鍛冶の町 ピエール
“グロームハル”のイツカの別邸にて
「お前らよ、
なんでここでメシ食ってんだ?」
主のイツカがピッツァを頬張りながら口を開いた。
「うわっ!ケチくさっ!
ね?そう思わない?」
「前もこの流れやったよね?」
「様式美にしたいんじゃないかしら?」
「今回はアリアさんがいませんね」
「…じゃ、本音をどうぞ」
「待て、言うなファニー」
「――っ!」
「…チッ」
「お前らよ、もういいか?」
「何よ?」
「イツカ、ノエルは無視しろ」
「私が聞いた方が良さそうね」
「あ!そうそう、オリバー。
良かったね。なんか大丈夫そう?」
「ありがとうソファ。
俺の体の事ならまあ大丈夫だろう」
「そう、それだよ!外の鉱竜よ。
あれどうするか決めとけよ?」
「それなんだ…正直どうしたもんか…
なんかいい方法ないか?」
「オリバーが貰ったものでしょう?
あのままって訳にもいかないわね」
「そんなの簡単な話じゃん!」
「どうするんだ?」
「武器以外のオリバーの装備、
全部新調しちゃえばいいのよ!」
◇◇◇◇
「今日の朝食べたピッツァといったか。
あれは旨かったな?」
「ホントに。初めて食べたわ。
あんなにチーズを使って…
ここでは名物なんだって!」
「2人とも気に入ったんだな!
後で露店にも寄ってみるか?」
朝食を終えた俺とファニー、オリバーの3人は広場中央の温泉噴水の前を通り過ぎた。
「お昼もピッツァですか?」
「チーズを使った料理だな!
ドワーフはチーズと火酒がないと…」
「ないとどうなるんだ?」
「暴動を起こす!」
「――!?」
他愛もない会話を交わすうちに
目的のものが見えてきた。
「手伝ってもらってすまんな。
ファニーもすまん!
ピエールと町を歩きたかっただろ?」
「これくらい当然です!
それに…今も一緒ですし…」
「本当か?本音はどうなんだ?」
「3人組の追求が怖くて!
それにオリバーさんが主人と組むことが多いと聞いたので、
いい機会だし、お話したかったんです」
「俺は主に雑用係だがな。
だが亡命しても食うに困らん。
こうしてファニーともまた会えた。
予想できんことばかりだが、
俺はここの暮らしは気に入っている」
そう言いながら目的のもの
鉱竜ファフニールの遺した鉱石の塊をノエルから預かった収納袋に入れていく。
「まぁノエルといれば退屈はしないな。
次は旅に出ると言ってたが、
ファニーはどうするんだ?」
朝食を食べながら確かにそう聞いた。
「どこに行くか知っているのか?」
「さぁな?目的はないだろう。
行きたい所があるなら、
言ってみたらどうだ?」
そう言われてファニーに目で尋ねたが
彼女も特に希望はなさそうだ。
「お前ら新婚だろ?
もう目で会話してんのか?」
またも目線を交わしたが
彼女は少し目線を逸らして
照れくさそうに笑みを浮かべる。
「ファニーはどうすると聞いたが、
連れて行ってもいいのか?」
「離れるのは不安なんだろ?
魔物の生態調査とかなんとか
ギルドの現地研修ってことで
アリアには俺から話そうか?」
「是非お願いしたいです!
でも、あのアリアさんですよ?」
「それぐらいなら問題ないさ。
あいつには今回貸しがあるしな」
そう言いながら彼は次々と鉱石の塊を分けていく。
成り行きとは言え女性ばかりのパーティーであった事に妻は不満があったようで
特に最初のころはセレナに対してどうやら嫉妬していたようでもあった。
そんな中、オリバーの加入は色々な意味で非常にありがたかった。
――女性陣により無理やりの加入だったような気もするが…
「オリバーもそうだが…
世話になりっぱなしだな。
本当にありがとう」
「主人の言う通りです。
それに鉱竜の素材まで…
本当に頂いていいんですか?」
同じく朝食時の彼の提案には驚いた。
遠目に見ていた誓約という儀式。
それによって鉱竜から受け取った素材。
彼の防具一式を新調するという話の中で
なんとそれなら一緒に新調するか?と
話を持ち掛けてきたのだ。
誰からも反対意見が出なかったので
せめて加工費用は出させてくれないかと言ったところ
ノエルの一言で、どちらの費用もパーティーで負担するという。
彼女曰く、
「アンタたちの装備でしょ?
必要経費じゃん」との事だった。
尚も食い下がったところ、
「じゃ納得できるまで雑用継続ね~」
この一言で全てまとまってしまった。
どうやら先日までの依頼報酬は相当の額のようだった。
ファニーなら見ていいよという事で、
総額を見た彼女は目を白黒させていた。
ムタレン将軍とともにあった荷物と
ワイバーンが相当の額だったそうだ。
どちらも貢献していないと言ったところ
これも彼女曰く、
「山分けって言ったじゃん」の一言。
残りのメンバーも不満がないようで
こちらとしてはありがたいのだが
借りばかり増えていつ返せるのやら…
「よっし!回収完了だな。
次は装備の調達か。
このまま持ち込んじまおう」
そう言って来た道を戻り彼の後を追う。
この国に来た時に数人とすれ違ったが
特に話す機会はなかったドワーフ。
祖国では偶に見かけた程度だが
このグロームハルという町では
ドワーフとハンターしかいないのでは?
彼らの中でも特に腕のいい職人の工房で装備を加工するそうだ。
もう驚かない。
何度でも予想を超えてくる彼らだが
そのドワーフの工房でも更に予想を超える驚きがあるとは…
この時はまだ知る由もなかった――。
ねえピエール。
どうしたファニー。
その収納袋?一体どれだけ入るの?
気になるか?俺も良く分からんのだ。
オリバーは知ってるか?
この収納袋か?
感想があれば作者が喜ぶとあるな。
…ますます分からないですね。




