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復活

投稿遅れました!

暖かい目で読んでいってください

「いや〜、まさか二人があんなに進んでるなんてね」

 今更否定する気はないが、美香さんに見られたことはかなりのダメージになっていた。

 しかし、そんな俺に対して美香さんはどこが楽しんでいる様子で、俺に昼飯の誘いに来た時からずっとにやにやしている。

 もしかして気まずい空気になってるの俺だけ?

「それでそれで、どうようちの美咲希は。なかなか上玉じゃない?」

「何言ってんですか!?」

 昼飯の用意をしながらそんな事を言っている美香さんに、全力でツッコむ。流石にこればかりは脊髄反射でツッコンでしまった。

「さっすが悠眞君。いい反応だね〜」

 絶対にこの人には敵わないと悟ったよ俺は、うん。

 もう手玉に取られている気しかしなくて、反抗する気も無くなる。

「出来たよ〜。ロールキャベツ」

 そんな俺の気持ちなんか知ったことではないと言ったような感じで、美香さんは料理を運んできた。

「ありがとうございます、頂きます」

「どぞどぞ〜。美咲希あんまり友達家に呼ばないから料理振舞ったことないんだよね。悠眞君の好みじゃない味付けかも」

 何故先程好きな食べ物を聞かれたのか、一人で納得しながら、美しい形をしたロールキャベツを眺める。こんなにも美味しそうなのだ、口に合わないわけが無い。

 と言うか、俺基本的に雑食だからゴーヤ以外はなんでも食えるんだよな。

「えっ……めっちゃ美味い」

 一口目を食べた瞬間に、そんな感想が漏れていた。

 完璧無意識だったので、自分でも驚く。

「ほんと〜? 嬉しいなぁ」

 それから火がついたようにロールキャベツを食べ進め、五分足らずで完食した。

 お袋の味付けとも、葉月の味付けとも違う、塩っけが薄く優しい味付けは俺にとって好きな味だった。

 人によって違うとはよく言ったものだなと思う。

「ふぅ……ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 どこもお粗末では無かったのだが、どうせ俺が口を開いても美香さんのペースに持っていかれるだけなので、黙って食器を台所へと運ぶ。

