波乱万丈の夏休み⑤
ちょっと長いです。
夏休みも終盤に差し掛かり、凛花は覚悟を決めた。
「よしっ!告白してやる!」
気合を入れ、凛花は眠りにつく。
◆
「おにい!起きろってば!」
朝から怒鳴り、体力を消耗した私。
「全く……いつまでもだらけてると新学期辛いよ?」
「はいはい、今起きました」
やっと起きたか、と内心舌打ちをし、小声で文句を言う。
「私も省エネ主義のこと知ってるくせに……」
そう、私も省エネ主義なのだ。
なので、出来れば悠眞には一人で起きてほしいと思っている。
「悪かったよ、確かに省エネ主義には嫌な行為だよな」
そうして、今日が始まる。
◆
「なあ大悟。暇じゃね?」
大悟に遊ぼうぜと誘われて、近所の公園に遊びに来たはいいのだが、何をするかは決めてなかった。
だから、ぼーっとして時間が過ぎていくのだが…
「これまじ暇人のやることじゃん。こんなに無駄な時間過ごすとか今日働いている人たちに申し訳ないだろ」
「いやさ、省エネ主義のお前が今以上の時間の使い方をするとは思えないけど……」
「何を言うか。今日お前に誘われてなかったらゲームして、寝て、本読んでゲームして……あれ?今の状況より酷い?」
やっと気づいたか、と大悟はため息混じりに言った。
今思い返すと、俺の過ごし方は1日中ぐーたらぐーたら。
ほんと、一生懸命働いている方に申し訳ないです。
「それで、なにすんのよ?このまま昼寝?」
「部活引退してから悠眞ニート脳になってるよな……そんなんで将来平気かよ」
「へーきへーき。なんとかなる」
これぞ適当。俺が今まで計算して生きていると思っていたのか。当たって砕けろだ。要するに適当だ。
それでなんとかなっちゃうから不思議なものだ。
「やっぱ悠眞には敵わないわ」
そういって俺らは眠りについた。
それから数時間、空が真っ赤に染まり、日差しが弱まり、吹きそよぐ風が心地よい夕方、俺は目を覚ました。
8月の下旬で、この空の色だから今は17:30ぐらいだろうか。
今日はいつもより空が綺麗だ。いつまでも見ていられる。
こんな日は滅多にないと思い、俺は携帯のカメラアプリを起動させ、空を撮る。
そのシャッター音で大悟は目を覚ます。
「……んん?もうこんな時間か……」
ふぁ〜と欠伸をしながら身体を起こす。
「ごめん、起こしたな」
「いや別に。てゆーか今起きてなかったらお前俺のこと置いてったよね?」
思っていたことを的中させられた俺は
「い、いや?そんなことするわけないじゃないか!あはははは!」
などと、普段絶対に言わないことを言っていた。
「ま、いーや。お前のこの性格は今に始まったことじゃないからな」
流石無駄に付き合いが長いことはあるな。
よくわかってらっしゃる。
「そーいえばさ、お前の好きな人って誰だ?」
俺の言葉に、大悟は少し考えて
「……教えるわけないだろ。秘密だ」
大悟の表情が暗いように見えたのは気のせいだろうか。
夏休み最終日、俺達は朝からテンションの高い小鳥遊によって、夏祭りに誘われた。
『やっほー!起きてるかい?今日夏祭り行かない???』
LINEのメッセージでもこいつはうるさい。
『他のみんなが行くなら行く』
と俺が送ったあと
『おにいは無理矢理にでも連れていきますね!美咲希さんは来ますか?』
葉月によって俺の逃げ道は塞がれた。多分今あいつはリビングで勝ち誇った顔をしているだろう。
『私はもちろん行くわ。どっかの誰かさんが宿題をもらった初日に終わらせたって言うから、対抗して夏休み前半に宿題終わらせたから暇なのよ』
おっと、俺のことですか?
