首輪の価値
「呪……ですか」
食事を終え、話を聞いたアリスが小さく呟く。
「レオン……どこまで私を楽しませるの」
「ミリア……てめぇ……」
いつも通り茶化してくるミリアに、軽く睨みを利かせる。
「でも、秘密にするのは正しいと思います」
アリスがすぐに真面目な顔に戻る。
「知られれば……確実に“処理対象”です」
言葉は静かだが、重い。
「でもねぇ」
オネイが口を挟む。
「実はドラゴン、最初は私が目的だったみたいなのよ」
「え?」
「私を掴んだときにね――」
「“見せろ”とか、“祝福か”って言ってたのよぉ」
「祝福……」
アリスの目が細くなる。
「呪いと祝福……対になる概念、ですか」
「神と関係してる……可能性が高いですね」
「オネイ様は、分かりやすいですし」
「そうねぇ♡」
楽しそうに笑う。
「願い続けた結果の“超回復”ってところかしら」
「はい」
アリスが頷く。
「ではレオンの力は……」
一拍。
「“祝福ではない”からこそ、“呪い”」
「そう考えると辻褄が合います」
「でも……」
アリスは思考を巡らせる。
「なぜ“呪い”なのか……そこが分かりません」
「神の領域に触れているのは、間違いないのに」
「神のことなら――」
オネイが軽く言う。
「王都の大神殿にでも行ってみればいいんじゃない?」
「王都なんて、行く機会ないですよ……」
レオンが苦笑する。
だが。
オネイは、首を傾げた。
「レオンちゃん……もしかして、この後のこと分かってないの?」
「え……?」
一瞬、嫌な予感がする。
「行くわよ。王都」
断定。
「……え?」
「必ずね♡」
「レオン君……」
アリスが苦笑する。
「ミトマ壊滅を救って、さらにドラゴン討伐だよ?」
「王城から呼ばれないわけないでしょ」
「……そうなの!?」
「だから騎士団長が、私たちに留まれって言ったのよ」
「王城への報告、時間かかるから」
アリスが補足する。
「まずは領主邸に呼ばれて――」
「その後、王都への同行命令が出るはずです」
「そしたらぁ♡」
オネイがにじり寄る。
「私たちが、ちゃんと連れてってあ・げ・る♡」
「……っ」
ゾワッ、と背筋が粟立つ。
「ま、まじかぁ……」
「あっ、ついでに言うと」
「爵位、もらえるかもよ?」
「えっ!? 俺、貴族になれるの!?」
思わず声が裏返る。
「可能性はあるわねぇ」
オネイの表情が、少しだけ真面目になる。
「でも、それ――“ご褒美”だけじゃないわよ?」
「……え?」
「レオンちゃんの力はね」
一拍。
「王族や貴族から見れば、“脅威”でもあるの」
空気が変わる。
「血を繋ぐことが絶対の連中にとって」
「レオンちゃんの力は……致命的」
「もし敵に回ったら?」
誰も、答えない。
「だから――」
オネイが笑う。
「恩を与えて、囲うのよ」
「首輪をつけるってやつね♡」
「……平民の学生が、いきなり貴族とか……無理ですよ……」
「でも」
アリスが静かに言う。
「断れません」
「……ですよね」
レオンは、小さく息を吐いた。
――戦いは、終わったはずなのに。
もっと面倒なものに、
巻き込まれていく気がした。
暫くお休みします。




