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そのアンクレットの中央にある小さなロケットを開けると中には母と小さいころの自分が微笑む写真が納められている。
シェリアはデュランダルにロケットの中身を見せた。
「お義母様と、シェリアだな」
とてもシェリアとよく似ている。
美しい女性だとデュランダルは思った。
「はい。母が城を出る前にわたしに持たせてくれたものです。絶対に肌身離さずつけておくようにと」
「お義母様はどこの国の出身だ?」
「帝国の流民でした。父が帝国を訪れた際に見初めたようです」
「そうか。お義母様は童話をご存じだったのかもしれないな」
「え?」
「さっき言ってたキルギアの童話だよ。聖王と聖女と聖獣の話さ」
「?」
シェリアはきょとんと首をかしげる。
「ホワイトサーベルが言っていた。あの童話には続きがあるんだ」
「え?」
デュランダルは腕を捲り上げ、未だ碧く熱を持つ聖王のしるしをなぞった。
「聖王は愛する人を見つけたとき、聖王となる。光り輝く髪のその女性は幸福の女神となるであろう」
「光り輝く髪?」
「ああ、君の髪はキラキラと輝いている。単なるプラチナブロンドではない。言っていただろう? アリア王女が君の髪を見てキラキラしていて気持ち悪いって言うと」
「それは…」
「ときどき、驚くほどキラキラと輝く時があるんだ。そのときシェリアの髪から幸せのオーラがでてるんだよ」
真面目にデュランダルが言うのでシェリアはくすくすくすと笑った。
「そんなおとぎ話みたいな話……」
「少なくとも俺には君が女神に見える。それでいいじゃないか?」
「デュランダル陛下」
「話のつづきを言おう」
デュランダルはシェリアの手を取り聖王の印の上に重ねた。
「聖王は幸福の女神と永遠に幸せにくらしましたとさ」
デュランダルの碧い瞳に吸い込まれるようだとシェリアは思った。
「幸せに……なってもいいのかな?」
「ああ。当たり前だろう? 今までどれだけ苦労してきたんだ? 君は、俺と幸せになるんだ」
「デュランダル陛下……」
「その陛下というのをいい加減にやめろ。君も同等の身分だ」
「あ、確かに……そうですね」
「デュランダルでいい」
「はい。ではデュランダル」
「敬語もいらない」
「わかりました。あ……」
クスクスクスと二人で笑いあう。
「それはそのうち」
「ああ」
平和な昼下がりは続いていく。
「じゃぁ。幸せになるために今日はもうこのままベッドに直行しようか?」
「え? まだ昼間じゃありませんか?」
「新婚というのは昼も夜も関係ないそうだ。ラインハルトに聞いたぞ」
「まぁ。昼間の任務を怠るなど国王として失格ですわ」
「そんなことはない。さっきまでちゃんと仕事はしていたんだからな」
デュランダルはシェリアの首をすっと自分のほうへと持ってくると、そのやわらかい唇に自らの唇を重ねた。
「愛してるよ。シェリア」
「わたしもです」
そうだ。幸せになろう。
お母様が私に託した幸せ。
それをわたしは今からつかみ取る。
この人とともに。
愛するキルギアを、オルベリアを、守っていく。
デュランダルはひょいと立ち上がると真っ赤になっているシェリアをひょいと抱き上げ、部屋の奥の寝室へと消えていった。
新婚夫婦は仲がよければ多少仕事をさぼっても誰も文句は言わないのだ。
ラインハルトは残業に身をしずめつつ、くすっと肩をすくめた。
ようやく愛する人が見つかりましたね。
陛下。
~FIN~