『しかもあれから遊びに行く約束もしてないし』
これ明らかに俺ですね。
『ごめんって。夏祭り一緒に周ろうぜ』
『これならおにいは行きますね!美咲希さんよろしくお願いします!』
おい妹、何を言ってやがる。
「おい葉月!何言ってやがる!」
自室から全力で叫んだ俺に対し
「朝からラブラブですねぇおにい。どっかのラブコメ?」
「お前殴ってやるから待ってろ」
すこし怒りを含んだ俺の声に葉月は怯まず
「やってみろおにい!事実だから否定すんな!」
ああ、これ俺勝てねーわ。
俺は舌打ちしながら
「今回は見逃してやる」
そして、部屋から半分出た体を反転させ、部屋に戻る。
携帯のバイブが鳴った。
『おにいに怒られちゃいました(・ω<) テヘペロ』
あ〜、腹立つ〜。
『じゃあ私が叱っておくわね(´∀`)』
『あはは、それは勘弁してほしいな…』
あーおそろし
『朝からラブラブだなぁ悠眞。ああ、もちろん俺も行くぜ!』
あー、こいつは後で殴っておこう。
『お、マジで!?みんな行けるの?じゃあ17:00に悠眞の家集合で!葉月ちゃんいいよね?』
確かに夏祭り会場俺の家に近いけどさ…なんで俺じゃなくて葉月に聞くんだよこいつ。
『なんで葉月なんだよ。俺忘れてね?』
『いやー、だってさー、悠眞に聞いてもふざけんなといやだとしか言わないでしょ?だから葉月ちゃんに聞いてるんだよ!』
ふむ、俺のことをよくわかってるじゃないか。
流石隣の席。
『私もおにいも異論なしです!今部屋で喜んでますよ!』
『あら、悠眞ってツンデレなの?』
美咲希さん?信じちゃダメですよ?
『ツンデレじゃねーよ!それは美咲希だろ!』
『そうかしら?思ったことは素直に言ってるつもりよ?』
予想外の返答に、なんて返せばいいかわからなくなる。
冷静すぎるだろこいつ。
『2人ともいちゃいちゃすんなー!なに?見せつけたいの!?』
相変わらず騒がしい小鳥遊。
こいつめんどくさいので無視。
◆
その頃
「よっしゃ!来てくれるんだ!」
そういって、朝からテンションの高い凛花。
「この夏祭りがラストチャンスかな……このタイミングを失えば言いにくくなるよね……」
すぐに消えてしまう声音で呟く。それは誰にも届くことは無い。
◆
「おい葉月。腹減った」
胃が何かを求めている。朝ごはんを食べていなかったので、胃袋がなんの意味もなしに働く。
そして物足りない感じがする。その物足りない感じが空腹なんだ、と自覚する。
「はー?ちょっと待ってておにい。今サンドイッチ作ってるから」
おおまじか!と感動混じりの声を上げる俺。
出来上がったサンドイッチを想像すると、さらに空腹感が増してくる。
高まった空腹感がストレスとなり、イラつく。
だが俺ももう子供じゃない。待てる男だ。
それから五分経って
「おにいできたよ。もう我慢の限界でしょ?」
笑いながら意地悪に言ってくる。
「よくわかったな。そろそろお前をぶん殴りたいぐらい限界だ」
本心で言って、俺はサンドイッチに目を移す。
スーパーで売っている食パンをオーブントースターで焼き、下からパン、レタス、ぺーコン、目玉焼き、ベーコン、レタス。恐らくレタスとベーコンの間にケチャップやマヨネーズが塗られているんだろう。
「いただきます!」
俺はサンドイッチにかぶりつく。
美味い。レタスのシャキッとした感触が口の中を駆け巡る。次に、ケチャップ、マヨネーズとベーコンの味が口の中に広がり、最後に目玉焼きの味と食感がくる。
さらに、今日初の食事ということで、胃にも優しい。さすが葉月だ。
食事を終えた俺は、夏祭りの準備をして、みんなの到着を待つ。
次作に期待していただいたら光栄です!