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ある滑稽で臆病な鶏の話  作者: ナッツ
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第1章3部 不器用

第1章3部 不器用


ペンケースの中の鉛筆が鈍い光を反射している。

暗い部屋で自然教室2日目の準備をするのだ。

2日目は伝統工芸の歴史について学ぶ授業が

予定されている。面倒くさいなぁ…


「朝早すぎだろ…」

俺が言うと、友人の斉藤(さいとう) 優馬(ゆうま)は答えた。

「俺は朝平気なんだけどね」

優馬は話が通じるし、なにより趣味が合う。

滑舌が悪く身長が高いのが彼の特徴だ。

「優馬はすごいな…俺は朝無理」

そんな会話を済ませ、クラスでまとまって

朝食をとる。間違いなく美味しいが、

小林さんは遠い所で食べている。

もう少し近くで食べられれば…


「食べたらどうするんだっけ」

俺は言った。

「7時半には玄関口集合」

優馬は優しく答えた。

昨日のバスの連中とは大違いだ。

都合のいい時だけじゃない。

本当にいい友人を持ったものだ…


「伝統工芸ってなんだろうな」

優馬が聞いてきた。

接木細工(つぎきざいく)とか言ったっけ」

自信なげに俺は言った。

「あー、そんなのそんなの」

「作ったりもするよね…」

「そうだったっけ、俺不器用なんだよな」

「優馬なら出来るだろ」

続けて俺は言った。

「それより、俺こそ出来るかわかんないよ」

「悠介なら出来るだろ」

考え方が似てるんだろうな、俺たちは。

当時の数少ない友人だ。優馬は。


工場に着いた。新築の家の匂いがする。

「うわっ、木くせぇ!」

山田(やまだ) 健汰(けんた)は言った。

山田くんも俺の友人だ。

よく趣味の話で盛り上がる。

滑舌は良い。

「ね、まじで木くせぇ」

俺も賛同した。

中に入ると、すごい技術を目の当たりにした。

木材のはずなのに、糸のように絡み合って

1つの作品になっている。白鳥の絵のらしい。


「やっぱ俺は無理かも」

俺が小声で言った。

「だよね俺も無理かも」

優馬も小声で言う。

「ですね俺も無理かも」

山田くんも続いた。


1時間の工作タイム。コースターを作る。

50分ほど経過し、もうすぐ時間切れ…という頃、

まず、山田くんが声を上げた。

「おっしゃ、できた!」

それは美しくはなかったが、努力の跡がある。

「すごいじゃん、やったね」

俺は言った。

優馬は立ち上がった。

「よし、俺もできた!」


えっ


俺は思わず声が出た。

まだ半分も進んでないのに。

できないの、俺だけかよ…

「小林さん、できた?」

早く完成した山田くんは小林さんに話しかける。

「まぁ、ここミスっちゃったけど。」

小林さんの白鳥は、(くちばし)が少し曲がっていた。

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