放課後
久しぶりの投稿です!
第1話を投稿してから、一年経ちました。今まで読んでくださってる方々に感謝の気持ちを込めて書いていきたいと思います。
「そういえば、私たちが出会って一年以上経ったのね」
涼し気な朝、登校しながら美咲希はそう言った。
「あー……図書館で会ったんだっけか」
あの時は、放課後暇になり、放課後も開いていると図書委員(美咲希)が言っていた図書室に立ち寄ったんだったような。
「そうよ。放課後めったに人来ないからびっくりしたわよ」
「あはは。そんでそん時にSNSのアカウント交換したんだよな」
「突然交換しようって言ってきたからさらにびっくりしたわよ」
たった一年前に関わりを持ち始めたのに、今となっては俺にとってかけがえのない存在になっている。本当に人生何があるかわかったもんじゃない。
「あー、今日も学校か。もう帰っていい?」
「いいわけないでしょ?」
「うぃっす」
今日も大人しく学校へ。だるいなぁ。
ま、教室ついたらやることあるし、今日は死ぬほど帰りたいわけでもない。
下駄箱で靴を履き替え、階段を登り、教室へ入る。
「うぃーす。おはよ」
「お、ししょーやん。意外と早いじゃん」
「はっ、なめんなって」
教室に入った時、俺が最初に声をかけたのは北村だった。
今話題の携帯ゲーム機の新作をやろうと昨日SNSでやり取りしたのだ。もちろんOK。その新作はアクションゲームで、期待度も高いから俺も楽しみにしていたのだ。
「早速やるか。どこまで進んだ?」
「んー、中盤ぐらい? 上位入ったところ」
「俺と同じぐらいか。10分ちょいしかないけどいけるか?」
「余裕。師匠こそ力尽きたりすんなよ?」
俺らが今からやるのは、モソハソと呼ばれるゲームだ。武器と防具を装備し、モンスターを狩っていくものである。実に単純。
「昨日電話越しにカチャカチャ聞こえると思ったらこれだったのね……」
「あー、ごめんな」
「全然問題ないわ」
そして数分後。
「はーいお前ら席つけー」
「あああああああああああああああああ!? 先生ちょっと待ってぇぇぇぇ!?」
「後1分……いや40秒でいいんで待ってください!」
「おー、やってんなぁ。しゃーなし、30秒待ってやるからその時に答えを聞かせてもらおう」
「「先生って大佐なんですね」」
「軽口叩いてないでさっさと討伐しやがれ。俺が校長に怒られるっつの」
そんなこと言われましても……。このモンスターやたらと飛ぶんですもん。なんて口が裂けても言えない。
「あ、終わった」
「呆気ないな」
「はーいじゃあホームルーム始めんぞー」
俺らの狩猟が終わったのを確認して、担任が号令係に指示をする。今日も学校生活の始まりである。
◆
なんとも言えないまどろみの中、何かが聞こえてきた。
これは…………社会科の授業だろうか。国名とヨーロッパと言う単語が聞こえてきた。
「んあ……?」
俺の席の隣に座っている北村に脇腹をつつかれた。正直殺意が湧いたよ。
「これ、小野塚さんから」
渡されたそれは、ルーズリーフの端っこを破ったものだった。
半分に折られていて、さらに表面には『読め』と力強い文字で書かれている。
恐る恐る紙を広げると、そこには『寝るな。起きろ』と書いてあった。
…………もしかして、怒っていらっしゃる?
