入学と進級 下
暖かい目で見ていってください。
「おっひさー」
「おっひさー」
テンションが高めの小鳥遊凛花に対して、朝から疲れている俺はテンション低めに返した。
……それもあるのだが、これから行われるクラス替えが最もな原因だ。
なんというか、憂鬱。
「あー、クラス替えとかクソか」
クラス替えのシステムは昇降口に張り出され、それを確認してから教室に行くものだ。
いくら何でも十クラス分を張り出すのはキチガイなのではないかと思うのだが。
「とりあえず行くわよ」
「うぇい」
手当り次第に確認するっぽくて、右から貼り出されている一組から順に見に行く。
俺らの学年の人数は約四百人なので、一度も話したことのないやつもいれば、顔すら知らないやつもいる。
最悪知ってるやつがいればいいのだが、俺の引き運の悪さは天下一品ものだ。正直不安しかない。
「…………あった。五組の十一番」
「そう。私は五組の六番ね」
嬉しすぎて自然と頬が緩みそうになる。ただ、残念ながら凛花、大悟ペアは違うクラスになってしまった。
その代わりといってはあれだが、口を開けば下ネタしか言わない野田卓已が同じクラスにいる。
カオスなクラスになるなと俺は確信した。
「今年もよろしくね」
「ああ。よろしく」
親しい人が同じクラスにいるのは素直に嬉しい。とりあえずこれで一安心だ。
「あ、いたいた。悠眞ー!」
聞き慣れた声が背後から聞こえた。小学一年生からの付き合いで、同じクラスになった回数は九。更に中学の部活も一緒だったと切っても切れない縁と言っても過言ではないぐらいの関係である松山大悟は、いつの間にか消えていた凛花と一緒にこちらへ向かってきている。
「あたし達は同じクラスだったよ」
「おお、おめおめ。クソリア充」
「よっしゃ悠眞、どうやら君は痛い目をみなければわからないようだな」
何かの格闘技らしきものの構えをとり始める大悟。向こうがその気ならこっちも真剣にやるとしよう。
「返り討ちにしてやろう」
そう告げて俺も自己流格闘技(仮)の構えをとる。
「はいはーい馬鹿なことやってないで教室に向かうわよ」
「「はい」」
なんとなく恐ろしい雰囲気を出しながらそう言われたので、俺らは従うしかなかった。
「五組って、ここか」
一年の時と教室の配置は全く変わらないが、念のため確認する。
間違ってもこの高校は他クラスへの侵入はOKなのでなんの問題も無いのだが、そのクラスに知り合いがいなかった場合誤魔化しが利かない。
そしてその場合、とても恥ずかしくて穴があれば入りたい気持ちになる。
ちなみに、凛花、大悟ペアは八組だった。
「新しいクラスって意外と緊張しないのね」
「えっ?」
俺は逆だ。緊張して既に家に帰りたくなっている。そういえばこの前買ったラノベ、読んでる途中だったっけ。なおさら帰りたい。
「だって、去年は知らない人ばかりでどんな人がいるのかとかわからなかったし。でも今はそうでもないのよね」
言われてみれば、確かにと思った。入学初日から徐々に友達の輪を広げていったのが懐かしい。
更に、美咲希はそれにと付け加え。
「今は悠眞が一緒だし……」
ボソボソと言っていて、気を抜いたら聞き逃していたレベルだったが、残念なのか幸福なのか俺はしっかりと聞いていた。
「そっか、そりゃ嬉しいな」
「……!? 言葉に出ていたのね」
「がっつりな」
どうやら、思っていたことを無意識に発していたらしい。この会話のおかげでさっきまでの緊張はどこかへ去っていた。
廊下は仲のいい人たちで会話しているのか、賑わっていて、その中で縮こまっている俺達はどこか浮いている。
「おいおーい。廊下でイチャつくとか勘弁してくれクソ童貞」
こんなことになるならさっさと教室入るべきだったな……
「んだよ卓已」
「学年屈指のリア充よぉ……東京湾に沈めるぞ」
「返り討ちじゃぼけ」
こいつなかなか頭おかしい。なので、俺らは会う度にこのめんどくさいやり取りをやっている。
「はいそこまで。止めに入るの二回目なんだけど?」
「すみませんした」
なんで止めに来る美咲希はこんなにも恐ろしい雰囲気を纏っているんだろうか。
それを卓已も感じたのか、すぐにふざけた態度を改めてた。
「お、こちらが噂の小野塚さん?」
「噂かどうかは知らないけど、私が小野塚よ。小野塚美咲希」
「うっわ噂以上の美人さんだな。今日寝る前に悠眞呪うわ」
「物騒なことはやめてくれ」
じゃあな、と言いながら卓已はドアを開け、教室の中へ入っていった。それに便乗し、俺達も教室へ入る。
クラスの第一印象としては、野球部が多いな。去年試合に出させてもらった時に見知った顔がちらほらといた。他に知っている人は卓已以外におらず、美咲希の方を見ると全くいないというジェスチャーをしている。
また地道に友達の輪を広げてくか。卓已もいるし。
「お? あれは……」
男子三名が話をしているのだが、手に持っている本に見覚えがあった。
見間違うことは無い。確実に今やってる話題のアニメの原作だ。
「へぇ……あの本新品ね」
「そうだな」
本の表紙が輝いている。傷一つ付いていないので、どれほど大切に扱っているのだろう。
「その本めっちゃ面白いよな」
気づいたら俺は話しかけていた。
「お、わかるか! えっと……」
「あー、自己紹介遅れたな。俺は川崎悠眞」
「川崎悠眞……? ああ!? 学年屈指のリア充!?」
いや、なんでそんな認識なんだよ。最初に呼び始めたやつ出てこい。
「ってことはそっちの人は小野塚美咲希か!?」
「ええ、そうよ」
「「「なっ!!」」」
俺らが自己紹介したら男子たちは固まってしまった。一体何があったのだろう?
「……俺は北村涼だ。よろしく」
最初に回復したラノベを持っていた男、北村が俺らに自己紹介をした。
悪い奴らでは無さそうだ。こいつらと一緒に行動をしようかな。
「俺は渡辺颯人」
「相良充希。よろしく」
渡辺はスポーツ系といった感じでガッチリしていて、相良はスラッとしている、いわゆるイケメン風な人物だ。
そういえば担任って誰だっけ。まぁいいや。
途中までは渡辺が持っていたラノベについて語って、しばらく経つと俺と美咲希が別の作品の話を始めた。それに、ほかの3人は着いてこれず、何故か師匠と呼ばれることになってしまったのだった。
夏休み最後の平日、ゲームセンターへ行ってチュウニズムという音ゲーをやりに行ったらですね、人が沢山いてびっくりしました。自分みたいな雑魚がいていいのかと縮こまってました。
それはさておき、次回は相当甘めです。いちゃいちゃです。糖尿病にお気をつけください。