 自分で洗おうかと思い、蛇口に手を伸ばして――

「私が洗うよ。それよりも美咲希見に行ってあげて。どうせなら抱いちゃえば?」

 俺の様子を見ていた美香さんに遮られる。

 いやまぁそこはいいんだよ。問題はその後。

「まじで何言ってんすか!?」

 この人なんの躊躇いもなくしれっと下ネタ言うものだから、脳が理解するのに少し時間がかかった。

「あはは、冗談冗談」

「心臓に悪すぎる冗談なので辞めてください……」

「やっぱ悠眞君は面白いね〜」

「それはよかったです……。それじゃあまだお邪魔してますね」

「ごゆっくり」

 そして俺は再び、美咲希の部屋へ向かったのであった。


 ◆


 何時間経っただろうか。悠眞が母さんと下へ降りて楽しそうに話し込んでいる声が聞こえたのだけど、次第に意識が遠のいていき、遂には手放した。

 汗で背中がしっとりと湿っていて、今すぐにでも着替えたいところである。

 そういえば、私熱出してたんだった。その事を思い出すと、自然と手をひたいに当てた。

 うん、平熱。特に疲れたことはしてないし、早寝早起きを心がけているので疲れも溜まっているとは考えにくい。なんで熱なんて出したんだろう。

「ふぁ〜……」

 何時間も寝込んでいたので、体は少しだるい。横を向くと、悠眞がベッドに寄りかかって寝ていた。

 恐らく、小説ラノベを読んでいる途中に寝てしまったのだろう。

「………………ねむ」

 そんな推測を立てているうちに、悠眞が起きた。

 第一声がねむって、なんというか特殊ね……。

「お、美咲希起きたか」

「起きたわ」

「体調は?」

「絶好調よ」

 数時間前まであった脱力感は嘘のように消え去り、今は普段通り会話ができるほどまで回復した。そんな様子を見てか、悠眞はほっと一息ついて、

「そりゃよかった」

 と笑いかけてくる。

 その表情を見ているとお世辞でもなんでもないんだと言うことが伝わり、嬉しくなる。

「心配かけてごめんなさい」

 それと同時に、心配をかけたという罪悪感も生じる。そのため、私は謝っていた。

「いいってこのくらい。それより、お前喉乾いてるだろ」

「その通りだけど……。どうしてわかったの?」

「熱の時俺だったらめっちゃ喉渇くから、美咲希もかなって思った。ただの勘だけどな」

 それから、悠眞は飲み物取ってくると言って下へ降りていった。

 私もついて行ってリビングで飲む選択肢もあったのだが、今はあまり動きたくない。

 ひょっとすると、悠眞はその事まで見据えていたのかもしれない。

 ふと、悠眞が読んでいたラノベが目に入る。それは、現実世界のラブコメで、悠眞が好きな作品の一つだった。読みたい本がない時、大体はこの本を読めば暇を潰せて、さらに毎回感動できるので、私もよく読むのだけれど、悠眞もそうなのだろうか。

 そんなことを思いながら、私はベッドへ腰掛ける。寝っ転がってばっかりだったので、少しふらついたけれど、それ以外は問題なかった。

 頭も冴えてるし、視界もはっきりしている。身体もだるくないし、頭も痛くない。本当に絶好調だ。

『入るぞー』

 ドア越しに聞こえてきた想い人の声は優しくて、心地がいいものだった。

「どうぞ」

 それに私も優しく答える。

 何故か今日は悠眞の顔を見ると胸が締め付けられるようになって心拍数が上がる。それに伴って、顔が熱くなるのがわかる。

「お前、顔赤くないか? まだ熱あるんじゃね?」

 軽い調子で、右手にスポーツドリンクらしき液体の入ったコップを持っている悠眞が近づいてきて、私の額に手を当てる。

「んー……。そうでもないな」

 悠眞の体温を感じられるだけで私の心拍数はさらに上昇する。

 これだけ心拍音が大きいと悠眞に聞こえてしまうのではないかと思い、深呼吸を二回ほど繰り返した。

「全然大丈夫よ。今落ち着いたわ」

「? そうか、ならいいんだけど」

 そう言って、右手に持っていたコップを私に渡してきた。

 それを受け取ると、私は即行飲んだ。それはやはりスポーツドリンクで、市販のもののはずだ。それなのに、味が濃く感じられるのは私が沢山の汗をかいていたからだろう。

 さらに、スポーツドリンクは程よく冷たく、余分な熱を纏っていた身体をいい具合に冷ましてくれる。

「ありがとう」

「これぐらいいいって。お前が元気になってくれてほんとによかった」

 どんな言葉で感謝を伝えればいいのだろうか。私には全くわからない。

 立ち上がり、コップを勉強机の上に起き、元の場所に戻ると、悠眞が私の隣に座った。

 お互いに向き合うと、どちらも何も言わずに近づいていった。

 そして、唇と唇が重なりそうになった時――私は悠眞に唇をくっつけた。

 いつもならそこで終了なのだが、今日は何故か止まらなかった。

 興味本位と言うか、なんというか。私はそのまま舌を入れた。

 それに悠眞は少し驚いていて硬直していたが、やがてやってやるよと表情を変えていた。

 それから数分、お互いの弱点探りあって、息が持たなくなったので唇を離す。

 ちゅぱ、と艶かしい音がして、唾液の橋が途切れる。

「はぁ……とっても幸せな気分だわ」

「俺も」

 それが、私の、私たちの初めてのディープキスとなった。

九月も二日目。これからどんどん寒くなっていく訳ですが、皆さん気温の変化には気をつけてください。

健康が一番です。

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