小野塚美香
久しぶりにペース良く書けました!
暖かい目で見ていってください!
「ねぇ悠眞。野球しよだって」
「え、誰から?」
「凛花」
oh……。
あの女いつも思いつきで行動するからなぁ。
でも、最近動いてないし丁度いいか。
「葉月帰ってきたらあいつも巻き込むか」
メンバーはいつもの5人だろうな。しかし、何を企んでいるんだろう。
「そうね。凛花もそうして欲しいみたい」
葉月は昔俺らと野球してたし、技術面では問題ないだろう。
美咲希と凛花は持ち前の運動神経ですぐに上手くなると思うし、なかなか楽しそうだな。
「これから何する?」
「んー、そうだなぁ。デートでもするか」
「へぇ。どこに連れていってくれるのかしら」
「任せとけ。楽しめるようにプラン練ってやるよ。3分ぐらいで」
「なんか信用出来ないんだけれど……」
「気にすんな。じゃあ少し時間もらうな」
美咲希と俺で、楽しめるところはだいたい決まっている。なので、俺が考えるべきことはどこでいくら使うか、だ。
なるべく節約したいが……。まぁこの際パーっと散財してもいいだろう。破産覚悟だ。その気になれば母親に俺の秘技、土下座を使うし大丈夫だろう。
「よし、行くか。1回そっちの家に行くか?」
「あー、そうしてくれるとありがたいかも。外出する装備じゃないから」
「おっけい。じゃあ出発だ」
付いていた冷房を消し、必要なものが揃っているショルダーバッグを持ち、家の鍵を握りしめて玄関へと向かう。
「あー、あちぃなぁ……」
夏ということもあって、外はかなり暑い。30度前後はあるだろう。
「そうねー。朝であれほど暑かったから昼過ぎはもっと酷いわね」
「さっさと行くか……。制汗剤持ってきててよかったわ」
そう言って、自転車をこぎ始める。
向かい風が吹いていたが、そよ風だったのでそこまで気にならない。むしろ涼しいぐらいだ。
そうして数分が過ぎた頃、俺らは美咲希の家に着いた。
「あ、私今日鍵持ってきてない……」
仕方ないか、と小声で呟き、美咲希はインターホンを押す。
――ピンポーン。
チャイムが鳴り、家の中から人の気配がする。
やがて、それは近くなり。
「はーい」
美香さんが出てきた。
「あら、美咲希と悠眞君じゃない。おひさ〜」
「久しぶりです」
「それにしても暑いね〜。上がってく?」
「えっと……」
スーパーフレンドリーな美香さんに俺が戸惑っていると、
「上がっていけば? 私遅くなるかもしれないし」
美咲希が助け舟を出してくれた。
「そういうことなら。お言葉に甘えてお邪魔します」
「そんなかしこまらないでよー。当たって砕けるのが男だよ?」
「いや砕けちゃダメでしょ」
「あ、そっか。じゃあなんて言おう」
この親子の会話面白いなと、失礼ながら思ってしまう。
「そんなことより暑すぎて干からびるから入るわよ」
「失礼します」
「失礼しまーす」
「母さんまで言ってどうするのよ」
「何となく言いたくなっちゃった」
和やかだなぁ。
先頭が美咲希で、その後ろが俺、最後尾に美香さんと、サンドイッチにされた俺が案内されたのはリビングだった。
「あそこのソファーとかでくつろいでいていいわよ。なるべく早く済ませるから待ってて」
「りょーかい。あんまり急がなくてもいいぞ」
「うん。ありがと」
そう言って、美咲希は準備を始めに行った。
「なんか、ほんとありがとね」
「……? 何がですか?」
「美咲希と付き合ってくれて。いやー、孫の顔が見れないんじゃないかって思ってヒヤヒヤしてたからさー」
孫って、この人何言ってんの!?
「あはは、冗談冗談。こっからが真面目な話ね」
「はい」
ふわふわした雰囲気を纏っていた美香さんから、冷たい、不穏なオーラを感じた。あまり関わったことの無い俺でも、この人を怒らせるのはまずいと分かるほどだ。
自然と、体が強ばる。
「悠眞君は、美咲希とどこまでいこうとしてる?」
「……どこって、なんですか?」
言葉の真意を読み取るべく、俺は少ない脳をフル回転させて考える。
しかし、数秒という短時間では答えは見つからない。
「ごめん。回りくどかったね。単刀直入に言うよ」
「……はい」
俺はごくりと喉を鳴らす。美香さんも、少し深呼吸をしている。
「美咲希を、貰うつもりはある?」
……貰うって、なんだ。何を言えば正解なんだ。
ダメだ、分からない。だが、俺の予想が正しければ。
「貰うとか、そんなことは考えたことはないです。ただ、これから先、何があっても美咲希と一緒に生きていこうとは思っています」
これは俺の本心。実現するのは容易ではないだろう。
でも俺は、本気なのだ。
「なるほど。わかった」
そう言った美香さんは、俺のいるところまで近寄り、手を差し伸べてくる。
「これからもあの子をよろしくね」
「はい」
この場を支配していた緊張感が一気になくなり、俺は安堵する。
「あ、オレンジジュースあるけど飲む?」
そういえば、と美香さんが思い出したように言う。
「お願いします」
と、俺は苦笑いしながら答えた。
正直喉が渇いた。
それにしても、美香さんは切り替えが上手いな。一体何者なのだろうか。
「はいどーぞ」
「ありがとうございます」
上の階から振動が伝わってくるので、美咲希はまだ準備をしているのだろう。
「デートに行くの?」
「なっ!? なんでわかったんですか!?」
図星をつかれて思わず声を荒らげてしまう。
「ふふっ。青春だねぇ」
青春、か。確かに、こんな事が出来るのは今のうちかもしれない。高校生活も後1年とちょっとで終わってしまうのだ。
「そうですね」
「時間って流れるの早いよねぇ。小学校卒業したと思ったらいつの間にか高校生になってたし。そしたらもう就職を考える時期になってたなぁ。時間は大切にね」
美香さんの言葉は、俺に深く突き刺さった。
なんだかんだで、俺はこの人にたくさんのことを教わっているのかもしれない。
「そうですね。もっと有効に使います」
今まで、俺は何をして過ごしてきたのだろう。そんなことを考えさせられた。
本当に、時間を有効に使えているのだろうか。
もっと、無駄なく使えたのではないだろうか。
……いや。違うな。過去のことを悔やんでいても何にもならない。変えられるのは未来だけだ。
「私も昔はよくあの時あーやっとけば良かったとかよく思ってたなぁ……。懐かしい」
エスパーかこの人。まぁ、恐らく独り言だろう。
「あ、そうだ悠眞君」
「なんでしょう?」
「ちょっとお義母さんって呼んでみて?」
「なっ……!?」
「いやー、どんな気分なんだろうなーって思って」
「なに馬鹿なこといってんの」
どうすればいいか分からなくなったが、丁度いいタイミングで美咲希が準備を終えてきた。
すると、そんな美咲希に対して、美香さんは。
「んー、川崎美咲希ってまだ違和感あるわねぇ……」
と、突然そんなことを言い始めた。
「本当に何言ってるの!? 悠眞、行くわよ」
顔を赤めらせ、早口でこの場を凌ごうとしている。
「ふふっ。お二人さんいってらっしゃい」
美香さんはどことなく楽しそうにしているけど。
「いってきます」
「い、いってきます」
緊張して言葉が思ったように出てこなかった。
他人の家でいってきますって言うの、なかなか恥ずかしいな。
そうして、美香さんに見送られながら俺達は出発した。
感想、アドバイス等お待ちしています!




