれた『AIbis』は左腕を手刀の形に。一思いに燦覇の喉を突こうとする。だがウェディンの盾が割って入り、弾かれた手刀を剣で斬り上げる。
「ありがと!」
「どういたしまして!」
バランスの崩れた『AIbis』に向けて剣を、大鎌を振り続ける。
けどもなかなか防御の壁を崩せない。
一方で『AIbis』は人としての関節の動きを無視して右から左への一文字斬り。
狙われ斬りつけられ膝を着くウェディン。【羽衣】が斬られて僅かに腹から出血。
「ぐ……おぉ」
曇った声が聞こえた。『AIbis』からの声だ。
「おぉぉぉぉ―――――――――――――――――――――――――――――ぉ!」
雄叫び。
今がウェディンを殺す好機と見たのだろう。殺意がより濃く広がった。




