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散歩

暖かい目で見ていってください

 神社から20分歩くと、大悟の家が見えてくる。よくあるアパートだ。

「じゃあ私はここで失礼しますね。また今度会いましょう先輩」

「おー、ありがとな」

 神社とは逆方向に歩き出す美鈴を見送った後、俺はインターホンを押した。

『名を名乗れ』

「そーゆーのいいから開けろ」

「……はい」

 先ほどと同じパターンになりそうだったので、早めに手を打っておく。先手必勝とはこの事だ。

 幸い、みんな揃っている。はぐれたのは俺だけのようだ。

「何でおにい電話してこなかったの?」

「携帯死んだ」

「アホじゃん」

 みんな無事だしもう何でもいいんじゃないかな。

「お前ら何買ったん?」

 これ以上続くと面倒くさくなりそうなので話題転換。

「私はジャガバターよ」

「あたしは牛タン!」

「焼きそば」

「マルはお好み焼き」

「俺はハンバーガー」

 で、俺がたこ焼きと。見事にみんな違うものを選んでいるな。

 炬燵には4人しか入らないので、女子が炬燵で俺らは立食。俺と大悟はおやつ感覚で食べれるので問題は無いが、少し寒い。

 誰かが言ったいただきますに便乗するようにして、食べ進める。流石にたこ焼きだけだと物足りないな。

「大悟。米ってあるか?」

「昨日の残りが炊飯器にあるけど……なんで?」

 それを聞いた俺は炊飯器を開け、しゃもじでプラスティックの容器に米を入れる。

「少しもらう」

「まじかよ……」

 至っておおまじである。この場合、たこ焼きがおかずではなく、ごはんがおかずだ。そういう歌もあるわけだし。

「なかなかいけるぞこれ。うん、うまい」

 炭水化物×炭水化物。夢のコラボレーション。

「太るわよ?」

「そこは言わないでもらえるとありがたい」

 各自食べ終わったので、ゴミを捨てに行く。

 ……もちろん大悟の家のゴミ箱へ。

 次のゴミ出しの日いつだっけな。3日後か。まぁまぁゴミたまるな。

「ゴミ出し大変になりますねぇ」

 嫌味ったらしく笑いながら大悟にそう言う。

「まぁ距離近いし、何とかなるべ」

 困ったような笑顔を浮かべて、ゴミ箱の方をじっと見ている。大悟も筋力がない訳では無いので、ゴミ袋を持ち上げることが出来ないなんてことは無さそうだが、重いものは重い。

「がんば」

「おう」

 まぁ別に知ったことではないので適当に応援しておく。

 飯を食べ終わった俺達は、正月ということもあり、街をブラブラ歩くことにした。

「まずは駅前だな」

 この街で一番スーパーなどが密集している場所で、人もなかなかいる。俺の行きつけの本屋や、文具店などもあってとても便利だ。

 1つ難点をあげるとすれば、家から少し遠いという事だろうか。歩いて30分以上かかる。

「歩きで行くっていつぶりだろうな」

 自転車だと10分ちょいで行けるので、いつもは自転車を利用する。歩きで行く時は雨が降っている時ぐらいだ。

 最も、本当に買いたくてしょうがない本が無いと行かないのだが。

「私の家はここから近いわよ」

「ほう。何分ぐらいだ?」

「自転車だと7~8分ってところかしら。歩きだと大体15分」

 それは確かに近いな。そんなに時間がかからないのなら毎日でも来たい。それほどここは便利なのだ。

「ここいっぱいお店があるね」

 そう言えばマルをここに連れてくるのって初めてだっけ。東京いった時に来たけど、即行駅の中に入ったもんな。

「そうだろ。みんな大体ここに来て買い物とかするんだぞ」

「コンビニと何が違うの?」

「コンビニってのは、色んなものがそこそこ置いてあるんだけど、ここは食品が多く売ってたり、本が売ってたりするんだ」

 ジュースとかも少し安いし。それはいいとして、コンビニでは売ってない生野菜も多く揃ってるし、魚だってある。

「へぇ。そうなんだ」

 それから、みんなの行きつけの店の解説をして、実際に店内に入ったりして、普通の高校生みたいなことをした。

 いやそもそも普通の高校生がどんなものなのかわからないのだが、俺の日常は学校以外ではあまり外に出ないというものなので一般的な日常ではないと思う。

 女子達はファッションセンターで盛り上がり、男子は食べ物で盛り上がった。

 みんな共通で盛り上がったのは、本屋だ。ラノベコーナーと漫画コーナーを満遍なく見て、この本がアニメ化しそうとかこの本アニメ化すると、情報交換をしていた。マルも興味深そうに話を聞いていて、なかなか楽しかった。

