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帰宅

暖かい目で見ていってください

 家の前にインターホンを押した。

 流石にマルを背負ったまま鍵を開けるのは至難の業だからな。

『どしたのおにい』

 そんな俺を不思議そうな声で訪ねて来る葉月。まぁそうだよな。

「開けてくれ」

『はぁ? 自分の鍵使えばいいじゃん』

 そうは言っても、家の中から人が動く気配を感じる。

 なんだかんだで優しい妹なのだ。

「ありがとな」

 葉月が出てきた瞬間に、お礼を言う。

「別に、お礼言われることなんてしてないし」

「そっか。とりあえずいきなりで悪いが俺のバッグ運んでくれん?」

 さっさと本題に入る。もうそろそろ限界だから。

「あー、そゆことね。おっけ」

 俺の状態を見て、状況を察してくれたらしい。

 ほんと、助かる。

 葉月の協力もあって、俺はマルをリビングのソファーへ寝かせることが出来た。

 バッグは、俺の部屋に運んでもらっている。

「いやぁ、なかなかハードな1日だった」

 そう言って、俺はテーブルを囲んでいる椅子に座った。もう足が棒のようになっていて、風呂場にも行きたくない。

 ドタドタと階段を下る音が聞こえてきた。葉月が降りてきたんだな。

「おかえり。どうだった?」

「楽しかったよ。美咲希は?」

「さっき帰ったよ」

「そか」

 とりあえず、みんな無事でよかった。

「……腹減った」

「多分もうそろそろそう言ってくると思ったよ」

 そう言って、キッチンへ向かっていった。つまり、既に飯は出来ているってことか。有難い。

「よく耐えたと思うんだよ俺は」

「はいはい。えらいえらい」

 俺の軽口に、塩対応の葉月。

「いやー、ほんと助かる。ありがとな」

 機嫌を損ねると悪いので、正直なことを言う。

「……なんか気持ち悪い。どうしたの? そんな素直に言っちゃってさ」

 この選択は間違ってたのかな?人の心ってよく分からん。

「さぁな。俺もよくわかんねぇ」

 とりあえず適当に返しておく。

「えー、なにそれ。ただ説明がめんどくさいだけでしょ」

 そんな俺に対しても、葉月は微笑んでいる。

「よくわかったな。図星」

「しょうがないよ兄妹なんだから。隠し事なんてしようと思わないことだね」

 お袋と親父は仕事で家を開けてることが多いし、現在俺と1番一緒にいるのは葉月だろう。それに、俺達はそんなに仲が悪いわけではない。というか、むしろいい方なんじゃないかな?

「根っからそんなこと思ってないっての」

 そう言って、俺は立ち上がり、風呂へと向かう。

 気だるさを感じたが、そんな事言ってるといつまで経っても入らずじまいになる。

 なので、思い立ったら行動に移すべし。

 飯は後でいいか。

「のんきだねぇ。ご飯冷めるよ?」

「すぐ上がるから。風呂も沸いてるんだろ?」

「……うん。早くしてね」

 当てられて悔しそうにしている。そんな姿も魅力的に感じてしまったのだから、俺はシスコンって言われても文句言えないな。


「いやぁ、ほかほかほかほか」

「よかったですねー」

 風呂から上がった俺は飯を食おうとリビングへ向かった。

「葉月さん? 何でそんな機嫌悪いんですか?」

「別にー。怒ってないし」

 どうしよう。凄くめんどくさい。

「早く食べないと冷めるよ?」

 ぶっきらぼうに言われた。お兄ちゃん泣きそうだよ。

「はい。速やかに美味しく頂きます」

 逆らったらもっとめんどくさいことになりそうだ。女ってわからん。

「……お土産は?」

「ああ、お前が好きな作品のスピンオフ、新しいの出てたから買ってきたぞ」

 実は俺が大量にラノベをカゴに詰め込んでいた時、見かけたのでそれも購入したのだ。

「え? ほんと!? 丁度これ欲しかったんだよね」

 喜んでくれているから買ってきてよかったなと思う。

 ラッピングされていた本を丁寧に取り出し、口絵をじっくり見ている。

「はぁ〜……可愛いなぁ」

 葉月はいくらでも口絵を見てられるという妙技の持ち主なのだ。言い換えると変人。

 そんな妹を横目に、俺は黙々とご飯を食べ進めた。

「ごちそうさまでした」

 両手を合わせ、目を瞑り感謝の気持ちを込めて言う。

 ご飯粒1つ残さずに完食した俺は、皿を流しまで持っていき、そのまま洗う。

 葉月はあんなだしもう他の洗い物は済ませてるっぽいし、少しは休ませてあげないとな。

「ん、ありがと」

「気にすんな」

 本買ってきてくれてありがとうなのか皿洗いありがとうなのか、それとも両方なのかわからないが、そんなことを聞くのは野暮だろう。

 俺が使ったのは皿とフォーク、それにコップだけなので、そんなに大変ではない。

 1通り洗い終えたので、水を切ってよく拭き、食器棚に戻した。

 そして、さっきまで座っていた場所に戻る。

「おにい神田明神には行った?」

「あ……」

 言われて気づいた。そういえば今日行く予定だった。

「はぁ……じゃあ明日みんなで初詣に行こうよ」

「おっけ。じゃ今からあいつらにも連絡入れてみる」

「うん。よろしく」

 ポケットから携帯を取り出し、グループトークを開く。

『明日暇?』

 文字を打つのに2秒もかからなかった。

 そして返事が来るのにも2秒かからなかった。

『おう』

 この単語にありったけのウザさを込めたような雰囲気。送り主が誰か確認するまでもない。大悟だ。

『初詣行こうと思ってるんだけど、どう?』

『お! いいねいいね!』

 凛花が出てきた。にしてもこいつも文字うつの速すぎだろ。送ったあとほとんどタイムラグ無かったぞ。

『私もいいわよ』

 もういいや。こいつらの文字打つ速度が異常なのは今に始まったことじゃないし。

『じゃあ10時に大悟の家集合で』

 このメンバーで一番神社に近いところに住んでるやつと言えば大悟だ。凛花の家は知らないが、美咲希と同じ方面なので神社からは真逆だ。

『おっけー』

 本人から許可を頂いた。これで何の問題もない。

 ちなみに、何故10時にしたのかと言うと、屋台で食べ物を買って、どこかに集合して食べるためだ。混むだろうし。

「決まったぞ」

「ん」

 葉月もそれを確認して、また口絵を眺め始めた。

 どんだけ好きなんだよその本。というよりキャラか。

 そろそろ眠くなってきたので、俺は寝ることにする。

 洗面台の前に立ち、歯磨きをする。しゃかしゃかと心地いい音を立てながらセオリー通り3分間磨き続ける。

 やがて、磨き終わったので口に水を含み洗浄。それを三回繰り返し、俺の歯磨きは終わる。

「そんじゃ、俺寝るわ。マルよろしくな」

「ん。おやすみ」

「おやすみ」

 最後まで口絵から目を離さなかった葉月。あれは眠くなるまで動かないやつだな。

 いつもより早めの時間だが、今日は疲れたのでこれぐらいが丁度いいだろう。

七月もそろそろ終わります

夏休みお楽しみでしょうか?体調には気をつけてお過ごしください

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