美咲希を怒らせると怖いので、怒らせないように『ごめん、今起きた』と書き、北村に渡す。
残る授業時間は十分とちょっと。真面目にノート点稼ぎにいきますか。
◆
「えーと、小野塚さん? もしかしなくても怒ってる?」
授業が終わってからすぐに行ったのだが、美咲希はそっぽを向いている。
「ごめん。まじで俺が悪かった」
「…………」
oh……。これ本格的にまずいやつだ。
どうしようか、と俺が考えていた時、不意に美咲希が口を開いた。
「……留年したらどうするの?」
低く凍えるような、それでいて悲しさが含まれていて、震えた声で美咲希は言った。
「ごめんな。ありがとう」
美咲希を心配させたはずなのに、俺は笑みを浮かべていた。こんな俺の事を心配してくれる人がいるんだ。嬉しいに決まってる。
「何笑ってるのよ……」
当然、美咲希の機嫌は悪くなる一方だ。
「ラブラブだねー、そこの夫婦は」
「なんだ、美野梨か。なんか用?」
「なんだってなんだ。ちょっと美咲希ちゃんに用があってね。お借りしてもいい?」
「んー……なるべく早く頼む」
「りょーかい。そんなに時間かからないよー」
美咲希に用があるとは、なんだろうか。少し気になる。だが、他人の会話を盗み聞くのは良くないので、俺は中村の所へ行き、話しかけた。
「最近調子どうだ?」
「んー、まぁまぁかな」
俺らの中での調子とは、音ゲーの調子である。
「ほえー。まぁ楽しむことを忘れずにな。ゲームは楽しむものだ」
ゲームは楽しくなきゃやる意味ない。つまらないならやらなきゃいい。そういうものだと思う。
「わかった。肝に銘じておくよ」
中村のいいところはこの素直さだと思うんだ。
最初は話すのが嫌いなのかな? とか思っていたのだが、打ち解けてくるとそんなことは無い。寧ろ、アニメ、ゲームが好きな俺と趣味の合うやつである。
「あ、悠眞ー。美咲希お返しするね。ありがと」
「いやなんで俺に礼言うの」
俺の言葉も聞かず、美野梨は振り返り、廊下へ出ていった。
「何話してたんだ?」
「さっきの授業で分からないところあるからって言われたから教えてたのよ」
「なるほど」
美咲希は、学力が高い。テスト週間とか関係なしに俺の家にいるのにテストの点が高い。要領がいいのだろうか。
「休み時間そろそろ終わるわよ。自分の席に戻って」
「ん……おう」
まだ怒っているのか、少し突き放されたような言い方をされたので、ちょっとだけ悲しくなったのは内緒。
◆
放課後、俺らは駅前のスーパーに立ち寄っていた。
目的は、俺の今使っている消しゴムが使えなくなるほど小さくなったのと、美咲希が新しいシャーペンとノートを買うためだ。
ちなみに、使えなくなるほど小さくなった消しゴムは、先日、美鈴と買いに行ったものだ。
「最近の文房具はよく分からないわ」
「そうだな。俺もこの前同じセリフを言った」
学生の流行が常に変化し、学生の形が変わるのと同じで、文房具も進化しているのだろう。
「どれにしようかしら……」
美咲希はシャーペンが置いてあるコーナーでしゃがみこみ、どれにしようか迷っている。
「これとかどうだ? 模様可愛いし、美咲希が使ったら似合うんじゃね?」
「悪くわないけど、もっと太い方が好きなのよね。あー悩む」
どうでもいいけどシャーペンって人の好み分かれるよな。北村とか細いシャーペン使ってるし。俺はあまり好きじゃないけど。
「おっ。これは?」
たまたま目に入ったシャーペンだが、猫の柄があり、先程選んだシャーペンより少し太い。それに、パッと美咲希が使用している姿が脳内でイメージしたところ、とても可愛かった。
「なるほど……じゃあこれにするわ」
「あっさり決めたなおい」
「いやー、まぁあれよ。悠眞が選んでくれたんだし。それが嬉しかったのよ」
「ちょ、ストレートすぎるやめて照れる」
回りくどく言われるより、こうやって直接言ってもらう方が鈍感の俺でもわかるからいいのだが、流石に今のは不意打ちだった。
「ふふっ。悠眞が見せるそう言う可愛いところ好きよ」
「お前やめる気ないだろ。あと可愛くないから」
「私は可愛いと思うわよ?」
まぁ、美咲希にそう思われるんだったら別にいいか。
感想、アドバイス等を貰えるとありがたいです!
これからは投稿頻度を上げていこうと思っています