「さて、次はどこいく?」

「駅の周辺は制覇したから……何もないところに行こう」

 何もないところ。駅から離れると田んぼと家ばかりの所があるのだが、そこに行くのかもしれない。

「何もないところって……あそこの田んぼの所よね?」

「おう!」

 やっぱりか。まぁ確かに何もないけど、あそここのメンツで行くと色々面倒なんだよなぁ……

 異論を唱える前に一同が歩き出したので、別にいいかと思い、俺もついていく。

 もうどうでもいいや。何も起こらないことを願う。

 ここからだと田んぼの密集地帯まで20分程度だろうか。マルも疲れた様子を見せてないし、他のみんなも元気だ。葉月と凛花を中心に楽しく会話している。

「なぁ。この光景、いつまでも続くといいな」

 笑い合う4人の少女達。それは眩く輝いていて、とても平和だ。特別なものなんてなにもない。ただ彼女達が揃っているだけなのに、それが特別になる。

「そうだな」

 いつまで続くかわからないこの時間を俺は存分に体験することにした。後悔だけはしたくないからな。

 それから20分歩き続け、辺りが田んぼだらけになってきた。

「うわぁ……ほんとに何も無い」

 マルの正直な感想に、笑うことしか出来ない地元民5人。困ったことに事実だから何も言い返せないんだよな。

「大自然の空気を沢山吸っていこうじゃないか」

 なんとかフォローするためそう言ったのだが、よく考えたら大自然でもないんだよなぁ……

 それに、時期も時期なので稲は生えておらず、土に水が張ってあるだけだ。

 でもこういうところに来ると落ち着く。車もあまり通らず、高い建物もない。

 ここから見る夕日、結構綺麗なんだよな。

「いやー、ここをこうやって歩く日が来るとは思わなかったよー」

 のんびり歩きながら、凛花がそう言う。

 確かにそうだな。ここを歩く人なんてそうそう見たことない。

 そもそもここあんまり通らないしな。

「でも、すごくいいところだと思います。優しい感じがして」

 意外なことに、マルはここを気に入ったらしい。今度夕日を見に来るのもいいかもな。

 この調子なら何の問題も起こらずにただ平和な時間が流れてるだけだろう。

「ん? なんだあれ?」

 大悟が何かを見つけたようで、田んぼを覗き込んでいる。

「――ッ!」

 ふざけた顔が一瞬にして険しくなった。一体何を見つけたんだろう。

「――ッ!?」

 早速フラグ回収。

「どうしたの?」

 美咲希が俺らを心配したのか、近寄ってくる。見せるべきか見せないべきか、悩んでいるうちにすぐそこまで来ていた。

「こ……れは」

 結果的に見られてしまった。たまにあるんだよ捨てられたエロ本が。

 こんなR18が道路に野放しとか教育に悪すぎる。どうしよう、凛花も葉月もマルも興味津々にこっちに近づいてきている。

 まずいまずいまずいまずい。葉月はともかくマルに見られることは絶対避けなければ。

 俺はそれを拾い上げ、道路の隅へ置くと、

「おっらああああああああ!!!」

 全力であさっての方向へ蹴り飛ばした。

「ああああああ!?」

 大悟が悲鳴をあげていたが気にしない。こんな汚らわしいものをマルに見られるより遥かにマシだ。

「グッジョブ」

「サンキュ」

 久しぶりにヒヤヒヤした。

「お兄ちゃん何があったの?」

「良くないものがあったんだ。深くは追求するな」

「……? うん。わかった」

 あれを拾い上げた時に付着した泥が乾いてきた。さっさと家に帰って手を洗わないと。

毎日更新するってなかなかきついですね。

でも頑張ります

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